いや、人ん家の前で何やってんの?   作:ライムミント

22 / 47
本日はハジケ要素の前半後半でお送りいたしまぁす!

バトルはまだまだ続くぜ!




まだ見えぬ敵

「…はっ?」

 

死柄木は理解出来なかった。いや、理解していたが脳が理解することを拒んだ。

 

対オールマイト用に造られた脳無が目の前のふざけたガキにたった一撃の下倒されたのだ。

 

「おいおい嘘だろ…?脳無だぞ…?対平和の象徴のために造られた怪人脳無だぞ!?それが何でよりにもよってこのふざけたクソガキに倒されたんだ!?まさか()()()欠陥品を送り付けやがったのか!?」

「ならそのふざけたガキが現実を見ようとしない熊手コーデ君に教えてあげよう」

 

後ろを向いていた鱗が振り返り、目を見据えながら口を開く。

 

 

「世界の大半を占める力無き者にとって、自らを肯定するに不都合な“事実”こそが悉く真実なのだ」

 

「っ…!?」

 

ぐうの音も出ない正論。脳無は目の前で倒された、それは真実。だからこそ子供のように癇癪を起こすことしかできなかった。

 

「何でオールマイトでもないお前が脳無を倒せるんだよ…!?おかしいだろ!?このチートがぁ…!!」

「ニュートンは『万有引力』を発見した。アインシュタインは『相対性理論』を提唱した。ならば俺は『ハジケリスト=チート』という『ハジケ最強理論』を学会で発表しよう。これでノーベル平和賞は俺のものだ」

「何で脳無を倒したのがコイツなんだよぉぉぉぉぉ!?」

「落ち着いてください死柄木 弔!?」

 

 

おいおいおいおいおいおいおいガキかアイツ。おいおいコーラおいおい。とりあえず漫才みたいな取り組みをしている間に炭酸抜きコーラで栄養補給しとこ。

 

「落ち着いてください!今から二人であのガキを殺せば万事解決です!まだプロヒーローも来ていない!そして何より脳無の攻撃が直撃した体が元気のはずがない!」

「そうか…そうだよなぁ…!!あいつはボロボロなんだ…!殺すなら今しかない!このままだと俺はストレスで二度と安眠できそうにないからな…!!」

 

ん?何か勘違いしとりゃしませんかい?誰がボロボロで元気がないだって?

 

「やるぞ黒霧!あのガキをぶち殺す!」

「ええ!真っ二つにして差し上げます!」

「「石楠花危ない!?」」

 

最近の若いもんは元気だねぇ。おじちゃんは元気な姿を見ているとこっちも元気が湧いてくるよ。とりあえずまずは………

 

「おらぁぁぁぁぁ!見えてるんだよ!」

「ぐはっ!?」

 

黒霧を吹き飛ばす。

 

「ワープ移動してるのか知らんが俺の目には何処にどう出てくるか見えてんだよ!!ついでに熊手野郎!お前は触られたらヤバい系男子だ!だから…」

 

そうして鱗は地面を殴る。すると地面が割れ、大小様々な岩の破片が死柄木を襲う。

 

「クソッ!いてぇ!」

「触る個性なら触らせないように立ち回るだけだ!ほら!割れた地面にはまって土に埋まってろ!それと黒トリュフ!見えてるって言ってるだろ!」

「ぐっ…!」

 

地面を割り足場を崩して連携させない。連携してもワープ場所を看破される。

 

またしても的確に捉える攻撃で圧倒されていく死柄木達。もうプライドが限界だった。

 

「黒霧ぃぃぃぃ!!ワープゲートで真っ二つにしろぉぉぉぉ!!」

「ええ!これでどうです!」

「だから効かねえと…範囲広すぎない?」

 

ワープゲートを展開し、胴体と足を別の場所に出現させる。

 

「これで私がワープゲートを閉じたらあなたは真っ二つです!あなたの内臓が散らばってしまいますが止められるのなら構いません!さぁ、死になさい!」

「石楠花さん!?」

 

そしてゲートが閉じられる瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォッフォッフォ…まだまだじゃの」

 

「はっ?」

 

黒霧の後ろに()がいた。

 

 

 

「いや…えっ!?あなた今ワープゲートに挟まれて………!」

「フォッフォッフォ、それは残像じゃよ」

「何でもありですかあなたは!?あとその話し方が妙にムカつく…!」

WRYYYYYYYYY(ウリイィィィィィィィィィィ)ーッ!!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ボコボコに殴られる黒霧。だが捕らえたはずが『残像だ』の一言で済まされただけで諦めるような男ではない。黒霧は次なる作戦に出る。

 

「だったら貴方の存在を別の場所にワープさせればいいだけのこと!火山の火口にでも飛ばしてあげましょう!今度こそサヨナラだ!!」

 

そうして今日一番の速さで鱗の足元にワープゲートを展開する。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「「「石楠花/くん/さん!!」」」

 

今度こそ鱗はワープゲートによって飛ばされ、目の前からいなくなった。

 

「はははははっ!!よくやった黒霧!やっと目障りな奴が死んでくれたか!!」

「そんな………!」

「石楠花ぇぇぇぇぇ!!」

 

ヴィランは喜び、仲間たちは絶望の表情へ変わる。

 

だがしかし彼らは忘れている。鱗がハジケリストであることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーい、ジョージィ!」

「「「嘘だろ!?」」」

 

 

黒霧の中から変人が現れた。そのまま何事もなかったかのように出てきて戦闘態勢を取る。

 

 

「いや…えっ!?どうやって帰ってきた!?」

「そんなもん、ゲートから放り出されて閉じる瞬間に空中で天空×字拳(てんくうぺけじけん)決めて俺が飛ばされたゲートに再び入って帰ってきたに決まってるだろ?ちゃっかり火山にまで飛ばしてくれちゃって。もう少しで石楠花ビビンバになるところだったぜ」

「いい加減死ねよテメエェェェェェェェェ!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

「「ぐべらッ!?」」

 

 

段々見ている側があまりの理不尽に可哀そうになってきた。そして死柄木自身の牙も着実に折られていく。ネギで戦い、パンチは即死レベル、致命傷は「残像だ」で躱され、ワープゲートからも自力で脱出、そして意味の分からない攻撃で終始圧倒。

 

 

 

 

 

だが真の敵は着々と近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴボッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ?空間からう〇こ出てきたぞ?ああなるほど、これが黒トリュフのトイレの光景か」

「違いますよ!それよりもあれは………」

「………()()?」

 

空間から泥水のようなものが溢れ、その中から180センチ程の人影が出てくる。

 

 

筋骨隆々で全身が真っ黒な体、頭から生えた触覚、瞼のない大きな目、およそ人には見えない顔つき。そして首からラジカセをかけている。

 

 

全身があらわになった時、一言だけ話した。

 

 

 

 

 

 

 

「じょうじ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!」

 

鱗は危機管理能力が高い。だからこそ一言、たった一言聞いただけで目の前の存在がヤバい存在だということに気づいた。何かヤバイ、あの謎の生物とラジカセは脳内警鐘をガンガンに鳴らしている!

 

 

「お前らここから早く逃げろ!!」

 

 

鱗からは想像もできない大声に生徒たちは混乱する。そして鱗が声を発したと同時にラジカセから音声が流れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やあ弔、大丈夫かい?』

 

 

途方もない巨悪の声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレはヤバいな…どれくらいヤバいかというと、動けない状態のところにダンプカーで突撃されるくらいヤバい。

 

佇まいがとんでもないな…、油断すれば一瞬でやられる。ふざけてる暇すらない。でも心なしか雰囲気が俺に似ているような…

 

 

『やあ弔、大丈夫かい?』

「…先生?」

 

先生って誰よ?ていうかやっぱり今回の襲撃の主犯はアイツじゃなかったか。だってアイツ幼稚すぎるもん。すぐ癇癪起こすし。絶対ブレーンがいると思っていたけど、やっぱり居たか。

 

『この脳無が出動するということは…対オールマイト用脳無が倒されたってことだ。流石に今の弔にはまだキツいだろう。一度帰るといい、この敗北が君を強くするんだよ』

 

すると死柄木と黒霧の口から泥のようなものが溢れる。

 

「次会ったときはお前を絶対殺してやる…!テメエに虚仮にされたこと忘れねえ「落雁を食え!」ぐえっ!?」

 

 

顔面に高速で落雁を投げつける。死柄木と黒霧はそのまま泥に飲まれるように消えていった。残ったのはラジカセを首からかけた脳無だけだ。

 

 

帰るならさっさと帰れ、口からう〇こマンズ。本当ならそのまま気絶させて捕まえるつもりだったんだが………いま目を離せば目の前の脳無に少なくとも一人は必ず殺される。だから目を離すわけにはいかねェ。

 

「お前ら早くここから離れろ。こいつはさっきの奴と同じぐらい強い」

「じゃあお前はどうすんだよ!?」

「俺は足止めだ」

「でも石楠花君はもうボロボロじゃないか!」

 

事実鱗は「ハジケだ!」と言っているが、度重なる戦闘によって体はもうボロボロだ。それでも尚アイツには自分が戦わなくちゃいけないと本能が訴えかけてくる。

 

「ならさっさと離れてプロヒーローでも呼んできてくれ。こんなことしてる間に他の奴らはピンチかも知れないし、気絶させたヴィランが目を覚ますかも知れない。そして相澤先生の方が俺より怪我が多くて危険な状態だ。大丈夫!後は俺に任せとけ!オールマイトが来るまでの最後の時間稼ぎでも何でもしてやるよ」

 

 

 

 

 

その瞬間、脳無がこちらに向けて駆け出した。だが速さは先程の脳無と同等かそれ以上のスピードだった。

 

しかし鱗はシャコの目を持つ。たとえ途轍もなく早いスピードであろうが、鱗の目にとっては捉え切れる範囲内のスピード。しかし他の生徒達にとってはまるで瞬間移動したかのように見えた。

 

「またテメェは俺以外狙いやがって…!」

 

持ち前の動体視力で動きを先読みし、クリンチで相手の動きを拘束する。

 

「早く行け!!お前らの黒歴史探しまくるぞ!!」

 

その言葉を聞き、次々と生徒達は立ち上がる。ここに居ては邪魔になる、だからこそまずは目の前の人を助けるために動いた。

 

「石楠花!このやり取り何回もしたけど、絶対に死ぬなよ!?」

「すぐ応援を呼ぶから!石楠花君!」

「信じてるぞ石楠花!」

「絶対勝てよ!お兄ちゃ……石楠花!!!」

 

仲間からの声援を糧に拘束する腕の力を更に込める。

 

 

「石楠花さん!私はあなたが勝つと信じています!!だから石楠花さん!!無事でしたら()()()()()お願いを聞きますわ!」

「おっぱいをしこたま揉ませてくれ!!」

「「「即答!?」」」

「わっ…わかりましたわ!」

「「「いいの!?」」」

 

 

石楠花、更に力が入る。

そして仲間達が無事に移動して行くところを見送った。

 

仲間達が離れたタイミングを見計らったかのように、お腹に鋭い膝蹴りが入り、吐きそうになる。

 

「ぐっ!」

 

いってぇ…!何これ!何食ったらこんな膝蹴り打てんの?俺の口から胃でも出すつもりかよコイツ。

 

 

そして再びラジカセが再生され、話出す。

 

『流石は一体目の『ショック吸収』『超再生』の個性持ち脳無を倒しただけはあるね。褒めてあげるよ。でも僕の予想では一体目に力の殆どを使ってしまうと思ったんだ。何せ君にしか倒せないように作ったんだからね。そこから二体目の登場だ。絶望感は計り知れないんじゃないかな?そんな衰えた体で生徒達を守れるのかい?…()()()()()()

 

 

あの…思いっきり人違いですよ?

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。