隙間時間を縫って書き綴り、ようやく完成しました。が、まさかもうじき1月が終わるまでかかるとは思いませんでした。
お気に入り12000人ありがとうございます!
今年も石楠花君の活躍をお楽しみに!
『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!いくぜ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』
遂に始まる第2回戦。各々が今から始まる騎馬戦に緊張している。休憩なしの時間いっぱい動き回り続けるエンドレス騎馬戦。点数を狙い、点数が増えれば増えるほど狙われ続けるこの試験、安全策を取るかひたすら上を目指し続けるか。いよいよカウントダウンが始まる。
『3!』
「爆豪どうすんだ?この試験」
『2!』
「かっちゃ~ん、『現代の李徴』と言われた自尊心二郎系男がまさか逃げるなんて言わないよねェ~~?」
『1!』
「当り前だクソ共が!!逃げるなんて三下見てぇなこと誰がするか!!目指すは……」
『START!』
「完膚なきまでの1位だろぉが!!」
▽
「どうですかベイビー達は!!可愛いでしょう!?可愛いは作れるんですよ!!」
「機動性バッチリ!すごいよベイビー!発目さん!!」
「でしょー!?」
「浮かしとるからやん…」
開始早々狙われるのは緑谷チーム。やはり1000万は狙われる確率がグンと高くなる。多くの騎馬に襲われるがサポート科の生徒である発目のサポートアイテム、麗日の無重力、常闇のダークシャドウが死角を捉え続けることにより奇襲を防ぎ、生き延びることができていた。
『さ~~~~まだ2分も経ってねえが早くも混戦混戦!!各所で鉢巻の奪い合い!1000万を狙わず2位~4位狙いってのも悪くねぇ!!』
響き渡るアナウンス。開始わずかで戦場は目まぐるしく動く。それはこの男のチームも当てはまる。
「おいおい!石楠花!爆豪!芦戸!前から障子が一人で突っ込んできたぞ!?いいのかアレ!?」
「ホントだよ!どうする石楠花、爆豪!?」
障子が複製腕で背中を覆いながら走り寄る。その複製腕のわずかな隙間から飛び出す紫のボール。さらに舌。そしてダメ押しのテープ。
「オイラ達はここだよォ…」
「ケロ。私もいるわ」
「俺もいるぜ!」
「はあっ!?一人で3人とかマジかよ!?」
驚くのも当たり前だろう。障子は1人で峰田、蛙吹、瀬呂の3人を背負いながら走り回るという偉業を成し遂げたのだ。普通ならば無理であろう。しかし障子は自身の背丈と背中の広さを活用し、個性で落下防止することによって可能としたのだ。だが、そんな偉業の裏にはとあるバカが関わっていた。
「フォッフォッフォ。どうやら障子君は真面目に取り組んだようじゃのう」
「ああ、石楠花が相談に乗ってくれたおかげだ。お前が『膝を鍛えろ。膝を鍛えればレゴブロックの収穫量が増える!』と言ってくれたおかげで俺は安定したフィジカルを手に入れた。ありがとう」
「なに、礼には及ばん。そこまで言うのなら結果で証明してみな!」
「…!ああ!」
「テメエはなんで敵に塩を送っとんだクソが!!そんでそのウゼぇ師匠面ヤメロや!!」
フォッフォッフォ、仲間は時として師匠になるのじゃよ。覚えておくがよい爆豪少年や。生徒と師匠は紙一重、これで俺もR2D2だね!
『峰田チーム圧倒的体格差を利用し、まるで戦車だぜ!』
各々がどうポイントを奪い取るか頭を悩ませる。しかし一人の男は何かを見つけたかのように爆破しながら飛び上がり、雄叫びを上げた。
「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」
その男の名はボンバー・アーチン。またの名を爆豪。
そして今まさに暴言を吐かれた男の名はドライ・ケルプ。またの名を緑谷。
2人の関係性はミレニアム検証問題より複雑であり、爆豪が一方的に目の敵にしている節がある。そんな男が1000万をぶら下げて視界に入ればどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。当然襲い掛かる。明らかに襲い掛かる895%襲い掛かる。というか現に襲い掛かった。
「おい!バクゴーの奴、一人で飛び出しちまったぞ!?」
「よし、ここは落ち着いて…あっ、防がれた。とりあえず落ちてくる爆豪回収隊行くぜ!大丈夫、扱いはホームランボールと一緒で落下地点を見極めて力尽くでキャッチだ!」
「オーライオーライ、でいいの?」
『騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!!?』
「テクニカルなのでオッケー!!地面に足ついてたらダメだったけど!」
流石ミッドナイト、懐が広いね!でも乱発はさせないようにしようか。横から邪魔されて爆豪が落下したら大惨事だからな。次は襟首掴んで死守しよう。
『やはり狙われまくる1位と猛追しかけるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持ポイントはどうなっているのか…7分経過した現在のランクを見てみよう!』
観客の誰もがA組の実力や知名度を知っている。だからこそA組が勝っていると思っていた。いや、思い込んでいた。
『……あら!!?ちょっと待てよコレ……!A組緑谷以外パッとしてねぇ……ってか爆豪あれ……!?』
モニターに映るのは0の文字。いや、緑谷チーム以外のA組チームに表示される0の文字であった。爆豪チームも何故か0、なぜなら表示される瞬間にとある人物に取られたからだ。わちゃわちゃしている隙を狙われた、言い訳に聞こえるが試験とは結果が全てなのだ。たとえ強くてもポイントを奪われると0ポイントとなる。それが試験であり現実である。
「単純なんだよ、A組」
その男は満を持して話し始める。起爆剤とハジケ爆弾に向かって。
「んだてめェコラ!返せ殺すぞ!!」
「やられた!」
おいおいかっちゃんさんよ、死角からあっさり取られてるじゃねえですかい。そして誰だ?B組か?
「ミッドナイトが第一種目と言った時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」
「!?」
おい、いきなり話し始めたぞ。誰なんだこのとっちゃん坊やは。
「だからおおよその目安を仮定し、その順位以下にならないよう予選を走ってさ、だいたい40位以内。後方からライバルになる者たちの”個性”や性格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろう?」
と、話し終えたタイミングでB組騎馬が爆豪たちの周りを囲む。
「組ぐるみか…!」
「まあ全員の総意ってわけじゃないけど良い案だろ?
えっ?めっちゃかっちゃん煽られてるじゃん。面白すぎィィィィ!!
「あ、あとついでに君有名人だよね?「ヘドロ事件」の被害者!今度参考に聞かせてよ。年に一度敵に襲われる気持ちってのをさ」
「えっ!?かっちゃん煽りに煽られるじゃん!!激レアよ!?「今日はまぼろし島が見えるのじゃ!」って言われるよりもレアじゃん!!」
「おい石楠花!これ以上爆豪を煽るなよ!?」
「それと君も有名人じゃない?」
ん?アイツ俺を見てどうした?サインでも欲しいのか?
「場をかき回すことが趣味の落雁マニアじゃないか。セクハラや頭のおかしい挙動で有名だよ?『雄英の奇行種』か…ふふっ、言いえて妙だね。一度病院に行くことをお勧めするよ」
「……あ?」
この日初めて鱗の表情から笑みが消えた。だがすぐに笑みが戻る。底冷えするような笑みが。それは爆豪とて同じこと。この二人に「やられっぱなし」という言葉はない。もし、あるとすれば……何十倍にしてやり返すかということだけだ。
「切島……予定変更だ」
「ん?」
「デクの前にこいつら全員殺そう…!!」
「おい落ち着けよ爆豪!?」
「そうだよ!石楠花からも何か言ってやって…」
「ブッ殺ブッ殺☆」
この時、芦戸と切島は奇しくも同じことを思った。
ああ、ご愁傷様…と。
▽
石楠花は中学時代から有名人だった。
曰く、落雁を口に詰め込んでくる。
曰く、言動が未知数すぎて、逆に最先端。
曰く、武装した敵を個性を使わずに素手で鎮圧した。
曰く、ハッピーセット大使。
有名だからこそ物間は石楠花のことを理解していた。いや、
物間が石楠花を理解できる日はない。なぜならベクトルが違うから。たとえ理解できたとしても、それは思考の浅瀬部分でしかない。
そして物間は一つ間違いを犯した。
爆豪を煽るまではよかったが、そこから先に進んだのがいけなかった。むき出しの爆弾ほど怖いものは無い、彼は無意識のうちに自ら爆弾に触れてしまった。そう、
『さぁ残り時間半分切ったぞ!!B組隆盛の中果たして1000万ポイントは誰の頭に垂れるのか!!!』
男は嗤う。極上の獲物を見つけたように。
男は嗤う。どのようにして遊ぼうか。
男は嗤う。如何にしてベイブレードのようにバーストさせるか。
さあ、ショータイムだ…!