いや、人ん家の前で何やってんの?   作:ライムミント

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会場?あぁ、いい奴だったよ…

 鱗と発目が『とっておき』を使うと公言してから数分、事態は混沌を極めていた。

 

「5メガネ!!!」

「なんの!わりばしです!!」

「なっ…フェイントだと!!? じゃあこの明太子は使えない!!!」

「そしてこのウーロン茶で私のコンボは完成します!!」

「しまった!暗黒コンボか!!! ならば仕方ない! ここで雑巾を発動だぁぁぁぁ!!!!」

「嘘でしょ!!? 2枚もですと!!? あなた正気ですか!!? くっ!!」

「アイルトンセーナー!!!」

 

 観客たちは今眼前で行われている勝負についていけなかった。いや、理解が出来なかった。

 

 IQが20以上違うと会話が噛み合わないという言葉が存在するが、まるで強制的にIQを底上げされたかのような、専門的な知識が飛び交う学会に素人が放り込まれたかのような錯覚に陥った。

 

 簡潔に述べるとすると、脳が理解することを拒んだのだ。

 

 観客たちの目には、より高次元の高みへと至った至高なる存在の様に映っていることだろう。

 

 

「石楠花が雑巾を使っていなかったらオレ達も死んでいた…」

「そーなの!!?」

 

 観客の中には理解することができる者もいた。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「流石は石楠花さん…!まさかここまでとは…!」

「俺もまさかここまでついてこられるとは思ってもいなかったよ。まだまだ俺自身も修行が足りねぇな」

 

 まさかここまで出来る側の人間だったとはな。久しぶりに熱くなってつい本気を出しそうになったが元気そうで良かったぜ。

 

『イレイザー…、アイツら一体何やってんだ…?』

『知るか。常人が理解できないことを俺達が理解できる訳ないだろ』

 

 おいおい、それだと俺とポロリちゃんが常人じゃないように聞こえるぜ?

 

 理解出来ている人間もいたから俺達は常人。OK?

 ここから見える上段5列目の左から4番目に座っている普通科のオレンジ色で太陽を擬人化した様な生徒も理解していたっぽいから俺達は普通さ。

 

「私は今ので体力的にそろそろ厳しくなってきましたので、とっておきを紹介して終わろうと思います!」

「ならば拙者もとっておきをお披露目して終幕とさせていただく。いざ尋常に勝負でござる!」

『なぁイレイザー? 石楠花の一人称と語尾がコロコロ変わるのは何か理由でもあんのか?』

「理由はチキンラーメンで候!」

『リスナーはこっちの会話に入ってこなくていいからな!!?しかも理由にもなってねぇし!?』

 

 

 何だよ、折角最終お披露目に向けてテンションが上がる話し方に変えたってのに疑問を持たれちまったぜ。

 

 まぁこんな茶番は置いといて、最終絡繰の初お披露目会だ!

 あとはボタンをポチッとするだけだが、同志発目がどんなモノを作ってくるかだな。構造や造形、形の端々にもどんな技術が使われているかと観察して想像し、自分のインスピレーションを奮い立たせる。今後のヒントとなりうるかもしれないからな。

 

 日常のちょっとした一コマにもヒントは点在しているから、同じ技術者として発明を近くで見れるチャンスなんて早々あることじゃない。現に彼女の発明を見て新たな設計図を頭の中で組み立てることも出来た。だからこそ、ようチェックや!!

 

「ではお見せしましょう!私の発明はコレです!」

 

 

 発目が懐から取り出したリモコンを操作する。

 すると会場外から正方形の機械のような物体が発目に向けて飛来してくる。

 

 飛来した機械が発目の背に背負われた機械とドッキングし、起動音を鳴らしながら金属製のアームが4本飛び出してきた。その4本のアームは手の様な形をしている物もあれば、先端が鋭利に尖っている物もある。普通のアームと違い、関節部分が多く取り入れられているためしなやかな動きを可能としている点が印象深い。

 

「これこそが腕を増やすことによって作業効率をグッと向上するのではないかという私の願いから生み出された『ベイビーナンバー2 自立可動式アラクネアーム』です!ちなみにナンバー1は爆発四散しましたので2代目です!」

「スパイダーマンの背中に付いてたやつみたいなの出て来た」

 

 一つ一つの腕?が生きているかの様に動いている。可動域が広いためか動き方が腕よりもスムーズだ。

 

 成る程、大変素晴らしい技術である。作成にも起動にも随分と時間がかかっただろうに。俺ももっと見聞を広げないとダメだな。発想力と着想力では負けてるかもしれん。

 

「素晴らしいな。ちなみにロケットパンチは可能か?」

「ロケットパンチは出来ませんが、前方2〜3メートルの範囲内であればズームパンチは可能です!」

「これにはツェペリ男爵もニッコリだぜ!」

 

 ズームパンチ。関節を外して10センチ程度離れた相手に当てるパンチ。

 

 正直腕の関節を外したパンチに威力があるのかと疑問が噴出してしまうパンチだが、本家よりも射程が約30倍になり、尚且つ鉄の強度を手に入れて帰ってきたパンチ。

 

「それがあれば誰でも波紋使いになれるということか」

「波紋が何なのかは分かりませんが、実生活は便利になります!」

「成る程、それがツェペリ魂か」

 

 素晴らしい発明を紹介してくれるじゃないか。

 まさか1部から2部への伏線を用意してくれるなんて、一定層のファンの魂をガッチリと掴んでいるよ。

 

 さて、ならば俺も盛大にいきたい。

 今回は発明品を持ち込むことと引き換えに、発明品を使って勝負はしないという条件なので、見せるだけで攻撃は出来ない。醤油飛ばしは大目に見てもろて。

 だからこそ見物客がカートゥーンのような驚き方をするぐらいド派手な絡繰を選定する必要がある。

 

 えっ?どうやってアイテム持ち込みの許可を貰ったかって?

 そんなの感謝と尊敬の念を露にし、清らかな心を持って弾ける様な笑顔で『オハナシ』したところ、胃を押さえながら胃薬を飲む我らの相澤先生から許可を貰ったよ。先生は優しい。

 

 だからこそ先生と同志へ感謝の気持ちをぶつけるべく、今起動して紹介することができる 数ある絡繰の中から一つ選びたいんだが、一体どれが感謝の気持ちを伝えられるだろうか?

 

 先生が感涙し、同志が狂喜乱舞し、民衆達が俺を崇め奉るような、そんな素晴らしい何かが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ! ア レ だ ぁ !!

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

「ここまで見せつけてくれるというのなら、俺も出し惜しみは無しだ。存分に紹介してやろう。その清らかな魂の輝きに敬意を称して、我が最高傑作に近しい絡繰を見るがいい! というわけで、ポチッとな」

 

 鱗はポケットから取り出したリモコンのスイッチを押す。

 するとゴゴゴゴゴッという地響きとともに会場が音を立てて揺れ始めた。

 

『なっ…何だぁ!?Hey!一体何したよ!?』

「見ていれば分かりますよ」

 

 次の瞬間、鱗が立っているリングの少し後ろの地面が電子音を響かせながら二つに裂け、開き始めた。

 

「「「ええええええっ!?」」」

「おいおい、地面が開いたぐらいで驚いてたら新時代じゃやっていけねぇぜ?真骨頂はここからさ!」

 

 すると開いた地面の中からゆっくりと『ナニカ』が迫り上がってきた。

 

 まずそれは驚く程に大きなナニカであるが、生物ではなく機械であることが分かる。

 

 しかし機械であると分かるが、それはまるで人間の様な形をしていた。細長い手足に筋肉の様な形をした装甲が取り付けられ、アスリートのような体型をしていた。

 

 紫色の装甲をしており、四ツ目が光る異形のような迫力のある様相。電力供給機が伸び、今にも襲い掛かってきそうな尖った雰囲気を醸し出しているが、胸の装甲部分に刻まれた『鱗様参上!!』という文字が残念さを演出し、いい具合に調和している。

 

 

 

 現在の科学から数世紀も進歩した技術により石楠花 鱗(バカ)の手から生み出された新世代ロボットの名前は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新世紀シャクナゲリオン

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英体育祭であるという事実すら忘れてしまうほどの発明品がそこに鎮座していた。

 

 

「これが俺の最高傑作達の一つに数えることが出来る傑作絡繰の新世紀シャクナゲリオンだ。俺がプーケット島でサンマを焼きながらセパタクローを楽しんでいる時に襲ってきた第十使徒を見て思いついた絡繰だ」

「経緯はよく分かりませんが、ここまでの代物を見せられては知識や発想力、技術力の全てにおいて私の完敗です!それよりもどうやって作ったのですか!!?」

「それはギャグ補正で創ったのだよ、ワトソン君」

「弟子にしてください!」

「よかろう」

 

 発明がお披露目され、発目と少し話したところで発目が自発的にリング外に出た。

 よってこの発明対決は鱗に軍配が上がる。

 

 しかし会場は目まぐるしい情報の変化についていけていなかった。

 

 

『いや…えっ…?何からツっこめばいいんだ…?』

『やっぱり薬には白湯が一番合うよなぁ…』

『イレイザー!?隣で現実逃避しないでくれよ!?Hey石楠花!まずそれ何よ!?』

「シャクナゲリオンです」

『シャクナゲリオンって何よ!?そして何で会場の地下から出てきてんのよ!?』

「会場の地下をシュシュっと改造して、パパっと組み立てました。褒めてください」

『勝手に会場を改造するんじゃねーよ!?』

「勝手に改造してもよろしいでしょうか?」

『事後承諾制!?』

 

 いや、事前承諾なら280%却下される未来が見えましたので。まあ、大会終了したら元通りに戻しますのでお気になさらず。それとシャクナゲリオンはそれ以上でもそれ以下でもない。唯一無二のシャクナゲリオンさ。

 

『それと次に発目がしれっとリング外に出てるんだけど!?』

「はい!私の完敗です!私のベイビーも紹介できたのでもう悔いはありません!それに師匠も見つかりましたので!」

『ハァっ!?いつの間に師弟関係が成立してんのよ!?』

「我、師匠ぞ?崇め奉れ」

「ははぁ──!」

『混ぜるな危険だろこの二人は!?フリーザの初期状態から一気に最終形態になっちゃったぐらいの絶望感ダゼ!?』

 

 

 

 

 その後鱗がシャクナゲリオンに乗り込んで様々なパフォーマンスを行い、観客たちや視聴者は熱狂し、大興奮した。

 

 この瞬間だけはヒーロー、市民、ヴィラン関係なく鱗の絡繰パフォーマンスに酔いしれており、犯罪発生件数は0件であり、つかの間の平和を童心に返って楽しんでいた。

 

 余談であるが、体育祭終了後に全国の小学校でなりたい職業アンケートを取ったところ、ヒーローに次いでアイテム作成エンジニアが人気職になっていたことに世間は大層驚いた。

 

 

 

『ああもう!さっさと勝利コールだ!今回の発明対決、勝者は1-A!石楠花 鱗ォォォォォ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝者:石楠花 鱗

 発明力を披露し、弟子を1名獲得。体育祭後、石楠花家が関わるコスチューム会社「COSMOS」に入社希望者が激増。嬉しい悲鳴である。

 

 被害者1:イレイザーヘッド

 白湯がうまい。

 

 被害者2:プレゼント・マイク

 振り回されすぎて胃薬が手放せなくなった。もうじき白湯の境地へと至る。

 

 

 

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