『さぁ!やっとスタジアムの修繕が完了したぜ!イェア!今年は例年に比べて修繕が多いし犯人が全員A組だが、そこんとこどう思うよイレイザー!!』
『知らん』
『フゥ──!!』
ステージの修繕が完了し、プレゼントマイクとイレイザーヘッドの会話が始まる。
会話に出た内容の通り、今大会のステージ修繕回数は合計2回。例年なら多くても1回あるかないかのところ、2回は確かに多い。
1度目は石楠花と発目の対決。石楠花が手造りロボットを出現させるためにステージ上とステージ地下をいつの間にか改造、地崩れの恐れもあるため大規模に修繕。
2度目は先程の緑谷と轟の対決。緑谷の超パワーと冷やされた空気が熱せられたことで発生する爆発の衝撃によってステージがボロボロに。形を整えるため大規模に修繕。
理由は違えどステージが2度破壊されたことに変わりはない。
相澤は両者の被害を見比べ、後ほど石楠花を説教することに決めた。理由はロボットを披露したときの達成感溢れた笑みを思い浮かべると純粋に腹が立ったから。
そして今から1度ステージを好き勝手に改造し破壊した男が、もう一度舞台に上がる。
これを警戒しないわけがない。
他の生徒ならばそこまで危険視しなかったが、この男だけは別だ。
入学してからの、ましてや入学以前からの奇行が多すぎる。余罪は十分だ。
現に塩崎はもうステージ上にいるのに、バカはまだ来ていない。もう不安だ。そして先程までパンツ一枚で歩き回るという奇行に出ている。とてつもなく不安だ。
バカにとって人前で裸になることは恥ずかしくもなんともないのだろう。でなければ人前で、ましてや中継されて全国に晒されているというのに平然とパンツ一枚でウロウロするなんて普通は出来るはずがない。
奴は羞恥心が欠如してるのではないか。
だがこれ以上、奇行に走らせるわけにはいかない。何故なら雄英の評価を落とすわけにはいかないからだ。
万が一、いや億が一でもヒーローではなく変態を育成していると勘違いされてみろ。屈辱以外の何物でもない。
だから何としてでもバカの奇行を止めなければならない。だが今のところ止める術がない。
たとえプロヒーローであったとしても、バカが真面目に頑張るように祈るしかできない。なんて無力なんだ。
頭の中でバカに対しての一縷の可能性を考えていたところで歓声が上がった。
何事かと思いステージに目を向けると、案の定パンツ一枚で堂々とした歩みでステージに向かうバカがいた。
相澤は天を仰いだ。
▽
「すまない、待たせてしまったようだ。落雁食うか?」
「あぁ…人間性を欠如させてしまうなんて、人とはなんと不平等なのでしょうか…」
「その気持ちよく分かるよ。俺もオクラだと思ってたものがマグロだったと言われたらびっくりするね」
「日本語さえも通じないなんて…なんてこと…」
一体どうしたんだろうか?至極正論を言っただけなのに何故目を瞑って祈るんだ?もしかしてマグロに祈ってる?えっ、マグロ教?
『石楠花…一応聞いておくが、服はどうした?』
「俺は裸がユニフォームです」
『ぶっ飛ばすぞ』
『まぁまぁ、いいじゃねぇのイレイザー!!何やら盛り上がってるし!!』
話が分かるチキンラーメンでよかった。
相澤先生ももう少しユーモアを身につけたほうがいいね。試しに服を脱ぐところから始めるといいと思うんだ。
『さぁ始めるぞ第2回戦!前試合の瞬殺劇が今回も見れるのか!?近づくものは縛り上げるイバラのクイーン!塩崎 茨!!』
『相対するは雄英史上歴代一の奇人!!TV中継なんて奴には関係ない!パンツ一枚己の道を突き進む漢!!石楠花 鱗!!』
『両者見合い今!!STARRRRT!!!!』
▽
スタートの合図と共に塩崎が鱗に話しかける。
「本当によろしいのですか?私のツルには棘がついております。裸となれば傷だらけになりますよ?」
「対戦相手に気を遣ってくれるなんて優しいね、ありがとう。でも大丈夫!俺、頑丈なので!」
「そうですか。なら遠慮なくいかせてもらいます」
瞬間、視界全てを覆い尽くすほどのツルが現れ、ツルの波に鱗は飲み込まれる。自在に動いて鱗を覆い尽くし、一つの繭のように見える。
塩崎は既にツルを切り離し、距離を保つ。相手は不可能を可能にする変態。備えあれば憂いなしだ。
『おっとぉ!?開始早々石楠花がツルの波に飲み込まれて拘束されたぁ!?これはもしかしてかァ!!?』
会場の観客たちはみな驚いた。今まで常識を覆してきた男が簡単に拘束されたのだから。
だが観客たちもヒーロー科の生徒たちも、教員たちも塩崎も、ここで終わるだなんてことは一ミリも考えていなかった。
何故なら奴は………
『ああっとォ!?絡まって雁字搦めに拘束されていたにもかかわらず!何層にも絡まったツタを引きちぎって脱出したぁァァ!!』
奴は不可能を可能に変える男。力だけなら最強クラスの実力を誇るのだ。ミルフィーユ状に絡まったツルであろうと石楠花の前では紙切れに等しい。
「中々激しく絡みつくツタじゃないの。だが激しく絡みつかれるなら女性がいいね」
「先ほどから思っておりましたが、かなりの色狂いのようですね。神様に裁かれなさい」
「女神様なら喜んで」
瞬間、石楠花の体が加速する。
プロヒーローでさえ視認することが困難な地面を踏み砕く最速の一歩、1秒にも満たない時間で石楠花は距離を詰め、塩崎の懐に潜り込む。
「ッ!?」
「一歩目から最高速度を叩き出せる生物は、この世でゴキブリか俺ぐらいだね」
「くっ…!!でしたら…ッ!!」
すると無数のツタを展開され、塩崎と石楠花の周りが取り囲まれる。
それはさながら鳥籠のようで入ったが最後、外に出ることは出来ない。そして内部の様子を映すことも、外部の様子を映すこともない情報が遮断された空間と化す。
「何だ?自分から個室に連れ込むなんて。欲求不満?」
「いいえ全く。この限られた空間の中ならスピードを出すことも、回避することも出来ません。そして貴方は近年稀に見る助平、女性に手を挙げられないと踏みました」
「おっ、中々いい推理をするじゃないの。お兄さん一本取られたぜ」
この閉鎖された空間を構成しているものはツタ。上下左右がツタなのだ。だからこそ塩崎の攻撃は全方位から攻撃をすることができる。
先ほどの会話の最中も攻撃を
しかし一度も当たっていない。正確には一点を集中して狙う攻撃は、背中に目でも付いているのかという精度で全て回避される。
ならば物量ではどうかと試してみたものの、腕の一振りで薙ぎ払われる。
有利な状況を作り出したものの、今のところ石楠花に有効打は決まっていない。
「ふっ…!」
「いいねいいね!だがパンツ一枚の俺に攻撃を当てるのは至難の技だぜ?それに俺ばっかり回避するのもフェアじゃないから、そろそろ反撃といきますか!」
そして、蹂躙劇が始まる。
▽
『塩崎のツタが自身と石楠花を取り囲んだところまではいいが、中の様子がまるで見えねぇな!』
『あぁ、だがあのツタは全て塩崎の支配下だ。いくらあのバカでも狭い空間内で全方位からの攻撃を捌き切ることは厳しいだろう』
『そうだな、だから早くどっちか出てきて情報をプリーズ!!』
この試合を見ている者たちが固唾を飲んで見守る。そしてあのツタはの中ではどんな激しい攻防が行われているのか。
もしかすると塩崎が前代未聞の行動を取る石楠花を完封しているのではないかという憶測も飛び交い始めた時、沈黙を保っていたツタのドームが開き始める。そこには………
『おっと!遂に隠された試合の結末のお披露目かァ!?一体ツタの中でどんな激しい戦闘が………いやほんとどんなに激しい戦闘があったんだ!!??』
いい笑顔でパンツ一枚でカメラに向かってピースサインをする石楠花と、上気した顔で白目を剥き、ピクピクと小刻みに痙攣しながら仰向けに倒れている服がはだけた塩崎がいた。
「しっ…塩崎さん戦闘続行不能!!よって石楠花くん3回戦進出!!」
石楠花の勝利が宣告された瞬間、石楠花は急いで塩崎を抱え込み、視認出来ぬ速度で保健室に直行した。
後ほどA組のもとに戻ったところ、修羅のような女性陣全員からフルボッコにされ、八百万主導のもとスタジアム外の木にパンツ一枚のまま逆さ吊りにされた。