やぁみんな!俺だ!
俺は今何してると思う!?
正解は木に逆さ吊りされてるのさ!
良い子のみんなは女の子を怒らせちゃダメだぜ!
じゃあな!
はい、というわけで逆さ吊りにされてます。
いや〜まさかレクイエムされるとはね!試合から帰ってくると修羅がいるなんて誰が予想できるよ?女の子は笑顔が一番だぜ?
えっ?試合中に密室で何してたかって?言わせるなよ恥ずかしい。
あれは最善の選択だったのよ。俺も塩崎もwin-win。誠に素晴らしい選択であった。
えっ?何故白目向いてピクピクしてたかって?言わせるなよ恥ずかしい。
というわけで誰か助けてくれませんかね?
長時間逆さに吊られてると、内臓が口からゆっくりと飛び出してくるらしいね。その事実を知ってるから、さっきから怖くて堪らんのよ。
鱗が一人で考え事をしながら百面相しているところに声がかかる。
「全く….君はいつも話題に事欠かないね」
「助けに来てくれたのか鳥野郎!!」
「じゃあね」
「ごめん!もう一回チャンスちょうだい!!」
鳥野郎ことホークスである。
今完全に帰るつもりだったよ、この鳥野郎。
ていうか何で俺がここにいること知ってるんだ?
「君の試合も女の子たちに吊るされる瞬間もばっちり上から見てたよ。100%君の過失だったから助けなかったけど」
この野郎、ヒーローが困っている人を見捨てるなよ。100%俺の過失だけど。
「それに俺が助けなくても君なら勝手に脱出できるでしょ?ただのロープ程度で君を拘束できるわけないし。それは彼女たちも承知の上だろうし」
そう、その通りなのだ。
別に逃げようと思えばいつだって逃げることができる。女子たちも気持ち緩めに縛ってくれてたし。そもそも鉄でも引きちぎれる俺を縄程度で捕まえてられると思ってもいないだろう。
なら何故逃げなかったのか?
今は助けが来るまでミノムシごっこを楽しんでたんだよ。こんな経験あまり出来ないぜ?自分から縛ってくれと言わないと縛ってくれないだろうし。そもそも自分から縛ってくれなんて言わないし。
これは俺と女子たちの信頼関係を表した拘束なのだ。もし本当に拘束しようと思うならばチタン製金庫に閉じ込められて海に沈められてるね。
「ホークスさん、これも愛の形さ」
「そんな歪な愛、俺はごめんだね」
まだまだ甘いなホークスさんも。ホークスさんといえば速すぎる男、だから恋も愛も失恋が速すぎて真っ当な恋愛感情を育めなかったんだな。可哀想に。
「大体君の考えてることは分かるよ。ムカつく顔してるもん」
「嫉妬ですか?」
「上空500メートルから紐なしバンジーでもしてみる?」
「ごめんなさい」
トップ5入りヒーローがとんでもない提案をしてくる件について。
この人はやる。必ずやる。今平気で上空に俺を引っ張り上げて笑顔で突き落とす光景まで頭に浮かんだもん。
「こんな人の心無さそうなケン○ッキーフライドチキンが公安所属ヒーローだなんて世も末だね」
「本当に俺自身もそう思うよ。それもこれもこの腐った世界が悪い。だから鱗君が早くヒーローになって、俺を暇にしてよ」
「カオスが極まってしまいますよ?」
「却下」
公安所属ヒーローと雄英高校の一生徒が楽しげに話す空間。本来ならばありえない光景だろう。一方は空中に浮いた状態で、一方は逆さ吊りの状態という理解できない光景だが。
そしてふと今思い出したかのように「あぁ!」と相槌を打ってホークスが話を変えた。
「伝言があったの忘れてたよ。鱗君が吊るされてようがボコボコにされようが猥褻罪で捕まろうがどうでもいいんだが、これだけは伝えておかないと」
「おい」
「今回の試合で君の技術力や肉体を皆さん集まって見てたらしいよ。だから久しぶりに手合わせをしよう、だってさ」
「げっ…」
衛星飛ばしたりみんな集まったりって暇すぎるだろアイツら。偉い職業持ってる奴らばっかりなんだからもっと真面目に働けよ。
それに漏れなく全員頭のネジが10本ぐらい外れてるから手合わせはしたくないって此間言ったばかりじゃん。忘れるの早すぎない?あっ、ネジ外れてるからすぐ忘れるか。
「手合わせはまぁ、別に良いとして、問題は誰が言ったかだ」
「それはお楽しみだね」
「ヒント…!ヒント頂戴!せめて頭文字!俺としては『ファ』か『金』がいい!じっくりねっとり寝技をかけたい!」
「残念、『ハ』だ」
「クソォォォォ!!!」
鱗は体に巻かれた縄を引きちぎり地面に着地、そのまま流れるように地面に倒れ伏し咽び泣いた。
「『ハ』はダメだ!年がら年中
「じゃあちゃんと伝えたから。それじゃあね」
おい!特大の地雷を残して颯爽と飛び去るんじゃない!しかも速ぇ!流石速すぎる男!
ホークスが飛び去ったことにより先ほどまでの喧騒はなく、誰もいないスタジアムの外でパンイチの男が一人咽び泣いているという地獄の光景だけが残った。
だがこの男の気持ちの切り替え速度は半端なく速い。
「まぁ落ち込んでいても仕方がない。もし来たる日が来たら俺は逃亡する。そして『ファ』の胸をじっくりと揉み込んでやるぜ…!」
鱗は雄英の生徒が聞いても誰も分からないであろう人物への正直な気持ちを露わにし、歓声が上がるスタジアム内へと入って行った。
▽
やぁみんな!2度目の俺だ!
俺は今、切島とかっちゃんの試合を観戦しているんだ!
ん?女の子たちからは許してもらえたのかって?
2リットルのソーダとコーラで鼻うがいをして許してもらったぜ!
その誠意に免じて、遂に俺の手元に俺の服が返ってきたぜ!俺の服のはずなのに随分と俺の手から離れていたな!
良い子のみんなは女の子を怒らせちゃダメだぜ!
じゃあな!
というわけで、やっとゆっくり試合を観戦することができる。
といっても次が俺の試合だからもう直控え室に行かないとダメだけどな。
で、何故かさっきから百ちゃんが俺に引っ付いて俺を離してくれない。これが夫婦になるということ…?
「で?どうしたの?まさかヤキモチ?」
「ちっ…!違いますわ!?これはその…そう!捕まえていないと周りの女性の方々に破廉恥なことをするかもしれないので引っ付いているだけですわ!そう…!だから別にやましい気持ちなんてありませんわ!!?」
アッ…!!(語彙力消失)
何このカワイイ生き物。えっ、嫁?まさか知らない間に俺に嫁が出来た?
八百万家では男を逆さ吊りにすることが婚姻だったのか、知らなかったな。てことは俺はクラスの女子全員と結婚してるってこと…?(超理論)
「成る程。百、子供は何人欲しい?」
「ふぇっ…!?」
「石楠花…アンタまだ懲りてないようだな」
「まさか耳郎が俺のことをそんな風に思ってくれていたなんて…俺も愛してるぜ」
「……ふぇっ!?」
まさかこんなにも愛されていたなん……ごめんごめん冗談だから6人がかりチョークスリーパーはやめよう。俺の首が黒髭が危機一髪するやつみたいになる。
そして峰田と上鳴が血という血を噴き出しながら俺に向かって黒魔術的なナニかをかけてくる。やけに完成度高いから怖い。他の野郎どももやれやれみたいな雰囲気を出すだけじゃなく助けてくれ。
俺の嫁(仮)たちと戯れてたら良い時間になったので、そろそろ控室へ移動するか。轟もいねぇし。
だがこのまま移動するのは癪だから、かっちゃんを応援してから行こう。
「かっちゃん愛用のウサちゃんパンツが安かったから3ダース家に届くようにしておいたぜ!送料は気にするな!頑張れぇぇぇぇぇ!!!」
「うるせえそんなパンツ穿いてねぇ死ねぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
うん、元気だ!俺も頑張ろう!
▽
切島と爆豪の試合は爆豪の勝利で終わった。
その試合を控え室で見届け、石楠花は準備を始める。次の試合はA組でも屈指の実力者、そしてトーナメントが始まる前に緑谷との会話も聞いてしまった。
家族の事情は他者が口を挟めるものでもない。
それでも緑谷という男は自分の全てをぶつけ、轟の心に光を灯した。
轟は今変わろうとしている。言い換えれば人生最大の思春期の真っ只中だ。
ならば、友達…と轟は思っているか分からないので、クラスメイトとして真っ向から向き合わないといけない。
それが石楠花 鱗に出来ることだ。
だからこそ……
「おっ、君が石楠花君か。君の活躍を見ていたよ」
だからこそ……
「君の身体能力はオールマイト並みだったね。焦凍はオールマイトを超える義務がある」
だからこそ……
「君との試合は緑谷君の時もそう思ったがいいテストケースになる。決してみっともないところをみせ「
「当事者でもねぇ外野がごちゃごちゃと五月蝿ぇ…」
「俺を動かすことが出来るのは…」
「この天上天下で…」
「
「
準決勝 轟VS石楠花 開戦まであとわずか。
今気づいたけど、石楠花君のフォルムが不透明だったので書き記しておきます。
某到達点の黒髪verです。