石楠花は四六時中元気でした。
全身ズタボロだぜ!
いや〜、轟半端ないって。めっちゃ炎と氷を放ってくるやん。あんなん出来ひんやん普通。出来るなら言っといてーな。普通に死んだかと思ったよ。
今は保健室のベッドの上でゴロゴロしてます。リカバリーガールの治癒のおかげで完治とはいかないけど、ある程度治ったよ。
リカバリーガールに「どんな治癒力してんだい」って静かにキレられた。治癒力高すぎてキレられるって何?
それと俺の体は凍傷寸前と重度の火傷だったらしい。クソウケる。
1人で爆笑してたら、傷口を杖で叩かれた。クソ痛い。
本当なら治療してから病院に搬送されてもおかしくないような怪我も、俺の治癒能力が高すぎてリカバリーガールの個性だけで痕も残さず普通に治り始めてるってもんだからびっくりだよね。そらキレるわ。
治癒力の高さに心当たりはないかと聞かれたので、落雁を食べてるおかげと答えておいた。落雁はスーパーフードなのだ。
叩かれた。
轟の方も結構重症だったらしく、俺が保健室に運び込んだ瞬間に気絶した。
治療を受けて今はぐっすり寝てるけど、気絶した時は死んだんじゃねぇかと普通に焦った。引くほど焦った。焦りすぎて保健室でタイムマシン探した。
叩かれた。
どうやら疲れと心労が溜まっていたとのこと。まぁ苦労してそうだったもんな。
まだ解決してないが自分の気持ちに踏ん切りがついたことで疲労が一気に襲ってきたのだろう。
今はぐっすり寝てな。燃え盛る石焼き芋製造機が保健室に来たら俺がカスピ海までぶっ飛ばしておくから。
俺もリカバリーガールから決勝戦もどうせ無茶するだろうから今は休んでおきなと言われたので保健室でくつろいでいる。
ちなみに準決勝二回戦はまだ始まっていない。
どうやらステージをこれでもかというほどぶっ壊したせいで修繕に時間がかかるそうだ。
頑張っておくれ、セメントス先生にパワーローダー先生。
そして重症にもかかわらず気絶することも寝ることもなくピンピンしているため気付いたら試合が始まっていたという事態もなく、ただただ時間が有り余るだけだった。
「なぁリカバリーガール、暇すぎて死にそうだ」
「何言ってるんだい死に損ない。あんたは目を離したら無茶すると決まってるさね。今ぐらいゆっくりおし」
「暇すぎるから保健室を割り箸畑に改築するわ」
「バカ言うんじゃないよ」
また叩かれた。俺の頭をドラムか何かと勘違いしてないか?何回も叩いたところで重低音は出ないよ?
しかし暇だ。保健室を抜け出すのは簡単だけど、抜け出した後が絶対に面倒くさい。保健室が利用できなくなるなんてことが容易にあり得る。
もう2度と保健室利用ができなくなった場合、俺は死ねる自信がある。何故なら女子にボコボコにされた後は保健室コースだからだ。
これから訓練も厳しくなり、俺たちはヴィランを制圧するための訓練を受けることだろう。そしてその技術を女子たちによって容赦なく俺も体験することになるのも時間の問題。
その際に保健室を利用できなければどうなるか、即ち死だ。
女子に保健室送りにされるなんてと思うかもしれないが、彼女たちは着々と対俺用バーサーカーに進化し始めている。
聖杯戦争にバーサーカーとして召喚されても遜色はないくらいの戦闘力だ。きっと最後まで勝ち抜いて願いを叶えると思う。
俺がその内、「やっちゃえ♪バーサーカー!」されるかもしれないので、保健室が利用できなくなることだけは何としてでも避けたい。
なら大人しくしていればいいじゃないかと思うだろうが、それとこれとは話が別だ。
暇すぎて俺の体がウズウズしてる。保健室を割り箸畑に改築したい欲やおでんデスマッチしたい欲が高すぎる。
ウズウズしすぎて小刻みに震えてきた。残像を残すぐらい震えすぎて今の俺は画質がブレてると思う。誰かハンペンを呼んでくれ。
あまりの暇さに禁断症状が出始めたころ、急に保健室のドアが開いた。
「鱗さんっ!?大丈夫ですか!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!? バーサーカーが6体も召喚されたあぁぁぁぁぁぁぁ!? この聖杯戦争はもう終わりだぁぁぁぁぁっ!?」
ドアの向こうから女性バーサーカー6体と、召喚の触媒にされそうな男子どもがいた。
「なぁ、重傷なのは頭では分かってるんだけど、一回ぶん殴らせてくれ。そしてウチらの心配を返してくれ」
「落ち着けよ耳郎オルタ。怒るとプリティーなお顔が台無しだぜ?聖杯に胸を大きくしてくださいと頼みたそうな顔してるけど、俺は前に貧乳はステータスだと言ったろ?落雁食うか?」
「ウガァァァァァァァァァ!!」
「耳郎落ち着いて!? 石楠花の言葉には悪意しかなかったけど一応重傷者だから!? 石楠花腹抱えて笑うなっ!!」
素晴らしい。
この退屈の無限地獄から俺を救ってくれるのは、やはり仲間達しかいないね。
それと芦戸、耳郎を押さえ込んでくれてありがとう。もしその手が解放されると俺は挽肉にされそうだから絶対にその手を解放しないでくれ。100%俺のせいだけど絶対に解放しないでくれ。
「コラっ!静かにしな!轟が起きちまうよ!それとこんなバカでも一応は重傷者さね、傷が開いちまう」
「そうだぞ、吾輩重傷者でござるぞ。おら、騒ぎの元凶名乗りでろ」
「「「いや、元凶お前だろ!?」」」
うん、元凶俺だね。
でもクラスのみんながお見舞いに来てくれたらテンション上がると思うんだ。情状酌量の余地はあると思う。
「見舞いに来たらまずはフルーツを納品、常識だろ? 早く出しやがれフルーツ。我に献上しろ。えっ、フルーツを持ってきてないって?ダメだな〜君たちは」
「何この太々しい重傷者!?なんで俺たちが怒られてんの!?」
「やっぱり怪我を治すには落雁が一番効果的だな」
「しかもフルーツ関係ねぇ!?何処からその落雁出てきたんだ!?」
バカだなぁ、何処でも食べられるから落雁なんだ。落雁の出所をいちいち気にしていたらこの個性社会を生きていけないぜ?
「で、何だ?俺と轟の心配でもしてくれたのか?爆豪と常闇の試合がもうすぐ始まるかもしれないのに、全員で来てくれるとは嬉しいもんだな。暇なのか?」
「上げて落とす天才かお前は!?」
「おいおい、そう褒めるな……ZZZ」
「話の途中で寝たぁ!?自由人か!?」
▽
「起床っ!!」
起きる時も全力で。素晴らしき我が家訓だ。
リカバリーガールが驚愕の表情でこちらを見ているが気にしない。
どうやら眠ってしまっていたようだ。
さっきまで見舞いに来てくれていた人がいたような気がするが、いなくなっているところを見ると帰ったのだろう。
「びっくりさせるんじゃないよ全く!!年寄りの心臓を止める気かい!!」
「大丈夫、これぐらいじゃ人は死なないと俺のサイドエフェクトが言ってる」
「その口を縫い付けてやろうか?」
「ごめんなさい」
時には謝ることも肝心だ。覚えておきな少年少女たちよ。
しかし余程眠っていたのか人の気配がしない。
轟も寝てたはずだがいなくなっている。
「轟ならさっき戻って行ったよ。アンタも元気になったんなら早く戻るか準備をしな。もう準決勝は終わったよ。爆豪って子の勝ちさね」
【悲報】準決勝が終わっていた件について。
マジかよ。準決勝見たかったのに終わっちまうなんて…
常闇と爆豪を応援しながら爆豪を煽り散らかすという俺の野望が達成出来なかったなんて…
しかも次は決勝じゃん。
俺の出番じゃん。
相手爆豪じゃん。
煽り散らかせるじゃん。
テンション上がってきたじゃん。
ハジけULTRAじゃん。
「フオォォォォォォ!!テンション上がってきたあぁぁぁァァァ!!」
「一々叫ぶんじゃないよ!」
「このままフィールドに突入してくるぜ!待ってろ千秋楽!」
「先にクラスメイトに顔見せてから控え室に行きな!!まだ試合じゃないさね!」
楽しみになってきた!決勝戦は元気よく戦わないと!
よし、まずは安否確認のため座席に戻るか。
リカバリーガールに治療のお礼を述べ、席に戻って行く。
先程までの振る舞いが嘘であったかのように丁寧な言葉遣いと礼儀を持って保健室を退出した。
▽
「みんなただいま!そして見舞いありがとう!!」
「石楠花くん!良かった!怪我は治っ………なんで上半身裸なの!?」
「こんなテンション上がる時に上着を着てるなんて正気の沙汰じゃないだろ?逆になんでお前ら上半身裸じゃないんだ?」
「待って!?僕たちが可笑しいの!?」
祭り事では裸、常識だよなぁ!!?
「うおぉぉぉぉぉぉ!!元気が有り余ってるぜえぇぇぇぇぇぇ!!ヒャッハァァァァァァァァァァ!!」
「おっ…おい、石楠花!?元気が有り余ってるのは分かったから一旦落ち着けって!?」
「フデバコ」
「うわぁ!いきなり落ち着くな!」
ふぅ…、上鳴の声を聞いた瞬間舞い上がっていたテンションが一気に落ち着いた。
奴の声にはテンション低下作用があるようだな。女子と2人きりでも発動するんじゃね?致命的だな、可哀想に。
「なぁ緑谷?石楠花が俺のことを「あぁ…明日死ぬんだな…」見たいな目で俺を見てくるんだけど何か知ってるか?物凄く不穏なんだが…」
「ごめん、分からないや…。でも全身全霊で憐れまれている気がするのは僕の気のせいなのかな…?」
「何で急に半裸の変態に憐れまれなきゃいけねぇんだよぉ!?」
なんて可哀想な奴なんだ上鳴っ…!これから女子といい感じの雰囲気になったとしても話すたびにテンションを低下させてしまい、そのままマサラタウンにさよならバイバイされるのか…っ!
「おい、石楠花が哀れみの表情でさめざめと泣き出したぞ」
「だから何で急に半裸の変態に憐れまれて泣かれなきゃいけねぇんだよぉ!?」
「今日のA組も平和だね!」
石楠花たちが茶番を繰り広げている最中、唐突にプレゼントマイクの声が辺りに響いた。
『さぁ!いよいよリスナーたちが待ちに待った決勝戦を初めるぜ!!対戦カードは過去に類を見ないほど盛り上がりが確定されているコイツらだ!!』
その言葉と共に爆豪がスタジアムに登場した。一方石楠花はと言うと……
「やべぇ、準備しとけと言われてたけど思いっきり忘れてたわ。どないしよ?」
A組の観覧席で茶番を繰り広げていたため、完全にスタジアムに出遅れた。そのためスタジアム上には爆豪しかいない。プレゼントマイクも石楠花が登場しないためか石楠花を探している。
「バカ!おバカ!とんでもなくバカ!!時間を忘れて馬鹿騒ぎする奴がいるかバカ!?」
「落ち着けよ我が妹ジロポン丸、このままじゃ語尾にバカと着けて話すキャラに間違われるぜ?」
「そんな奴いてたまるか!?」
「まぁ落ち着け、こんな時はとりあえず落雁食うか?」
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
発狂しながら石楠花の襟を掴み前後に振る耳郎、首が大変なことになっているが呑気に落雁を食べる石楠花。オロオロする周囲。
緑谷も石楠花の奇行にオロオロしている一人だが、スタジアムを見てしまい一気に顔が青ざめた。
「しゃっ…石楠花くん!?かっちゃんが凄い形相でこっちを見てるよ!?」
「マジで?うわすげぇ、顔が血管ピキピキ赤メロンじゃん。大草原不可避。そんな顔を見せられたならばこちらも動かねば無作法というもの」
その言葉を皮切りに「とうっ!」という軽やからな掛け声と共に石楠花はその場で跳躍する。
人間では考えられない跳躍力を持ってクラスメイトを、観客を飛び越え、爆豪の待つフィールドにこそ届かなかったがスタジアムに片膝をついてカッコよく着地した。
「遅せぇんだよクソシャコ野郎!!俺を待たせ殺す気か!!」
「あっ待ってこれ、膝負傷したわー。これ絶対膝負傷したわー。これ爆豪のせいだわー。いてぇよー」
「ふざけんなクソカスが!!テメェで勝手に自爆しただけだろうが!!それよりテメェ怪我で実力出せませんでしたなんて言うんじゃねぇぞ?」
『石楠花、次遅れたら1年間便所掃除な?』
「さぁ始めようぜ爆豪君!準備は出来てるかい!」
「クソ元気じゃねぇか!!俺の心配返せカス!!」
常時賑やかな2人がフィールド内に揃った。前者は凶暴だが持ち前のタフネスと戦略をねじ伏せる実力で決勝まで上り詰めた猛者。
後者はイかれた行動が多々見受けられるが、技術力や直近の試合で見せた異常なまでの攻撃力と耐久性、さらにカリスマ性などを合わせ持つ猛者。
このカードの組み合わせに会場のボルテージは一気に高まった。
『さぁ!遂に両翼向かい立つ!今回の雄英体育祭のラストを飾るに相応しい男たちが出揃ったゼ!!被害が甚大でステージが破壊されることが始まる前から確定しているこの試合を彩るのはコイツらだ!!』
『駆け抜ける爆走列車こと、1-A組爆豪 勝己!!!』
『理解不能なハジケ甲殻類こと、1-A組石楠花 鱗』
『雄英史に残る一大決戦になるであろうこの勝負!今、STAAAAAAAAAAART!!!!!』