いや、人ん家の前で何やってんの?   作:ライムミント

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エイプリルフール3日目

新年明けまして、おはこんハロシャコ



出会い 〜そっとハジケを添えて〜

 

「死にさらせえぇぇぇェェェェェェェ!!」

 

Booooooooom!!

 

 開幕の狼煙は爆豪による暴言と特大の爆破で始まった。

 

『さぁ!いよいよ始まったぜ決勝戦!ド派手な個性とド派手な人物がどう激突するか見ものDAZE!てか何で石楠花上半身裸なのに誰も何もつっこまないの?』

『あいつらは同じ中学の出身だ。そして日常のあいつらを見る限り因縁なんて腐るほどあるだろ。裸なのは知らん、後で反省文書かせる』

『What's!?そんな偶然もあるんだな!じゃあそんな仲良し2人組のどちらに勝利の女神が微笑むのか!リスナーのみんなも要チェック!!それより石楠花生きてるか!?ズボンは無事か!?』

 

 おいおい、チョベリグな2人組だって?照れるじゃないか。ついでにズボンも無事です。俺は裸がユニフォームだから慣れてくれみんな。

 

「仲良しな2人組だってよ、帰りにタピオカ飲んで帰る?」

「誰が飲んで帰るか!!それに仲良し2人組でもねぇわボケが!!つか躱してんじゃねぇ!!」

『石楠花生きてた──!!てかピンピンしてる!?どうやって躱したんだ!?』

 

 確かにスタジアムが爆風で覆われるぐらいド派手な爆発だった。ミッドナイト先生も風圧で吹き飛ばされていったし。ごめんよ先生、全部爆豪が悪いんだ。

 

 なら何故元気ハツラツで今にもファイト一発しそうなのかって?そんなものは簡単さ。

 

「爆風殴って相殺した」

『………??』

「ケっ…、バケモンが!」

「それほどでも」

 

 爆風なんてこっちからそれ相応の力で相殺してやればいいだけさ。直接攻撃は当たってないのだから風圧ごときなんとでもなる。

 

「そうだよなァ…!お前はこんなもんでくたばるワケねェもんなァ…!!」

「我、石楠花ぞ?」

「だったら疾く死ねェ!!」

 

 罵声とともに爆豪は石楠花に対して爆破を連続で叩き込む。

 

 爆破の風圧によって体の向きを変え、空中を動き回り全方向から攻撃を浴びせられるように駆動するその動きは天性のセンスと言えるであろう。

 

「フォッフォッフォ、サイドステップは得意なんじゃよ」

「だぁ!?クソッ!相変わらず気色悪い動きしくさりやがって!!よけんじゃねェ!!」

「気持ち悪いという枕詞を使っていいのは排水溝の滑りを表現する時だけだぞ?」

「だぁっとれボケナス!!」

 

 だが当たらない。爆豪の攻撃は奇怪な動きによって悉く躱される。

 腐っても相手は石楠花鱗、並の攻撃では掠りすらしない人間の中の人間。

 

 それでも爆豪は歩みを止めない。爆破を止めない。

 

 相手は認めたくはないが、血涙が出るほどに認めたくはないが遥かに格上。

 

 今でこそ手数で押しているが石楠花の気分が変わればどうなるか分からない。

 

 石楠花という男と爆豪は中学時代からの知り合いとなるが、未だ理解出来たとは思っていない。いや、思えない。

 

 だからこそ最大限の危険を加味して考えられる結論は一つ、攻撃を止めてしまえばそれ即ち敗北である。

 

「おおおおぉぉぉォォォォォォ!!」

 

 己を突き動かす原動力はたった一つ。負けてたまるかという不屈の心。

 

 

 それは2年前のとある出来事。

 

 

 何でも出来ると過信していた、周りなんて大したことないと決めつけていた、全能感の中に浸かっていたころに得た初めての敗北。

 

「テメェに最初に勝つのは俺だァァァァ!!」

 

 初めて出会えた好敵手(ライバル)

 

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

 

 これは観客席から石楠花が飛び降り、試合が始まるまでの一幕。

 

「ねぇデクくん?」

「なっ…何かな麗日さん!?」

「デクくんと爆豪くんと石楠花くんって同じ中学校の出身なんだよね?デクくんと爆豪くんは幼馴染だけど石楠花くんも幼馴染だったのかなって気になって…」

「あっそれ俺も気になる!」

「私もですわ!」

 

 皆の視線が一斉に集まる。視線を独り占めにし、緑谷は挙動不審になるが、質問に答えようと奮起して麗日の問いに回答した。

 

「僕とかっちゃんは幼馴染だけど、石楠花くんは違うんだ。そもそも僕と石楠花くんには雄英に入るまで接点があまり無かったんだ」

「そうなのか!?石楠花のことだから学年中の誰とでも分け隔てなく話して仲良くなってそうなイメージだが…」

「僕はそもそも石楠花くんがまるで物語の主人公みたいだったから話しかけるどころか近づく勇気がなかったし、石楠花くんは学校が終わると同時に「ヤハハハハハハハ!!」って言って直ぐ走り去っていくんだ…」

「「「あぁ…納得」」」

 

 話を聞いてその映像が鮮明に脳裏に浮かび上がるのだから、石楠花という男の影響力は凄いのだなと改めて実感すると同時に、中学時代から何も変わってない石楠花に安堵を覚えた。

 

「でも一度だけ石楠花くんに助けてもらったことがあるんだ」

「おい何だその胸熱展開は!?」

「あれは僕たちが中学2年生になった頃……」

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

 中学2年生 夏

 

「おいデクテメェ!まだヒーローになるだ何だぬかしてやがんのか!アァ!?」

「ヒィっ!?」

 

 緑谷と爆豪は幼馴染だった。ご近所さんだったこと、ヒーローが好きだった共通点で昔はよく遊んでいたが齢5歳にして厳しい社会の現実に直面した。

 

 ある者は爆破という強力な個性が発現し、ある者は珍しき無個性という結果だった。

 

 そこから少しずつ関係が変化していき、ガキ大将といじめられっ子という構図になり、その関係は中学生になっても続いている。

 

「大体無個性のテメェがヒーローになれるわけねぇだろうが!」

「そっ…そんなことわからないよ!?無個性のヒーローがいないっていうデータしかなくてもやってみないことには…」

「うっせえ!!やるやらない以前に結果が分かりきったことだろうが!!」

「勝己〜、その辺りでもうやめてやれよ〜!ハハハ!」

 

 爆豪とその取り巻きに絡まれては文句をつけられる生活を送っていたが緑谷は我慢をし続け、ヒーローになることを諦めなかった。

 

 

 

 そしてこの日、絶望(バカ)はやって来た。

 

 

 

「ん?」

 

 最初に異変に気づいたのは取り巻きの2人いるうちの1人、仮に取り巻きAと名付けよう。

 

「なんか音聞こえねぇ?」

「あ?音だァ?」

 

 取り巻きAが音が聞こえると言った直後、それは確かにこの場にいる4人の耳に届いた。何かが高速で動くような音、そしてそれは段々とこちらに近づいてくるように大きくなっていく。

 

「おっ、おい!?だんだんこっちに近づいてき……!」

 

 取り巻きBの話している途中だったが、それを遮るかの如く音の正体がこの場に到達した。

 

 

 

 

 

「舞台化決定おめでとおぉぉォォォオ!!」

 

 

 

 

 

「なっ…!?誰だテメェは!」

「勝己ヤベェよ!!あの奇行…アレ石楠花だ!」

「見りゃ分かるわクソが!!」

 

 流石の爆豪も石楠花の名前は知っている。学年を、いや折寺中学歴代在校生の中でも群を抜いてイカれた男だ。知らないはずはない。

 

 爆豪という男に対して、石楠花 鱗は目に見える地雷だった。

 

 己が人生の輝かしいキャリアを歩んでいくにあたり、知り合いだというだけで汚点になり得るような存在と関わりを持つのはリスクが高すぎる。そのため極力関わらないように細心の注意を払っていた。

 

 だがそんな努力も無に変わる。

 

「やぁみんな!俺だ!出迎えありがとな!」

「急に湧いてきて何だテメェは!!早よどっか行けや!!それに敷地内で何しとんじゃ!?」

「改造セグウェイの試運転に決まってんだろ?お前愚か小僧か?」

「誰が愚か小僧だクソがァァァ!!」

「おっ、おい勝己…!関わるのは止めとけって…!」

 

 石楠花の突然の乱入、からの煽りによって緑谷をいびっていたことが頭から抜け落ちた爆豪が食ってかかる様を取り巻きが必死に抑えている。

 

 石楠花の登場によって解放された緑谷だが、理解が追いつかないのか今では空気だ。

 

「君は見たことあるぞ?えっと…確か同じ学年のバクゴナガル君だったかな?」

「爆豪勝己だ覚えとけカス!!」

「バクゴナガル君たちはこんなところで何してんの?」

「話しきけやクソボケ野郎が!!」

 

 人がキレてようが何のその。石楠花という男のペースを崩すことはできない。元より会話がほとんど成立しないことは知っていた。

 しかし爆豪は想像以上の石楠花の話の聞かなさに頭が沸騰寸前だった。

 

 爆豪が怒りでどうにかなりそうな時、視線を向けた先に、壁際に座り込んでいる緑谷を見つけた。IQ53万の石楠花は瞬時にこの場で何が起き、かつ最適解を見つけ出す。

 

「サッカーやろうぜ!」

「「「誰がするか!?」」」

 

 結論、石楠花だった。

 

「だあぁぁぁぁァァァ!!さっきから鬱陶しいんじゃボケが!!さっさと消えろや!!!」

 

 爆豪を知っている者たちの意見としては我慢した方なのだろうが、ついに爆豪の堪忍袋の緒が切れ、強制的に石楠花を排除しようとする。

 

「勝己!よせって!!」

 

 取り巻きたちが止めようとするがもう遅い。ことの成り行きを見守っていた緑谷もこの後の爆豪の行動が予想できたのか、力強くギュッと目を瞑る。しかしそんな爆豪に待ったをかけるものがいた。

 

「まぁまぁ、一旦落ち着けよ」

 

 何を隠そう石楠花本人だった。

 自分のせいだという自覚がまるでなく、子供の癇癪をなだめる大人のように爆豪に優しく語りかけ、落ち着かせるように自身の手でそっと爆豪の肩を抑えた。そして……

 

 

 

 

「なんだテメ…」

「ぐぼでろぼしゃああぁ!!」

 

 吐血しながら盛大に吹き飛んだ。

 

 

「なん…っ!いきなり何しとんだテメェはよォ!?」

「お…折れ ごふっっ!!い…今…肩を…叩いたアレで全身の骨が…粉々に…!」

「肩を叩いたアレでって何だクソが!!テメェが自分で叩いたんだろーが!!」

 

 急な出来事に爆豪の頭は混乱する。今までの人生において、今目の前にいる人間の範疇を超えた理解の及ばない生物を見たことがあるだろうか?いや、ない。

 

 急な出来事に緑谷の頭は混乱する。結果的にやっかみから助けて?もらった相手が人間の範疇を超えた理解の及ばない生物であると信じられるだろうか?いや、ない。

 

「なっ…なぁもう行こう……!?」

「そうだぜ勝己!やべぇよ!何がって言葉に出来ないぐらいやべぇ……!?」

 

 取り巻きたちはそれ以上話すことはなかった。何故なら口に落雁を詰め込まれ、白目を剥いて倒れていたからだ。

 

 獣は虎視眈々と狙っていた。油断させて大きく口を開ける瞬間を。自身が大好きな食べ物を味わってもらう瞬間を。

 

 先程まで吐血して醜態を晒していた男はもういない。落雁の袋を片手に背中で語る男が1人、風を靡かせ立っていた。

 

「私、いじめ撲滅委員会会長の石楠花というものです」

「テメっ…!」

 

 爆豪が殴りかかるがもう遅い。

 片手で捌き、相手が目を見開いてる隙に落雁をプレゼントする。

 

 たとえセンスの塊である爆豪であろうとも彼の前では子供に等しい。さっきまでの狂人感がなりをひそめ、爆豪を片手間に完封する強者がそこにはいた。

 

 簡単に3人を沈めたその男は、スタスタと未だ呆然とする緑谷の前まで足を運び……

 

 

「この落雁をもじゃる丸に預ける。俺の大切な落雁だ。いつかきっと返しにこい。立派な電ボになってな…」

 

 

 そう言ってセグウェイに乗って帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 なお落雁の袋を持っていたせいで、この一件の犯人が緑谷ということになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の学生生活は変わりはなく、石楠花も爆豪も緑谷も日常生活に戻った。

 

 いや、一点だけ変わった点がある。

 

 それは違うクラスであるにも関わらず爆豪は石楠花に対抗心を燃やし、勝負を仕掛けるようになったことだ。

 

 

「おい舐めプ野郎!体力測定の結果で勝負しやがれ!!」

「我、結果学年1位ぞ?」

「ああおあァァア!?クソがぁァァ!!」

 

 

 

「見ろカス!!期末の英語の点数俺は100点だ!テメェはどうせ赤点だろ!!」

「拙者は102点でござる」

「その2点は何処から湧いて出たんじゃクソが!!」

 

 

 

「おいボンバーマン!帰り道にコンビニで北海道買ってヘラクレスオオカブト捕まえに行こうぜ!」

「理解できる日本語で喋りやがれや!!あと誰がボンバー…おい離せひきずっていくなボケがあぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

 

「……と、こんな感じで助けてもらったんだ」

「「「いや濃っ!?」」」

 

 

「何も変わってねーじゃん!ツッコミどころしかねーじゃん!!お前犯人にされてんじゃん!!?」

「まぁ…でも助けられたのは事実だし…」

「いい子が過ぎる!!」

 

 

 

 中学生とはいえ、石楠花は石楠花。

 何も変わってないなと感心する者、ヤバすぎんだろと驚愕する者、何してるんだと呆れる者、流石ですわ!とプリプリする者、皆が三者三様の感想を浮かべていた。

 

 

 中学時代の石楠花の奇行に戦々恐々とする中、特大の爆発を耳にする。

 急いでステージに目を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

 元々目にしていた者たちは驚愕し、会話していた者たちは目を疑った。

 

 

 

 

 

 その目に映るは腕を振り切った爆豪と、吹き飛ばされた石楠花。

 

 

 

 

「ようやく一発だ…、やっと届いたぜ石楠花さんよォ!!」

 

『おーっとぉ!!ついについに爆豪の一撃が石楠花にクリーンヒットォォ!!これは効いたんじゃねーの!!』

 

 

 

 

 

 涓滴岩を穿つとはまさにこのこと、中学時代の因縁が今まさに実を結ぶ時。

 

 石楠花の横顔に渾身の一撃が直撃する。

 並の生徒ならもう負けていただろう。爆発する一撃が直撃し、無事な人間などまずいない。普通なら。

 

 

 

 

 

 そう、普通なら。

 

 

 

 

 

 大怪我では済まないような一撃を受けてもなお石楠花は………

 

 

 

 

 

 

 

 

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