いや、人ん家の前で何やってんの?   作:ライムミント

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最近は忙しくなってしましたが、少しずつでも書いております!
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決着

 

 石楠花が攻撃を浴びた。

 

 

 事情を知らない者たちであれば何を当たり前のことを、と思うかも知れないがA組の面々は違う。

 

 いつも飄々とし、ふざけ倒し、突拍子もないことを言わないと生きられないような男だが、実力においては群を抜いている。

 

 まだ出会って半年も経ってないが、石楠花がまともに攻撃を受けた戦闘は僅か2回。USJにヴィランが侵入した時、準決勝で轟と戦った時のみである。

 

 戦闘訓練でも組み手は行うが、その攻撃のほとんどは躱されるか防がれる。

 

 ちなみに女子にセクハラして完膚なきまでにボコボコにされているが、それはカウントされていない。自業自得だからである。

 

 

 そんな男が今……

 

 

『おーっとぉ!!ついについに爆豪の一撃が石楠花にクリーンヒットォォ!!これは効いたんじゃねーの!!』

 

 

 強烈な一撃により倒れていた。

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 うーん、痛ぇ。転げ回りたいくらい痛ぇ。

 あと焦げ臭ぇ。上半身裸のやつに出す技じゃないよアレ。

 

「よっこらしょっと。さっき火傷が治ったばかりの俺様に出す攻撃じゃないよソレ。手加減って知ってる?」

「そんなもん中学の教室に置いてきたわ」

「だよね、知ってた」

 

 相変わらず容赦がないね。俺が散々煽っていたこともあるんだろうけど。

 中学2年から始まり、今に至るまでの約3年間分の重みが詰まった一撃。うん、俺の自業自得だわ。

 でも爆豪の性格もあると思うんだ。やられたら1億倍返しでやり返すようなやつなので、そう考えれば俺と爆豪の過失は4:6となり俺が有利のはずだ。(超理論)

 

 結論、俺は悪くない。QED終了。

 

「やはり日頃の行いがものをいうのさ」

「なら満場一致でテメェは死刑じゃ」

「バクゴカツキ!エスパーポ⚪︎モン!人の思考を盗聴し、繰り出す的確なツッコミで相手を攻撃するぞ!」

「誰がポケ⚪︎ンじゃボケが!!何考えてるかテメェの顔にありありと出てんだよ!!」

 

 

 マジかよ、そんな分かりやすい顔してる?

 きっと俺のアルカイックイケメンフェイスに嫉妬しての言葉だろう。きっとそうだ、そうに違いない。

 

「それじゃ今から爆発物所有の疑いで貴様を検挙します。石楠花裁判では懲役10年が求刑されるのでご注意ください」

「ざけんなボケが!!テメェを檻の中にぶち込んでやるよ!」

 

 

 ▽

 

 

 

 空気が変わった。

 

 距離があるにも関わらず、観客席にいる生徒たち、見物に来ているヒーローたちでさえはっきりと気付くほど空気が張り詰めていることがわかる。

 

「チっ!やっぱりテメェはそうでなきゃなァ!石楠花ェ!!」

 

 石楠花の顔から胡散臭い笑みが消え、貼り付けた能面のように一切の感情が消え失せた。

 

 壊れたラジオの如くふざけた言葉が垂れ流されていた口は閉ざされ、ファイティングポーズで小刻みにリズムをとり正面を見据えている。

 

 相対している爆豪は身をもって感じるその気迫、まさに修羅の如し。さらに時間が経つにつれ石楠花が発する強者のオーラとでも呼べる気迫は迫力を増していく。

 

 あの爆豪でさえ迂闊に動くことができない程の気迫。もし無謀にも突進しようものなら、次の一撃で勝負が決することだろう。未来を感じ取る個性でないにも関わらず、ありありと地にふせる自分を幻視してしまう。

 

 スタジアムには緊張した空気が流れる。あれほど騒がしかった会場が今は物音一つ聞こえない。もし聞こえるとするならば誰かが唾を飲み込む音であろう。

 

 静寂がそのまま音となり耳にこだまするフィールドにて睨み合いを行う両者は刻一刻と時間が進む中、未だ動こうとはしない。

 

 一体何分経ったであろうか?1分とも1時間とも呼べるような濃縮された時間の中で最初に動きを起こしたのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Boooooooooooom!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──爆豪であった。

 

 

 張り詰めた無音の中での今日一番の大爆発。0の状態から100、いや120%の大爆音を鳴り響かせながら石楠花に向けて最大火力をノータイムで打ち込む。

 

 どんな達人であろうとも張り詰めた環境下で行う音による攻撃を防ぐ手段はない。現に観客席の何人かは音に驚いて気絶している者たちもいる。

 

 さらに避けることのできない爆豪の前方全て吹き飛ばすほどの面として押し寄せる爆風。

 音、威力、範囲、全てにおいて最善策ともいえる一撃。

 

 視界は爆炎によって塞がれており、石楠花の安否は不明であるが爆豪は一瞬足りとも気を緩めない。

 

 石楠花 鱗がこの程度で簡単に倒れるのであれば中学時代からここまで苦労はしない。石楠花の本当の強さは自身を貫き通す不屈の精神と、絶対に倒れず暴れ回るスタミナで構成されている。

 

 そんな男が一撃で倒れる?答えは否。

 

 

「──やっぱりそう来るよな石楠花ェ!!」

 

 

 大規模な爆撃を掻い潜り、爆豪の背後で腕を引き絞る石楠花がそこにいた。

 だが爆豪の一撃は広範囲殲滅型の攻撃だ。いくら石楠花と言えども無傷というはずもなく。

 

「範囲の限られたフィールドだ。躱すのに必死で右半身は捨てたよ」

 

 石楠花は人智を超えた視力と違い稀なる動体視力によって爆発の規模をギリギリまで目視し、範囲と威力ともにプロヒーローであろうとも一撃で重傷になるであろうと確信した。と同時に無傷で回避は不可能であることを悟った。

 

 石楠花の体力は準決勝での怪我を治すための治癒により全快ではない。全身重傷の火傷、凍傷を無理言って治してもらい、あとは気合いで体を動かしているだけで、常人であれば動けるほどの体力など残っていなかっただろう。

 

 飄々とした態度でふざけていたが、いつ倒れてもおかしくない状態だ。現にリカバリーガールからはドクターストップをもらっている。だが出場した。何故なら石楠花だから。

 

 全身に直撃した場合、きっと緊張の糸が切れて動く体力すら残らないだろう。

 

 だからこそ爆発の威力を防ぐため石楠花は右腕を盾とし、右半身を捨てることを瞬時に選択した。最悪の想定は全身が焼けて古傷が開き動けなくなること。

 

 先手を譲った石楠花の右半身は焼け焦げたが、足を止めるまでには至っていない。

 

 流れるような美しい所作をもって攻撃の起点が完成し、爆豪の回避を許す前に吸い込まれるように石楠花の左拳が脇腹に突き刺さった──

 

 

 

 

 ──かに思われたが、掌を爆破させることによって上空へと飛び上がり、石楠花の一撃の回避に成功する。

 

 爆豪にとって石楠花は超えるべき壁の一つ。

 中学から見てきた大きな背中がこの程度の一撃でやられる訳がないと信じきっている。

 

 だからこそ攻撃を済ませた瞬間から次の一撃を叩き込むための情景を思い浮かべて、いつでも行動を起こせるように準備していたのだ。

 

 

 あの石楠花がこの程度で負けるはずがない。

 

 アイツなら必ず反撃のチャンスを狙ってる。

 

 

 信頼には様々な形が存在するが、ライバル関係ほど顕著に表面化した信頼もないだろう。

 

「死んどけや!!」

「ぐっ……!?」

 

 その目論見が如く石楠花の一撃を躱し、石楠花の顔へ強烈な一撃を叩き込み吹き飛ばした。

 

 

 だがしかしタダで転ぶ石楠花ではない。

 

 余談だが、シャコとはパンチが特徴的であるが腕のように見える部分の名称は「捕脚」という。

 

 そう、足なのである。

 

 さらにシャコの胸部には8対の足が存在し、水中を素早く移動することができる。

 

 そう、シャコという生き物は足も強靭なのだ。

 

「ガッ……!?」

 

 吹き飛ばされる寸前、石楠花から放たれた強烈な蹴りが爆豪の腹部を捉え、クロスカウンターの如く両者をリング内ギリギリまで吹き飛ばした。

 

「あー……痛ぇ。今日は何かと……ハァ……爆発に巻き込まれる日だな」

「おぇ……っ!テメェ蹴りも……強ぇんかよ……!そらそうか、テメェだもんなぁ……っ!!」

「すまん、もう少し大きな声で話してくれ。右の鼓膜もいかれたから何言ってるか分からん」

 

 石楠花は体の半分が焼けており、立っているだけでも辛いだろう。爆豪も目立った外傷はないが、1発の蹴りで吐瀉をぶち撒けジクジクと響くにぶい痛みが絶え間なく腹部に襲いかかる。

 

 お互いに満身創痍、ならばお互い考えることは一つ。

 

 

 ──次で決める。

 

 

 示し合わせるかの如く爆豪が、石楠花が次の動作へと移行する。爆豪は空高く飛び上がり、石楠花は腰を深く落とし気を練り上げる。

 

「はぁ……っ!次で終わりだ石楠花ェ……っ!全力でテメェをブッ殺してやんよ!ありがたく思いやがれ!!」

「ノーサンキューだ。全力で生きるから泣き喚くなよ?」

「誰が泣き喚くかァ!?……全力で打つからテメェ……死んでくれんなよ?」

「言ってることが違ぇぞ、天邪鬼か?……俺は死なねぇさ」

 

 上空で両手の爆破による遠心力を使い回転する。回転は徐々に速くなり、とんでもない運動エネルギーが溜まっているのが分かる。

 

 だがそれがどうした。自分が死ぬことを勘定にいれる馬鹿がどこにいる。石楠花にとって「死」は二の次だ。真っ向から売られた喧嘩を買う、それだけだ。

 

「死ねやァァ!!」

 

 

 

ハウザーインパクト!!

 

 

 

 

Boooooooooooom!!

 

 

 

 

 本日2度目の特大爆発が石楠花に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 観客達は固唾を飲んで見守る。特大の爆発によりリングの半分は粉砕され瓦礫の山となっているだろう。そんな爆発が人間一人に直撃したのだ。

 

 本当に死んでしまったのでは?……と考えてしまう人もいるだろう。砂埃が立ち込め、2人の様子が見えないため悪い想像に拍車がかかってしまう。

 

 だがこの想像はいい意味で裏返る。

 

 

 少しずつ砂埃と硝煙が払われ、現れたのは……

 

 

 

 

 悔しそうに顔を歪める爆豪と、未だ地に足をつけて立っている石楠花であった。

 

 

 

 

不動

 

 

 

 

 石楠花の第二の切り札である。

 シャコとは甲殻類である。石楠花は全身に強靭な外骨格を形成することで爆発の衝撃を防いだのだ。

 

 ボロボロと外骨格が崩れ、生身の石楠花が姿を現す。皮膚は未だ焼け爛れているが意識を奪うには至っていない。

 どちらも満身創痍だが、両者の胸中は奇しくも同じであった。

 

 

 

「チッ……!次は俺が勝つぞ」

「次も負けねぇよ」

 

 

 

 爆豪の腹に強烈な一撃が突き刺さる。

 追いかける男の背中はまだ遠い。しかし次こそは……そう心に決めて爆豪は意識を手放した。

 

 この瞬間、雄英体育祭の勝者は決まった。

 

 

 

『どっ……怒涛の展開を乗り換え有言実行しやがった!!選手宣誓にはじまり、第一種目、第二種目、トーナメントと常に目立ちに目立ったこの男が最後を締め括った!!以上全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭一年優勝は──

 

 

 

 ──A組 石楠花 鱗!!!!』

 

 

 

 

 瞬間、会場から割れんばかりの大声援が石楠花、爆豪の両者に送られる。

 

 全方位の観客に一礼し、A組に向けて適当に手を振った後石楠花は爆豪を肩に担ぎ、声援を背にリカバリーガールのいる診療所へ向けて足を進める。

 

 緊張が解けたことで襲い来る疲労の中、石楠花が今考えることはただ一つ。

 

 

 

「落雁が恋しい」

 

 

 

 

 決勝 勝者 石楠花 鱗

 

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