ハジケてるぜ。
職場体験開始から約1時間後、まだ移動中の生徒達もいる中で最短最速で成果を出した石楠花。
その石楠花はというと……
「パンイチにーちゃん!」
「シャカの兄貴!」
「きゃー!シャカ様ー!!」
民衆に取り囲まれていた。
人質を救出してからヴィラン確保後の手続きや作業を習い、職場体験中である未来のヒーローだという事をミルコが周りのヒーロー達や市民達に紹介してくれたはいいが、体育祭を見てくれていたのか浸透スピードが尋常じゃないぐらい早かった。
ヒーロー達も好意的な声をかけてくれるし、周りの人たちも体育祭でめちゃくちゃしてた俺だからか知らないがかなり声をかけてくれる。
ヒーローヤバいな。何がヤバいかっていうとマジヤバい。
まさか開始1時間で女性ファンができるとは。女性ファンができるとは!女性ファンができるとは!!
すごいなヒーロー、これがヒーロー達が普段見ている景色か。憧れと期待と性欲で肩が押しつぶされそうだ。
そうなるとオールマイトって改めて凄かったんだな。No. 1だぜ?今の俺とは比べ物にならないぐらい世界中からの期待があの触覚に重くのしかかって託されてんだぜ?笑えねぇ。
しかもNo. 1ってことはモテモテじゃん?世界中の女子から求愛されるわけで。きっとハニートラップとかもあるわけで。でも不祥事を起こせば国際問題になるわけで。可哀想に。
オールマイトの不祥事なんて聞いたことないから、きっと仙人ぐらいのとんでもない強靭な心の持ち主か、下半身に元気がないのか、緑谷にしか興味がないのか、童貞かの四択だな。俺は後者二つを押す。
No. 1ヒーローになる代償がそれなら、俺は別に頂点目指さなくていいな。
何故なら俺なら狂喜乱舞しながらハニートラップに全力で引っかかる自信があるからね。現に今女性から胸を押しつけられたり、IDが書かれた紙を貰ったり、何がとは言わないが部屋番号を囁かれただけでテンション舞い上がってるから。全力で石楠花の鱗がオッスオッスしないように争っている最中だ。
考えてみろ。もし未来のNo. 1ヒーローのシャカが女性問題を起こしたとする。すると市民の皆さんの声はどうなるか……
「シャカがセクハラ?いつものことでしょ」
「それがシャカだよ」
「今もパンイチでパトロールする男だぞ?」
「こないだ世界の傾国の美女全員抱いてたぞ」
「セクハラしないシャカはシャカじゃないですよ」
そもそもこれ以上落ちる評価はなさそうだ。俺No. 1ヒーロー目指すわ。
「よしシャカ、次の現場に行くぞ!!」
元気すぎないか、このウサギさん。ヒーローとはこれが普通なのか、それとも違うのか、誰か教えて有識者。僕ヒーロー歴1時間だから分からない。
「っしゃぁぁぁぁぁぁ!!やってやるぜぇぇぇぇぇ!!」
だがそれがいい。
この石楠花が大好きな行為は1番にセクハラ、2番にセクハラ、3番を飛ばして4番にヴィランを吹き飛ばすことだ!
「じゃあねレディ達。いずれ最強最エロのヒーローになる予定だから、替えの下着を常備しながら応援よろしく」
「「「キャアァァァァァァ♡!!」」」
「おいシャカ!洗脳は犯罪だぞ!」
「そんなこと出来るわけねーだろ」
失礼すぎるぜウサギさんよぉ。これはもうねっとりと全身にイタズラしちゃうしかないねぇ!
ん?待てよ?
ねっとりプレイを考えてた時にふと思いだしたのだが、俺、雄英史上最速職場貢献じゃね?まだみんな現地ついてないよ?
これはもうアレだな。自慢するしかないな。
「とりあえず俺の活躍を奴に報告しておこう」
遠くから発狂しながら爆発する音が聞こえた。
▽
事件解決後、俺たちは奔走した。
走り、跳び、人の手助け、走り、跳び、ヴィラン撲滅。ヴィランによる被害に大きいも小さいもない。人が困っているのだ、助けるのがヒーローの務めだろう。たとえそれが嬉々としてぶん殴って蹴り飛ばす変態ウサギと変態シャコだったとしても。
結果的に今日1日で4件の事件を解決した。
やはり機動力、機動力は全てを解決する。
多くのヒーローと関わり、市民と交流し、改めてヒーローの大変さ、そして喜びを感じる1日だった。
たとえ県境を5つほど飛び越えようが、体感フルマラソン2往復ぐらい移動しようが、笑顔で元気にユーモアを忘れないのがヒーローだ。
1週間のうちのまだ1日目。
自分を兄貴と慕う舎弟が増え、ハニトラ紛いのファンが増え、戦闘欲を発散するヴィランをぶん殴り、子供達からパンイチと呼ばれ、汗臭い謎のフェロモンを撒き散らしながら接触してくるウサギと1日を共にした。我ながら濃すぎる。明日はもっとマイルドにしてくれ。
だが1日目はまだ終わらない。
事務所を持たないウサギだからこそ起きる問題、寝床問題だ。
「とりあえずホテル行くぞ」
「近くに記者がいたらすっぱ抜かれそうなセリフやめろよ」
なんて危険なこと言いだすんだ。日没後、ヒーローの男女、ホテル街、仲良くホテルへ…言い逃れできないだろ。流石の俺でも焦るわ。
「早く寝ないと明日に支障出るだろ。おらっ、行くぞ!!」
「いやぁぁぁん!積極的ぃぃぃ!!」
なんて無力なシャコなんだ。ウサギさんはやはり性欲爆発、はっきりわかんだね。
普通の一般ホテルでした。かなり残念だったのは心に秘めておくとしよう。
しかし問題はこれだけでは終わらなかった。
「元々部屋二つで一週間予約するつもりだったんだが、何故かどのホテルも一部屋しか取れなかったんだ。そんなわけで同部屋だ!我慢してくれ」
「マジかよ女性がそれでいいのかよ」
まさかの同部屋だよ。大興奮だよ。間違えた大問題だよ。
普通部屋一つしかなかったら他を探すものじゃないの?二つ返事で了承してたよ。俺が話すタイミングなくとんとん拍子で話が決まってたわ。
フロントのおっちゃんが最後俺にだけ見えるようにいい笑顔でグーサインしてたけど、全力で親指へし折ってやろうかと思ったね。
年上のお姉さんにホテルに連れられればもっとドキドキするものだと思っていたが、立場が立場なだけ今は違う意味でドキドキしてる。
結構人に見られてたけどマジで大丈夫か?時間はあんまり経ってないはずだ。頼むからネットニュースにだけはなってくれるなよ?ヒーロー初日でスキャンダルなんてとんでもないデビューすぎるだろ。
【熱愛!?】ヒーローミルコが男とホテルへIN!?お相手は人々を熱狂させたパンイチ男!?
なってたわ。
マジかよなってたわ。えっ?週刊誌にもパンイチって書かれんの?世間の総意なの?
「もうネットニュースになってんぞ。早くない?」
「マジかよ。でも私らはそんな関係じゃねぇんだ。無視しとけ」
ヤダ男らしい!やはりウサギはそんじょそこらの男よりも漢気があるんだ。負けたな切島。
だが速いな。速すぎる。ホークスよりも速いスピードでスキャンダルっちまった。ふっ…俺は最速の男に勝ったってことか。
そしてそろそろ携帯から聞こえる鳴り止まない通知が怖くなってきた。ずっと震え続けてる。ちらっと見たけど通知792件に不在着信78だって。俺も震えてきたよ。
とりあえず電源OFFにして放置しよう。
しかしよく考えてみれば、これはかなりの鮮烈デビューということにならないか?事件を解決し、パンイチ、そしてホテルイン。これを超えられるヒーローはそれこそもう現れないだろう。ハジケリストに相応しいデビューだろ。
そう考えれば特に何も感じなくなってきたな。うん、素晴らしいデビューだ!そうに違いない!
よし!これはもう今の状況を楽しむしかないな!ミルコと二人きりだし!
「あっ、ちゃんと荷物ある」
「ホテルに送ってもらえるよう手配してたからな!」
「あっ、内装ちゃんとしてる」
「いいところ予約したからな!」
「先にシャワー浴びてこいよ(イケボ)」
「ふざけんなテメェ」
あれ?この流れならいけると思ったんだが。
「急に何言いやがるテメェ!さっさと風呂入ってこい!!」
「うるせぇ!初日ですっぱ抜かれた俺にもう怖いもんはねぇ!ミルコが先だろ汗臭ぇんだから」
「テメェぶっ殺すぞ!?テメェだって汗臭……なんでフローラルないい香りがすんだよ!?」
「需要の差ですかね」
俺は周りに配慮出来る系男子だ。エチケットは忘れないし、落雁食べてたら何かいい感じになる。そういう体質なので。
「で?いつまで俺の匂いを嗅いでるんです?」
「バッ…!?ちげーよ!?これはその…アレだよ!」
「どれだよ」
何だ?何か分からんがお気に召したのか?ウサギはお気に入りの匂いを嗅いでいる最中、しっぽの付け根の鼠径腺というにおいを出す腺がパックリ開いてウ◯コに分泌物をつけポトポト床に落とす、もしくはにおいだけをプ~ンと漂わせると聞いたんだがソレか?
「トイレなら突き当たりだぞ」
「ちげーわ!!」
違うらしい。でもウサギは嫌いな匂いにはすぐ逃げていくから、気に入られた証拠だろう。俺プロヒーローに認められました(匂いを)!
側から見ればこれはヤベェ光景なのだろう。プロヒーローが匂いを嗅ぎ続けるというニッチな光景だが、ここで俺が何もしてないのはダメだな。郷に入っては郷に従えという、ここで嗅がねば無作法というもの。
「ここにさっきまで履いてたミルコのヒーローシューズがあるじゃろ?これ…カッ!?」
危ねぇ!?一瞬意識飛んだ。こいつぁとんでもねぇパンドラの箱だぜ。人類にはまだ早すぎる。責任もって元の場所に戻しておこう。
なんかぐだぐだしてる間に結構時間経ってた。マジで意識飛んでたのか?もっと合法的にセクハラしたいがこれ以上は明日の活動に支障が出そうなので、さっさと風呂に入るとしよう。
「というわけで新・緊急脱皮!」
「あ!?何が……ギャアァァァァ!?」
説明しよう!緊急脱皮とは上着とズボンを脱ぎ捨てパンイチになる技である!その後さらに私は研究に研究を重ね、遂にパンツまで脱ぎ捨て瞬時に全裸になることができるようになったのだ!これが新・緊急脱皮である!
「鼻に掠ったぁぁぁ!?」
「それはごめん」
跳躍が足りなかったな。よう練習だ。
蹴り飛ばされて風呂に叩き込まれ、俺の意識はそこで途絶えた。
▽
おはよう!朝だよ!
職場体験2日目の始まり始まり!
いや〜今日もいい天気だ!澄み渡る空!平和な町並み!視線だけで人を殺せそうなミルコ!平和そのものだな!
「シャキャァァァ…!」
「どうどう、女性がそのような顔をしてはいけませんよ?」
一体どうしたというんだ。何も心当たりがないな。
強いて言うなら風呂に蹴り飛ばされてからミルコのご機嫌取りのために石楠花流マッサージをしてあげたぐらいだ。
アレはヤバかった。正しく理性との戦いだったね。風呂上がりの芳醇な香りのするミルコに我慢しつつ、マッサージすると身震いしたりエロい声出したりするんだぜ?
そして聞くたびにヘッドロックと四の地固めが飛んでくるんだぜ?身がもたねぇよ。新手のSMクラブですか?
「で?マジでどしたん。話聞こうか?」
「テメェが昨日あんな事(健全なマッサージ)したからだろ!!」
おい白昼堂々なんて事言うんだ!?ただでさえ昨日の今日で視線が人一倍凄いのに、もっとえらい事になったじゃねぇか!?
「好き放題あんな事やこんなことしやがって…!」
「おいぃぃ!ただのマッサージをそんな感じに言うんじゃねーよ!」
「もうあの感覚が忘れられねーンだよ!どうしてくれるんだテメェ!!」
「マッサージィィィィィィ!!」
どうしてくれるんだ!?道行く人がもうそんな目でしか見てこなくなったじゃねぇか!母親が子供の手を引いてそそくさと去っていったじゃねーか!
しかもまた週刊誌のパパラッチみたいなやつもいんじゃねぇか!今日の主役もいただいたな!売り上げに貢献したら手数料を頼む。
「アレを顔に擦り付けやがって…!」
「それはすまないと思ってる」
それは本当にすまないと思ってる。悲しき不慮の事故だったんだ。今日もマッサージするので勘弁してください。それか週刊誌事件を許すのでチャラにしてくれ。
周囲では「シャコウサ」とか「ウシャコ」なる謎のワードが飛び交い始めた。何だよそのワードは。とりあえず避難したい。それとさっきから野郎共の怨念が突き刺さるんだ助けてくれ。
ヒーロー2人と周囲の人々、いつも通りの朝の喧騒。
喧騒に紛れ、俺の助けてくれという願いは違った形で叶えられた。
「キャアァァァァァァァァァ!?」
「シャカ!」
「応!」
白昼堂々一体何事だ?
あっ、ピンクの髪の女の子が光り輝く頭頂部を持つ男に人質に取られているだと!?
くっ!こうしちゃいられねぇ!まずは女の子の命を優先しないと!
作戦は特にない!だが俺の魂胆をミルコなら分かってくれる筈!何故なら以心伝心だからな!
「道を開けろ!俺たちは崇高な目的のために……」
「待てぇぇぇぇぇい!」
「誰だ!」
「通りすがりのヒーロー候補生さ。その子を離してもらおうか」
「「パンイチが来たぁ!?」」
失礼だな。犯人を刺激しないように緊急脱皮で服を脱ぎ捨てただけだ。人は裸を見れば安心するらしいからな。
しかしまさか人質の子にまでツッコまれるとは思わなかった。
「人質なら俺が替わろう!だからその子を離せ!」
「いや誰がお前みたいなムキムキの変態を人質にするかよ!?普通は女子供だろ!?」
「……パンツも脱げということか?」
「どういう発想!?」
女の子の命に比べれば俺のパンツの価値なんてその辺の石ころより安いが、一体何が目的なんだ?
というか丸坊主の後ろから丸坊主がいっぱい出てきた。何?今日クリリンの集いでもあったの?ピンク髪の子も驚いてんじゃん。ミルコ、俺が目的を聞き出すまでもう少し待っててね。
「お前たちの目的は何だ!俺のパンツが欲しいのか!」
「誰がテメェのパンツなんているかぁ!!はっ!教えて欲しけりゃ教えてやる!俺たちは……
毛刈り隊だ!!人類を丸坊主にするべく結成した帝国直属の特殊部隊さ!!」