いや、人ん家の前で何やってんの?   作:ライムミント

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メリーメリークリスマス



なっ…何だってぇー!?

 

 風呂に叩き込まれ、上がった後に緑谷から洸汰くんのあらましを聞いた。

 

 物事の分別がつかない年頃に体験するような内容じゃねえわな。そらヒーロー嫌いになるわ。

 

 想像以上に重い。重すぎるぜ。

 

「僕たちに…何が出来るかな。何をしてあげられるかな?」

 

 うん、難しい話だ。人の定着した価値観を壊すのは、オールマイトであっても難しいだろう。でも……

 

 

「ん〜…そうだな。難しいところだが…『してあげる』って思考は変えなきゃならねぇと思う」

「えっ?」

「鼻ほじって下ネタで盛り上がってるような子供なら何とも言えねぇけど、洸汰くんほど達観した子供ってのは結構分かるもんなんだよ。『あっ、この人は自分を見てない』って。年上が発する義務感ってやつ?を顕著にな」

 

「それに洸汰くんの立場になって考えてみろよ。よく自分のこと知りもしない癖に『さぞ心配してあげてるでしょう?』感を出す自分に酔いしれた奴らが君の家族は立派なヒーローだったと言ってくんだぞ?そらムカつくよ。洸汰くん自身に話しかけてるんじゃなく、その後ろの死んだ家族の幻影に向けて話してんだから」

 

「そして追い打ちをかけるように自分の家族はもういないという現実が子供の小さな体に重くのしかかってくる。1番身近にいた1番信頼できる、1番大好きな大人がいない。会いたくても2度と会えない。頼ることもできない。周りを見ればよく知らないおべっかを言う大人達。地獄だろ」

 

「全てにムカついて、むしゃくしゃして、発散する方法が分からなくて、1人の世界に閉じこもってる方が楽だって気づく。よく知ってるよ」

 

「そしたら最後、周りの言葉が全部悪意を纏って聞こえてくんのさ」

 

「マンダレイやプッシーキャッツのみんなは凄いと思うよ。彼女達がいたから、まだ洸汰くんは洸汰くんのままでいられてるんだと思う」

 

「話が長くなっちまったが、俺たちに出来ることがあるとすれば……いつも通りに接することじゃねェかな。ありのままを受け止めること。側にいること」

 

「別に何もしてあげようなんて思わなくていい、思い出して辛くなるだけだ。俺たちのいつも通りでいいんだ」

 

「近所にいる兄ちゃん見たいな感じで接して、馬鹿やって、情けなくて、ドジやって、何だコイツって思われるぐらいが丁度いいんだ」

 

「子供時代の価値観がそのまま成長に直結するからな。だから……まずは笑顔だ!笑えば自然と心も少しは軽くなる!心も体も上を向く!だから俺たちは馬鹿でいい!高校生のノリのままでいい!アイツ意味分からなかったな〜、アイツ馬鹿だったな〜って奴が1人ぐらいいた方が人生の思い出としてきっと楽しいだろ!」

 

 子供が辛い顔なんてしちゃいけねぇ。子供が心に蓋をするなんてことがあってはいけねぇ。

 

 生命の危機を助けるのはヒーローの仕事かもしれない。だが人の心の危機を救うのはヒーローの仕事である必要性はない。

 

 肩書きなんて名乗らなくたって人を笑顔をする方法は世界中に転がってる。

 

 記憶の片隅にふとした時に思い出して笑ってもらえるなら万々歳だ。そんな生き様ぐらいが丁度いい。

 

 きっと人は、笑って生きられる奴が1番強くて凄いんだから。

 

 

「石楠花くん…君は…、っ…うん!そうだ、そうだね!一緒に遊んで、一緒に話して楽しい思い出を作ろう!まずお互いの好きなことを話し合うなんてどうかな!オールマイトについて軽く3時間ほど…」

「それは止めて差し上げろ。ヒーロー嫌いが加速する」

 

 何で嬉々として拷問を選んだんだ?一生心閉ざすわ。

 なんなら俺でも休日に3時間以上も横でペラペラお経を唱えられたら、顔面にシャコパンチするわ。

 

 緑谷、恐ろしい子…!

 

「ここで悩んだって解決はしねぇ。ほら行こう、後は部屋に戻って寝る……前に最後の一仕事が残ってる」

「えっ?何か他にやることあった?」

「女子部屋潜入メタルギアソリッドだ」

「さっきまでカッコよかったのに!?」

 

 これは必要だろう。なんなら合宿の醍醐味まである。

 

 考えてみろ。就寝時間前、潜入、歓迎、トランプ遊び、見回りの先生来訪、女子と同じ布団に隠れる………ビクトリー!

 

「ジャパンの合宿とはそういうものだと漫画で予習した。俺単体であれば成功確率は30%ぐらいだが、ここには参謀隊長のイズクミドリーヤがいる。その場合の成功確率は脅威の70%!いけるぜ」

「漫画の知識を当てにしちゃダメだよ!?それに僕行かないよ!?」

「怖気付いたか…やはり俺、峰田、上鳴、緑谷で構成される四天王の中では最弱の存在…」

「嫌なラインナップに含まれてる!?」

「だがやるぜ俺は!夢が目の前に広がっているんだ!何故山を登るのか?そこに山があるからだ!何故女子部屋に侵入するのか?そこに女体があるからだ!」

「何も心に響かないよ!?」

「麗日が布団に1人分のスペース開けて待ってるかもしれないぞ?」

「うううううううう麗日さささんさん!?そそそそそんな……!?」

「へいSi⚪︎i、『人間 バグ 直し方』で検索して」

「『申し訳ございません。おっしゃってる意味がよく分かりません』」

 

 緑谷が壊れたし直し方もよく分からなかったけどまぁいいや。

 

 今は時間が1秒でも惜しい。俺はやるぜ!やるぜ俺は!俺は出来る男石楠花 鱗!

 

「うおぉぉぉぉぉォォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 開始10秒で相澤先生に捕まった。

 世知辛いね世の中。

 

 

 

 ▽

 

 

 

 合宿2日目 AM5:30

 

「お早う諸君」

「…………!!」

「目を開けたまま寝るな石楠花」

 

 キッショ、何で分かるんだよ。

 

 昨晩は1時間ぐらい説教されたのち、部屋に叩き返された。

 

 部屋に戻った時の緑谷の『やっぱり…』て顔が忘れられない。あれは成功を微塵も信じてなかった顔だ。あることないこと広めておいてやろう。

 

 そこからぐっすり熟睡して、今に至るわけよ。

 まぁ眠気は特に問題ないんだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 腕を休ませ、足を休ませ、体内を休ませ、脳を休ませる。

 そうすることで体は常に絶好調さ!本当に疲れたならば5秒ぐらい寝ればスッキリするしね。

 

 それよりも女子が恐ろしく眠そうだな。化粧とかの関係か?すっぴんの方が俺は好きだぜ。

 

 なんかめっちゃこっち睨んでるんだが何で?エスパー?

 

「本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる『仮免』の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ、心して臨むように」

 

 おお…!合宿みたいだ!……合宿か。

 

「というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」

「これ…体力テストの…」

「前回の…入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」

「おお!成長具合か!」

「この3ヶ月色々濃かったからな!!1kmとかいくんじゃねぇの!?」

「いったれバクゴー!」

「生き恥を晒せー!」

「最後絶対テメェだろクソシャコ野郎が!!」

 

 何でピンポイントで分かるんだよ。折角声帯をいじって瀬呂が話してる声に音域を変えたというのに。俺のファンか?

 

「んじゃ、よっこら…くたばれ!!!」

『『『………くたばれ…』』』

 

 暴言のレパートリーよ。体力テストの掛け声は『死ね』と言ってたっけ?まともな掛け声が存在しないタイプのフレンズか?

 

「709.6m」

「はァっ!!?」

「あれ…?思ったより…」

「プラス4.4m……えー、これは4()の呪いにかかってますね。日頃死ね死ねビームを撃ちすぎた弊害でしょうか。激ショボウンコマンですね」

「死に晒せクソボケがァァァァァ!!ならテメェもやってみろやァァァ!!」

「すまんな爆豪、1つしか持ってきてなかったんだ。ムカつくかもしれないが今は耐えてくれ」

「だそうだ爆豪くぅん、僕ちゃん記録わかんなぁ〜い」

「ファアァァァァァァァァァァァァ!!?」

 

 コワっ、このまま煽ると人間じゃない何かに変身しそうだ。離れとこ。

 

「約3ヶ月間様々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまで精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで『個性』そのものは今見た通りでそこまで成長していない。だから……

 

 

 

 

 今日から君らの個性を伸ばす。死ぬ程キツいがくれぐれも…死なないように…」

「プルルルルルル!ハッハ────!!ヒャホウ!!」

「黙れ石楠花」

 

 死ぬかもしれないほどキツい…か。俄然テンション上がるね!爆豪見てみろよ、さっきの今でテンションが上がりまくって血管と吊り上がった目と上がり切った口角が頭の上で羽ばたきながらワルツ踊ってるぞ。

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ、異形型・その他複合型は『個性』に由来する器官・部位の更なる鍛錬」

「でっ…でも大丈夫なんですか?A組だけでも21人、B組を合わせるとさらに倍、それだけの人数を先生達とプッシーキャッツだけで……そうか!だからこそプッシーキャッツなのか!プッシーキャッツのメンバーラグドールの個性にかかれば各々の特性を割り出すことができマンダレイの個性で伝達ピクシーボブと虎の個性でそのほかの補助を行うことができれば効率的かつ最小限の力で僕たちの……ブツブツ

「先生のせいで緑谷の変なスイッチが入ったじゃないですか」

「しらん」

 

 勝手に1人で解決して勝手にエンドレスブツブツモードに入っちまった。朝の5時から念仏の垂れ流しは体に悪いって。勝手に耳に入ってくるからタチが悪い。俺たち1ミリもまだ解決策分からねぇのよ。

 

「まぁ概ね緑谷の予想通りだ。だから彼女らだ」

「そうなのあちきら四位一体!」

 

 

 

 

「煌めく眼でロックオン!!」

「猫の手手助けやって来る!!」

「どこからともなくやって来る…」

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」

 

 ………何か人増えたな。昨日加入しました?

 

「あちきの『個性 サーチ』!この目で見た人の情報100人まで丸わかり!居場所も弱点も!」

「はい!質問です!」

「はい!そこの君!」

「性癖も分かりますか!!?」

「分かんにゃい!」

「チクショォォ!!ありがとうございます!」

 

 性癖は分かんないのか…でも弱点って性癖に繋がる情報になり得るんじゃね?強個性だ!すげぇや!

 

「私の『土流』で各々の鍛錬に見合う場を形成!!」

「そして私の『テレパス』で一度に複数の人間へアドバイス」

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ…!」

「ふっ…気が合いそうですね」

「殴る側に入るなお前!」

「蹴る側にも入るなお前!」

「洒落にならんから止めろ!」

「河岸で遊んでてくれ!」

 

 連携による波状引き止めをくらっちまったよ。ちょっと河岸で水切りしてくるわ。

 

「雄英も忙しい。ヒーロー科1年だけに人員を割く事は難しい。この4名の実績と広域カバーが可能な『個性』は短期で全体の底上げをするのに最も合理的だ」

 

 スゲェヒーローだったんだな。適材適所ってやつか、俺は戦闘特化タイプすぎるから育成にはてんで向かないね。

 

 いい歳した痴女コス集団だと思ってごめんなさい。それ抜きにしても1人毛色が違いすぎやしないか?

 

「さぁ分かれて各自個性伸ばしを始めろ。時間は有限、一つ一つの鍛錬に意味を見出しながら実施するように」

「増強系の個性は我の元に来い!」

「いろんな道具があるから個性の性質や用途に応じて貸し出すわよ!」

「みんなサーチ完了!さーて、弱点の割り出しを…」

 

 さて、俺も鍛えて行こう!でも鍛えるっつったってどうしようかな?ホークスとスターアンドストライプとの戦いで、俺の個性は『節足動物』だと分かったしな。

 

 まだ報告出来てないんだよな。今更実は個性が違いました〜なんて言い難いし。いざ報告したとして、急に初めての個性をノリノリで違和感なく使い始めたらめちゃくちゃ怪しいし。

 

 個性がサーチって言ってたから、俺の個性が違うって割り出してくれないかな。いや、望み薄か。

 

 さて、どうしたもんか……ん?相澤先生とサーチお姉さんがこっちに来るな。

 

「君が石楠花くん?」

「ええ、貴女の愛しの石楠花です」

「アハハハ!!聞いてた通り面白い子──!!」

「担任をする身としては除籍したくなりますがね」

「僕は将来イレイザーヘッドのサイドキックになって、先生の活躍を記した本を出版するのが夢なんです。タイトルは『アングラの美学 〜ゴーグルを使用したバレない視姦方法講座〜』

「黙れ」

「アハハハ仲良しだ!!あちきはラグドール!君の話は色々と聞きたいけど、本題が重要だから話すね?ここで矯正できなかったら、君にとって死活問題だったかもしれないし」

「というと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の個性………『シャコ』じゃないよ」

 

 なっ…何だって────!?(歓喜の大喝采)

 





A組(B組も)の女子寝不足理由
ヒント:石楠花全裸股間事件
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