これ以上龍気活性してしまうと、あたしはバルファルクになってしまう   作:ハリー・ルイス博士

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#11 日本のニュースとホームルームに共通するゴチャゴチャ感

 

『ヴィランチーム、WIIIIIN!!!』

 

 オールマイトの宣言がビルに響き渡った。

 結果は天彗と障子目蔵のペアの勝利。

 

 

「赤井さん、少し聞かせて欲しい」

 

 葉隠の拘束テープを剥がし終えた頃、頭の中で反省点を挙げていた尾白が口を開いた。

 

「どうして葉隠さんがいることに気付いたんだ?」

「あーっと、アレだよアレ。通信した時に障子くんと核があることを言わなかったっしょ?」

 

 天彗が(あげつら)ったのは、尾白が行った偽装通信のことだった。

 

 訓練開始時、尾白を斥候とする形で、尾白と葉隠は少し離れた位置で行動していた。

 障子の索敵により、このことは天彗たちも把握していたが、尾白と天彗の戦闘が始まってからの葉隠の動向は把握できない。壁を貫いて攻撃するにあたり、障子は聴覚による索敵を中止していたからだ。

 通信がブラフだったかどうかをあの時点で天彗は知ることはできなかった。

 

「ホントなら最優先に聞くべきことじゃん? なのに葉隠からは特に連絡はなかった。これってつまり、葉隠も部屋の中を見れる場所に来たってことっしょ?」

 

 天彗は通信内容から葉隠の位置を予測していた。

 尾白の通信で、本来欠けている情報を、葉隠が自分の目で確かめに移動したことを見抜いていたのである。

 

 

 あの伝達が不要だったかというとそうではない。靴を履くかの選択やそもそもの戦闘位置の伝達など、必要な情報がつまっていた。

 障子と核について触れなかったのは伝達ミスだが、戦闘状態の焦りもあった。葉隠がフォローとして、本当に通信を行って聞き返すべきだったと言えよう。

 

 

 

───◇◆◇───

 

 

 

「尾白と赤井のバトルはシビレたぜ! 個性ブッパもカッケェけど、ああいう、漢らしいのもな!! あ、いや赤井は女だけど……」

「凄かったわ、赤井ちゃん」

 

 

「最後の講評と行こうか!! 意見がある人っ!」

 

 オールマイトがビシッと手を上げて意見を募ると、口を開いたのはやはり八百万百だった。ちなみに手は挙げていない。

 

「これまでの試合で学ばれたことが随所に反映された素晴らしい内容でしたわ! 特に尾白さんの動きは、葉隠さんを活かす上で完璧な動きでした」

 八百万は初めに、ヒーロー側の良い点を挙げた。

 

「細かいことを言わせていただきますと、赤井さんは腕のプロテクターが要らないのでしたら、最初から外しておくべきでしたわ。そのためのアタッチメントですの」

 

 次に障子についても触れる。

「それから障子さんは守りを意識しすぎかと。葉隠さんを警戒するのも重要ですが、最後に見せた封鎖ができるのでしたら、もっと前に立って赤井さんを支援すべきでしたわ」

 

「毎度、素晴らしい講評だ!! 八百万少女!!」

 

 ヤオモモにほとんど言われてしまったようなものだが、一応オールマイトは他の生徒の意見を募ろうとする──

 

 ゴホッ

 

 と、そこでオールマイトは咳き込んだ。

 

「(ムッ……、もう時間か。やっぱりヘドロ事件以降、短くなってるっぽいな)」

 

 

 一転。それ以上オールマイトは講評を聞くことはなく、授業を終わらせにかかる。

 まるで、授業時間以外に何か別の追われているものがあるかのように性急なものだった。

 

 

「それじゃあ皆、授業はここで終わりだ!! お疲れさん!! 緑谷少年以外大きな怪我もなし。しかも真摯に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆、上出来だったぜ!」

 オールマイトは総評を速巻きに言い切った。

 

「私は緑谷少年に講評を聞かせねば! 着替えて、教室にお戻り!!」

 

 そういうや否や、オールマイトは凄まじい速さのダッシュ消えてしまった。

 おそらくは、緑谷少年に会いに保健室へと向かったのだろう。

 

 

 

───◇◆◇───

 

 

 

「天ちゃん! テレビ来てるよ!! テレビ!」

 

 デカいカメラ! デカいマイク!

 と、雄英高校の校門に集まる取材陣を見て、媧恋はテンション高めで天彗に話しかけた。

 

 対人訓練の次の日の朝、遅めの時間帯に登校してきた天彗と媧恋は、現在、集まった記者たちを遠目に眺めていた。

 とても割って入れるような状態ではない。

 

「いや、別にテレビなんて普通っしょ」

「さ、さすが未来のヒーローやね……。度量が違うわ」

「あんたがミーハーなだけでしょ……」

 

 

 そんな天彗と媧恋(かれん)の会話を聞いていたのか、天彗をヒーロー科の生徒と見た取材班が近くに寄ってくる。

 

「オールマイトの授業はどんな感じでしたか!?」

 

「まあ、普通……」

「何か、あるでしょう! No.1ヒーローですよっ!」

 

「あ、そう言えばシルバーエイジコスチュームを着てたっけ?」

「シルバーエイジのコスチュームを!! その格好で具体的にはどんな授業を?」

 

 天彗が漏らした情報に噛み付いて、情報を揺する様はぼったくり居酒屋の客引きのようだ。

 どうやら天彗を()()()()()()生徒だと見なしたらしく、他の記者たちも天彗たちの下に集まってきていた。

 

「昨日の何限の授業を担当したかだけでも!」

「オールマイトから雄英の教師になった理由の説明などはありましたか?!」

「オールマイトの就任に伴って、彼のヒーローとしての活動が減っているようですが、雄英生としての意見は?」

「オールマイトが──」

 

 

 一応は日本一の高校の生徒だと言うのに、記者たちの質問はオールマイト一色だった。

 とはいえ、記者たちの興味がオールマイトだけなのは当然だ。雄英生の取材がありふれているのなら、初日から記者たちに囲まれていたことだろう。

 

 その取材人気はさすがはNo.1ヒーローといったところで。その知名度と注目度のあまりの高さには嫉妬心すら抱くことはできない。

 

 けれども、生徒への興味はまるでなく、オールマイトと唱えるだけの記者たちに天彗たちも辟易していた。

 

 

「赤井、遅刻ギリギリだぞ。取材に答えるのもいいがほどほどにな」

 

 そんなところで現れたのは、小汚い男。もとい相澤先生だった。

 頼れる(?)1-Aの担任である。

 

「なんですか貴方は! って小汚っ!!」

「彼は今日、非番です。授業の妨げになるんで、お引き取りください」

 

 相澤先生はしつこく食い下がる記者たちを一切寄せ付けずに、雄英の敷居を跨いだ。

 天彗たちも、こうして相澤先生が自然と作った道を抜けて、校門を潜ることができたのだった。

 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績、見させてもらった」

 

 朝のホームルーム。

 いつも通りのスタイルで、教室で教壇に上がった相澤先生は、昨日の戦闘訓練の振り返りを始めた。

 と言っても全員ではなく、特に目立った者たち──具体的には爆豪と緑谷に苦言を呈しただけだ。

 

 

 しかし、いつものように、相澤先生は唐突に爆弾を投下する。

 

「急で悪いが、今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

 

 HRの本題だと前置きして述べたのは、学級委員長という役職決めだった。

 

 普通科や他の学校では単なる雑務で、むしろ倦厭される役職だろう。

 しかし、善人系陽キャのトップ層の集うヒーロー科では、率先して立候補する役目であった。

 

 

 ほとんど全員が手を上げて、主張する中。

 他の声を押し退けて選定方法を提案したのは、真面目くんたる飯田だった。

 

「周囲からの信頼あってこそ、務まる聖務……! 民主主義に則り真のリーダーをみんなで決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!!」

 

 公平性を重視し、一見真摯な態度で正鵠を射た提案を述べる飯田天哉。

 

 

「そびえ立ってんじゃねーか!! 何故発案した!?」

 

 しかし、その腕は誰よりも高く挙げられていた。

 

 いくつかの反対意見も挙げられたが、飯田の「信頼関係の薄い今だからこそ、ここで複数票を取った者こそが、委員長に真に相応しい人間」という主張には逆らえず。

 相澤先生も許可したことで、投票をする運びとなった。

 

 

 緑谷出久 3票 耳郎響香 1票  葉隠透 1票

 八百万百 2票 蛙吹梅雨 1票 飯田天哉 1票

 尾白猿夫 1票 上鳴電気 1票

 爆豪勝己 1票 瀬呂範太 1票

切島鋭児郎 1票 常闇踏陰 1票

  峰田実 1票 砂藤力道 1票

 口田甲司 1票 芦戸三奈 1票

 障子目蔵 1票 青山優雅 1票

 

 

 結果は緑谷が委員長。ついでに2票入っていたヤオモモが副委員長となった。

 ちなみに二人とも自分に投票している。自己犠牲の精神とは()

 

「なんでデクに……!! 誰が……!」

「まー、おめぇに入れるよかわかるけどな!」

「わからねーよ! クソモブが……!!」

「爆豪もオレらと同じでヒラだけどな」

 

 結果にブチギレるもの(爆豪)。

 

「緑谷、なんだかんだアツイしな!」

「八百万は講評の時のがかっこよかったし!!」

 

 納得するものと様々である。

 

「1票。自分に入れていれば副委員長……。いやこんな考えではオレに入れてくれたものに申し訳が立たん」

「他に入れたのね……」

「おまえもやりたがってたのに、何がしたいんだ飯田……」

 

 ちなみに天彗は、特に学級委員長に思い入れはないので、やりたい人がやればぁ?というスタンスである。

 

 

 

 そしてこの決定は、昼にあった警報に関連して何かあったらしい緑谷少年のどんでん返しによって覆され。委員長の席は飯田天哉へと譲り渡された。

 

 




・葉隠
都合上、葉隠さんのミスが多くなってしまいました。
ただ、メタを張りまくってようやく勝っているので、【透明化】はヒーローサイドとしても、かなり優秀な個性だと思います。
戦闘があるなら厳しいですが、データ入手とかの条件達成系ミッションで、相手が誰かわからない実戦だったら勝てる人いないんじゃ……?

・取材
少しでも有名な進学校だと、取材には応じないようにとか何かしらの指導があったりするんですが(ソースはSS筆者)、雄英はそこら辺スルーなのか……。

・赤井の登校時刻
漫画では相澤先生は最後に現れたようなのですが、流石に追っ払いにきたんですよね? 先生がこんな最後に出勤するのはいろんな準備的に厳しい気がする。

・委員長決め投票
自分に投票不可にすればよかったんじゃと思わずにはいられない。
しかも、この多数決、真面目な人ほど損をする構造でかなり満足度低そう。

・雄英侵入
天彗は相変わらず食堂では食べてないので、パニックの様子を知りません。

・雄英食堂
お茶子が普通の食事を食べているのでかなり安いようです。
しかし天彗は……。

・緑谷の飯田推薦
このSSでは、緑谷の述べた推薦理由に
「他の人に投票する、自己犠牲性」
「推薦されている実績」
「緑谷の票を入れれば、委員長でもおかしくない」
ことが付け加えられています。
しかし、オリ主の天彗は委員長決めに興味がないので、バッサリカットです。
ついでに原作では少し不満気なヤオモモも、かなり納得しているはず。


☆アンケート結果
時刻アンケートを終了しました。
結果については、単純に考えれば一番多い0:00となります。
しかし、18:00から0:00以前までの票の合計を考慮すると、0:00を超える。つまり、0:00より前の需要は0:00の需要を超えるんですよね。
それだけの需要を1日遅くしていると考えると、18:00がいいかなとも。
次話を試験的に18:00で投稿してアクセス解析を見て決めようと思います。0:00にも投稿するので読み飛ばしにご注意ください。

プロフィールアンケート
プロフィールに関するアンケートを終了しました。
結果は圧倒的にヒロアカ公式風です。
逆転してイラストありという結果っぽいイラストアンケートに伴い、ついでにイラストをモノクロで仕上げて一緒に載っけることにしました。
いつになるかと言うと、8月中は用事があって忙しいので、来月になると思います。(8月分は予約投稿済みなので、8月中に消えることはないです)

タイトル、および作中での龍"気"の漢字について。モンハン原作では宝玉以外"気"が使われています。

  • タイトル、作中ともに気
  • タイトルは氣、作中は気
  • タイトルは気、作中は氣
  • タイトル、作中ともに氣
  • どっちでもいい/結果が見たい

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