これ以上龍気活性してしまうと、あたしはバルファルクになってしまう 作:ハリー・ルイス博士
プレゼント・マイクの説明通り、専用バスに乗って数分。
辿り着いたのは、"街"だった。
もちろん、試験用の仮想の街であって、中身までは作り込んでいないのだろうが。数十メートル級の整然としたビル群が、試験のためだけに用意されているというその光景に、受験生たちは圧倒されていた。
天彗はというと、試験前の閉じられたフェンスの隙間越しに試験会場を盗み見ていた。
登録されている個性の範疇ではないが、天彗の視力はマサイ族もかくやといったレベルで、常人離れして優れている。その視力は航空機に乗った遥か上空から地面の人を識別できるほどだ。
その天彗の視界では、ビルの中すら見ることができた。
「(よくできてるけど、中身のないハリボテ。壊しても問題なさそうじゃん)」
「(ついでに、正面のストリートには敵の影なし……。どこからか湧くかんじっぽい)」
沸きポイントを見つければリスキルができそうだが、素直に沸いてくれるとも思えないし、なんなら探し回った方が効率が良さそうではある。
「ま、サーチアンドデストロイでやるしかないっしょ。ビル群だと視界悪いし」
『ハイ、スタート!』
その声に反応して飛び出したのは天彗だけだった。
『どおしたぁ!? 実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れ!! 賽は投げられてんぞ!!?』
そんなマイクの煽りで、ようやく後ろから追ってきた気配がする。
もう少し、ほっといてくれればアドバンテージを稼げただろうに。
「プレゼント・マイクも意外と優しい」と天彗は
正面の広場には、予想通り先ほどまでいなかったはずの敵ロボが、ズラリ。
その集団を天彗は伸ばすように形状を変えた翼腕で、一太刀に斬り伏せる。
三つの自由な可動部位を有する、銀色の鱗が生えた翼が背中に生えている異形系個性。
平手のように叩いたりはもちろん、盾のように前方に構えたり、根元で打撃を与えたり、伸ばして槍のように突くこともできる万能器官。限界まで伸ばせば、身長を数倍するリーチの剣として使うことも可能だ。
武器として扱えるほどに硬質なのに加え、大きさの割に器用でライターの火をつけることもできる。
一瞬でロボを片付けた天彗は、別の地点に移動する。
「(あたしの個性、広場に有利って思ってたけど路地にもいいじゃん。"槍"の逃げ場ない分ロスんないわぁ)」
天彗は意外な発見をしていた。不良校出身ではあるが、路地裏に呼び出されたことがない天彗は、意外と路地での戦闘経験が少ない。
自分から喧嘩を売る時も、真っ直ぐ行ってブン殴るが常で陰湿なことは考えた試しがない。
「(てかこの試験、媧恋にはムリゲじゃね? 対ロボオンリーだし)」
ヒーロー科志望ではないとは言え、0ポイントは可哀想だ。
そんなことを思いつつ、腕で殴るとロボットは意外と簡単に破壊された。素手でも壊せないことはない代物だったらしい。あまり天彗の拳は信用できないが。
もしかしたら、探せば停止ボタンのようなものもあるのかもしれない。冷静さとクソ度胸、あとは持ち込み自由なので鉄パイプかナックルなんかがあれば、無個性でもクリアできるようにはなっているのだろう。
では、媧恋がポイントを取れるかと言うと怪しいものである。
たしか、靴に鉄板仕込んでるとか聞いたが、真偽は定かではない。足が太くなるとか言う理由でやめてる確率の方が高そうだ。
そうこう言っているうちに、残り時間も5分となった頃。
"それ"は現れた。
「わぁーお、マジ? あれ一台いくらかかんだろ」
ビルを一回りも二回りも上回るサイズの敵ロボット。
1〜3Pの姿はどれも固定で差分がなかった以上、あれが4種類目。
プレゼント・マイク曰く"ギミック"と言うわけだ。
所狭しと大暴れと紹介していた割に影も形も見当たらなかったが、ビル群の間で狭苦しそうにしている様は、なるほど所狭しである。
天邪鬼にステージギミックにケンカを売りに行く──というのも悪くないが、残念ながら今の天彗にはそれほど余裕はない。主に内申点のせいで。
しかし、天彗は背を向けたかと言えばそうではなかった。
あえて逆。天彗は倒す気もない0ポイントロボに向かっていく。
理屈は簡単。巨大ロボの周囲は現在、逃げた受験生により空白地帯となっている。
撃破ポイントが欲しく、巨大敵に恐怖を感じない天彗にとって、そこは絶好の狩場である。
0ポイントヴィランの周囲には、出現によって怪我を負った受験生がちらほらと残っていた。
ただし、天彗の目的はあくまでポイント。
負傷者はスルーである。ライバルが減ってラッキーくらいの民度の思考だ。
それからしばらくして。
『終了』の合図がかかった。
結果に打ちひしがれるもの。満足げなもの。虚勢を張るもの。様々だが一つ言えるのは、ここにいるほとんどの者がこの難関を突破できないということだ。
この試験。反省すべき点が天彗にはなかったかというとそうでもない。
「3P探すよりも、1P、2P誘き寄せる方がよきだったじゃん。つっかえー」
天彗はそんなことを愚痴りながら、試験中に目星をつけていた負傷者を翼で瓦礫を斬り付けて助けたり、無駄に詳しくなった救急医療の知識で軽く処置したりしていった。
ちなみに1P、2Pは大きな音などに反応して近寄ってくる設定だったことを、天彗は試験後にだべっている受験生たちから聞いた。
一刀のもとに切り伏せる天彗の近くに寄ってくることはなかったので、試験中の天彗はこの設定を知る由もなかったのだ。
この設定を知っていれば、もっと派手にビルをぶった切ったりして誘き寄せていただろう。
「お疲れ様~お疲れ様~遅くなっちゃってゴメンねぇ。ハリボーあげる」
天彗の会場がGだったからか、養護教諭のリカバリーガールが到着するのは遅かった。
「いい処置だね。物資がないときの対処としてはよくできてる」
そんなことをつぶやきながら、リカバリーガールは唇をのばして負傷者にキスをした。
なんとキスである。これが美女であれば患者も報われようが、現実は非情。リカバリーガールは、そのヒーロー名とは裏腹に杖を突いているおばちゃんである。ババアンと描き文字の効果音が付きそうだ。
流石にまうすつーまうすではないのが救いだろうか。
「……ヤバ」
治療を待つ負傷者が、刑罰を待つ囚人のように見えたという。
・雄英試験用の工事
このSSでは試験用の街は試験用に用意されたと言う設定。
・1, 2点ヴィラン
爆豪のタフネスを賞賛するシーンで、音で誘き寄せられることを匂わせています。
3点ヴィランは不明ですが、このSSでは誘き寄せられないとしてます。
・無個性でもヒーローになれるか
葉隠の合格方法がよく謎になっていますが、このSSでは葉隠はロボに感知されず、またロボにスイッチか何かがある説を採用。
・赤井の個性②
【可変翼】という名前は、バルファルクの翼がただ生えてるだけだとどんな名前をつけるのか考えた結果生まれた名前。今後、作中で変更届を提出する可能性が割とあります。
実は赤井の親の意向が名前にほんの少し関わっています。
・0点ヴィラン
よく2次小説でこいつを倒す描写がある。
体育祭でも触れられているが、倒すべき敵としてみればそれほど脅威ではないらしい。
出題ミスで全員マルになった問題をわざわざ解く人はいないのと同じ。
だからこそ色濃く(以下略
主人公のイメージイラストは必要ですか? シャーペン描きのラフ段階ならあります。
-
いらない。そんなことより続き書け
-
ラフでいいから欲しい
-
ちゃんと仕上げろ
-
俺(私)が描く