これ以上龍気活性してしまうと、あたしはバルファルクになってしまう   作:ハリー・ルイス博士

6 / 21
入学編
#6 入学と除籍


 

 雄英高校、登校初日。

 天彗と媧恋は2人で広い校内を歩いていた。

 

 廊下がデカくて広いのに加え、各教室の入り口もデカい。さす雄である。

 個性のバリアフリーに配慮して大きめに設計されているのだろう。逆に非力になる個性などには障害になってしまっているように見えるが、ドアの素材か何かで対処しているのかもしれない。

 

 雄英高校は、学科ごとに所属クラスが分かれていて。

 ヒーロー科は2クラス、そのほかの学科は3クラスに分かれている。

 それぞれのクラス名についてはヒーロー科がA, B、普通科がC, D, E、サポート科がF, G, H、経営科がI, J, Kと名付けられている。

 

 天彗はヒーロー科のA組、媧恋は経営科のK組に割り振られていた。

 

 クラスが違えば当然行き先も異なるので、天彗と媧恋はついに別れることになる。

 

 

 

 相変わらずデカい扉の横には、1-Aを標榜するプレートが掲げられていた。

 

 ガラリとドアを開けると、すぐに近寄ってきたのは眼鏡をかけた青年。

 そこで天彗にフラッシュバックしたのは、入学試験の説明会でプレゼント・マイクに質問を投げていた真面目くんであった。そして実際、彼はまさしくその真面目くんその人である。

 

「ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。っと、き、君はなんだその着崩した制服は!!」

 

 真面目くん、こと飯田が眼鏡の位置を直しながら突っ込んだのは、天彗の格好だ。

 天彗は登校初日にして雄英高校の制服を着崩しており、ネクタイを外して肌けた豊満な胸元からは谷間すら覗ける状態だった。

 奥の席に座った紫髪の小柄な生徒が凝視しているのは気のせいではない。

 

「あたしは赤井天彗。ヨロシクね、い・い・だ・く・ん」

 

 眼鏡をただすフリで誤魔化すという、飯田の初心な反応に天彗は耳元で囁いた。

 紫髪の生徒は血眼になって凝視している。

 

「……!! せ、席は名前順に座っている。君の席は赤井だからあそこだ」

 

 そう言って飯田が指差している最中、ドアを荒々しく開けて入ってきた爆発したようなツンツン頭の青年が、ドスンとその席に座ってしまった。

 

「君、そこは赤井さんの席で、って君も酷い制服の着崩し方だな!? ここは雄英高等学校だぞ!」

 

 ツンツン頭の青年は、ネクタイなしはもちろん、襟元のボタンは外してズボンは腰パンという、天彗にました制服を着崩し方だった。

 

「あ"あ"ぁ?! どう着よーとオレの勝手だろーが!」

「どーでもいいけど、席間違えてんのは恥ずくない?」

 

 着崩し云々は人のこと言えない天彗は、どうでもいいから自分の席に座りたかった。

 

「なんだてめー、どこ中だよ痴女が!!」

「あたしは多須宮だけど、何か?」

「多須宮だぁ〜〜!? ヴィラン養成学校じゃねぇか。ブッ潰してやろーか?!」

 

 多須宮を知っていてビビらないのは珍しいタイプである。

 どこで不機嫌になったのか、ツンツン頭の生徒はこれ見よがしに片足を机に乗せる。

 一年前の天彗なら、自分の席に足を乗せられたらノータイムで殴っているところである。しかし、今の天彗は天下の雄英に入って丸くなっている。

 こめかみに青筋を浮かべながら、席からこの青年を引き摺り下ろそうと画作していると。

 飯田がその爆豪の仕草に再び食ってかかった。

 

「机に足をかけるな! その席を使う赤井さんや雄英の先輩方、机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ。てめーはどこ中だよ、端役が!!」

 

 なんかテンドン、と天彗は思ったが、飯田は素直に自己紹介を始める。

 

「ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

「聡明〜〜〜!? くそエリートじゃねえか! ブッ殺し甲斐がありそーだな」

「君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」

 

 ブッコロシガイというエリートには聞き覚えのない言葉に驚いている様子だ。

 

 と、そこで教室を覗いている緑髪のモブ顔少年に気付き、仕切り屋な飯田は、モブ少年に自己紹介に向かって行った。

 

 

 飯田を言い負かした(?)ことで満足したのか、流石に気不味くなったのか、ツンツン頭の青年も自分の席を確認しに移動したので、天彗はようやく席に着くことができた。

 ティッシュを取り出して、足を置いていたあたりは念入りに拭いておく。

 

 教室のドア付近の席であるために、拭っている間に聞こえてきた飯田とモブ顔の青年の話によると、緑髪の少年は緑谷と言うらしい。

 

 あの入学試験での救助ポイントの存在に、緑谷が気付いていたと話しかけているようだ。しかし、緑谷の反応を見るには的外れな指摘だったようである。

 

「(ん? てことは緑谷とかゆーのは素で救助ポイントを稼いでいたってこと?)」

 

 ヴィランを倒せと言われて、ライバルの受験生を助けに行くというのは常人じゃない。いっそ試験内容をあらかじめ知っていたRTA走者か何かのようだ。

 

 

 そんな緑谷アゲで盛り上がる飯田たちに、さらに1人の学生が加わる。目が冴えるような美人と言うわけではないが、明るめ茶髪と太めの眉が内面から溢れるポジティブで柔和な雰囲気を醸し出しているような少女だった。

 

 彼女は緑谷の知り合いだったらしく試験の思い出を語りかけるが、緑谷は赤面して返事になっているような、なっていないような言葉を呟いていた。

 

 

 他の生徒も揃っていると言うのに、天彗の注意が彼等に行くのは他に喋っているメンツがいないからだ。流石にカースト上位の上澄みといったような雄英ヒーロー科生でも、自己紹介前の知らない子に話しかけるのは気が重いらしい。

 

 

 だが、そのおしゃべりもそろそろ仕舞いにしたほうがいいだろう。

 入り口付近で話すポジティブ少女の背後には、蓑虫のように寝袋に包まった男が近づいていた。

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へいけ。ここは……ヒーロー科だぞ」

 

 小汚い、不衛生としか言えないようなその男は寝袋から羽化して立ち上がり、数秒静かになるまで待つ。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」

 

 いや、小学校の校長先生みたいなこと言うな、この人。

 合理性重視なのに、初対面の印象値は稼がなくていいんだろうか。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

「「(担任〜〜ッ?!!)」」

 

 静かになるまでと言われた手前、誰も口には出さなかったが、誰もが心の中でそう叫んだ。

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

 

 そんな生徒たちの様子には目もくれず。

 相澤先生が手に取って掲げたのは、雄英高校指定の体操服だった。

 

 ガイダンスとか入学式とか出なくていいの? とか、初日にグラウンドに行って何するの? などと皆が皆、半信半疑のまま着替え始めた。

 

 そんなホイホイついて行って大丈夫だろうか。実は担任を騙った変質者で、騙されてるかもしれない。天彗の一抹の不安をよそに他の生徒たちは素直に着替えているので、天彗も後を追って着替え、グラウンドに向かった。

 

 

 

 雄英にはいくつものグラウンドがあるが、相澤先生に指示されたグラウンドには中学の時に受けた体力テスト用に似た白線やトラックが用意されていた。

 

「お前たちには、個性把握テストを受けてもらう」

 

「「「個性把握テスト?!」」」

 

 って何ですか? とは賢明にも誰も続けなかった。

 そんなことを口にして「君、せっかち過ぎるのは合理性に欠けるね」なんて言われたくはない。

 

 

「ええ!? 入学式は!? ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る余裕ないよ」

 

 少なくとも入学手続き後にもらった冊子には、ヒーロー科も入学式やガイダンスが予定されていた。

 加えて、グラウンドに向かう途中に覗いたB組の教室では、真っ赤な服装の教師が普通にガイダンスをしてた。

 

「(絶対、嘘じゃん……ヤバすぎ)」

 

「えっと! B組はガイダンスしてたんですけどぉ。やらなくていいんですか?」

「……雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り」

 

 聞いてみると、答えになっていないような、はぐらかされたような回答が返ってきた。

 いや、それ答えになってないやん。

 

 しかし、相澤先生はそれ以上何か付け加えることはなく、個性把握テストの内容説明に移った。あくまで、個性把握テストは強行するらしい。

 

 

「お前達も中学の頃からやっているだろう? 個性禁止の体力テスト」

 

 全員が軽く頷くのを見て、先生は話を進める。一応、色んな出自の生徒に配慮しているのだろう。

 

「実技入試成績のトップは爆豪だったな。中学のときソフトボール投げ何メートルだった?」

「67m」

 

 爆豪と呼ばれた青年は、あのツンツン頭の男だった。

 この救助ポイントゼロっぽそうな爆豪に入試成績で負けたと言う事実に、天彗はイラッとしたがおくびにも出さない。

 しかし、爆豪とかいう男、主席だけあって素の身体能力も高いらしい。

 

「なら、個性ありでやってみろ。円の範囲なら何やってもいい」

 

 爆豪への恨み節も大概にするとして。

 相澤先生が要求してきたのは、個性ありでの体力テストだった。

 

 爆豪少年は、ソフトボール投げの円に歩いて入ると、おおきく振りかぶってボールを投げる。

 

「死ねェ!!」

 死ね? 彼は実は天彗と出身校が同じだったりしたのだろうか?

 そんな冗談はともかく。

 

 ボールが手から離れる、というその瞬間、彼の手から盛大な爆発が起きた。

 爆風に押されて、ソフトボールは遥か彼方へと飛び去り、『705.2m』という個性なしではあり得ない記録を叩き出した。

 

 

 結果を自動でデジタルで表示できるなら、ソフトボール投げの白線は何の意味があるのか、というのは無粋な疑問なのだろうか。

 そんなことを天彗は考えている間に、誰かが「面白そう!」と口にしたことで、雲行きが怪しくなる。

 

「面白そう、か。ヒーローになる為の3年、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

 不機嫌になった先生を不安な面持ちで見つめる中、相澤先生が言い出したのはとんでもないことだった。

 

「よし、トータル成績で最下位の者は見込み無しと判断し……"除籍処分"としよう」

 

 




・かっちゃんの席
ヒロアカでは座席が決まっていて、五十音順に座っている。爆豪は緑谷の前で窓際。
しかし、このシーンのみ爆豪は奥に生徒がいる席、つまり窓際ではない席に座っている。かっちゃんは席を間違えたのかもしれない。

・ライバルを助けるのは常人じゃない
敵P<救助Pでヒーロー科受かる生徒は、心意気ガチ勢。

・入試RTA
当時のデクの1発しか使えない個性で合格するには、最適解だったような気がする。

・B組ガイダンス
B組の様子を確認に行く人はいそう。
 
・多須宮の知名度
不良には知られている。
エリートには知られていない。

特殊文字って使った方がいいですか?

  • いらない。
  • 文字の大小は使った方がいい
  • フォント変更を使った方がいい
  • 動きのある文字まで使った方がいい
  • その他(これが多数だった場合は再アンケ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。