これ以上龍気活性してしまうと、あたしはバルファルクになってしまう 作:ハリー・ルイス博士
「トータル成績最下位の者は見込み無しと判断して、除籍処分としよう」
「「はああああ!?」」
そんなことを宣った相澤先生に、生徒からは困惑の声が上がった。
「生徒の如何は先生の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
「最下位除籍って、入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても、理不尽すぎる!!」
そんな糾弾の声にも動じず、相澤先生は生徒たちを煽る。
「──日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を覆していくのがヒーロー」
語られる相澤先生のヒーロー観。
「放課後マックで談笑したかったなら、お生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける」
「"Plus Ultra"。全力で乗り越えて来い」
最後に校訓で締めくくった先生の演説に、皆この試練に立ち向かおうと、覚悟を決めた顔になった。
しかしながらここで、面白そうとか言った奴探して吊ろうぜ、と犯人探しにならないのが、雄英高校ヒーロー科である。原因の一言を放った誰かを探す者はいなかった。
あるいは、その言葉がなくとも相澤先生はこの試練を課していただろうことを、全員が察していたのだろうか。
「(でもぉ。よく考えたら、理不尽を覆すのがヒーローって言いたいんなら、
「(『見込み無しと判断して除籍』、逆に言えば見込みありなら最下位でも除籍撤回ってカンジっぽそう)」
おそらくは、撤回かあるいは除籍後復学など、様々な救済が考えられる。
しかし、こんな思考ができるのは、天彗に余裕があるからだ。
全員が全員、全てのテストで活用できるような個性だったなら天彗も危ういが、少なくとも飯田や爆豪の個性は長座体前屈を始めいくつかの種目で活かせないだろう。
異形型という元来の身体能力の高さがここでは大きなアドバンテージとなる。
周りを見ると、自分の個性をどう活かすか考えることに必死になって、視野が狭まっている者が多い。
それに加えて、この1-Aは何故か21人。本来よりも1人多く、元々ここで誰かを落とすつもりだったとしてもおかしくない。と当事者には感じられてしまう。
とくに、自身の個性の使い道に自信がない者は、既に怯えているほどだった。
「ま、どんな採点かにもよるだろうけどねー」
●第一種目:50m走
「あんまりできることはないけど」
天彗の個性で思いつくのは、可変翼を後方に打ち付けるスタートダッシュ、前に伸ばした翼腕でゴールイン判定を縮める。あとはいっそ可変翼で走って歩幅を伸ばすくらいだろうか。
天彗が取った方法は、可変翼を打ちつけるダッシュを何度も繰り返すことだった。
翼腕の伸長の反動は意外に強く、天彗の体は軽々と持ち上げられ、数度の移動でゴール圏内にたどり着いた。翼腕でゴールまでを縮めることで、さらに短縮。
結果は4″22。十分上位の結果と言えるだろう。角度を調整すればもう少し速くすることもできそうだ。
天彗的にはただのデモンストレーションに近いイメージだったこの体力テストだが、個性の意外な使い方を示唆してくれていた。
「アレは……ヤバいな(主に胸が)」
「アレには誰も(主に揺れで)勝てないぜ……」
「わ、わかるのかオマエぇ〜〜!!」
高く打ち上がっては降りるという軌道で、ただ走るより数段大きく揺れる天彗の胸に、どこかのブドウと金髪バカが結託していた。
●第二種目:握力
これは翼腕で挟むことで300kgwオーバー。
トップクラスかと思いきや、腕がたくさん生えたような男子生徒、障子目蔵が自力で540kgw、お嬢様チックな八百万百に至っては万力を取り出してとんでもない記録を出していた。
あれは……アリなのだろうか。天彗の翼腕もギリギリだけど手以外で締めてたら、それもう"握"力じゃないんじゃ……。
何人かがチラッと先生を見たが一言「許可だ」と告げるだけだった。
●第三種目:立ち幅跳び
50mと同じ要領。
今更だが、天彗の可変翼は羽ばたいたところで飛ぶことはできない。可変部分の間には皮膜があるが、飛ぶほどの揚力は得られないのだ。しかも形状的に滑空にも向いておらず、もっぱら地上用となっている。
周りを見ていると、意外にもこの種目は最も多くの生徒が個性を発揮できていた体力テストの種目なのかもしれない。
●第四種目:反復横跳び
両脇の地面に可変翼を突き刺して、吊り上げるように移動。
これはあまり上手くいかなかったので、2回目は通常通りの挑戦。
「縦揺れもいいけど、横揺れもいいよな……」
●第五種目:ボール投げ
天彗は野球のバットのようにぶん回した翼でボールを打ちつけ、400m近くの結果を出した。
このボール投げは生徒間の成績の幅が特に大きく、1位の麗日お茶子の無限から数十メートルまでと言ったところだ。
ここで、第五種目までヒーローっぽい突出した記録が一つも出せていない、緑谷出久。彼の2度目の投球は爆豪の記録を0.1m上回るという大記録だった。
そのかわり、指が赤黒く変色してしまっていた。
ダメージを受ける代わりに超パワーを発揮するといった個性なのだろうか。
緑谷はこの種目にかけたようだが、超パワーの代わりにダメージを受けることを考慮して記録を出すなら、立ち幅跳びで本気を出すのが一番だったのではないだろうか。
お茶子は自分を浮かせられない上、安定して大記録を出している八百万もそこまで大きな記録になっていない。唯一は爆豪だが、あの超パワーならそれを超えるトップの記録が出せるだろう。
●第六種目:上体起こし
可変翼で押し上げるだけ。
●第七種目:長座体前屈
可変翼を伸ばし6mを越える記録を出したが、常闇のダークシャドウを使った記録や蛙吹梅雨の舌を使った記録には勝てなかった。
●第八種目:2000m走
ただ走るだけ。
2000m走のために取り出したバイクをどこかに片付ける八百万を尻目に、これにて体力テストも終了した。
「んじゃ、パパっと結果発表」
「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」
そうして、手元のリモコンを操作して順位を示す前に、相澤先生はポツリと告げた。
「ちなみに除籍はウソな」
ほぼ全員の目が点になった。
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「「「はーーー!!!??」」」
最下位だった緑谷なんて、叫び過ぎて亡霊のようになっている。
「あんなのウソに決まってるじゃない……。ちょっと考えればわかりますわ」
なんていう八百万の虚偽へのフォローに適当に頷いて、先生は保健室利用書を緑谷に手渡す。
常識人で真っ当に生きてきた八百万には、除籍なんて当然ウソのように思えるのは仕方ないが、天彗は別の考えだった。
相澤先生は容赦なく除籍にするつもりだった。
おそらくは、緑谷出久、彼を狙い撃ちにして。
ハリー・○ッターのス○イプ先生のように、緑谷に何か恨みがあってのことなのかはわからない。
その考えが変わったのは、たぶん緑谷のボール投げの第2投。
第1投目では相澤先生の【抹消】の個性で個性を消され、すっぽ抜けた結果の高々40メートル。
それに対して2投目は、先生には個性を使われず爆豪を上回る大記録。
おそらく、これが先生の求めていたラインを乗り越えた瞬間。
ところで、もし緑谷が他の生徒を上回る、つまり緑谷以外が最下位になった場合にはどうしていたのだろう。やっぱり撤回していたのは変わらない? それとも撤回せずそのまま除籍?
何はともあれ、個性把握テストは(緑谷の人差し指と相澤先生のドライアイ以外)全員無事に終わった。
個性把握テスト:7位 赤井天彗。
除籍者なし。
それが今回の結果だった。
・ファーストフード店
この発言を意識してか、ハンバーガーなどのジャンクフードを頬張るデクたちの公式イラストが存在する。
・50m走
ゴール判定はトルソーですが、この二次では赤井の翼は胴判定。
個性器官は法的には生えている根元の部位扱いという設定。
胸から生えた個性器官がある時、単に胸の突起なのか、別の部位扱いなのかの判定は難しそうなので、こんな設定に。
フォースカインドの個性の腕は脇腹の一部扱いになる、とかがクイズになりそう。
・個性把握テスト
すまっしゅの内容をいくつか流用させていただいてます。
・7位
障子よりも下だが、尾白より上
個性把握テストの結果は、よくわからない点が多いです。
先生の言う通りに単純に足した結果なら、麗日は無限大なので当然の1位となるはず。
ヒロアカ二次小説界隈では、順位点式など様々な案で整合性を取ろうとしています。
・緑谷最下位
鍛えまくった緑谷が実質無個性の葉隠(18位)や上鳴(16位)、切島(8位)よりも下というのは不思議。
このSSでは「緑谷、指壊れて全く集中できなかった説」を採用。
ヒーローらしい結果にこだわらなければ、上位に行けていたと思われます。
☆アンケート結果
・特殊文字アンケート
いるいらないの分類で"いらない"の266に対して、"いる"関連の投票の合計数165となった時点で投票を締め切りました。
いらないという意見が多いようですので、特殊文字は継続して扱わないことにします。
・イラストアンケート
欲しい系といらない系がかなりせっているため、少し対応を検討中です。そもそも挿絵を載せるためには、匿名を解除しないといけないのでそれも含めて。
とは言ってもせこい話、既にルーキー日間の上限を突破することができました(感謝御礼)ので、匿名でないから困ることはもうほとんどないですが。
特殊文字って使った方がいいですか?
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いらない。
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文字の大小は使った方がいい
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フォント変更を使った方がいい
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動きのある文字まで使った方がいい
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その他(これが多数だった場合は再アンケ)