【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、少々お待たせしました。

それでは今回分どーぞー。


8.転校生と万

その日の放課後、万は職員室に来ていた。話があると聞かされていたからだ。これについては二人転校生が来た時点で予想していた。そのため、職員室に入って千冬に最初に言った。

 

「俺がデュノアと同室で構いません」

 

それに対し、千冬が驚いた顔をする。

 

「・・・よく読むな」

 

「少なくとも、その話もあるのは事実でしょう?」

 

「ああ。参考までに聞いておこうか、ボーデヴィッヒのほうはどうすればいいと思う?」

 

「あいつは一人部屋のほうがいいでしょう。たぶん、あいつはこの学園の生徒に対してよく思っていない。下手に誰かと同室にさせて喧嘩でも起こったらことですし、あいつの喧嘩はそれこそ殺し合いに近いものだろう。なら、いっそ一人部屋にしてしまったほうがいい」

 

その分析に千冬は言う。

 

「・・・まるであいつを知っているような口ぶりだな」

 

「こんな能力の副作用、ってところと思ってもらえれば。その気になれば記憶を読み取ることくらいはできるんです」

 

「・・・そうか。忌憚のない意見を尊重しよう」

 

「で、話は以上ですか?」

 

「ああ、わざわざ呼びつけてすまなかった」

 

失礼します、といって職員室を出ると、その足で剣道場へ向かった。あの朝に約束した打ち合いのためだ。

剣道場に入ると、箒は目をつむって正座をしていた。大方、瞑想でもしているのだろうか。大和撫子と言ってもいい彼女がこのようなことをしているととても様になる。

そう思いつつ歩み寄ると、目を開けた箒が驚いた顔をした。

 

「き、来ていたのか。いつから来ていた?」

 

「ん?さっきだが。それより、今誰もいないんだから、気づいてもいいんじゃねえの?」

 

「いや、たいていのやつなら入ってきたときに気づくのだが・・・。ここまで気づかなかったのはお前が初めてだ」

 

どうやらかなり驚いているらしい。それになぜだろうかと理由を考えた万はひとつの可能性に行き当たった。

 

「・・・もしかしたら身ごなしの音を消すように歩いていて、その時に同時に気配も消していたのかもしれん。それで気づかなかったとか」

 

そういわれて箒も納得する。

 

「・・・ああ、なるほど。それなら確かに気づくのは難しくなるな」

 

「というか、もともとはそのために身に着けたものだしな」

 

その万の言葉を受け流しつつ箒は木刀を放った。

 

「さて、ここに来た目的をはたすとしよう」

 

「そうだな」

 

そういって放られた木刀の重さを確かめるように持つ。万がある程度重さを確かめれたところで箒は言った。

 

「ところで、勝負はどうする?」

 

「そうだな・・・。どちらかが降参するまで、でどうだ?」

 

「いいだろう。では、さっそく」

 

そういって箒は正眼に構える。それに対し、万はというと。

 

「・・・なんだ、その構えは」

 

左手を前にだし、木刀を持つ右手は体の後ろのほうに、そして体は斜に構える。型破りもほどほどにしろと言いたくなる構えだった。

 

「いいんだよ、気にするな。俺はこっちのほうが構えやすいってだけだ」

 

「・・・そうか」

 

そう一言つぶやくとスイッチを切り替えた。構えだけ見れば面ががら空きだ。だが、

 

(様になっている・・・。隙が無い)

 

彼の構えは型破りのようで様になっているのだ。それゆえに隙が無い。

はたしてどう攻めようかと考えあぐねているときに万が木刀を振り上げた。そのまま箒の木刀に当てると左手を添えて巻き上げにかかる。途中で狙いを読んだ箒は半ば強引に両手を顔の上に持っていき鍔迫り合いの形にした。少しの拮抗ののち、どちらからともなく距離を取ると持久戦を予想した箒は八相に構える。対する万は正対し左手を前に、刀を持つ右手はほぼ体側に構えた。

今度は箒から攻める。どちらかが降参するまでという以上、面を取ってしまうのが最も手っ取り早い。それに対し万はそれを左手首で受け流し、すれ違いざまに箒の手元をしたたかに叩いた。

手に直接あたってこそいない上に片手で振られたとはいえど、木刀の重量をうまく生かして手元をたたかれた強い衝撃にたまらず木刀を取り落す。地面に落ちた木刀を拾おうとしたとき、その首に横から別の木刀が当てられた。

 

「・・・参った、降参だ」

 

両手を上げいうと、万は木刀をひっこめた。それを見て木刀を拾った箒は問いかける。

 

「全く、型破りもほどほどにしろ。日本刀を片手で扱ってあまつさえ左手で相手の太刀を受け止めるなど聞いたことがないぞ」

 

「まあ、ね。俺、剣道は自己流で二刀を使ってたのが発端で、メインで使うのが二刀だからな。最初の構えも、あれで左手のほうに小太刀をもって、って感じだったからだよ。どうしても今でも癖でそうしちゃうんだよな」

 

小太刀ではなく正確には脇差だ、と訂正しながら箒はそれぞれの構えを思い浮かべる。確かにあの状態で二刀ならさぞかし攻めにくいだろう。なにせ、左手で常に防御の体勢を取られているのだから。だが、それはつまり普段は使わない構えで戦っていたということで、それは常に勝負事では対等な条件下でありたいと願う箒の気持ちとしては複雑なものだった。それゆえに、少し待っていろ、と万に言うと、部室の中から二刀流の竹刀と自分の竹刀を持ってきた。

 

「今度はこれで勝負だ。勝負の付け方はさっきと同じでいい」

 

その言葉に万は目を丸くした。わざわざ自分の得意とする得物を用意してくれたというだけでなく、

 

「二刀流の装備があるとはな・・・」

 

「在学中、無国籍扱いになる以上、ここの生徒は大会には出ないそうだからな。趣味の一環として手を出すやつもいるそうだ。といっても、扱いが難しいから長続きした試しはないそうだが」

 

「まあ、そういうもんだわな、疲れるし。俺が二刀を続けるか迷ったのもそれが原因だし。負けないけど勝てないだよな」

 

そういうと万は左手に脇差を持ち、構えた。それにつられ箒も上段に構える。

 

まず動いたのは万だった。左手の小太刀をそのままに右手を振り上げる。その向かう先は首。それを後ろに下がることで箒は回避し、がら空きになった面に振り下ろすが、それを左手の小太刀で受け流す。そのまま回転を利用して箒の右手に斬りぬけると、箒はそれを追う形で脇構えから手首に向けて薙ぐ。万はそれを小太刀で受け止めると、面を振り下ろす。それに対し相手の小太刀を中心に回転する形で回避し、そこから左から頭の上を通過させる形で大きく円を描いて首を狙う。それを右手で受け止めるとその当たった瞬間に後ろに飛びのき距離を取った。

そして今度は左手を前に、右手を上に構えた。二刀流の中段の構えだ。そのまま両者にらみ合いが続いた。

その沈黙を破ったのは箒だった。上段の構えからそのまま面に振り下ろす。それに対し、万は二本の刀を交差して受け止めた。それに対し箒は驚きつつ、そのまま鍔迫り合いに入ろうとしたが、すぐに万が二本の力で跳ね飛ばし、左手の小太刀で箒の竹刀を払う。それに対し一気に踏み込むと右手の太刀を首に押し当てた。

 

「・・・敵わないな、お前には」

 

その言葉に万は得物を戻しつついう。

 

「あんたほどでもないよ。いやはや連続でこんな手を使う羽目になったのは久々だ」

 

その顔に先ほどまでの真剣さはなく、勝負を楽しんでいた少年の顔が残っていた。

 

「こんな手?」

 

「普通はうまく受け流して面か籠手で終わりなんだよ。だけど、それだと決定的な隙ってやつが必要になってくる。だけどあんたにはそれがなかった。だから、無理やり降参させるしか手がなかったわけだ」

 

「確かに、お前の剣は独特だからな・・・。攻めあぐねるのも理解できる」

 

「それでも徐々に順応してただろ、あんた。たぶん、20回もやれば俺はあんたには勝てなくなるだろうさ」

 

「だいたいの攻撃パターンを探っていただけだ」

 

「その攻撃パターンが限られてるってのが俺の弱いところなんだと思ってるんだがな・・・」

 

「限られていてもトリッキーすぎるのが問題なんだ。いくら攻め手が少なくてもそれがすべて相手の意表を突くものなら初見で見切られることはない」

 

「・・・まあそうだけどさ」

 

「・・・とりあえず、お前の剣についてだが。まず、左手を防御に回しすぎだ。そして防御した後の右手の攻撃がやや大振りになる。最初こそ意表を突かれたから武器を落とされこそしたが二回目は右が来るかもしれないと思っていたから即座に回避することができた。確かにそのコンビネーションは驚異だが、たまには脇差で攻撃をすればよりよくなると思うぞ」

 

「・・・やっぱりそうか・・・。俺もそれは課題だと思ってたんだよな。ほかには?」

 

「すまんがわからん。二刀流などほとんどない上に、お前の剣は邪流すぎる。一本を取るのではなく敵を降参させるための剣など、少なくとも私は聞いたことがない。正直言って何か教えてくれと言われても無理な話だ」

 

「・・・そっか、ありがとな。じゃあ、もう少しお手合わせをお願いできるか?実戦で課題克服を目指したいし」

 

「私でよければいくらでも相手になるぞ」

 

「はは、それはありがたい。じゃ、さっそく始めるか」

 

そして、二人はまた構えた。

その後の打ち合いでは、最初こそ万がある程度勝利をおさめていたが、だんだん箒のほうが強くなり、最終的には万は箒に勝てなくなっていた。

 

「よう、万。珍しいな、そっちからなんて」

 

打ち合いの後、寮に向かって歩いていると声をかけられた。

 

「まあ、な。ちょっと篠ノ之にお手合わせ兼指導を願っててね」

 

「箒にか?珍しいな」

 

「ま、俺も一応剣は扱えるし、ISの装備にも剣があるけどよ。けど、その辺の指導はその道を極めている人間にしてもらったほうがいいじゃん?」

 

「まあ、確かにな」

 

そんな会話をしていると、声が聞こえた。

 

「答えてください、教官!なぜこんなところで」

 

それは今日転校してきたラウラの声だった。それに二人は近くの木の陰に身を隠し聞き耳を立てる。

 

「何度も言わせるな。私には役目がある。ただそれだけだ」

 

「こんな極東の地で何の役目があるというのですか。お願いです、わがドイツで再びご指導を・・・!この学園の生徒など、ISをファッションか何かと勘違いしている。そんな者たちのために教官が時間を割かれるなど・・・」

 

「そこまでにしておけ、小娘」

 

一気にまくし立てるラウラの言葉を千冬が冷静な声で遮った。

 

「少し見ない間に偉くなったな?たかだか15歳で選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

その返しにラウラは言葉を失う。

 

「寮に戻れ。私は忙しい」

 

それに対し悔しさをにじませるとそのままラウラは無言で去って行った。それを確認すると千冬は後ろに呼びかける

 

「そこの男子、盗み聞きか?」

 

それに対し一夏は身をぎくりとすくませた。思わず後ろを振り返るが、そこには目当ての人物はいなかった。仕方なく木の陰から出た一夏に千冬はさらに続ける。

 

「こんなことをしている暇があったら自主練でもしていろ。このままでは、月末のトーナメントでは初戦敗退だぞ」

 

「・・・わかってる」

 

「ならいい」

 

そういって立ち去ろうとする千冬を一夏は呼び止めた。

 

「なあ、さっきラウラってやつが言ってたこと、やっぱりあの時の・・・」

 

「お前が気に病む必要はない。もう終わったことなんだ」

 

そういってそのまま立ち去っていく。その後姿はいつもと変わらぬ凛としたものだった。

 

 

一方、ラウラが立ち去った直後に気配と身ごなしの音を消してその場を離れた万は途中でラウラの後姿をとらえた。

 

「おい、ラウラ」

 

その小さい影に呼びかける。そのまま振り向いた表情はいつもと変わらぬ無表情だった。

 

「お前、いったいどういうつもりだ?学園に喧嘩ふっかけてなんになる?」

 

「・・・そのようなつもりはない。私は事実をありのまま述べただけだ」

 

「確かにISの認識がこの学園において甘いのはどうかと思うぞ。だがな、それは軍属の人間が少ないからだ。銃を持ったこともない人間が、その危険性に気づくことがどうしてできる?」

 

そういいつつ前に出ていく。一歩、また一歩と距離が近づく。

 

「銃とISは違う」

 

「いいや、そうたいした違いはないな。どちらも人を殺せるだけの力を有するものだ。ただその力の大きさが違うだけでな」

 

「なら、あなたは何が言いたいのだ」

 

「お前は兵器の危険性を認識しているつもりだろう。俺もなまじ強すぎる力を持っているからな、その辺の認識はしっかりしているつもりだ。だけどな、それはお前が根っからの軍人でもあるからなんだよ。そうじゃない、たった数か月前まで一般人だった人間に、それを求めるのは、いささか酷じゃないのか?」

 

もう普通にしゃべれる距離に立って万は言い切る。それに対して相変わらずラウラは無表情を崩さない。

 

「・・・確かにそうかもしれない。だが、これが私の認識だ」

 

「そうかい。で、話を変える。織斑一夏をどうする気だ」

 

その問いかけに眉ひとつ動かさずにラウラは答えた。

 

「あのような教官の足枷にしかならないようなものは、私が排除する」

 

「それによって尊敬する教官が失望することになっても、か?」

 

それに対する万も無表情で返していく。

 

「・・・そうだ」

 

少し間があったとはいえど、それは揺るぎのないものだった。

 

「なら、ここの生徒の友人として言っておく」

 

そしてさらに一歩詰め寄る。

 

「俺の友人に必要以上に手を出そうものなら、俺もお前に対する容赦は消えるぞ」

 

その言葉にラウラは鼻で笑った。

 

「甘くなったものだな、あなたとあろうものが。そういう言い方をせず消すといえばいいものを」

 

「あいにくとそれはできそうにないんでね。甘くなってるのは重々承知だ」

 

「・・・そうか。なら、殺しあうことがあるかもしれないな」

 

「というか、そういう予感めいたものを俺は感じてるよ」

 

飄飄とした口調の万に口の端だけで嗤うと、ラウラは自分の部屋に戻って行った。

 

 

 

その日の夜、万が部屋の整理を終えたころにノックの音が転がった。

返事をしてドアを開けるとそこにはデュノアの姿があった。万のほうは事前に聞かされていたので驚きはないが、デュノアはかなり驚いた様子だ。

 

「へえ、同室って万だったんだ」

 

「そうみたいだな。ま、とりあえず入れよ」

 

そういって扉を大きく開ける。

部屋に入ったデュノアがまず洩らしたのは部屋の雰囲気についてだった。

 

「・・・あれ、こんなに何もないものなの?」

 

「あー、それは俺が特別なだけ。ちょっとしたカラクリがあってね、それがなけりゃ速攻で散らかり放題だろうさ」

 

「なにそれ。まあ、僕の荷物もこれだけなんだけどね」

 

そういって手に持っている旅行鞄を示す。

 

「とりあえず数日分ってだけだろ?後から大変だぞ」

 

「まあ、それはそうなんだろうけど・・・」

 

「それより、荷物の整理でもしたらどうだ?」

 

「うん、そうさせてもらうね。いろいろ私物とかも入ってるから、できればあんまり見てほしくないんだけど、いいかな?」

 

「構わねえよ。他人の私物をじろじろ見るような趣味はねえ」

 

そういって万はノートパソコンを開き、インターネットに接続する。それを確認するとデュノアは自分の荷物を開けだした。

 

 

そして、もろもろが終わり、デュノアが寝た後、その寝顔を見つつ考える。

 

(驚異的なスピードと言われた凰でも代表候補生になるまでには1年かかった。フランスから男子の操縦者が出て、いくらそいつが企業の社長子息とはいえどそうおいそれと専用機を持たせるのは無理がある。しかも、いままで報道には何も情報はない。何か裏があるはず・・・)

 

そう、先ほどインターネットに接続し世界のニュースを見ていたのだが、その中にフランスから“三人目“が出たとは聞いていないのだ。しかもそれは決して報道管制ではないことも先ほど確認を済ませてある。

 

(デュノア、てめえ何者だ・・・?)

 

そう思いつつ、時間を見る。その針はもうすでに午前2時過ぎを指していた。それを確認すると、万もベッドの中に潜って行った。




万の構えがわからない人は「キリト 構え」で画像検索をかけてください。ほとんどそのままですので

ではでは
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