それとタイトルが滅茶苦茶不穏ですけど人死には基本出したくない人なのでご安心を。
では今回分どーぞ
その次の日の昼。万は屋上に来ていた。一夏に昼食に誘われていたからだ。実は昨日も誘われていたのだが、ラウラとの約束が入っていたので断っていた。
その場にいるのは、一夏、万、箒、鈴、そしてデュノアだった。箒と凰はどこか不機嫌だが、それは大方一夏関連だろう。
各々自分で作ってきた弁当を一品ずつ交換する流れになった。一応、万も一人暮らしをしていた身として自炊くらいはできるので弁当を持ってきていた。こっそり持ち込んだり学園都市に地図に載ってないルートを使って仕入れたりした銃の手入れくらいしかやることがなく、興味本位で料理のレパートリーを増やしたのだが、それらはなかなかに好評だった。ただ、ときどき能力を使いながらやる調理にデュノアは驚いていたが。
ゴーレムの時の話を話しながら、一夏が万の弁当を見ていった。
「というか万、お前ちょくちょくやたらと時間のかかりそうな料理がないか?」
「あー、確かにな。牛の赤ワイン煮込みとかは普通にやったら手間がかかるからな」
「普通にやったら、ってどういうことよ?」
「俺が能力者ってこと忘れたか?」
その言葉で全員が納得しつつ複雑な表情になった。
「・・・それはもはや料理というより作業なのでは・・・?」
「圧力鍋を使っても一時間近くかかるはずの料理が半分どころか4分の1以下の時間でできたからね・・・僕も隣でみながら何が起こったのかと思ったよ・・・」
そんな言葉をもらすデュノアとセシリア。それに、箒は尋ねる。
「ところで、お前の能力はどういうものなのだ?水も操れるのだろう?」
「・・・そろそろ明かしてもいいか。俺の能力は
その説明に複雑な表情が驚きに染まる。
「・・・チートですわね」
「ああ、チートだ。おかげさまでいろいろ苦労もさせられたがな」
そこで無機質な電子音が響く。
「・・・悪い、俺だ」
軽く片手を上げつついうと、万は少し席をはずして電話に出る。その間に残された4人は話す。
「そういえば、もう一人の転校生、ラウラって言ったっけ?そいつと黒川がしゃべってたってことを小耳にはさんだんだけど、その辺どうなの?一夏、心当たりない?」
「んー・・・あ、もしかしてそれって昨日のことか?」
「ええ、そうよ」
「なら、心当たりがある」
「どういうことですの?」
「たまたまラウラと千冬姉が言い合ってるのが聞こえて、それを二人で聞いてたんだよ。で、言い合いが終わった後で千冬姉に感づかれてて呼びかけられたんだけど、その時に万のやついなかったんだよな」
「ああ、あいつ、身ごなしの音を消してその時に同時に気配も消すことができるらしいからな。たぶんそれを使ったんだろう」
「まるで軍人ですわね・・・。もしかして、その過程で?」
「ありえる話ではあるかもしれないけど・・・。EU圏にそういう話は聞こえてこなかったよ。秘密裏に入国していれば話は別だけど」
そんなところで万が帰ってきた。
「悪いな、食事中に。マナーにし忘れてた」
「気にすんなよ。それより、どんな内容だったんだ?」
「ああ、新しいパッケージが転送可能になった、って話。また今度の機会に転送するってよ」
「なるほど。そういえば、万のISの待機状態はなんなの?」
「これだが?」
「え、眼鏡?」
デュノアの質問に答えた万に意外な返答に凰が一言漏らす。
「ああ。伊達だからなくても別段問題はないしな。それに、待機状態ゆえにこれに直接ディスプレイを投影して情報を処理することもできるしな。便利なもんだよ、まったく」
「・・・実用性重視なのですわね」
「まあな。俺、基本的に物は見た目より性能だからな。よっぽどド派手じゃなければ性能がいいのを選ぶ口だから」
そういったところで予鈴が鳴った。もうすでに全員が昼食を取り終えていたので、急いで教室に戻った。
その日の放課後、万はダウンロードが終わるのを待っていた。それが終わると同時、セイリュウに飛び乗りボイスコマンドで指示を出す。
「システム起動。カタパルトを起動、射出を15秒後に設定。システムチェック、オールグリーン。稼働状態は良好。背部固定確認、完了。射出準備、完了。カウントダウン。5、―――」
そしてカウントが尽き、射出をした万が目にしたのは、今にも一戦交えそうな凰、オルコット、そしてラウラだった。それを見て、新たに転送されたステルスモードを使ったうえでこれまた新装備である大型のレールガンの射出準備をする。瞬間、一つの表示が出る。
―――最終安全装置解除―――
その直後、ひっそりとつないでいたオープンチャンネルにラウラの声が聞こえた。
「二人がかりで来たらどうだ?平和ボケした馬鹿どもの中にどっぷりと浸かって生きてきたようなやつに、この私が負けるものか」
その言葉に二人は顔面を朱に染めた。それを見て、射出準備を終えたレールガンを三人のなす三角形の中心に射出した。いつだったか、凰とセシリアがもつれて落ちた時とは比べ物にならない轟音が空気を震わせた。レールガンを格納すると、抑えた声でラウラにいう。
「俺が昨日言ったこと、忘れたわけではないよな?」
「ええ、覚えています。だが、あなたに何の関係がある?」
「あるね、おおありだ。あの時、俺は確かに言ったはずだ。“俺の友人に必要以上に手を出そうものなら俺もお前に対する容赦は消えるぞ”と。お前はここにいない俺たちの友人を侮辱し、こいつらから手を出させようとした。そうすれば、多少オーバーキルになっても過剰防衛で終わるからな。お前のことだ、こいつらを瀕死くらいにして一夏をおびき出し、消す腹だったろう。あいつは友人を傷つけられて黙っているやつじゃないからな。・・・違うか?」
「さすがですね、さすがは貴公だ」
「それだけでも俺にとっては戦う理由になる。言っておくが、こっちはもう準備できてるぜ?」
「そうですか・・・。なら、とっととかかってきてくださいよ」。
「なら遠慮なく」
手を上に向ける形で挑発するラウラにあくまで冷静に万は武装を変えた。具体的に言えば背中側にセシリアのブルー・ティアーズのようについていた筒状のスラスターをすべて前に向けた。いきなりバックステップでもするつもりなのかと凰とセシリアが思った矢先、万が一言言い放った。
「掃射!」
その瞬間、すべてのスラスターが火を噴く。そこから出たのは総数20発以上はある実体弾。それを見るとラウラは上空へ飛翔しそのすべてをかわしにかかる。が、その動きを追従するように一部の弾丸が曲がる。その光景に安全圏に退避したうえで見ていた凰とセシリアは驚く。
「ホーミング機能!?」
「ものすごい数、あれじゃ制御も一苦労なはずなのに!」
「いえ、彼は自分とわたくしの放った、数にして数十発のレーザーをすべて球体に反射させ、そのすべてを自分の武器としたお人。このくらいなら」
そんなことを言っていると爆音が上から鳴り響いた。その音に反応して上を向くと、黒煙が上がっていた。
「やったの!?」
思わず声を上げる凰。だが、セシリアは難しい表情のままだった。それを感じているのか、万もまだ掃射を行った構えのままだった。
そして二人の予感を裏付けるように黒煙の中からさも当然であるようにラウラが現れる。
「なっ、なんで!?」
「おそらく、AICを使ったのでしょう。爆発する直前、弾丸が停止しているように見えましたもの。AICで一瞬停止させ、それを撃ち抜いたとすれば」
「ああなる、ってわけね・・・」
そんな会話をしているとはつゆ知らず、ラウラは地上の万に向けていう。
「これで終わりですか?」
その言葉に万は不敵に笑う。
「んにゃ、なわけねえじゃん」
その直後、大量の、それこそ最初の数倍はあろうかという数の弾丸が全方位から降り注いだ。それに驚いた顔をすると、一点のみを迎撃し切り抜けようとする。が、
「そう来ると思ったよ!」
万はそれすらも読んでいた。その証拠に、一点から切り抜けようとしたラウラの首をワイヤーがからめとった。そのまま引っ張られるようにして地面に落ちる。それを追うように追いかけてきた一部の弾丸がさらに降り注いだ。
弾幕に気を付けながらラウラに歩み寄ると、万はその手をラウラに当てた。
「・・・油断大敵。AICに頼りすぎたな?」
そして、手首につけられた大きな装置から杭が時間差で連続射出される。万お手製の連射式パイルバンカーだ。首を絞められたうえにさらに何度もパイルバンカーを撃ち込まれ、ラウラは戦意を消失していた。が、それでも万は撃つのをやめない。
このままでは命にかかわりはしないものの、全身打撲、ひどければ内臓損傷という大けがを負うことになる。
誰もがそう思った瞬間、白が藍色を突き飛ばした。受け身を取って立ち上がった藍色に、白は抑えた声で問いかけた。
「・・・何のつもりだ、万」
一夏が様子を知ったのはその数分前だった。
第三アリーナで専用機持ちが模擬線をやっている、と聞き、見学もかねて観戦しようと思いアリーナにむかった。観客席につくとそこで模擬線をしていたのは万と、あらたな転校生のラウラだった。
万はワイヤーでラウラを地面にたたきつけた。そこにさらに上から弾丸が降り注ぐ。その後、さらに彼女の体に手を当てて何かをしている。一定間隔でラウラの体が跳ね上がっているところを見ると、おそらく攻撃をしているのだろう。そんなときにワイヤーがまだ伸びていることに気づいた。その先をたどると、それはラウラの首に巻き付いていた。
そのあとは無我夢中だ。バリアシールドから少し離れた位置で白式を展開、雪片弐型でバリアを切り裂くと、飛び出した勢いのままにセイリュウを突き飛ばした。そして立ち上がったことを確認すると一言問いかける。
「・・・何のつもりだ、万」
その声には抑えきれない感情がこもっていた。
「何のつもりって?ただ模擬戦やってただけだが?」
答えつつ目の前の白式について万は考える。
(ここのシールドバリアは簡単に破れる代物ではない。てことは・・・バリア無効化攻撃か。なるほど、道理であの時エネルギー消費が早かったわけだ)
あっさりとした答えに一夏は目を細める。
「ただ模擬戦やってただけ?首を絞めたうえで至近距離から攻撃を叩き込むのが、ただの模擬戦だっていうのかよ!?」
「ああ、そうだ。模擬戦である以上、シールドエネルギーが切れるまでやる。それがルールだ」
「だからって言って、相手を殺していいはずがないだろ!」
「ISには絶対防御や生命維持機能がある。よっぽどのことがない限り、相手が死ぬことはない」
「そういう問題じゃない!」
「ならどういう問題だ?まさか、この期に及んでISは人殺しの道具じゃない、とでもいうつもりか?」
頭に血が上った状態の一夏に万が冷静に言ったその言葉に一夏は黙り込む。その様子を見て万は哄笑する。
「いやはや、面白いことを言うな、一夏。ISは兵器だ。殺し合いの道具なんだよ。いくら絶対防御があるっていっても、そんなの気休めにもならない。ISのシールドエネルギーが切れてしまえば、どんなに優秀なISパイロットだろうとただの人だ。銃弾一発で死ぬ、ただの人なんだよ。そんなやつを
「・・・お前、本気で言っているのか?」
嘲りつついう万に一夏は静かな怒りをにじませつついう。だが、それを万は気にも留めなかった。
「ああ、本気だよ。てか、お前はなんでそんなことも思ってないんだ?お前も、兵器を使ってるんだぞ?その状態で戦場に立てば、何十、何万の敵を殺せる。そんな状態なんだぞ?それ、自覚してなかったのか?」
「・・・戦場に立つとか、そんなことはない!そもそも、―――」
「アラスカ条約で」
ひたすらヒートアップする一夏の言葉を万が遮った。
「ISの軍事転用は禁止された。ああ、表向きはそうだよ、表向きはな。だけどな、対IS兵器の開発は禁じられてないし、そもそも、先進諸国がISの軍事転用禁止、なんて馬鹿正直に守ると思うか?」
そこでいったん区切っていつの間にか失神して生身で横たわるラウラに人差し指を向ける。
「それに、それが守られてるのなら、こいつをどう説明する?専用機持ちでドイツ軍の軍人であるこいつを?」
それの返答はせず、一夏は万に問う。
「・・・なら、人を殺していいっていうのかよ?」
「そうは言わない。だが、事故で人死にが出るくらいは自覚しておけ、と言っている」
その言葉に一夏はなにやら叫びながら突撃してきた。それに万は回避行動をとらない。これはお互いの考えの相違だ、一発食らい殴られていたほうがいい。そう考えたからだ。
だが、一夏の剣が万に届く前に違う剣がそれを受け止めた。
「・・・まったく、何事かと来てみれば・・・」
どういうことだと目線を下げるとそこには打鉄の刀を持った千冬がいた。
「・・・千冬姉・・・」
「織斑先生だ、馬鹿者」
一夏も受け止めた相手を認識すると剣を下ろした。
「模擬戦をするのはいい。だが、アリーナのシールドバリアを破られると、教師として黙認しかねる。・・・二人とも、これの決着は月末のトーナメントでつけろ」
「了解」
「・・・わかった」
異論は許さん、といった口調で千冬は言う。それにふたりとも答えるが、二人そろって「教師の言葉には“はい”と答えろ」としかられ返答し直した。その返答を聞くと、千冬は周りにいる全員に向けて宣言する。
「これからトーナメントまで、一切の私闘を禁ずる。破った生徒は私が直々に処罰をしてやる」
それを聞くと、ISを展開していたメンバーは展開を解除する。そこに、セシリアが万に歩み寄って耳打ちをした。
「ボーデヴィッヒさんならわたくしたちにお任せを。あなたや一夏さんでは、またいらぬもめ事を起こしかねませんもの」
「・・・ありがとう。悪い、頼んだ」
「頼まれましたわ」
そのままの体勢で、小声で答えた万に笑みを含んだ語調でセシリアは答えると、凰とともにボーデヴィッヒのもとに向かった。どうやら二人で保健室まで運ぶようだ。
その様子を見て、一夏はアリーナを去ろうとする万に言った。
「お前の考えることは正しいかもしれないけど、それでも俺は人を殺すのをよしとはしない」
その言葉に、万は歩調を変えずに歩いて行った。その時にぼそりとつぶやく。
「それでいい。人を殺し慣れるんじゃない」
そのままアリーナを去るまで、その後は一度も振り返らずに万はその場を去って行った。
一応能力について補足。あとで設定集のほうにも上げます。
ありとあらゆる物質を操れる能力。磁場は空気中の電子を介して電気を操ることで操ることができる。
普通念動力は固体のみしか操れないが、これは流体でも操れる。
レベルは4扱い。
・・・万さんの能力はチートですね。
というわけで今回鈴さんとセシリアさんは離脱しませんでした。
その辺で今後展開が変わるかも。いや変わる。
ちなみに赤ワインは教員から料理酒を買ってきてもらいました、という舞台裏。
ではでは。