【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、また投下に来ました

福音の強さ調整が難しい・・・。

それでは今回分どうぞ


15.戦いの火蓋

そして、作戦決行時刻。所定の位置で3人は自身のISを展開させていた。事前に話し合いをして、一夏は箒が運ぶこととなっていた。出発前に一夏が箒に声をかける。

 

「いいか、箒。これは実戦だ。十分に注意しろよ」

 

「わかっているさ」

 

「・・・なんだか楽しそうだな、篠ノ之」

 

「確かにそうだな。やっと専用機が手に入ったからか?」

 

「私はいつも通りだ。二人こそ、作戦には冷静に当ることだ」

 

「わかってるよ」

 

「言われるまでもねえよ」

 

そんなことを言っていると無線が入った。

 

「3人とも、聞こえるか」

 

「はい」

 

「よく聞こえます」

 

「ノイズゼロ。通信状態は良好です。コントロール、用件をどうぞ」

 

「よし。今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心掛けろ。討つべきは銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)、以降福音と呼称する。現地での指示は黒川が出せ。いいな?」

 

「「「了解」」」

 

「織斑先生、私は状況に応じ、サポートをしてよろしいですか?」

 

「・・・そうだな、だが無理はするな。お前は紅椿での実戦経験は皆無だ。何かしら問題が出ないとも限らん」

 

「わかりました。ですが、できる範囲で支援をします」

 

そんな千冬と箒の通信を聞いた管制室の専用機持ちは互いに話しだした。

 

「・・・あの子、声が少しはずんでない?」

 

「わからなくもないけど・・・」

 

そんなことを言っていると千冬がプライベートチャンネルをまず万に向けて開いた。

 

「黒川、聞こえるか?」

 

「はい」

 

「そう固くなるな、これはプライベートチャンネルだ。・・・一夏と篠ノ之をよろしく頼む」

 

その言葉に万は軽く笑って答えた。

 

「ええ、もちろんです」

 

「感謝する」

 

そして今度は一夏に向けて通信をつないだようだ。一夏が箒の後姿を心配そうに見つめたところを見ると、万の予感は的中した、ということだろう。つまりはおそらく、

 

(篠ノ之自身は気づいていないが、かなり気分が高揚している。・・・何かあるかもな)

 

そんなことを考えていると白式が紅椿につかまった。それを見てセイリュウも飛行準備に入る。合図とともに二機は同時に飛翔した。紅椿の速度を確認しつつ全開飛行を続ける。が、それでも並走が限界だ。

 

「これ、俺自慢の高速パッケージなんだがなぁ・・・」

 

そんなことをつぶやきつつISの処理を開始する。

 

「衛星にリンク、完了。目標、およびこちらの現在地を補足。現在速度で、会敵まで推測で約30秒。これよりセイリュウはステルスモードに入る。・・・ちゃんと隣にいるから安心しろ」

 

そういってステルスを起動し、加速する紅椿をハイパーセンサーと望遠で捕捉する。さすがにこれ以上セイリュウは加速ができないため、こうして見つけるしかないのだ。

 

「福音を視認。会敵まで、およそ10秒」

 

「了解。会敵し次第戦闘を開始してくれ」

 

「了解。戦闘を開始する」

 

その頃、万も望遠で同じ視界に三機を補足した。紅椿に乗った状態から白式が斬りかかるが、福音はそれをひらりとかわす。それを2,3回繰り返すと今度は福音が射撃攻撃を仕掛けてきた。

 

「作戦を指示する。篠ノ之、何とか福音の動きを止めろ。その隙に一夏が落とせ。俺も援護する」

 

「「了解!」」

 

その返答を聞きつつ自分も援護のために両手にバルカンを展開して福音に向けてばらまく。一瞬福音が万に気を取られた内に篠ノ之が懐に潜り込んだ。そのまま二刀で相手を抑え込む。

そのまま白式は降下して攻撃にかかると思った。だが、一夏は福音を通り過ぎていった。一瞬篠ノ之が硬直した瞬間に福音が紅椿の拘束をほどき白式に向かって砲撃する。それを一夏は手にした得物で斬った。

 

「折角のチャンスに何をしている!」

 

「船がいるんだ。海上は先生たちが封鎖したはずなのに・・・」

 

その返答を受けて万は望遠を海面に向けて使う。すると、そこには確かに船の姿があった。が、そこに出たのは“国籍不明”の文字。

 

「・・・密漁船か」

 

「この非常事態に!」

 

あくまで冷静を装う万に対しいらだちをあらわにする箒に対し福音がさらに追撃をする。

 

「やつらは犯罪者だ。かまうな!」

 

「犯罪者でも人だ。見殺しにはできない!」

 

そんな言い合いをする二人をよそに万は結論を出した。

 

「・・・俺が退去を指示する。さっきと同じ要領で落とせ、いいな!」

 

ほんの少し震えた声で言いつつ自分は一気に降下、密漁船のもとに向かった。が、万が密漁船まで到達する前に大きな音を立てて白い何かが海面に衝突した。その瞬間、無線で万は叫ぶ。

 

「篠ノ之! 何があった!」

 

だがそれに対し篠ノ之の返答はなかった。ただ茫然自失とした様子でうわごとのように一夏の名前を呼ぶだけだ。それに対し軽く舌打ちをすると今度は管制へつないだ。

 

「管制へ、作戦失敗。白式は撃墜されました。これより白式を回収、帰投します。念のため担架も含めた救急の用意をお願いします」

 

「了解。・・・小言は後にしてやるから無事帰ってこい」

 

その返答を聞くと万はIS用拳銃を密漁船の横に向けて放つ。八つ当たりであるということはわかっていてもしなければおさまらなかった。

そして、自身はISを解除したうえで海に向かって飛び込んだ。水中行動用パッケージに切り替えてもよかったがそれをしていては時間がかかりすぎるし、そのまま飛び込んではISの故障の原因になりかねないからだ。自身の能力をレーダーで使いつつ一夏を引き上げ空中に出ると再びセイリュウを展開した。そこにはすでに篠ノ之もいた。

 

「・・・一夏は・・・」

 

「・・・気絶してるだけ、と言いたいところだが・・・すぐに手当が必要だろう。急いで帰投するぞ」

 

そしてそのまま全力飛行で旅館まで飛んでいった。

 

 

その後、夕方。箒と一夏以外の専用機持ちは作戦室の前にいた。先ほどシャルロットが管制室への入室許可を得ようとしたが、得られた返答は拒否だった。

 

「・・・教官の言うとおりにすべきだ」

 

「でも、先生だって一夏のことが心配なはずだよ。お姉さんなんだよ?」

 

「ずっと目を覚ましていませんのに・・・」

 

「手当の指示を出してから一度も様子を見に行ってないなんて・・・」

 

 

そう、万たちが旅館に着くと、千冬はすぐさま手当の指示をすると、周りの専用機持ちに宣言した。

 

「作戦は中止、以降別命あるまで待機。以上!」

 

そういってつかつかと歩いて行ってしまったのだ。

以降、彼女は作戦室にこもりっきりで出てきていない。

 

 

「だから? いったいどうしろっていうんだよ?」

 

「箒さんにも声をかけませんでしたわ・・・。いくら作戦失敗とはいえど、冷たすぎるのではなくて?」

 

「今は福音の捕捉に集中する。教官はやるべきことをやっているに過ぎない」

 

「ラウラの意見に賛成だ。・・・実の姉だぞ?その心労は俺らの比にならねえだろうさ。だからこそ作戦室に籠って福音の捕捉に専念してんだ。一夏を見舞ってそれで福音が見つかるんならそうしてるだろうさ。だが、問題は・・・」

 

そういって隣の部屋を見る。そこには一夏と、ただその横にいる箒がいた。こちらも、こもったまま出てきていない。

 

「あの馬鹿どもだな」

 

その様子を見て凰は万に問いかける。

 

「・・・ねえ、箒の様子はどうだったの?」

 

「一言でいえば茫然自失、だな。俺はそのシーンを直接見てないし、篠ノ之箒という人間を深く知らないからどうしてあいつまでああなってるのかはわからん。だが、おそらく一夏をこんな状態にしたのは自分のせいだと、そう思ってるんじゃないか?」

 

「・・・罪悪感に押しつぶされそうになっている、ということですの?」

 

「たぶん、それもある。・・・そういえば、作戦失敗直前の話はお前らにはしてなかったな。実は―――」

 

そして、万は密漁船を一夏が見つけたあたりから帰投までの流れを大雑把に話した。話し終え、さらに万は続ける。

 

「・・・ここからはオフレコで頼む。・・・俺は以前、篠ノ之に力とはどういったものか、といった質問をされたことがある。あいつとたまに剣で打ち合いをしているのはそれがきっかけなんだ。さっきも話した通り、篠ノ之は見捨てろといった。やつらは犯罪者だと。そして、あいつの求めてた力は“守る力”だ。そこから推測されるのは・・・」

 

「・・・自分の守るべきものを見失って、その結果が今の状態、ってこと?」

 

「おそらくはな」

 

そんなことを言っていると先ほど部屋に入って行った山田先生と入れ違う形で箒が出てきた。大方山田先生が何か言ったのだろう。箒はこちらを見向きもせずどこかへ行ってしまった。

 

「・・・ねえ、そういえばなんで福音は捕捉できないんだろう?」

 

「そういえばそうですわね・・・」

 

「お前ら、あのデータの内容覚えてないのか? 福音はステルスを積んでる。光学迷彩は積んでないみたいだったから、そうなったら目視でとらえる・・・ほか・・・」

 

言っていた万の口調が尻すぼみになっていく。そのまま万はなにやら考え事を始めた。その様子を見て凰は問いかける。

 

「・・・どうしたの?」

 

それから少しして万は顔を上げた。

 

「なあラウラ。お前、ドイツ軍のほうに連絡取れるか?」

 

「とれるが・・・どうしてだ?」

 

「今すぐこの辺の空域の衛星写真がほしい。できるだけ解像度を上げてだ。合法的に入手するなら、軍事衛星を利用するのが一番手っ取り早い」

 

「わかった。すぐ手配しよう」

 

「頼んだ」

 

その返答を聞くとラウラは席をはずした。一応軍部と連絡を取るため傍聴防止だろう。それを確認してからシャルロットが口を開く。

 

「でも、捕捉したとしてどうするの?」

 

「決まってんでしょ。リターンマッチよ」

 

「・・・悪いが、リターンマッチ、俺はパスするぜ」

 

「なぜですの!?」

 

思いがけぬ万の返答にセシリアが驚きの声を上げる。

 

「俺も含めて全員が行ったら、誰が一夏を守るっていうんだ? お前らが迎撃してる間にここに何かがあったらそれこそ大ごとだ。・・・だから、任せた」

 

最後の一言は絞り出すような口調だった。その言葉に全員が万の思いを知った。だからこそ、首を縦に振るしかなかった。

 

「それとだ。万が一、一夏がいけると言い出したら俺が責任をもって運ぶ。無線はいつでもつなげれるようにしておけ」

 

「・・・あなたの想い、承りましたわ」

 

「ああ、頼んだ」

 

そんな会話をしているとラウラが戻ってきた。

 

「福音を捕捉した。ここから約30km離れた沖合にいる。どうやら静止しているようだ」

 

その返答に満足気に万は微笑んだ。

 

「よし。んじゃあ凰、篠ノ之に発破かけろ」

 

「それはいいけど・・・なんで私?」

 

「ある程度あいつからの信頼を得ていて、しかもなおかつ裏表のなさそうな性格のやつって考えたらお前になった。頼めるか?」

 

「あったりまえよ! ・・・それより、一夏のこと、頼んだわよ」

 

「おう、任せとけ。そっちも、頼んだ」

 

「うん、任せてよ」

 

そういって四人は走って行った。その様子を見て万は一夏が寝ている部屋に入った。

 

(バイタルは正常、傷こそあるものの、それ以外は寝ているに近い、か。・・・とっとと目ぇ覚ませよこの馬鹿が)

 

心の中で軽く毒づきながら万は隣に座った。そして、彼のバイタルを計測しながら万は思考する。

 

(紅椿、現状文字通り最強のIS・・・。それのテストフライトが一通りあったところでこれ、か・・・)

 

あまりに間が良すぎる。ちょうどそれがお披露目になった瞬間に福音の暴走など。これによく似た現象をどこかで見たような気がする。だが、どこでだ。そう考えているときに一つの事件を思い出した。

 

(・・・そうだ、白騎士!あれだ!)

 

白騎士もISが発表された直後に大量のミサイルがクラッキングされ発射されたのだ。ご丁寧に問題がクラッキングされて発生している、というところまで一致している。もし仮にこの二つの事件が同一犯であるとしたら、その人間は天才であることも確かなのだが、目的も一致しているのならその目的も読めてくる。それと同時に、主犯もだいたいの見当がつく。ついてしまう。それがわかった瞬間に万は思わず奥歯をかみしめていた。

 

(たかだかそんな目的のためだけに、どれだけの人間を巻き込む気だ・・・!)

 

そこにはかすかだか確かな怒りがあった。

そんな時に部屋の扉がノックされる。返事をしつつ目を向けると入ってきたのはだぼだぼの制服を着た女生徒だった。

 

「・・・布仏(のほとけ)さん、だっけ?何の用?」

 

「ちょっとね、織斑先生に頼まれてよろずんのこと呼びに来ただけー」

 

その言葉に万は内心で少々不安を覚えた。なにせ相手はあの福音だ。あいつらでも苦戦は必至だろう。

 

「・・・わかった。一夏を頼む」

 

「おまかせー。おりむーが目覚めたらどうするー?」

 

「とりあえず織斑先生に伝えてくれ。じゃあ頼んだ」

 

そういって軽く肩を叩くと、自分は部屋の外に歩いて行った。

 

部屋に入り、大型ディスプレイを見つめる千冬に万は声をかけた。

 

「お呼びでしょうか、織斑先生」

 

「ああ、呼んだ。これを見ろ」

 

そういわれて大型ディスプレイを見る。すると、そこには6つの輝点。それを見て表には出さず自分の直感が当たったことを悟った。

 

「これを見てどう思う?」

 

「大方、俺以外の専用機持ちがどうにかして敵の位置を捕捉、追撃した、ってとこじゃないですか?」

 

「・・・やはりお前もそう思うか」

 

そういってため息を一つ。そして万を正面から見ていった。

 

「お前は何か言われてないのか?」

 

「・・・セシリアは他人の頼みを無碍にするようなやつじゃないし、他のやつらにしたら思い人があんな風になって黙ってるようなやつじゃないでしょう」

 

「・・・もう一度聞く。お前は何か言われてないのか?」

 

「誘われはしました。追撃をしないか、と。しかし、敵が単独であるとは限りません。故に自分は残りました」

 

「・・・そうか。ならばなぜ止めなかった」

 

「止めて聞くようなやつじゃないでしょう、あの姦し娘どもは」

 

その言葉にふっと笑い、直後に表情を引き締めていった。

 

「わかった。聞きたいことはそれだけだ。下がれ」

 

それに対しひとつ礼をして万は部屋を去ろうとした。それを千冬が呼び止めていった。

 

「ああ、そうだ。・・・お前はこの事件、どう見る?」

 

その言葉だけで万は質問の意図を理解した。

 

「さしずめ、マッチポンプ、といったところじゃないですか?」

 

「・・・そうか。呼び止めてすまなかった、下がっていいぞ」

 

その短いやり取りを終えると、万は今度こそ部屋を去った。




はい、今回は以上です。

次ですが、ことの顛末を原作と思いっきり変えます。
それに影響する形で今後も変わります。

ではでは。
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