我ながら学園都市サイドが空気すぎたので今回はそっちサイド。
今回、とあるシリーズのあの人が登場します。
では、今回どうぞ。
それから時は経ち、夏休みに入ってから少ししたとき、万はとある場所を尋ねてきていた。
近未来的なビルが立ち並ぶ中の一つに入り、見た目は何の変哲もない扉の前に立つと、隠してあったコンソールを使って指紋と静脈、そしてナンバーロックといった電子ロックを解除して中に入った。
ここは学園都市のとある部屋で、彼自身がカスタムをしてセキュリティを高めてある。そして、この部屋はかつて万が生活していた部屋だった。
前に生活していたままほとんど変わらない部屋の中の電気をつけて棚の引き出しを一つ開く。そこには大量の銃器が入っていた。特に欠損がないことを確認すると、前々から書いてあった紙を取り出してスキャナにかける。すると大型ディスプレイに三面図が映し出されると同時に、奥の部屋から音が聞こえた。奥の部屋に向かうと、機械とそれに見合う材料、工具が出てきた。それの操作自体は自分でしろということなのだろう。
作業に取り掛かろうとしたとき、部屋の中に備え付けられた電話が鳴った。マイルールに従い3コール目でつなぐ。
「はいもしもし」
「WC6F」
その言葉でわかった。かつて自分が使っていた暗号。その中の一つに過ぎないが、それだけで十分だった。
「・・・用件をどうぞ」
ため息をつきたくなるのをこらえて相手の返答を待った。もとより、ここに来ると決めた時点でこのようなことになるのではないかというのは予想がついていた。
依頼内容は問題分子の鎮圧。鎮圧といえば聞こえはいいが、早い話が“殲滅”だ。金には困っていないが、仕方がない。学園都市のほうの口座は空にしてあるが、まだ残ってはいるのだ。
相手の説明を聞き終わり、ある程度の創造命令を機械に下すと、万はまたロックをかけ直しながら部屋を出た。
言われた場所に行くと、そこには大量の人間がいた。おそらく、彼らが依頼にあった問題分子だろう。となればやることはひとつだ。幸いなことに、ここでは自分の能力を制限するものも必要もない。
堂々と正面の扉を破り入ると中の人間が一斉にこちらに向いた。が、武装を向けないところを見るとどうやらこいつらの大半は能力者らしい。
「俺としてはあんたらに恨みはないけどぉ、依頼だからごめんねぇ」
軽口のような宣言とともに彼の一方的な“狩り”が始まった。
特に苦戦することもなく、10分ほどで殲滅を完了し建物を出ると直後に携帯が鳴った。
「はいもしもし」
「WC6F」
その声は先の依頼人の声だった。大方どこからか見ていたのだろう、そんなことは今まで何度かあったから慣れっこだった。
「依頼は完了しました。後始末と報酬をお願いしますよ?」
「わかっています。もうすでに報酬は振り込み済みです」
「・・・手際のいいことで。では」
そういって電話を切ると、万は部屋へ戻って行った。
部屋に戻ると、そこにはもうすでに入力された作業をほとんど終えた装置がまだ稼働していた。それの仕上げを見届けると万はほぼ完成形ともいえる機体に手を触れ―――ようとしてやめた。そして手袋をはめると自ら工具を手にして仕上げの作業にかかった。
作業の手を止めずに万は考える。
(・・・いくら暗部が解体されたからっていっても、どうあがいてもああいったやつはいるもんだな。まあ、仕方のないことではあるが。収入が消えないのは、まあ・・・悪くはないが・・・)
正直に言うと、人を殺すことに躊躇はないが、良くは思っていないことも確かだ。殺しという行為に一種の快感を覚えそれに溺れることとならないよう彼が調整しているのもあるのだが。それに、
だが、今はそれより。
(これを邪魔されなければいいんだけどな・・・)
そう思いつつため息をついた。幸いなことに、ラボとは連絡がついている。これからやるべきことの舞台はもうすでに整っていた。
仕上げが終わると、彼はそれに乗り込んだ。乗り込んだ状態で仮想ディスプレイをいくつか表示させそれらを操作していく。ほどなくして初期設定を終えると、万は服を着替えた。
「無理を言って済みませんでした」
それからさらに10日ほど経った日、万は画面の前で頭を下げていた。その画面には、年老いた男性と壮年の女性が写っていた。
「この程度のことで気にする必要などないさ。前も言っただろう? 君はまだ子供だ、もっと大人に頼っていいのだよ」
「そうよ。登録改変なんてたやすいのだから。私たちはそんなの何回もやっているのだし」
「・・・ありがとうございます」
それに対し所長は鷹揚に手を振り、懇意にしている先輩は笑って頷いた。そんな様子に、万は一度上げた頭をまた下げた。
「・・・しかし、あれはすごい能力を持っているな。君の技術力には感心したよ」
万の様子を知ってか知らずしてかはわからないが、所長が心から感心したように言った。それに先輩も同調する。
「本当よ。あれ、半ば反則じゃない?」
「いえ、たまたま思いついた考えを、構想を練っていたものに付け足したものです。とはいっても、自分でもすごいものを作ってしまったという自覚は多少なりともありますが」
「まあ、ね。・・・で、どうするつもり?」
「表向きは隠し通します。まあ、看破されたりしたらそれまでですけど。それより、セイリュウは本当によろしいのですか?」
「ああ、構わないよ。あと二機あるしね」
「・・・ありがとうございます」
そういってさらに頭を下げた。その時、部屋に備え付けられた電話が鳴った。
「・・・すみません、これくらいで失礼します」
「ああ、がんばりたまえ」
その言葉をありがたく頂戴して万はテレビ電話を切って電話にでた。
その数時間後、万は指示された場所に向かった。
先ほどの電話も仕事の電話で、今回の依頼は超大規模スキルアウトの掃討だった。なんでも、複数のスキルアウトが手を組んで生まれた大規模な集団のため、複数の組織に依頼していると言っていた。そのうちの一角を彼が担当することとなった。
指定された場所まで来ると、さっそく轟音と閃光が彼を襲った。大出力のスタングレネード、不意打ちで使われたそれにより彼の聴覚と視覚はしばらくにわたって奪われた隙をついて、スキルアウトが物影から対物ライフルで万を狙撃した。
対物ライフルは、かつては戦車などにも使われた大口径かつ大威力の銃だ。その威力の大きさは着弾時の煙の大きさが物語る。これでは撃たれた人間は肉片も残らず文字通り“吹き飛ぶ”だろう。
だからこそ、撃った本人も後ろに迫る影に気づかなかったのだろう。
「人間に対してはいささかオーバーキルすぎなぁい?」
その声が聞こえたときはすでに遅く、その眉間には貫通銃創が刻まれた。
「さて、お片付けと参りますか」
そういって彼は暗闇に駆け出した。
それから10分ほどで指定されたエリアの掃討を終えた万が少し索敵範囲を広げる形で歩いていると、銃声がほど近い位置から聞こえた。気配をひそめつつ歩み寄ると、そこにはサブマシンガンと思われる銃を乱射するスキルアウトと思われる人影と、正面に何か液体を展開して涼しい顔をしている少女がいた。
もしものことがあれば敵対するかもしれない相手だ、と思って諜報もかねて影から見ていると、万はあることに気づいた。
少女は万の知る人物の一人だったのだ。名前はまだわからないが、水着を買いに行ったときに万たちを尾行していた少女だったのだ。
なぜこんなところにいるのか、と万は考える。彼女はあの時、万の記憶が正しければ
その思考は轟音によって強制的に中断させられた。周囲の湿度が異様に高いことを見ると、水蒸気爆発でとどめを刺したのだろう。
「待てよ。あんた、何者だ?」
死体を確認して去ろうとする少女を万は呼び止めた。それに対して相手の少女は飄飄とした笑みを浮かべた。
「あら、黒川くん。久しぶり、あの時以来かしら?」
「そんなことはどうでもいい。俺の質問に答えろ。お前は何者だ?」
そういいつつ万は大口径の拳銃を向ける。これの直撃を食らえばひとたまりもないだろう。だがそれでも相手の少女は冷静だった。
「答えるからその銃をおさめてくれない?おねえさん、血の気の多い子は嫌いよ?」
そういいつつ手の中の扇子を広げた。そこには“暴力反対”の文字が達筆で書かれていた。とりあえず万は拳銃を持った手を下げた。
「いい子ね。・・・さて、私は
「・・・とりあえずは信用してやる」
そういって万は背を向けた。
「えー、それだけー?つれないなー」
「あんたが面白かろうがつまらなかろうが俺には関係ない」
「それはどうかにゃーん?」
女生徒、もとい楯無に背を向けて去ろうとしたとき、目の前に茶髪の女が現れた。その女を万はデータ上で見て知っていた。故に、無意識のうちに身構えていた。
「・・・何の用だ、麦野沈利」
「あら、私を知ってるんだ?」
「まあ、な。あんたは有名人だからな」
「それは否定できないわね。私個人としてはあなたに用はないわよ。だけど、上があんたに接触しろってうるさくってね」
そんな麦野の発言に万は心底怪しいという表情を表に出した。
「上だぁ? 一体どういうことだよそりゃあ」
「なんでも、一応学園都市出身でIS操縦者のあんたが戻ってきたから、この機に何かしら情報を引き出せ、だと。まったく、戦争でも起こす気なのかねぇ」
「そりゃあ難儀なことで。でもな、俺から情報を渡す気はねえ。ま、そっちが勝手に入手する分には構わんがな」
その言葉を隣で聞いて、真意をつかんだ楯無がぎょっとしたような顔つきになった。
「ちょっと、そんなことしたら問題になるわよ!?」
「知られた側が知られたと知らなければ特に問題はないでしょう。つまるところ、俺とあなたが黙っていれば特に問題もないってわけです」
そんな横暴極まりない発言に楯無は軽く頭を押さえた。その様子を横目で見つつとにかく、と彼は切り出した。
「あなたはここで誰も会わなかったし、聞かなかった。それでいいでしょう。では、自分もこれで」
そういってつかつかと万は歩き出した。その後ろから麦野がついてきているのは能力でわかっていたから、後ろを振り返る必要はなかった。
こうして麦野を部屋に入れた万は、照明をつけて真っ先に部屋の奥へ向かった。この部屋を使いだしてからほとんど使わなかった茶葉を取り出してガラスのコップに注ぐと、無言でここまでついてきた客人の前に出した。
「粗茶ですが」
「ありがとう。でも、私がこんなものほしいと思ってないことはわかってるわよね?」
そういって麦野は下から万をにらみ上げる。普通ならすくみ上ってしまうその眼をものともせず万は返す。
「もちろん。こっちだ」
そういって彼女に背を向けて歩き出した。奥の部屋に入ると、その部屋はすでに空だった。それもそうだ、ほかならぬ万がそうしたのだから。
麦野が何か言う前に、万はその部屋の中心でセイリュウを展開、しゃがみこんでから飛び降りた。
「へえ、これがIS、か」
「ああ、そうだ。既存兵器の中では学園都市製のものを除いて最強クラスに鎮座するパワードスーツ。その俺専用機だ」
「専用機、っていうからにはそれなりにレアなのか?」
「ああ。ISは世界に500とないからな。自分専用のISを持ってるってだけで希少だ。笑えるだろ?」
「確かにな」
万の言葉に口の端で笑うと、麦野はセイリュウに近づいて一言発した。
「なあ、これ触っていいか?」
それに対し特に疑問を持たずに万は了承した。否定する理由がないからだ。その返答を聞いて麦野がセイリュウに触った瞬間、彼女は軽く頭を押さえてしゃがみこんだ。
「おい、大丈夫か!?」
思わず駆け寄って顔色をうかがう。その顔には疲労の色が濃く出ていた。
「・・・なんとかな。なんか、頭の中に一気に情報を流されたような感覚がして、めまいがしただけだ」
その言葉にはっとして万はセイリュウを見上げた。そこにあるセイリュウは―――起動していた。
確かに降りるときにセイリュウの電源は落とした。だが、今は起動している。そして、今の麦野の言葉。それらから導き出せる結論はひとつだった。
「あんた、どうやらIS適正があるみたいだな」
「・・・は?」
何を言っているのかわからないという様子の麦野に万は続けた。
「つまりだ、あんたはISを動かせる。こいつを動かせたことが、それの証拠だ」
それに対して麦野は黙っている。表情が消えたその顔からは、いったい彼女がどう思っているのかを推し量ることはできなかった。
「で、どうする?」
その言葉に麦野は顔を上げた。
「どうする、ってどういう意味だ?」
「こうなった以上、選択肢は二つだ。一つ目は、この街を出て、ISについて学ぶためにIS学園へ行く。もう一つは、知らぬ存ぜぬでことを押し通す」
そこまで言ったところで万は相手の様子をうかがった。相手は押し黙ったままだったが、しばらくののちに口を開いた。
「・・・このことを知っているのは?」
「今現時点では俺とあんた、そしてアレイスターだな」
「アレイスター・・・?統括理事長の?」
「ああ、そうだ。あいつは、この街をリアルタイムで監視してる。有名な話だろう?」
「そういえば聞いたことあるわね、そんな話。私としては知らぬ存ぜぬで居たいけど、これは依頼じゃなくて一種の命令だから、それでは通らないのよね」
「・・・そういうことかよ」
通りで長いこと黙ってたわけだ、と万は一人納得した。話に聞いていた麦野沈利とは、よく言えば判断力のいい、悪く言えば短気な性格だったと聞いていたからだ。そんな彼女が悩むことに対して少し納得がいっていなかったが、それは今納得がいった。
そんなことを考えながら、万は遠くにある無線機を取り、そこに向かっていった。
「おい、アレイスター。今までの一連の話、お前も聞いてるんだろう?」
それに対してしばらくザーという音が聞こえ、やがてそれが途切れて声が聞こえてきた。
「それで、どうするつもりだい?タスカー君」
「こいつの枷をはずしてもらいたい。あんたならたやすいだろう?」
それに対する返答はしばらく間があった。
「今、他の組織に指示を出しておいた。これで大丈夫なはずだ」
「そうか、礼を言う」
それに対して少し間をおいて無線の相手は言った。
「それにしても、変わったな。君は、自分以外のことはどうでもいいクチの人種だと思っていたのだが」
「まあ、否定はしないよ。表向きはそう振る舞ってきたからな。でもな、外に出てから気づいたんだよ。俺は、やっぱり
「・・・ふっ、君は面白い。彼女に伝言だ、どういう選択をしようとも、私は特に気に留めない。悔いのない選択を、と。そう伝えてくれ」
それが聞こえてから横の麦野を見ると、手を伸ばしていた。それの意図を察して万は無線機を渡す。
「言われるまでもねえよ、この狸が」
だが、麦野がそういったころには無線は切られており、相手の返答を聞くことはかなわなかった。
麦野から無線機を受け取りながら、万は問いかけた。
「で、どうするんだ?」
その表情に迷いはなかった。
「毒を食らわば皿まで、ってやつだ。行ってやるよ、IS学園ってやつに」
ということであの人=むぎのんでした。
そしてむぎのんIS側入り確定です。他のキャラでもいいかな、と思ったんですけど、年齢的な問題とか、それクリアしててもいろいろアウトな人やらでしたのでこの人に。
それに年齢クリアしてるキャラではむぎのんは結構好きなキャラですし。←完全に私情
では、また次回。