【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、なんというか、お待たせしました?

今回は学園祭です。新たなオリキャラも出ます


19.学園祭 波乱の幕開け

万たちが着々と学園祭の準備をしているころ、とあるホテルの一室では複数人の女性たちが集まっていた。

その中の一人である、長い髪をカールさせた女性が手に持った写真を周りに見えるように机に置きながら、あくまで事務的に言った。

 

「今回の目標は白式の強奪、および特定生徒とその専用機の情報取得。特定生徒っていうのはこの二人」

 

その言葉に髪をウェーブさせた女性がその中の写真の一つを指さしながら言う。

 

「男二人はわかるが、後の一人は何もんだ?」

 

「麦野沈利っていうらしいわ。詳細はわからないけど、彼女は学園都市の人間。これは二人目もね。加えて、面白い情報も入っているの」

 

「面白い情報?」

 

その言葉に一つ頷くと、更なる爆弾発言が飛び出した。

 

「彼女の専用機、名前は閃光っていうんだけどね。これ、外の研究所では作られた記録がないのよ。つまり・・・」

 

「学園都市製のIS、ということか?」

 

その中の明らかに幼い少女が静かに口を開いた。その言葉にやさしく微笑んで続ける。

 

「おそらくね。それに、彼女はどうやら学園都市の後ろ盾もあるみたいでね。最悪、彼女を第一目標にして頂戴」

 

「そんなに重要なのかよ?」

 

「ええ。このために、デメテルやセレネたちを呼ぶほどには、ね」

 

突然出てきた名前にウェーブヘアの女は露骨に嫌な顔をした。

 

「おいおい、あいつらまでか? 冗談だろ?」

 

「冗談でも何でもないわ。それに、今回彼女たちはあなたたちとは違うルートで追ってもらうことになってるわ。それと、彼女たちも私たちと同じ人間なんだから、そんな顔をしないの」

 

「・・・そうか。わかったよ」

 

ウェーブヘアの女はその言葉に落ち着いたように見えた。

その様子を見計らって少女が問いかけた。

 

「それで、今回の作戦は?」

 

その言葉にカールさせた女性は顔を引き締める。

 

「今回はまずオータムが織斑一夏に接近して、その間にデメテルたちが一波乱起こす。そうしたらオータムが織斑一夏に、セレネが黒川万に、デメテルが麦野沈利にそれぞれ会敵して目標を達成。目標を達成次第帰還。エムは三人の脱出の援護と、作戦続行不可と判断場合の強制介入のため待機。OK?」

 

その言葉に二人はうなずいた。

 

「ならいいわ。作戦決行日まで時間があまりないから、それまでゆっくり休んで頂戴」

 

そういうとそれぞれ各々の部屋に戻って行った。

 

 

 

そして迎えた学園祭の日。

一組の前には長蛇の列ができていた。万はてっきりあの天然ジゴロ目当ての客がほとんどだろうと思っていたが、

 

「へえ、黒川君の燕尾服っていうのもなかなか乙なものね~」

 

「眼福眼福~」

 

「遠目で写真とっておこーっと」

 

「それ、後で私にもちょうだい」

 

こんな会話がしばしば聞こえるところを見るとそうでもないらしい。いくら急いでいたからとはいえ、邪魔だからという理由から人間を能力でぶっ飛ばした彼の心象はかなり悪いと思っていたから、これには純粋に驚いていた。

クラスの女子に言わせると、「織斑君がやさしくて頼りになる系の男子なら、黒川君はインテリ系」とのこと。もっとも、それを聞いた麦野は軽くふきだしていたが。

 

万が接客に出ていると、一夏に何やら熱心に語りかけている女性がいた。声は聞こえないが、大方、白式の追加パーツの売込みだろう。

白式が二次移行(セカンドシフト)したことが公開されてからというもの、この手の話が絶えない。二次移行(セカンドシフト)した機体は極めてまれで、是が非でもデータを取りたいのだろう。

とはいっても、当の一夏はそのすべてを断っている。なぜなら、白式は雪片弐型と単一能力(ワンオフアビリティ)拡張領域(パススロット)を使っているからだ。早い話が、白式は雪片弐型と雪羅以外の武装を受け付けない状態なのだ。それを知ってか知らずしてか売り込む女性を一夏はかたくなに断ろうとしているようだが、断りきられず押し切られそうになったところで助け舟が入り、何とか一夏はその場を脱することができたようだ。

ひと段落ついたことを見計らって万は近づいて行った。

 

「また追加武装の売込みか?」

 

「ああ・・・。断ってもしつこくてな」

 

「・・・ご愁傷様。一応聞いとくと、さっきのどちら様?」

 

「えっと、みつるぎの巻紙礼子、っておっしゃったけど」

 

「OK、次来たら門前払いしとくから安心しろ」

 

「おう、サンキュ」

 

そういって歩き出したところを今度は別の人間につかまった。

 

「・・・で、何の用だよ麦野さん」

 

「さん付けじゃなくていいわよ。・・・部活のやつ、一緒に回らないかと思ってさ」

 

「ははーん、こういうことしたことないから勝手がわからないわけか、そうかそうか」

 

「・・・撃ち抜くぞ?」

 

軽口で返した万に麦野は掌の中に光の玉を出した。その危険性を理解している万は慌てて止めに入った。

 

「待った待った、こんなところでそんな物騒なもん出すなって!・・・とりあえず、付き合うぞ」

 

「一応礼は言っておくわ」

 

そういって二人は歩き出した。

 

ある程度歩いて周りに聞き耳を立てている人間がいないことを確認して万は切り出した。

 

「で、どこに行く?」

 

「そうね、運動部でもいいけど・・・」

 

「暗部で鍛えてた俺らが行けばどうなるかは簡単に見当がつくな、うん」

 

軽く試合をしようにもこの二人なら“試合”ではなく“死合(殺し合い)”になるだろう。実際、体育の授業で軽く球技をしたところ、この二人のペアだけ試合の次元が違うという事態も発生していた。

 

「で、結局どこ行くよ?」

 

「音楽系の部活ってある?」

 

「・・・確か、吹部が部活展示をしてたはずだな。行ってみるか?」

 

「吹部?」

 

「吹奏楽部。略して吹部。で、どうする?」

 

「・・・行ってみるか。なんか面白そうだし」

 

「OK。ところで、学園都市側の様子はどうなんだ?」

 

「いまいち興味をなくしてるみたいね。もっとすごいものかと思ってたら案外そこまででもなくて拍子抜けって感じ」

 

麦野の専用機である“閃光”の設計、組み立てを万が行う代わりとして、学園都市の統括理事会の一部からそのデータと危険性をレポートしろ、と言われているのである。もっとも、設計者は外部の人間としたため、その任は麦野のみにかかっている。厳密には万は完全に外部の人間ではないのだが、暗部解体に伴い(あくまで表向きはだが)外部の人間となったのでそこまで的外れでもなく、不審に思われることもなかった。

 

閑話休題。

 

その言葉を聞いても万はそこまで驚いていなかった。ISに携わる者として、そしてこの学校で数少ない設計者側に立った身としてはあれは学園都市内の兵器に比べればそこまで脅威でないと思ったからだ。もっとも、学園都市の兵器は“資源と時間と意志があればいくらでも作れる”という最大のメリットが存在するが。

 

「まあ、俺の組み上げた機体だからな、あれは。トップガンたちの乗るものに比べれば普通の状態のあれは多少なりとも見劣りはしてもおかしくないしな」

 

「なんだよ、それ。劣化品作って与えたっていうのか?」

 

「そうじゃなくて。・・・普通の状態って言ったろ?」

 

「・・・ああ、そういう」

 

“閃光”は、彼女の代名詞たる原子崩し(メルトダウナー)が使えるものとなっている。彼女が訓練で用いたライフルの正式名称はMDライフルというのだが、このMDは”Melt Downer”の頭文字である。また、Oビットも原子崩し(メルトダウナー)を発射することができる。

スタディーコーポレーションの“革命”と称した行為の中の産物をもとに万が発想したものである。彼女の脳内での演算をヘッドセットで読み取り、それをライフルやビットに伝達することで能力の行使を可能としたのである。

知っての通り、彼女のそれは強力無比な威力を誇る。そのため、彼が機体本体にリミッターをかけている。

 

「何度も言うが、いくら言われてもリミッターは」

 

「外すな、だろ?何回言うんだよその台詞」

 

この言葉からもわかるように、リミッターは外すこともできるが万は被害がどれほどになるのかわかったものではないから外すなと何回も言っている。

 

「わかってんならいいけどよ。・・・と、着いたぞ」

 

そういって万が先に扉を開けて中に入ると、ちょうど待ちはそれほどいなかった。それを見て麦野が万に問いかける。

 

「で、どんな楽器がいいんだ?」

 

「そうだな、最初はボーンなんかいいんじゃね?」

 

その返答を受けて麦野は近くにいた吹奏楽部員に話しかけた。

 

「あっそ、ならその、ボーン?っていうの吹きたいんだけど?」

 

「わかりました。少し待っていてください」

 

そういうとその生徒は少し奥に入った。そして、戻ってきたとき、その手には誰もが知るスライド式の金管楽器が握られていた。

 

「へえ、ボーンってトロンボーンのことなのか。てっきりなんか骨みたいなやつなのかと思った」

 

「まあな。いちいちトロンボーンって言ってると面倒だからボーンって省略するんだよ。それとboneじゃねえからな」

 

そんな会話をしながら麦野はレクチャー通りにトロンボーンをもって吹き始めた。うまく楽器をならせているところを見ると、トロンボーンが比較的ならしやすい楽器であるとはいえど、すんなりできるあたりは本人の才能も影響しているのだろう。

隣で立って見ていると先ほどとは違う吹奏楽部員が近くに来て声をかけてきた。

 

「黒川君も何か試奏してみます?」

 

「ああ、そうですね。なら、フルートをお願いできますか?」

 

そういうとその吹奏楽部員は一旦奥に引っ込んで、戻ってくるとその手には細長いケースがあった。相手の吹奏楽部員はその中に入っている銀の横笛を手際よく組み立てると万に手渡した。万はそれの頭部管をはずすと軽く音を鳴らした。それを見て隣の吹奏楽部員が驚いたような顔を見せた。

 

「過去に吹いたことがありまして」

 

そういってさらに少し頭部管を吹くと、頭部管をつなげて軽く吹き出した。ロングトーン、半音階といった基礎練習から始まり、簡単な曲なども吹き出した。

 

「アルルの女、か」

 

一曲吹き終わると、自身の体験を済ませたであろう麦野が隣に来て言った。

 

「まあな。これくらいだったらいけるからな」

 

「で、どうだったんだよ、感触のほうは?」

 

「やっぱブランクのせいかいまいちってとこかな」

 

「あれでいまいちなのかよ」

 

「ああ。吹けてた時はもっと楽器が鳴ってたからな。まあ、基礎をあんまりやんなかったってのもあると思うけどさ。ところで、そろそろ時間じゃねえか?」

 

万のその言葉に麦野は壁にかかっている時計を見た。万の記憶が間違っていなければ、そろそろ教室に戻らないと休憩終了時間に間に合わないはずだ。

麦野もそれに気づいたのか、時間を確認すると聞き取れないほどかすかに声をもらした。

 

「ちょっとギリギリね」

 

「よし、そうとなったら走るぞ」

 

その言葉をスターターがわりにして二人は走り出した。

 

 

 

二人が教室につくと、教室は静かになっていた。

あまりにも度を過ぎた静けさに不審に思った万は近くにいた女生徒に声をかけた。

 

「・・・なんかあったのか?」

 

「体育館で織斑君が劇に出るらしくて、みんなそっちに行ってるみたい」

 

その言葉に万は心の中で合掌した。そういった話は本人から聞いていないし、噂でも耳にしていない。ということは、急きょブッキングされて本人が断れなかった、といったところだろう。

 

「んじゃ、俺はしばらく表に出るわ。あいつほどじゃないが、客を集めれるかもしれない」

 

「ありがとう、お願い。じゃあ、麦野さんは厨房ってことになるけど・・・」

 

「構わないわ。一応、料理はできるほうだしね」

 

「ありがとう、二人とも。それじゃ、お願いしまーす」

 

そういってぱたぱたと女生徒が走って行ったのを尻目に二人はそれぞれの行動に移った。

 

 

万が表に出た影響か、閑古鳥が鳴きそうになっていたクラス展示は、しばらくすると忙しすぎず暇すぎずといった状態になっていた。

 

そんな折、万に指名が入った。クラスメイトに言われて入り口のほうを見ると、高校生か大学生か、といった年頃の女性がいた。

 

「お待たせしました、お嬢さま。どうぞこちらへ」

 

「いえ、ここでいいわ。どうぞお気遣いなく」

 

慣れないながらも覚えたサービストークに帰ってきたのは冷たい返答だった。そして、万はその返答の裏に感じ取ったものに対して脳内に演算を走らせた。

 

「では、ご用件をお伺いしてよろしいでしょうか?」

 

「いいわよ。―――私の目的は、あなたの専用機よ」

 

その言葉とともに彼の足もとにレーザーが万の足もとに放たれた。放たれる一瞬前の変位を感じ取りバックステップで回避する。土煙が晴れる前に、万はあらかじめ走らせていた演算を実行、その瞬間に後ろの扉とその周囲の壁が吹きとんだ。

 

「逃げろ!!」

 

教室を背にした状態で一声大きく叫ぶと、教室は一瞬の静寂の後に喧騒に包まれた。半ばパニックとなった群衆は訳も分からず新しく開かれた大きな出口に向けて迸った。

 

「あら、あなたは逃げなくてもいいの?」

 

「俺が逃げたら、他を逃がした意味がねえだろ。それに、あんたもこっちのほうをご所望じゃねえのか?」

 

周りに人がいなくなったことで万は自らの纏った殺気を隠すことなく発する。それに呼応するかのように相手の纏う雰囲気も今までのような包み隠したものから冷えた鉄のようなものに変わった。そんな雰囲気に似合わないように高く相手は嗤う。

 

「確かに、私としても思いっきりやれるのは好都合。その点については感謝ね」

 

「・・・一応聞いておこう。名前は何という?」

 

それに対し女は妖艶に笑った。

 

「セレネ、と。そう呼んでもらえれば十分よ」

 

「月の女神を冠するとは、ずいぶんなことだな!」

 

そうひとつ吠えると万はあらかじめ作ってあったもう一つの演算を用いて電撃を放つ。それに対し相手はその笑みを獰猛なそれへと変えた。

 

 

 

それとほぼ同時刻。麦野も来客をもてなしていた。

 

「全く、懲りねえな上も」

 

「・・・あなたの言う上が、誰のことを指すかはわからないけど、おそらくあなたの思っている人物の差し金ではない、とは言っておく」

 

「へえ、じゃあそっちは誰の指示で動いていて、目的は何だ?」

 

「指示した人間をペラペラしゃべるほど私は馬鹿じゃない。それと、私の目的はあなたの情報」

 

機械的に淡々と受け答える相手に対して麦野は目を細めた。ちょうど今は少し席をはずしていて、周りには誰もいない。

 

「へえ、なら、力ずくで奪ってみな!」

 

そういって原子崩し(メルトダウナー)を放――――とうとするが、それはかなわなかった。

なぜなら、足場が崩れて狙いをかき乱されたからだ。

 

「言われなくてもそのつもり。麦野沈利」

 

「・・・私を誰か知っていて勝てるとでも?」

 

「あなたの能力は照準と出力の調整に時間がかかる。その間をつけば撃破は可能。ギリシャ神話における大地の女神の名前を冠する私なら」

 

「・・・なぁるほど。なら、やってみろよ、デメテルさんよ!」

 

そして、こちらも戦闘を開始した。




というわけで。はい。

セレネとかデメテルとか何もんよ?って方は設定集(ネタバレ多め)のほうへ。

前回投稿時にご指摘がありました、麦野さんの後ろ盾。
正解は学園都市の一部上層部がISの情報がほしいからという理由からゴリ押しでいれたということです。

さて、次はいつになることやら(遠い目

これからもよろしくお願いします。
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