なんというか、バイトやらバイトやらテストやらで忙しくて書き溜めする体力すら残らず。
飲食店とか接客業とかやってるひとならわかると思いますけど、お盆が・・・。
しかも今回対して長くないっていうね。もうね。エタに片足突っ込んでますね。はい。
では今回どうぞ
万とセレネの戦闘は膠着状態にあった。
具体的にいうなれば、セレネの攻撃を万が避け、反撃をするも相手もそれを撃ち抜きつつ攻撃、という状態が続いているのである。当初は反撃すら読んでそのまま肉薄する万だったが、至近距離からレーザーを当てられて以来そこまで一気に接近できないのだ。その攻撃は何とかかわして掠るだけで済んだが、あとコンマ数秒回避が遅れていたら間違いなく目玉をつぶされていただろう。
回避しつつ距離を取った万は空気の玉で応戦する。が、それすらも読んでいたのか、相手はそれも回避し無数のレーザーを放つ。直後、爆風が視界を覆った。
なぜこうもこの戦いで万が劣勢であるのか、というのには二つの要因が存在する。
一つは、ここが屋内であるということだ。こんなところでISを展開しようものなら、ISの大きさが災いして身動きが取れず、文字通り穴ぼこにされるだろう。
だが、万が苦戦している理由はもう一つの要因によるところが大きい。
そのもう一つの要因を説明するには、そもそも“光とはどういうものなのか”ということを説明しなくてはならない。
光とは、一言で言ってしまえば量子である。
では、量子とは何なのか。これまた端的にまとめてしまうと、“粒子と波の両方の性質を持つもの”である。つまりは、ただの物質ではなく波の一種なのだ。それゆえに、あくまで“物質を”操るに過ぎない万には操ることができない。
結果、相手の攻撃をも無力化し、こちらの攻撃を確実に当て目標を仕留める、といういつもの戦い方を封じられたことにより、万は劣勢を強いられることとなっているのである。
閑話休題。
「目くらましのつもり?悪いけど、私にそんなもの意味はないわよ?」
殺し合いの場には似つかわしくない、優雅とも思えるような足取りでセレネは歩く。そして、能力によって判明した場所に向かって数本のレーザーを撃とうとしたとき、暴風が吹き荒れた。
それに対してセレネは疑問を覚える。間違いなく、この粉塵は相手が―――万が起こしたもの。目的は、おそらくは視界を奪うこと。ならば、なぜすぐその状態を解除するような真似をしたのか。もっとも、視界をつぶしても双方ともに意味はないが。
だが、その疑問はすぐに晴れた。視界がクリアになった時、そこにいるべき人物はいなかった。その瞬間、セレネはとたんに落胆したような表情を浮かべた。
「なーんだ、結局尻尾巻いて逃げるんじゃん。つまんないのー。まあ、速攻で見つけ―――」
その言葉が最後まで紡がれる前に周辺に爆発が起こる。どう考えても、相手の位置を正確に把握していないとできない真似だった。それはつまり、
(馬鹿な、黒川万に身を隠すものなどなかったはず・・・!)
なぜなら、万に身を隠す方法がないという情報を知っていて、しかもなおかつ自分の能力に絶対の自信を持っていた彼女にとって、これは大きなショックだったからだ。今までも、彼女の能力は正確に対象の位置を教えていた。それが、ここにきて外れたとでもいうのか。
砕かれた絶対の自信、何がわかっているかわからない動揺や疑問、未知のものに遭遇したかのような恐怖、その他もろもろの感情が相まって思考と行動を停止させた彼女はまるで竜巻でも起きたような暴風になすすべもなく倒された。その上から体重がかけられ、ほぼ同時に首筋に冷たい感触が突きつけられた。
「いや~、さしもの俺も焦った焦った。まさか、光を操る相手とはねぇ・・・」
そして、聞こえてくるのは軽口のような口調の死神の声。
いつもの彼女なら、この程度の拘束は能力を使って解くことができるだろう。だが、先ほど能力に対する自信を喪失した彼女にとってそれは不可能だった。さらに、相手は次の瞬間に追い打ちをかけた。
「いや、より正確には、“波を操る能力者”、ってとこかな?」
その言葉にセレネはそこまでは驚かなかった。相手は万物を掌握する“
「・・・貴様、どうして・・・」
「索敵を逃れたか、ってか?」
読まれたことに驚きを覚えつつ、もう一度ダメもとで相手に向かってレーザーを放つ。
だが、その光線はまるで何かに誘導されるかのように
「今のがヒントだ」
こちらを見据えつつ
そして、こちらの頭に手を添える。
「情報がほしいならくれてやる。が・・・」
これに耐えられるものならな。
そういうと、二人の意識は現実から離れていった。
麦野とデメテルの戦いもまた、拮抗していた。
それは、麦野が照準と出力の調整に時間を要する間にデメテルが地面をかき乱し直撃を防ぎつつ攻撃、ということを繰り返していたからだ。もっとも、デメテルの攻撃もだんだんと読めてきた麦野にとって攻撃をいなすのも容易になってきているので、お互いに決定打を入れるには至ってはいないのだが。
「まだ・・・!」
「ちいっ・・・!」
淡々と攻撃と防御、そして回避を続ける二人の攻防は、不可視のものを操る後二人のそれより派手なものとなっていた。
麦野が苦戦しているのは全力を出せない理由があるから、というのもある。
それはなぜか。
なにせ、彼女の能力は貫通力が高すぎるのである。何枚の壁であろうと関係なく撃ち抜く
閑話休題。
そして、何回目かの回避の際、麦野はバックステップをしつつ後ろの壁をごくごく短い射程の能力で撃ち抜き、屋外へ出た。
「屋外に出ても、状況の変化はない。情報を渡して」
「いやだね。それに、これは私が作ったんじゃないから、作ったほうに聞いたほうがよっぽど有効だと思う・・・ぜ!」
返答とともに数筋の光条を走らせる。だが、それをデメテルはうまく回避して地面から巨大な棘を出現させて攻撃を仕掛ける。
その攻撃を突破する形で麦野は一気に肉薄した。まず放たれた少し大振りなフックをデメテルは受け止め、勢いを殺さずにそのまま投げる。
「あなたの攻撃は私には効かない。そんなのわかっているはず。さっさと情報を渡して」
「何度も言ってるが、それにこたえるつもりはねえよ」
あくまでも機械的な勧告に帰ってくるのは荒れた口調の拒否。それに対し、デメテルは決めた。
「なら仕方ない。消えて」
あくまでこちらの目的は情報取得。対象の生命の有無は関係ない。四方から棘と礫を無数に飛ばした。
だが、麦野はそれを見て余裕とも取れる笑みを浮かべるだけだった。
「―――ひとつ、いいとこを教えてやる」
そして、一つ宣告する。
「外へ出たってことは、あんたにとっても好機だ。だけどな・・・」
そういうと、彼女は数枚、板を周囲に向けて放った。
「こっちにとっても好機なんだよ!!」
板にあたった瞬間、光線は無数に広がり、飛んできた礫や棘はすべて塵と消えた。
「・・・ちっとばかしやりすぎたか?」
すっかり穴ぼこになった周りを見つつ麦野がつぶやき、無線を取り出そうとする。これは万が一の時のためにと万が持たせていたものだ。
「・・・まだ、勝負はついてない」
その時に麦野を呼ぶ声があった。その声の方向を見、麦野はひとつため息をつく。そこには満身創痍となったデメテルがいた。先ほどの能力を被弾したのだろう。
「・・・その傷じゃもう満足に能力も使えねえだろ。諦めな」
「そんなことはない。それに・・・」
そういうと、デメテルは何やら細長いケースから白い結晶を取り出す。それを見た瞬間に麦野は正体と思われる物に思い至った。そして、彼女のやろうとしていることも。
だが、いかに第四位といえど、こうなってしまってはなせることなどなかった。
「もう私に、戻るところなんてない」
その言葉とともに、デメテルはそれを少量口の中に放り込んだ。
その瞬間、デメテルの雰囲気ががらりと変わる。
今までのコントロールされた、洗練されたような雰囲気から一気に荒れ狂う大波のようなそれへと変貌を遂げた。
(あれはおそらく体晶・・・あいつも滝壺と同じ口だったってことか。それか、あいつは満身創痍。だから、通常状態においては能力を行使することもままならないが、無理やり能力を引き出してしまえば話は別ってか)
その様子を見て、麦野は冷静に分析を始める。
この麦野の仮説は、例えるなら固く締めすぎた蛇口から水を出すために栓を壊すようなものだ。水の指向性を持たせることができれば、これでも能力を使うことができる。
むろん、これは大きな負担を生むが、それによる反動などは目の前の敵を倒してから考えればいいだけのこと。
そして、先ほどまでとは比べ物にならない牙が、礫が、地震が、土砂流が麦野を襲った。なんとか第一波をかわすことができたが、続いてさらに勢いを増して襲い来る第二波には対処が不可能だった。
さすがにやられる。そう思った瞬間、付近を暴風が礫を食らいつくし、土は濁流と牙を防いだ。
「いやー、なんというか、今日はびっくり続きだねぇ」
奥から、今までこの場で戦闘をしていたものではない声が聞こえた。口調こそ軽口そのものだが、
「まあ、こっちのほうが退屈しなくていいっていうのはあるんだけど」
デメテルにとってその声はまさに絶望をもたらすしかない声で、
「さて、どうしようかねぇ・・・」
首に手を当ててこちらに歩いてくる男は絶望そのものだった。
時は少しさかのぼり。
万はセレネの記憶を読み取ると、違和感を覚えた。
その正体はすぐに突き止めることができた。
めまいが生じないのだ。今まで学習装置を使ったりしたときに必ず襲っためまいが発生しない。そのことに違和感を覚えた。
だが、それより問題なのは。
「・・・端からかなう相手じゃなかったってことか」
目の前の相手も倒れてないということだ。
「・・・やっぱり、そっちにも情報が流れるわけか。こりゃ精神障壁作る必要があるかもな」
「情報なんて御大層なものじゃないわ。直前の思考が切れ切れに見えただけ」
「十分じゃねえか」
「そうね、さっきの種明かしには十分だったわ」
「で、どうすんだ? 俺としてはどうすることもできるわけだが」
そういいつつ万はナイフを再び首筋につけ、脅しでないと知らせる。
「そうね、まさか空気を操って屈折率を変えてレーザーを曲げる、なんて真似ができる相手が隠し玉持ってないとも限らない。それに、太刀打ちできるとも思えないし」
「ならさっさと降参してくれないか? 俺としては、このままってのは勘弁こうむりたいんだが」
「そうもいかないのよ。私の体には監視用のナノマシンが埋め込まれてる。逃げることも、降参することもできないのよ」
それに対し万が返答しようとしたとき、大きな音と振動が襲った。
「・・・どうやらどっかの壁に大穴があいたみたいね」
自身の能力で発生源をスキャニングしたのだろう、セレネがぼそりという。その直後、万はナイフをひっこめた。
「・・・時間ねえみてえから手短に言うぞ」
ナイフをしまいつつ、万はセレネに、今後自分が彼女に対して行うことを説明した。
それを実行すると、彼はさっさと外に向かった。彼も一応、かなりの広範囲を探ることのできる能力を持つ。それゆえに、だいたいの場所を探ることができた。
現場に到着すると、そこには今にも土砂流に飲まれそうになっている麦野がいた。
第一波は回避ができる量だが、念のため第一波ごとすべてを止めようとする。が、彼の能力はそれに効かなかった。暖簾に腕押しの文字通り、まるで何も変化の感触がなかったのだ。
なぜそんな現象が起こったかなど後で考えればいい。一瞬で思考を片隅に追いやった万は、第一波に次いで襲い来る第二波に暴風と地面の隆起を起こし、それ以降の攻撃を防いだ。
そして、ことは今に至る。
「・・・セレネは?」
「あの小娘なら倒したが?」
その言葉にデメテルは軽く目を閉じた。
「・・・そう、ならここは引かせてもらうわ。むろん、セレネは回収させてもらうけど」
「あれ、俺言ってなかったか? セレネって名乗った小娘は」
「倒した、でしょう? 聞いたわ」
「なら話は早い。俺にとって、倒したと殺したはイコール。ドゥーユーアンダースターン?」
おどけたようにしゃべる万の言葉に今度は大きく目を開いた。
「つーわけで、ここでこれ以上何もせずに引いてくれるってんなら、俺らは何もしない。少なくとも、ここにいる俺とこいつは何もしない。約束する」
隣に立つ麦野を軽く示しながら言う万の言葉に、デメテルはうなずいた。
「とりあえずは信じる。ただし、追撃してくる奴はすべて落とす」
「オーケー、伝えておく」
そういった瞬間に、そこに金色のISが降り立った。
「・・・どうやら私の部下が世話になったみたいね」
顔は機体の装甲に覆われ見えないが、言葉からしてこいつがボス格だろう。
「ああ、つってもそっちを相手にしたのは俺じゃねえがな」
「よくもまあぬけぬけと。セレネを殺したのはあなたでしょう?」
「まあ、な」
相手から感じる存在感。それは“今の自分たちでは敵わない”ということを明確に伝えていた。
「とりあえず、けりをつけるのは後回しにしてくれないか? 俺としては、追撃するつもりはない」
「あら、見逃してくれるの?」
「ああ。連戦はきついし、何より今の俺たちではあんたには敵わない」
麦野もそれを感じているのか、それに対する反論はなかった。
「そう。それなら、決着は預けておくわ」
そういって金色のISは飛び去った。
その後、ほどなくして敵の撤退の連絡が入り、この一件は一応の落ち着きを得た。
はい、というわけで今回は完全オリジナルでした。
いくつか発生した謎については近い回で解説をします。
次ははたしていつになることやら・・・。
かえって学校始まってからのほうが更新速度上がる気がしてならない。ワロス。
ではまた次回。
P.S.
活動報告にて少々意見を募っておりますので、できればそちらのほうにも遠慮ない意見をお願いします。