今回は間が短かったですね。
というのも、完全幕間だし。小話だし。前から考えてたやつだし。
ってわけで、今回どうぞ。
それから少しして、万はセシリアを部屋に招いていた。別に淫行をしようとか言った意思はなく、ただただ純粋に料理を教えるためだ。
「それで、今日は何を作るのですか?」
「そうだな・・・。から揚げなんかいいかもな、そこまで難易度高くないし」
「から揚げ、ですの?」
「そ、から揚げ。鶏肉はちょうど余ってるしな。多少の失敗ならどうにでもなるだろ。とりあえず、俺は後ろから見てるから、そこにあるおおまかなレシピ見ながらやってみ」
「わかりましたわ」
そしてセシリアは料理に取り掛かった。
万の見込みでは、純理論思考のセシリアならレシピを忠実に再現することができればある程度以上の味は安定して作れると思っていた。が、それを間違いだったと悟ったのはから揚げ(仮称)が揚がった後だった。
「できましたわ」
その声に気づく形で万は揚がったから揚げを見た。そして、一言、
「見た目は完璧だな」
そう言った。その言葉にセシリアが歓喜の表情になる。が、直後「だが」と一言いってから、万はげんこつを振り下ろした。
「殴るぞ」
「そういうセリフは殴る前に言ってほしいものですわ・・・」
軽く殴られた個所を押さえながらセシリアは小さく抗議をするが、それは柳に風と受け流す。
「お前なあ、いくら見た目整えるためとはいっても料理に香水やらなんやら使う馬鹿がいるか」
「・・・え、だめでしたの?」
「当たり前だろうが。お前、香水なんて飲んだら体壊すのくらい目に見えるだろうが。そんなもん料理に使うなっての。これじゃ、もはや生物兵器だ。もはや違う意味で飯テロだ」
「そこまでおっしゃいますの・・・。・・・え、ではこれは・・・」
「揚がったらそのままでいい。香りづけには・・・そうだな、レモンか、カボスを少しでもいいかもな」
「カボス、ですの?」
「そ。本来、サンマとかに使うことも多いんだけど・・・ま、全く合わないってわけでもないし。ただし、かけすぎ注意だぞ。特にカボス。レモンはすっぱすぎるってだけだけど、カボスの場合香りが強いから。ま、どちらにせよ、食べる前にお好みで、ってやつなんだが」
「・・・わかりましたわ」
「と、まあ、そんなことは一旦置いといて。・・・揚げなおすか」
「・・・そうですわね」
その返答を聞いて、万は躊躇なく先ほど先ほど揚がったから揚げを容赦なくゴミ箱に放り込んだ。
そして、から揚げも満足いく出来に仕上がったころに時計を見た万は意外と時間があることに気づいた。セシリアの物覚えの良さが発揮された形だろう。さてどうしたものか、と周りを見回したところで、万はひとつ代替え案を思いついた。
「なあ、ついでにあと一つ覚えないか?」
「え? よろしいですの?」
「よくなかったらこんなこと言ってない。で、どうする?」
「ならば、お願いいたしますわ」
「よし、なら早速やるか」
そういって万はボウルに水を張って台所に置き、もう一つボウルを取り出してその中に先ほど炊き上がったご飯を入れた。
「さて、もうだいたい予想はついてるだろうけど、今から作るのはおにぎりだ。これなら手軽にできるしな。手始めに、その水に手をつけて」
その言葉を聞いて手を水につけたセシリアを横目で見つつ万はご飯を少し手に持った。そのまま少しづつ解説を入れながら万はひとつ小さめのおにぎりを作ってパットに置いた。
「とまあ、こんな感じだ。簡単だろ?」
「そうですわね・・・。見ている分には簡単そうでしたが・・・」
「よし、なら早速やってみようか」
そういってご飯を手に取るセシリアを横目で見つつ、万はどこから持ってきたのか、梅干しをそのご飯の中心に乗せた。
「で、そのまま握っていく。ちょいときつめくらいでもちょうど良かったりするから、やってみ?」
その言葉で握っていくセシリアだったが、初心者によくあるように、うまくおにぎりの形が整わない。どうにか形を直そうと躍起になっているところを見かねた万は後ろに回った。
「うまくコツがつかめないなら丸くするのも一つの手だけど・・・どうする?」
「いえ、できれば三角に・・・」
「よし、なら少しは手伝おう」
そういうと、万は両手でセシリアの両手を包んだ。そのままうまく先導しておにぎりの形を整えると、万は手をゆっくりと放した。
「とまあ、こんな感じだな。やってみ?」
「あ、あの・・・できれば、もう一度か二度、同じように教えてもらえませんこと?」
「ああ、別に構わんぞ」
そうして、二人はそのまましばらく一緒におにぎりを作っていた。
そして、その翌日。
「・・・セシリア、なんか今日のあんたの弁当、趣が違うわね」
「確かにそうですわね。だって、万さんに教えてもらいましたもの」
その言葉と目線に女子以外の全員が反応した。
「え、それってどういうこと!?」
「文字どおりの意味だ。料理教えがてら、一緒に作ったってだけだ」
真っ先に食いつく凰に対する万はいつも通りの手間のかかりそうな―――普通にやれば、だが―――料理が並ぶ弁当をつつきながらつまらなそうに答えた。
「だけって・・・。本当にそれだけなの?」
「それだけだ。それ以上でも以下でもねえよ。とりあえず、まあ、食えるレベルにはしたがな、それ以降は本人次第ってとこか」
あまりの淡白さからか、不審に思ったのだろうシャルロットに対してもこの対応である。どうやら万は本気でそれ以上の興味がわかないらしい。
「そのような投げやりでいいのですか?貴公ならもっと教えることもできるでしょうに」
「大丈夫だろ。禁止事項は全部言ったしな」
「しかし、あのセシリアの料理が食べれるようになるとはな・・・」
どこか心配そうな二人に万は軽いため息交じりに答えた。
「それ、本人に言ってやるなよ?ま、とりあえず食ってみ」
その言葉に、その場にいた全員の橋が彼女の弁当に伸びた。セシリアのほうも端から周りに食べさせるつもりで作ったのだろう、少し多めになっていたので快く差し出した。
その時の弁当は周囲から絶賛され、かつてのメシマズはどこへやら、セシリアも料理に凝るほかの女子の仲間入りを果たしたのだった。
というわけで今回は以上です。
アニメでの2期10話に相当するお話ですね。
これはこれ以上でも以下の意味もないです。はい。
ではまた次回。