いよいよ年末ですね。皆様クリスマスをいかがお過ごしでしょうか。
自分はですね、学校行っております。それとバイトしたり、パズドラしたり。
ま、そんなのは置いといて。今回どぞー。
それから少し時が過ぎて、朝晩の寒さが初冬の訪れを告げるある日、IS学園の面々はバスに乗っていた。というのも、遠足と称して一泊二日のスキー・スノーボードへ行くことになったのだ。
そのバスに揺られながら、万はただぼーっと外を見ていた。臨海学校の時に好評だった例のおもしろ大福をさらに個数と種類を増やして作って持ってきたのだが、本人の口にあたる前にいつの間にかバスの中にいる人間に順繰りとわたっていた。もっとも、こんなこともあろうかとかなり多めに作っておいたため、問題はなかったわけだが。
また、それだけの個数を作るのにそれなりの時間と労力を使ったために、それ以外のおやつはそこまで個数はなく、ただ手持無沙汰に機体の状態などを確認するくらいしかやることもなかったが、それももうすでにほとんど終わり。
要するに、特にやることもなく、ただ外の景色の変化を見ることくらいしかやることがないわけである。
「なあ万、今何時だ?」
隣にいた一夏に聞かれ、万は左手首にはめた時計をちらりと見た。
「一時半過ぎだ。向こうには二時過ぎに到着予定だから、もうちょいってことか。ってか、そんくらい自分で調べろよ」
「いやーそれが、妙なバグがあるみたいで、時間が妙に表示されるんだよ」
「じゃあ、俺のも妙かもしれんぞ。一応これ、電波時計と普通の時計を自動できりかえるようにしてあるらしいけど、時計の電波が届いてないんじゃなくてくるってるってのなら、おかしくなっていても仕方がない」
「そんなこと可能なのか?」
「時計の電波に似せて別の電波を流してやれば可能だ。もっとも、時計の側が誤受信するレベルには正確じゃないといけないがな」
「どちらにせよ、表示がくるっている、というより表示がされない、というところを見ると、おそらくは電波を遮断されているのでしょうね・・・」
そういわれて万は頬杖をついたまま眼鏡のフレームを軽く小突いた。レンズの端に表示されるはずの時間は、確かに”--:--“という奇妙なものになっていた。
「・・・だな。こうなってれば確かにISの時計はあてにならんな」
「え、じゃあ集合時間とかどうするんだよ」
「お前予定表見てねえだろ。日没までには戻ってくること、ってきっちり書いてあっただろうが」
「あ、そういえば」
「とにかく、あと三十分ないんだ。ある程度の準備くらいはしておけ」
そういいつつ自分も眼鏡をもう一度小突いて前に手を置いた。おそらく、そこに仮想キーボードがあるのだろう。そして、そのまま指を動かしだした。
そして、予定通りに目的地へたどり着いた一行は、そのほぼすべてが荷物を置くと速攻で更衣室へ直行した。というのも、都心にほど近い所にあり、雪があまり降らないIS学園に暮らす人間としては、この一面銀世界というのはそれだけで十分はしゃぐ理由となりえるものだろう。
そうしてそれぞれが学校でレンタルされた―――一部自前のものを使うものもいたが―――スキーウェアに着替え、板をもって繰り出した。教師も「迷惑にならないようにしろよー」とは言うが、その程度だ。仮にも高校生ということで、大丈夫だと判断したのだろう。また、こんな時に思いっきり叱るのは教師にとっても生徒にとってもごめんだ。
普通、このような場で一気に難しいコースに進んでいく人間などなかなかいない。なにせ、スキーなどほとんどしたことがない人間ばかりだ。よほど運動センスがないと速攻で転倒をしてしまう。
そんなある種当たり前とも思えるセオリーを正面から粉砕する人間が一人いた。そして、その人間は。
「いやっほう!」
普段ならまず出さない声で楽しんでいた。ちょっとしたジャンプスポットでは高く飛び、特に障害物がないのならどこまでスピードが出せるかを自分で試していたり、と。どう考えても滑り慣れているとしか思えないような滑りを披露していた。だがもちろん、彼は生まれてこの方スキーなどしたことはない。つまりは初見で滑っているわけなのだが、それを知ってか知らずか他の人は驚いていた。
「全く、こんなところにいるとはな」
そういって近寄ってきたのは箒だった。声だけで誰かわかった万は滑りを止めずに答えた。
「まあ、なんとなく滑れそうな気がしたから・・・な!」
そういいつつ最後の一文字でジャンプ。今度はジャンプスポットが高かったこともあって一回転させることに成功していた。
「・・・楽しんでいるようだな」
「まあな。こんな機会、今までは一度としてなかったし?」
そういいつつ斜面の終盤であることを確認すると両方とも滑りを止めた。
「そういえば、篠ノ乃はどうしてここに?」
「一夏に様子を見てきてくれと頼まれてな。私がここを滑れる可能性が一番高そうだから、と」
「・・・なーる」
確かにいくらほかも運動ができるほうであるとはいえ、剣道で全国優勝した猛者に運動神経でかなうとは到底思えないだろう。
「ま、おたくが滑れるのはさすがってとこだな」
「まあ、私もなんとなく、というものだ。だいたいこんな感じ、といったくらいにな」
「そ。でも、俺みたいに少々規格外な行動をしているわけじゃねえんだから、十分すごいと思うぞ」
そんな会話をする二人に息が切れている様子はなかった。というものの、例の手合わせ以来二人はたびたび剣でもISでも模擬戦を繰り返しているのだが、決まって持久戦になってしまう―――さらに言えば大抵持久戦になれば万が、短期決戦なら箒が勝っている―――ので、二人ともそれなりに鍛えているのだ。
先ほどから自然な体で周りを見る万に、箒は疑問を抱いていた
そして、その疑問は、リフトに乗った時に口に出た
「ところで、お前は何をさっきから警戒しているんだ?」
「・・・いや、なんとなく、な。嫌な予感っつーか、胸騒ぎっつーか・・・うまく言えねえんだが、とにかく周りを警戒しておく必要がありそうでな」
そういって万は軽く微笑んだ。
「ま、どちらにせよ降りかかる火の粉は払うだけだ。お前らはただ楽しんでりゃいいい。俺みたいに警戒を怠らないのも必要だけど、休めるときに休んでおくのも必要だからな」
そういって万はいつの間にか登り切っていたリフトから体を下ろした。
「さて、んじゃあ俺はもう一滑りするからよ。あいつらには心配無用だと伝えといてくれ」
そういって彼は斜面のほうへと歩いて行った。
万は斜面を滑っていた。
その方向は、何者かに誘導されていた。それは万もわかっていた。なにせ、そのルートにほとんど人がいなければ怪しむのも当然といったところだろう。だが、万はある一種の確信をもって滑っていた。
そして、その終点とも思える地点に立つと、万はおもむろに声を出した。
「誰が隠れてるのかは知らんが、とっとと出てこい」
だがそれでも相手が出てくる気配はない。少々のいらだち交じりに、万は周りの雪から水分を抜き取り、鞭のような形状にして周りにまとわせた。
「三秒以内に出てこい。じゃなけりゃ、位置はわかってるから、そのあたりごとてめえを斬る」
その凶暴さを示すように、水はうねっている。本気の殺気をまき散らしながらカウントを開始すると、そこから出てきたのは見覚えのある少女と見覚えのない少女。
そして、その見知らぬ少女は、そのショートカットといい、幼さが残るとはいえ凛とした顔立ちといい、その少々きつめの目元といい、かつて世界最強と言われた女性に酷似していた。
「・・・デメテル、って言ったっけ?それと、そっちはどちら様?心なしか、俺の知ってる人によく似ているような気がするんだけど」
「・・・この子が何者かなんて関係ない。私はあなたに用があった」
相も変わらず発散される殺気の動じるどころか眉ひとつ動かさず、デメテルは淡々と答えた。
「あっそう。で、いったい何の用だ?下らん用なら本気で斬るぞ」
「あなたにとってはくだらないかもしれないけど、私たちにとっては重要」
その直後、彼女らを円形に囲むように雪に深く跡がついた。
「とっとと本題を話せ、じゃなけりゃ次はこれがどこに飛ぶかわからないぞ」
本気で不機嫌で強い殺気を放ちつつ万は言った。だがそれでも動じる様子がない辺りはさすがと言えるだろう。
「私たちはセレネが今どうしているのか知りたい。あなたなら知っているはず」
「そんなの俺にもわからん」
「なら、あの子がどこにいるのか、それだけでも。あなたならわかるはず」
「ずいぶんと買われているみたいだな」
「どういう理由であれ、端から助けるつもりじゃなければそもそも命を奪わない理由はない。どすれば、どこかに匿ったか、あなたが利用しているはず。なら、あなたならどこに彼女がいるのか、知っているはず」
その言葉に対しても最初は軽く流すつもりだった。だが、デメテルの目を見て万はその気持ちに迷いが差した。その眼は、わずかな殺気、そして疑問、そしてなにより、顔の見えない相手に対する心配が、それぞれ混じり気ないものとしてそれぞれそこにあった。
彼女らがどういう境遇だったのか、何の因果で
「・・・学園都市に、あいつはいる。けど、何をしているのかはわからん。特に最近は、連絡が入らなくなってるからな」
「・・・そう。わかった。ありがとう」
そういって去ろうとするデメテルに、万は思い出したように声をかけた。
「あ、そうそう。あいつなんだがな、今は“月島深名”っていう名前になってるから。前の名前で呼んだらきっと機嫌めちゃ悪くなるぞ」
その声が聞こえたかどうか、それは万の知るところではない。
「で、あんたの用件は何だ?」
そして、残った少女に万は声をかけた。答えたのは幼さの残る、どこか凛とした声。その声も、記憶にある情報とよく似ていた。
「私はお前に用はない。だが、スコールから伝言を預かっているのでな」
「スコール、ってのは、例の金色のISのやつか?」
「・・・おそらく、それだ。伝言は“すぐに会えるから、準備しておいてね、坊や”とのことだ」
その言葉の意味を正確に理解した万は軽く片方の口角を上げた。
「・・・OK、“素敵な返答を用意しておくからそのつもりで”とでも返しておけ。で、それだけか?」
「ああ、お前にはな。また会える日を楽しみにしている」
「すぐにそれはきそうだけどな」
そういうと、二人はどちらともなくその場を離れた。
そして、その日の夜。仮想ディスプレイで作業をしていると、端末が着信を告げた。端末の“ライト”の文字を見ると、万は迷わずにとった。
「全く、夜型なんだな、お前は」
「あなたに言われたくないわよ。聞いた話じゃ、作業とか課題とかほとんど夜に終わらせてるらしいじゃない」
「まあ、な。俺にとっては速攻で終わるやつばっかだからな」
「うわ、むかつく。それ、織斑一夏とかに言わないほうがいいわよ、絶対」
「言わねえよ。・・・で、何の用件だ」
「いや、特にこれといった用件ではないの。ただ、あなたの声が聞きたくなっただけ」
それなりに緊迫した答えを予想していた万は、その台詞にあきれた。確かに、時たま雑談のためにかけてくることはあったが、こんな理由を言われたのは初めてだ。
「なんだよ、その遠距離恋愛してるようなセリフは」
「ほっといてよ、私だってよくわかってないんだから。それに、いい加減ちょっとこぼしたくなったしね」
「・・・なんかあったのか」
「なんかあったというか・・・遠慮なく暴れれるのは、まあ、それなりにいいんだけど・・・。なんか、最近もやもやして」
「もやもや?」
「私でもわからない。でも、少なくともいい気持ではない。これは確実」
「なるほど、ね。なら、それも一種のモチベーションととらえてもいいんじゃねえか?」
「え?」
素っ頓狂な声を上げる深名に、万は続けた。
「だから、そのもやもやが収まらないって気持ちとかを、そのままストレートに自分のパワーに変えてみるのも一つの手なんじゃねえの?少なくとも、俺ならそうする」
「・・・相変わらず、毅いのね」
「そういうわけじゃねえ。ただ単に、そういう感情を抱えっぱなしってのが嫌なだけだ。それに、この解決方法は世間一般では憂さ晴らしというと思うぞ」
「・・・面白い人。さて、私、朝早いから、またね」
「ああ、無理すんなよ」
「しないわよ、子供じゃあるまいし。おやすみ」
「おう、おやすみ」
そういって通信は切れた。
その通信が切れてから万は考え込んだ。暴れれる、ということは深名が本格的に実働体に入っている、もしくは入る可能性が―――その高低は別にして―――あるということだ。
前者か後者かはわからないが、どちらにせよ、いざというときは彼女と戦うことも考えなくてはならないだろう。
「・・・あいつと、再戦、か・・・」
自分でも理解できない、どこか鬱屈とした感情を抱えつつ、万は天を仰いだ。
というわけで。
タイトルはパクリじゃないです。オマージュです。
それに舌が珍味の草食獣もいなければ砂漠とかにもでる咆哮にダメージがある四足の飛龍とかが出てくるわけじゃありませんし。
さて、この次なのですが。実はもうすでに8割がた出来上がっておりますので、みそかあたりか新年あけてすぐくらいに上げたいと思います。
ではでは。