【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、どうも。

何とか年内に間に合わせることができました。

というわけで、今年最後でございます。どうぞ。



30.白銀に煌めく黒

そして、その次の日。

 

予定通り起床してクラス代表としてクラスの点呼を行った万たちはそのままバスに乗り込んだ。今日はこの後軽い登山をした後にそのままバスで帰ることになっている。

 

「なあ、万。そっちって誰かと会った?」

 

「ん、まあ、会ったな」

 

例によって手持無沙汰にしていると隣の席に座る一夏がそう聞いてきた。別に隠すことでもないので肯定すると、彼にしては珍しく―――と言っては失礼千万だが―――考え込むような表情をした。

 

「そっか、そっちにもだったんだな・・・」

 

亡国企業(ファントムタスク)、か?」

 

おもむろにその名前を言うと驚いたように目を見張った。

 

「考えるまでもねえよ。そっちにも、って言ったのはおまえだろ。それに、俺がこんなところで知り合いに会うわけがない。となれば、そっちも宣戦布告食らった、ってとこだ」

 

「・・・相変わらず、だな」

 

「ああ、この程度、さっさと考えれねえようじゃ今頃俺はあの世にいるよ」

 

そんなことを言った直後、バスが轟音とともに大きく揺れた。その直後、タイヤのきしむ音とともにバスが急停車した。半ば反射的に窓を開けて空を見上げる。

そこには、どこか蝶を思わせ、それでいてどこか気高い、黒いISがいた。

 

「クソが!」

 

一言毒づくと、万は強制的にバスの扉をこじ開けて飛び出した。バスから出た瞬間にセイリュウを展開して、高速上昇をかける。

 

「てめえは何者で何の用なのか10秒以内に答えろ。じゃなけりゃ攻撃を開始する」

 

その言葉に、相手はただ静かにたたずむだけだった。仮想ディスプレイに現れたのは、“黒騎士、世代不明”の文字。

やがて、内心でのカウントがゼロになる。

 

「警告はしたからな」

 

バイザーの下で一言そういうと一気に棍をもって肉薄した。かなり低出力でのチャージからの最大出力による瞬間加速(イグニッションブースト)からの右からの振り下ろしをなんなくいなす。そこからの左の下からの振り上げ、左からの横なぎ、左のジャブを混ぜた後逆手に持ち替えたうえでの右からの攻撃。これらをすべて受け流されたところで、一度万は距離を取った。

 

(あの猛攻しのぎ切っちまうのかよ!?いったい何もんだ、こいつ)

 

その一瞬でそんなことを考えた。

万は武闘家ではないにせよ、生身の近接戦闘でかなりの腕前を持つ箒と同じ土俵でほとんど同格にわたり合えてしまうくらいの実力はもつ。その万の一発は入るだろう、とみた連撃が一つも入らない。そのことに驚いた。

そして、その手に握られたのは大きな銃。二秒ほどで狙いをつけると、万は引き金を引いた。そこから吐き出される弾丸の大きさを物語るような轟音とともにそれが火を噴き、反動などないというような速度で一気に踏み込み、例の棍を薙ぐ。

 

その直後、万は信じられない物を見た。

そこには、()()()()()()機体で、つばぜり合いを繰り広げている機体がいた。

 

(あれを食らって傷一つねえとか考えられねえ。避けた、ってのも考えにくい。とすれば・・・)「・・・斬っ・・・た・・・?」

 

驚きから漏れた声に対し答えたのは幼さの残る声。

 

「狙いをつけている時間が長かったものでな、おかげで斬りやすかった」

 

その言葉に万は絶句した。確かにある程度距離はとったが、それでもそれなりに近距離だ。おまえはどこぞのブラッキー先生か、と突っ込みたくなるのをこらえた万は遠い過去に聞いた言葉を思い出した。

 

(ちっ、どこでも考えることは似たようなもんってかよ・・・!)

 

その瞬間、鍔迫り合いの手は緩めず、思考が高速で回りだす。その思考が落ち着いたときに、こちらの仮想ディスプレイに一つの表示が出現した。それを確認すると、万はあえて少し力を抜いた。瞬間、敵が慌てたように後退する。直後、まさに敵がいたその位置にレーザーが降ってきた。と思うと、一瞬で肉薄する白い閃光。誰かは確認するまでもなかった。白と黒が交わった瞬間、心なしか、黒の口元が歪んだように思えた。

 

「・・・ったく、おっせえぞお前ら」

 

「あなたが無鉄砲すぎるだけだと思いますわよ?」

 

思わずこぼした万に対し返ってきたのはあきれたような声だった。

 

「全くよ。それに、私や簪なんかクラスが違うんだから、出てくるのに時間がかかるのは当然でしょ?」

 

「それについては、私も凰さんと同じ、かな」

 

「俺としては、この異常事態に代表候補生を出撃させない理由が考えられないがな。さて、と・・・」

 

そこまで言ったところで戦闘に目を戻す。そこには、互いの得物をもってたたずむ黒と白。そして、静止状態だからこそ、その口元ははっきりと見えた。

間違いなく、笑っている。狙っていた得物が出てきたような、今すぐにでも目の前の敵を狩りたい。そんな、強者の笑みだった。

 

「なんだろう、どこか面白そう、っていうか・・・。不思議な表情」

 

やや戸惑ったように声を出すシャルロットを無視して万はすばやく判断した。

 

「やばい、かな。とりあえず、俺はあいつらの援護に回る。とにかく、そっちは一般生徒の安全を・・・っ!」

 

すべて言い終わる前にレーダーに感があらわれたことを見ると、全員が速攻で回避に入った。

 

「おいおいおい、私を忘れてもらっちゃあ困るなぁ?」

 

どこか挑発的で、そして高飛車な口調。そこには、蜘蛛型のIS。そこにぴったりとピントを合わせると、“アラクネ、第二世代”と表示された。

 

「お前は・・・!」

 

箒が驚いたように声を出す。

 

「オータム様だよ、忘れたかぁ!?」

 

どこか怒りに我を忘れているような口調。だが、それはあくまで理性的な怒りであると、万は直感的に思った。なら、こいつをここで潰せば、と思った矢先にオータムがまた声を出した。

 

「ところでお前ら、こんなところでもたもたしてると、お仲間みんなやられちまうぜぇ?いいのかぁ?」

 

その瞬間に、万は下を見た。バスの進路上のそばにおそらく人間であろう熱源があった。それを見た瞬間、そちらの方向に飛んでいた。

 

 

 

万はISの展開を解除し、そのまま能力で全身に空気をまとわせた。絹旗の“窒素装甲(オフェンスアーマー)”を応用した拳をもって重力加速度を利用した大出力の攻撃は、標的にあたる寸前でせり出された土の壁が防いだ。

 

「・・・やっぱりてめえか、デメテル」

 

そして現れたのは自分より少し年上かと思われる少女。

 

「安心して、殺すのは命令違反になるから。ただ捕まえるだけ」

 

「へえ、15、6の女子を大量に捕まえて何するつもりだ?高校生ソープでも開くか?」

 

「そんなことはしない。信じる信じないは勝手だけど」

 

「あっそう。ま、そんな御託はどうでもいい。今は・・・」

 

そういって万は頭を切り替えた。

 

「ええ、幸いここなら周りを気にしなくてもいい」

 

「雪崩くらいは起きるかもしれねえがな」

 

そういって万はかまいたちを繰り出した。しかし、そのすべてをデメテルは生身で回避し、そのうえで何やら唱えた。その瞬間、周りが輝くと、そこには土でできた巨人がいた。だが、完全に土でもない。ところどころに多量の水分、そして全身の温度を勘案して得られたのは、

 

「なるほど、雪が混じるくらいならものともしない、ってか」

 

「そう。さすがね」

 

「んなもん、どうでもいい。要は、お前を潰せばいいんだろ?」

 

そういって風を使う。その瞬間、土がせりあがってきた。そこに生まれたのは、土でできた木偶。それが、見たところ数体、いや、

 

「一気に5体、か。こいつは、ちときついかもな」

 

「大丈夫。あなたは特に殺せない。聞くことが多すぎるから」

 

「そりゃどーも。んじゃ、一発本気をかまさせていただきますかね」

 

そういって万は一つ深呼吸をして体晶を飲み込んだ。こんなこともあろうかとあらかじめ口の中に入れておいたのである。カッと目を開くと、地面をけった。その向かう先は木偶。その一体目を手早く潰すと、その次の瞬間には標的を変えて手を横に薙ぐ。それだけで二体が巻き込まれた。そのまま目にもとまらぬ速さでデメテルに肉薄しにかかる直前、そこを巨大な足が踏み抜いた。あまりの風圧に一瞬思わず目をつむる万だったが、一瞬で能力をレーダー型に設定、速攻で肉薄した。

そのまま能力で強化した拳がとらえたのは人体の感触ではなく、土人形の感触。そのフォームのままもう一方の手を横なぎに薙いだ。するとその延長線上にあった接近中の土人形が粉砕した。そして、デメテルへと一気に肉薄する前にもう一度巨人の踏み付けが襲う。それを今度は能力で相殺しつつ、万はデメテルに一気に肉薄し、その拳をふるった。が、その手がとらえたのは人体とは違った、硬質の感触。

彼女の手には、ほっそりと、それでいて鉄色の輝きを放つ、一般的には、レイピアと呼ばれる西洋剣と、一般的にマンゴーシュと呼ばれる短剣が握られていた。

デメテルはその鍔が広い短剣で強化された拳を受け止めたのである。しかしながら、ところどころに土がついているところを見ると、

 

「・・・なるほど、土から金属だけを抽出した、ってわけか。器用なことをする」

 

「その通り。だけど、それがわかったところでどうにもならない」

 

「それもそうだ。んじゃま、ラウンド2、といこうか?」

 

そういって万はボクシングのようなポーズをとった。そして、どちらからともなく二人は踏み込み、仕掛けた。

 

 

 

 

万が飛んで行ってからというものの、空も大変なことになっていた。

例のアラクネはどうやらそれなりのチューニングを施されているようで、たいていの攻撃はいなされてしまうのだ。しかも、相手は一人ではない。黒いIS―――黒騎士の影響で、こちらも攻めあぐねていたのだ。というのも、アラクネのほうは有効打が与えられず、黒騎士は一夏の白式しか狙っていないので、今はなんとか引き分けと言えなくもない状況になっていた。

そこで、彼女らは攻める方法を変えた。今までのように突っ込んでいったのでは意味がない。しかも、こと一対一、もしくは一体多の戦闘では絶対的ともいえる戦闘力を有する黒騎士に対し、この攻め方はいささか分が悪い。ならば、

 

「簪さん、凰さん、麦野さん、私とともにオータムのほうをお願いいたしますわ!箒さん、一夏さん、シャルロットさん、ラウラさんは黒騎士を!」

 

もし有事で万が前線指揮をとれないときは、と任されたセシリアはすばやく指示を出した。箒と一夏の機体は対になっているから、外せない。そのうえで考えると、指揮官タイプのラウラ、そしてラウラとタッグを組んだことこそないものの、一緒に訓練を行っていることの多いシャルロットである。あとは残りであるが、それでもうまくやれば十分に勝てると踏んだ。

そして、この判断は正しかった。黒騎士のほうは明らかにいらだって攻撃にムラが見え始めているし、アラクネのほうも徐々に押され始めていた。

その中に現れた、一瞬のスキ。本来はできるだけすべての敵に注意を置かなければいけない中で、今まで前線で戦ってきた凰に注意が向いた瞬間を、セシリアは逃すことなく指示を出した。

 

「簪さん、山嵐を!」

 

「うん、わかった!」

 

そういって発射された山嵐最大火力。1秒おきに6発ずつ8回、計48発放たれるミサイルは名を体現する。それらすべてを、

 

「なめんじゃねえぞ!」

 

オータムは鍔迫り合いしていた凰を押しのけて、その増設された砲門ですべて撃ち落としにかかる。しかし、

 

「鈴さん!」

 

「OK!」

 

それを姿勢を立て直した凰の衝撃砲で体勢を崩されたうえで、ブルー・ティアーズによる飽和攻撃。そして、とどめは。

 

「麦野さん!」

 

「了解!」

 

万によって改造されたことにより片手で射撃が可能になった空色のレーザーライフルと同色の磁力狙撃砲、麦野のビットとライフルの同時攻撃、そして撃墜しきれなかった山嵐の一部により、おびただしい黒煙を上げた。

 

「くっそがぁぁぁ!!!!」

 

まるで呪詛のように聞こえる断末魔とともに、アラクネはその機体の動きを止めた。

 

その直後、黒騎士がこちらに躍り出てきた。驚きつつ防御を取る麦野に注意を向けつつセシリアが見やると、そこには体勢を崩したラウラのフォローをするシャルロット、そして、

 

「一夏さん!」

 

撃墜された一夏のもとに駆け寄る箒の姿があった。

 

 

 

魔術師と能力者、その二つがぶつかっていた。キンという硬質の音と、ヒュンという風切り音が絶え間なく響く。

そう、普段はどちらかといえば飛び道具を使うことの多い戦闘が、今は肉弾戦を繰り広げることとなっていたのだ。

ほどなくして、ほぼ同時に二つの轟音。待機状態となったセイリュウから、アラクネと白式の撃墜を知らせるアナウンスが小さな表示で出現する。

 

「・・・どうやら、長々とはやらせてくれないらしいな」

 

「そうみたい。私としても、そろそろ終わらせたい」

 

そういうと、彼女は短剣とレイピアを合わせた。生まれるのはレイピアほどではないが細身の西洋剣。そして、そこから放たれるは明らかに一撃必殺を狙う輝き。

 

「・・・受けて立つ」

 

そういうと、万はもう一回分体晶を飲み下した。そろそろ体晶に頼るのも限界に近いだろう。それでも。

 

「できるだけ巻き込む人間は最小限に抑える。そのために、ここで潰させてもらう」

 

その自身に課したルールがために、負けられない。

 

「そう。なら、いくよ」

 

直後、あたりに爆音が響いた。

 




はい、というわけで。
予想ではたぶんあと10話くらいで最終話になると思います。

ではみなさん、良いお年を。
あと少しですが、この作品をよろしくお願いします。
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