あけましておめでとうございます。緑竜です。
新年初投稿がこんなに遅くなったのは理由がありまして。
いかんせん正月の時期のバイトで無理したのが少々響きまして、体力と気力が大きくそがれてしまいました。普通の休日並みの営業をキッチン三人のホール二人(うち社員二人)で回せとかそれなんてムリゲー。
今は何とか回復しているのでご安心を。
少々修正していたりもするので厳密には初投稿ではないのかもしれませんが。
では今回どじー。
文字通り地を揺るがす轟音とともに真っ白な煙が上がった。そちらのほうへ一瞬気を取られた隙に何とか粘っていたセシリアも一気に劣勢に追い込まれた。先の戦いでお披露目となったあのサーベルを手に入れてから、万から白兵戦の指導を受けていたとはいえ、これほどの相手ではさすがに相性が悪かった。
「くっ・・・!」
「解せないな、どうしてそこまで足掻く?」
かけらほども疑問を感じられない相手の問いかけに、セシリアは答える。
「あなたを行かせれば、何が起こるかわからない。守るべき人のために、私はこうして戦います」
「そうか。その信念で私を倒せるのならやってみろ」
そういって二人はさらに剣を打ち合わせる。その瞬間、四方八方から緑色に近い色の光線が迸った。思わず飛びのいた先にさらに数発。それに一旦距離を取った先に見えたのは片手にライフルを持った機体。
「忘れるなよ、お前が相手取ってるのはそいつだけじゃねえんだよ」
それに腹立たしげに舌打ちをしてから、黒騎士はその剣を上段に構え突撃してきた。それを受け止めんとセシリアはサーベルと短剣で受け止めんと構えた。
三本の剣が交わり、けたたましい音を立てる。がしかし、その均衡は一瞬。一瞬にしてセシリアの防御は崩れ去り、弾き飛ばされた。その隙をついて特攻してきた麦野だったが、簡単に麦野の近接戦闘力をもってしても拮抗までしか至らない。それほどまでの近接戦闘力を有していた。
(予想以上に強いな、こいつ・・・!)
その麦野も、決して手加減しているわけではない。息つく暇ない連撃の応酬をそれぞれが防御、反撃と繰り返しているのは、ひとえに彼らの技量の賜物だろう。
しかし、それにも終わりは来た。もともと遠距離主体の麦野と、元のフィールドが近距離の黒騎士では、そもそもが戦闘における間合いが違いすぎる。同じように遠距離も近距離にも戦闘ができるからと言っても、元のレンジの違いがその差を生んでいるのだ。かといって、一旦距離を開けることは黒騎士が許さない。
やがて、麦野は黒騎士の攻撃に防戦になり、そして完全な防御に回りだした。
その防御も長くない、と麦野自身が判断した直後、轟音とともにその肩越しに一発の銃弾が飛んできた。それは違わず黒騎士に直撃し、両者をさがらせた。
「あなたでは役者不足です。退きなさい」
その冷水のような声とともに降臨したのは鈍色のISだった。その手に握られるはまるで槍のような形状をした長い棒のようなもの。しかし、それしか握られていないところを見ると、おそらくあれは銃なのだろう。
「貴様、何者だ」
興味なさげに、あくまで必要だからといった風情で黒騎士が尋ねる。それに対してイージスがとったのはショルダーアーマーを前に持ってきて、楯のようにすることのみ。
それに対し、黒騎士はその剣を構えた。
そして始まる、無声の戦闘。そこにあるのは、澄んだ金属音、時折響く銃声、そして純粋な殺意のみ。そこに他者が介入する余地などなかった。
二本の剣からうまれる剣劇をその長剣でいなし、強力な光学兵器を楯でしっかり防ぐ。そして、隙があればつく。
この攻防は拮抗しているように見えて、明確な優劣があった。というのも、二本の剣と強力な飛び道具をもってしてもわずかなダメージしか入れられていない黒騎士と、大剣と楯のみで攻撃をしのぎながらわずかながらでもダメージを入れているイージスでは技量の差がはっきりしていた。
やがて、イージスはその剣を抜き放った。その瞬間に周囲を眩い光がつつむ。その一瞬のスキを、イージスは見逃さなかった。左の鞘で右の剣を封じ、右の槍を量子変換させ、代わりに出現した鞭で剣を弾き飛ばした。
「とらえたぞ、黒騎士!」
そう高らかに宣言した。その瞬間、イーギスの右腕についていた楯代わりのショルダーアーマーが黒騎士の周りにとりついた。素早く飛びのいたイーギスが右手を前に出すと光が黒騎士から迸った。視界フィルター越しに見えたのは、黒騎士にまとわりついたショルダーアーマーが放電しているような光景だった。
「があああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
聞いている側が痛々しくなるような叫び声。その声が収まったのはISの展開が終わると同時に放電が収まった時だった。落下点に素早く回り込んだイージスがその小柄なパイロットを抱えると、近くに高温の熱源反応が現れた。麦野はとっさに警戒したが、今の自分が相手になったところで雑魚でもなければ敵う相手ではないと分かったいた。現に、その予想は正しかった。なぜなら、そこに現れたISは黄金であったからだ。見覚えがないわけがない。デメテルを迎えに来たあの金色だ。
「・・・デメテルだけでなく、Mまで破るとはね」
「まあね、さすがに苦戦したけど。あ、ちなみに殺そうと思っても殺せないよ。今の機体状態でも、電磁フィールドを張るくらいは造作もないから」
「・・・なるほど。で、どうするつもり?」
「どうするも何も、生かすだけだよ。その後の道は、この子自身が決めるべきこと。違う?」
「なるほど、ね。それに、あなたの機体とは相性が悪いみたいだし、ここは引いてあげる。もう少ししたらまた再戦に伺うからその時はよろしく」
「あっそ。返り討ちにしてあげるから、せいぜい遺書でも書いておきなよ?」
「その減らず口、黙らせる日が楽しみね」
そういってはるか彼方へ飛び去っていく金色を、その騎士は静かに見つめていた。
「さて、そろそろいろいろはなしてもらいましょうか・・・
そんな時、後ろに回っていたラウラがそう発した。その瞬間に、イージスはその顔を覆う装備の一部を解除した。具体的に言えば、顔を見えるようにした。そして。
「まったく、勘が良すぎるってのも考え物だとおもうぞ」
そのパイロットたる万は、そういってまるでいたずらがばれた子供のように笑った。
そうして何とか所定の日程でIS学園に戻った後、万も含める専用機持ちの面々と千冬と真耶は保健室に来ていた。そこにはもう一人、ゆっくりと眠っているM―――一夏曰く織斑マドカがいた。
「さて、と。いろいろ話してもらうぞ、黒川」
「もとよりそのつもりですよ。・・・さて、と。まずはこの子について話しましょうか。いつ目が覚めるかもわからんし。っていっても、二つ仮説があるわけなんですけど」
まるで世間話でも始めるかのように万はそう切り出した。
「まず一つ目。こっちの事の発端は学園都市内部のある実験だ。名前を、
その言葉に、その場にいた全員が意外そうな顔をした。
「まさかとは思うけど、御坂美琴・・・?彼女、とてもそんな計画に賛同するとは思えなかったけど」
「そのまさかだ。っていっても、正確には騙されたらしい。名目上がどうだったかは知らんけど。で、その計画を下っ端がぽろっと漏らしたんだろう。結果はたぶん漏らしてないがな」
「なぜそう言い切れるんですか?」
不思議そうに聞く真耶に万は簡潔に答えた。
「簡単です。その計画は失敗だったから、ですよ。生まれたのは確かに能力者ではありましたが、その力は、どれもオリジナルたる御坂美琴の1%にも達しなかった。のちに彼女らはまた別の実験に利用されることとなったわけですが・・・脱線するのでまたそれは違う機会に。で、それを聞いたIS側の人間も似たようなこと考えたわけですよ。つまるところ、ISで最強と名高いブリュンヒルデ、そのクローンを作れば、ISにおいて最強の軍団が作れるのではないか、と」
「ありえない、そんなことは断じてない」
そこで話が見えたのであろう千冬が断固とした態度で否定した。だが、それを万は淡々と否定した。
「いえ、ありえない話ではない。あなた個人に接触がなくとも、DNAマップを取る方法などいくらでもある。たとえば、その毛髪や血液を採取する、とか。毛髪なんか、家に入ればいくらでも転がっているはずですし、血液に関しても健康診断か何かの血液をひっそりと入手すれば十分に可能です」
「だから、そんなことなど・・・」
「ここまで話が大きくなっているんです。ほとんどこれといった痕跡も残さず、血液や毛髪を採取する。学園都市の能力者を利用することができればそんなこと造作もありません。一夏は学生である以上学校に行かなくてはいけませんし、その間は家を空けざるを得ませんから。パイプがあればなおのこと容易ですし」
「・・・嘘、だろ・・・」
「信じられんと思うが、これについて考えるのは後にしろ。・・・で、それの産物がこの子、織斑マドカってわけです。で、もう一つ。さっきの否定の仕方を見るに、こっちの可能性のほうが高いかもしれない、と俺は踏んでますけど。で、そのもう一個の可能性ってのは、この子があなたたちの実の妹、って線です」
「・・・え、それってどういうこと?だって、一夏の家族は千冬さんだけなんじゃ・・・」
戸惑ったように凰が声を上げる。だが、それについて表情を変えずにだんまりを決め込んでいるところを見ると、
「・・・どうやら、やはりこちらが当たりだったようですね」
「・・・どういうことだ、説明しろ」
今にも雨月か空裂を部分展開しそうな箒に対しても冷静に万は告げた。
「一夏は今年高校一年生。で、対する織斑先生は何年か教師をやっているところを見ると、おそらく20代半ばから後半。となると、10歳差くらいのはず。物心つくのは、早くてだいたい6,7歳。見た目の年齢が俺らとほとんど変わらないところを見ると、おそらくこの子も同じくらいの年のはず。となると、その時に何かしらでいざこざがあっても、篠ノ之も一夏も覚えていないことになる。その姉たる織斑先生が口を開かない限り、な」
そういって万は真正面から千冬を見た。睨んだとも取れる目つきだったが、その眼に動じた様子はない。
「織斑という家に何があったのかは知らない。けど、そろそろ話してもいいんじゃないですか?一夏も篠ノ之も、もうガキじゃない。自分たちのことは、それぞれ考えられる年なんですし」
さらにかけられたその言葉が背を押したのか、ゆっくりと息をつくと千冬はゆっくりと話し出した。
「・・・事の発端は、年子で一夏に妹ができたことだ。その時からすでに、私は束につき合わされて、ISのために家を空けることが多かった。両親同士が友人だったこともあって、何をしているのかを聞かれることはなかった。だが、ここだけは家にいろ、と、そういわれて家にいた私を待っていたのはありえないことだった」
「つまるところ、マドカは本当の意味で妹ではない、と?」
「そうだ。正確には、この子たち、だがな。この子・・・イオリとシオリは双子だった。もとから、二卵性双生児であるとは言われていたが、二人ともあまり似ていなかったのだ。イオリは私にそっくりだったが、シオリのほうはどちらにも似ていなかった」
「ちょっと待った、その、二卵性ナントカって?それと、マドカの本当の名前は?」
「二卵性双生児ってのは、たまたま子宮に二つあった卵子がそれぞれに受精して育った双子のことだ。見た目などは、普通の兄弟姉妹と変わるところがない。それと、マドカの本当の名前は
とにかく、二人ともそれはそれは大いに怒った。お互いにどうして黙ってたんだ、そっちだってこれを隠しているだろう、そんなことを言ったらそっちだって、といった具合に、かなり白熱した口論に発展していた。最終的に、両方とも喧嘩別れになって、父さんが詩織を連れて出て行ってしまった。その次の日に、庵も姿を消していたよ。よほど詩織か父さんか、あるいはその両方が恋しかったのだろうな。それからというもの、抜け殻のようになった母さんは、やがて心中を図ったんだ。いわゆる、塩素自殺というやつでな。だが、それにいち早く気付いた私は、一夏を逃がして母さんを助けようとしていた。だが、最後の最後で子の私に情が移ったのだろうな。私に“逃げて、一夏とともに生きなさい!”と。それが、最後の言葉だった。その後、その家には住めなくなり、母の遺した財産で近くにあった物件に越すことになった。新しい家に越すころには、私たちも塩素中毒による経過観察の入院があったからか、その話題も薄れていてな。妙な目で見られることもなかった。この新しい家というのが、今の私たちの家だ。ちょうど、白騎士事件の少し前、一夏が6歳のころだ。・・・私の知っていることは、これだけだ」
「十分です、ありがとうございます」
そういって万は深く頭を下げた。いくら真相を知りたいからとはいえど、ここまで話してくれるとは彼も予想していなかったのだ。
「さて、ならここからは推測になりますが、話しましょうか。その、詩織ちゃんがいまどうしているのかはこの際おいておくとして、マドカ改め庵さんは、その後スコール、だったかな?とにかく、
「どういうことですの?」
「推測にすぎんが、庵さんにお母さんは家の連絡先などを持たせていたんだろう。そこから、催眠術か洗脳か何かで偽の記憶を植え付け、歪んだ知識をつけさせた。そこで植えつけた記憶は、自身の名前がマドカで、自身は織斑に捨てられた、といったところだろうな。こうすれば、半分は本当だから、完全に嘘ではないし。事実婚ならぬ事実離婚状態なら、姓も変わってないし。で、ここでもう一つ、彼女自身は“織斑”に復讐する、って目的が生まれるわけだ。その目的の筆頭として挙げられたのが、織斑千冬。あんただったわけだ。なにせ、織斑家きっての有名人なわけだからな」
そこまで話したところで、彼は片手を庵の頭に、もう片方の手をおなかあたりに当て、目を閉じた。そして。
「・・・っ!」
自身の手をその体にうずめた。何人かが息を呑むがそれに構っている様子はない。何秒、いや何分か、あまりに非現実的な光景に時間間隔がおかしくなる。そして、そのままゆっくりと手を体から抜き、体に手を触れたまま自身の能力で糸を使わない縫合をしていく。といえばわかりやすいものの、傍から見ればひとりでに傷がふさがっていく光景に、全員が信じられないといった表情を浮かべていた。
「・・・んでもって、都合のいい、駒として、
さすがにかなりの集中力を使ったのだろう、軽く息を上げながらそういった。その手の中には、ごくごく小さな部品の集合と思われるもの。
「・・・ナノマシン・・・!?」
ラウラが驚いたように声を上げた。その言葉にゆっくりとうなずいた。
「そうだ。このナノマシンは、バイタルを測り、反逆の意志があった人間を殺すために埋め込まれているらしい。取り除くには、あちらさんの施設を使うか、それか今見たく一気にすべてをかき集めてとっちまうか、どっちかだ」
そこまで言ったところで、庵がゆっくりと目を覚ました。それにいち早く気付いた万は一瞬でカーテンを閉めた。いったいどういう知識を植え付けられているかは知ったことではないが、千冬を見た瞬間にパニックを起こされなどしてはたまらないと判断した結果だ。
「ここ、は・・・?」
「ここがどこかなんざ今はどうでもいい」
そういう万の声は機械的だった。
「俺は、君は真実を知るべきだと思っている。そして、その方法もある。君が望めば、俺はそれを実行に移そう」
「どういう、ことだ・・・!さっきの感覚と言い、その言葉と言い・・・!」
どうやらかなり腹が立っているようだ。それもそうだろう、気を失っているのをいいことに、体を一気にスキャンしていじくりまわしたようなものである。だが、それでも万の言葉は淡々としていた。
「今は知る必要のないことだ。あんたの知っている歪んだ知識を、正す方法があると言っている。
てめえを害するつもりはない。あれば―――」
そういって万は虚空からリボルバーを取り出した。そのまま流れるように
「今頃こいつでドタマぶち抜いてる。どうするんだ、やるならさっさとやっちまうぞ」
その言葉に、庵は長いこと考えていた。が、やがて、低く唸るように言った
「・・・頼む」
その声は低く、声量も決して大きいとは言えなかったが、それでもはっきりと耳に届いた。
「先生、お願いします」
そういいつつ、カーテンの切れ目から左手を伸ばした。その向こうから千冬の手が伸び、その手に触れる。右手で庵の頭に触れ・・・る前に体晶を一つ噛み砕き、頭に触れる。そして、もう一度万は目を閉じた。
「
古いアニメの真似事としてはじめ、ここ一番の癖となった言葉をつぶやく。その瞬間に、左手から膨大な情報量が頭に流れ込んできた。そのすべてを感覚的に受け止め、処理し、右手を通して送る。ようやく処理が終わった時には思わず膝から崩れ落ちた。
「お・・・ねえ・・・ちゃん・・・」
その一言とともに、庵はゆっくり目を閉じた。
はい、というわけで。
散々マドカもとい庵をどうしようか悩んだ末がこれです。
ここで一つ、双子ちゃんの名前の由来を。
まず、庵の偽名であるマドカの由来ですが、庵という字の广←この部分(まだれ だったか がんだれ だったかだと思います)を取っ払うと”奄”という字になります。ちょうど奄美大島の一文字目の字ですね。この字をIMEで出すなり漢和辞典引くなりするとわかるんですけど、これは音読みで”えん”という読み方もあります。そこから”円”になり”マドカ”、というわけです。
で、マドカもとい庵の名前を決めたところで”庵”から”草庵”を連想、そこから詩を連想して韻を踏む形で”しおり”という音だけがまず決まり、そこから字を当てる形で”詩織”となりました。
ちなみにマドカのもう一つの可能性は原案です。が、急きょオリキャラを出すということでもう一つの案になりました。詩織が誰なのかは・・・ご想像にお任せします。
さて、少々こちらの事情もございまして、ここからかなり更新が停滞することが予想されます。
あともう少し、しばしおつきあいください。
では