【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、どうも。

何とかPCが復調したので。
一応8000字にはいきましたが、例によって物語は進みません。
で、次からは少しずつ前進させていきたいです。

とりあえず、今回どぞー。


34.新たな力

「・・・いいのか?」

 

 伸ばした手を見て、万は言った。決して大きくない声だったが、それで十分だった。

 

「・・・ああ。私が私で居るために、私が何者かを探すために、こちらにいたい・・・!」

 

 大きくなくても、力を込めた声で言いながら、織斑庵は万の手を取った。

 

「・・・いいだろう。合格だ」

 

 満足気に笑いながらそういって、万は自分の手を取った手を握り返した。

 

「・・・そういうことらしいぜ、スコール」

 

「そう・・・」

 

 その声には隠せない失望と、悲しみが宿っていた。その声に反応して振り向いた庵の目に宿るのは、強い光。それを見て、ひとつため息をつくと、スコールは何かを投げ、庵が片手でそれを掴んだ。それと同時に、黒騎士とアイギスの仮想ディスプレイに一つの通知が小さく表示された。

 “機体名<ゴールデンドーン>からプライベートチャンネルの開通が申請されました。承認しますか?”

 

 プライベートチャンネルはチャンネルを合わせるだけで全員に聞こえるオープンチャンネルとは違い、電話のように片方が開けて、それを受けたもう片方が開けなければ成立しない。しかも、同時に違うチャンネルとは通信できない。まさに、“プライベート”のチャンネルなのだ。

 たいていは登録されているので、断る理由がないのでさっさと開けても問題ない。登録だけなら問題ないと判断した二人はほぼ同時に即決で承認した。

 

「これで私の機体のプライベートチャンネルを開けたわ。それと、その紙は連絡先。頼りたくなったら連絡なさい」

 

「いいのかよ、そんな簡単に情報を渡しちまって」

 

「問題ないわよ。遠くないうちに敵も味方もなくなるから」

 

「それはどういうことだ、スコール」

 

 いまいち意味を理解できない庵がスコールに問い返す。その横で、意味をすぐに理解できてしまった自分に嫌気がさした。

 

「そこの坊やはわかっているはずだから、教えてもらいなさい。じゃあまたね、坊やたち。・・・元気でね、庵」

 

 そういってスコールは去って行った。

 

 

 

 

 二人そろって地上に降りて、ISを待機状態にした瞬間に、庵は崩れ落ちた。

 

「・・・ったく、無理しやがってこの馬鹿」

 

 そういったのは読んでいたような動きで横から抱えた万のもの。

 

「・・・すまない、体に力が入らなくて・・・」

 

「頭が、っていうか脳が疲れてるんだろ。あんだけの情報が一気に流し込まれて疲れない脳みそとか見てみたいわ。・・・とにかく、今は休め。こういう時は時間だけが特効薬だ」

 

「・・・すま、な、い・・・」

 

 そういって、庵はストンと眠りに落ちた。その様子を見て、万はふと微笑んだ。

 

「全く、謝る必要ないっての」

 

 そういって、万は庵を背負って歩き出した。

 

 

 そのまま戻ってきた保健室には、いつの間にかまた全員集合となっていた。

 

「おいおい、どうしたんだよ」

 

「・・・大丈夫、なのですわよね?」

 

 いたっていつも通りを心がけながら出した声に答えた声は、今まで聞いたことのないような、不安しかないような声だった。

 

「・・・ああ、もう大丈夫だ。俺も、こいつも、な。だから安心しろ」

 

 努めて明るい調子で言って、万は庵をベッドに寝かせる。そのまま振り返って、周りの表情が晴れないことを見ると浮かべようと思った微笑みを引っ込めた。

 

「・・・っていっても駄目そうだな。どうしたんだよ、揃いも揃ってそんな顔して」

 

「・・・なあ、万。お前は何を抱え込んでるんだ?」

 

「抱え込んでるって、何のことだ?」

 

「とぼけたって無駄だぞ。ここ数日、寝るとき以外ほとんど整備室にこもりっきりだったんじゃないか?」

 

「そりゃまあ、これを人前に出すわけにはいかないからな。一応こいつ、実戦戦闘を視野に入れて作られた機体だし。そうそうおいそれと人目に出すわけにはいかねえよ」

 

 そういいつつ、万は左手の袖を軽くまくった。そこには、銀色にも似た鈍色の腕時計。他でもない、アイギスの待機状態だ。

 

「それでも、あなたのこもっている時間は異常、だと思う。いつも一つないし二つの整備室が、使用中になってた。少なくとも、私の知っている限りではずっとだったから、相当な時間になる。そんなに長い間、何をしていたの?」

 

「・・・そんなに長くねえよ。ささっと設計、製作、あと機体の調整をしてただけだ。白式と紅椿以外の機体の、追加武装をな」

 

「・・・して、その数は?」

 

「結構な個数になってると思うぜ。たぶん、60超えるか超えないか。俺も細かい数とか数えてなかったからわからないけど」

 

「60って、夏休み終わってからだとすればだいたい一日一個ペースじゃねえか!?マジかよ!?」

 

「マジマジ大マジ。かなり多めに材料持ち込んどいて正解だったよ。おかげさまで俺が新たに持ち込んだ量子ボックスの中身は新しいやつでだいぶ埋まったし、新しいボックスもいくつか開発に成功した。いや、大変だったけど、それはそれは楽しかったよ。 ま、いくつかは戦闘データを取らずにぶっつけ本番になるかもしれないけど」

 

「・・・どういう、ことだよ」

 

「ISってのは世界を変えすぎた。今まで男が女を必要以上に虐げてきた世界の在り方が正解だとは思わない。だがな、それがぶち壊されたことによって、男ども、特に今まで利権を貪っていた連中にとっては面白くないことになったわけだ。いや、この言い方は正しくないな。より正確には、()()()なわけだ。

 しかも、あれだけの圧倒的な航空戦力なわけだ。兵器として利用しない手はない。先進諸国は秘密裏に兵器開発を進めていたはずだ。で、それらが手を組んで、まず潰すとしたらどこだと思う?」

 

「それは、篠ノ之博士、ではないでしょうか?」

 

「ま、真っ先に潰すとしたらそうだわな。だけど、当の本人は雲隠れしていて所在はわからん。よっぽど高度なステルスを張っているのか、秘密裏に襲ってきた追っ手をことごとく潰したか・・・。ま、その辺は当人ないしその関係者しかわからんな。

 とにかく、奴さんらは篠ノ之博士の殺害を諦めたんだろう。

 じゃあ、次はどこを狙うと思う?」

 

そう言いながらまるで講義をしているかのように彼は周りを見回した。一名を除いて考えているがわからないといった風の面々を見て、にこりと微笑んだ万は再び口を開いた。

 

「国際的なISに関する、兵士ではなく選手の養成所・・・。つまりは、IS学園。ここだよ。ISが生まれてからかれこれ10年。そろそろ頃合いだろう。力もいい感じに蓄えられているだろうしな」

 

「回りくどいな、珍しく」

 

 麦野が少々意外といった風情で言った。だが、まるで筋書きがわかりきっている茶番を見せられている観客のような、ひどくつまらなそうな表情をしていた。

 

「ストレートに言ったらどうだ。このままじゃ皆殺しだ、って」

 

「ま、それができれば言ってるさ。だけど、俺が言っているのはあくまで仮説だ。それを裏付けるような証拠がいくつか上がっているとはいえど、それでも仮説に過ぎない。風説の流布っていうのは、時として危険極まりない。ここは盗聴器とかはないみたいだからこうして話せるが、もしこれを大勢にばらまかれるようなことがあったら、最悪何者かの手によって、学生寮に文字通り血の海が出来上がる。そんなのは俺も御免こうむるからな。

 ・・・ついてきてくれ。あんたらに、見せたいものがある」

 

 そういって庵を再び抱えると、つかつかと万は歩き出した。その後ろから、全員がついてきた。

 

 

 

 

 そのままたどり着いた先は整備室区画だった。迷わずにいつも使っていた区画まで歩いていくと、ドアの前でいったん立ち止まった。険しい顔でドアの隙間に片手をかざして動かした。いったい何をしているのだろう、と後ろの面々が疑問に思っていると、かざしたほうの手を正面に、もう片方の手でドアを一気に開けた。開けた瞬間に一気に突風が吹き荒れる。わずかに、開けきった瞬間に中で何かが動いた。

 

「あらぁ、ずいぶんなご挨拶ね?」

 

 そういって中にいた少女は扇子を開いた。そこには“暴力反対”の文字が、例によって達筆に書かれていた。

 

「・・・ほとんど占有していたのは認める。が、鍵までかけてしっかり出ていったはずの部屋に入っていた人間にご挨拶もあるかよ」

 

「そうだけど、一応私は生徒会長だし?生徒が一つの整備室をほとんど占有して、いや、占有させて何かやってる、って聞いたものだから、心配になっちゃって」

 

「あっそう。心配になるのは結構だけどよ、なら本人に聞いてみるっていうのが一番手っ取り早いんじゃないか?飯とかはしっかり食ってたわけだし」

 

「でも、時間をずらしてみても駄目だったのよねぇ。だから、強硬手段に出た、ってわけ」

 

「強硬にもほどがあるだろうが。それに、一応今は俺の時間のはずなんだが?」

 

「そうねぇ、でも気になっちゃって。それに、なんだか今日は大人数だし、愛しの妹もいるわけだから。いいじゃない、少しくらい。ね?」

 

 あざとさと最大限に利用するような口調と、上目遣い。この女の本性がどのようなものなのか、とてつもなく興味がある万だったが、出てきたのはため息が一つだった。

 

「・・・わかった。ま、とりあえずこっちの連れに説明やらなんやらする。そこにいてくれればいい。ま、少々場所を動いてもらうことになったりするかもしれんがな」

 

「それくらいはいいわよ。ありがと」

 

 そのまま、万はコンソールのそばに歩み寄った。そこには、例の量子変換ボックスがいくつか、色分けして置いてあった。そのうちの青いボックスを、万は手に取った。

 

「さて、と。会長、使うのでそこどいてもらえます?あと、セシリアはこっちに」

 

 呼ばれたセシリアは、万の横に立った。そのまま、コンソールを操作しながら万は前を見ながら言った。

 

「そこのハンガーに、ティアーズを展開してくれ。君はそのまま戻ってきてほしい。説明したいから」

 

「あ、はい」

 

 言われるがままにティアーズを展開してそのまま戻ってくると、コンソールには例の青いボックスが接続されていた。

 

「今からやるのは追加武装のダウンロードだ。順番に呼ぶから、俺の言うとおりにしてくれ。じゃねえと、うまくできないかもしれない。つっても、紅椿と白式に関しては、追加領域(バススロット)ないんで無し。ないものはどうしようもないからな。

さて、ティアーズへのダウンロードの中身としては―――」

 

 そういって別のキーボードを片手で操作し、別のディスプレイにウィンドウがいくつか表示された。

 

「実弾銃、ピストル系多機能射撃武器、多機能ビット、あとは・・・あーくそ、やっぱ足りないか」

 

「どうしましたの?」

 

拡張領域(バススロット)が足りない。心配すんな、裏ワザがある。あと一つは追加のスラスターなんだが・・・こいつはちと待ってくれ。3分、いや2分で終わる」

 

 そういってその追加スラスターと思われる物のみを実体化させると、左手を軽くかざした。そのまま、キーボードを右手一本で操作し、少しすると、そのパーツを能力でティアーズのそばに置いた。それからさらに少し操作をすると、ブルーティアーズに少しのスラスターが装備された。

 

「さて、もう大丈夫だ。で、足りない装備なんだが、ボックスに入ってる。普通の装備が入っているフォルダではなく違うフォルダを開くイメージでやればいけるはずだ。ま、その辺は慣れだな。ちゃんと訓練すれば一週間もすれば慣れるだろ。一つ一つの武装が多くの役割を果たしていることが多いが、その辺はあんたなら扱いきれると踏んでの判断だ。これ、追加された武装の説明書。わからんことがあればまた教えてくれ。

 さて、次は凰だ。同じように甲龍を展開させてくれ」

 

 万がそういうと、待機状態に戻したセシリアと入れ替わる形で凰が自信の専用機である甲龍を展開した。その間に、万は臙脂ともとれる、濃い赤色のボックスを手にして、先程と同じように機器と接続した。

 

「OK。んじゃ追加武装のダウンロードを始めるぞ。

 こっちの中身としては――」

 

 そういって、また片手をもうひとつのキーボードに走らせる。すぐに、ディスプレイにいくつかウィンドウが表示された。

 

「ビット型追加スラスター兼装甲、レールカノンなど大砲系が数本、多機能小銃、あと光学兵器をいくつか、ってとこか。全体的に燃費が悪いから気をつけてくれ。・・・あーくそ、やっぱり足りない」

 

「だから、そういうときどうしてるのよ?その裏技って何!?」

 

 それなり以上に苛立った様子で言う凰に、万はコンソールを弄りながら冷静に答える。

 

「考えたことないか?普通のポケットとかの中に四次元ポケット入れたらどうなるのか、って。ま、四次元ポケットじゃなくても中に入る量と全体の体積が逆転してるやつなら何でもいいんだけど。似たようなこと試してみたら、意外なことにバグのひとつも起こらず、きっちり両方とも機能してくれてな。

 ま、つまるところ、だ。ISの量子変換を利用して、ボックスを量子変換させた。その中の情報量は変わらないはずだから、何でできたのかは成功した俺にとっても謎なんだけどさ。

 あ、箱の中身を取り出すときはわざわざボックス取り出さなくても大丈夫。さっきもちらっと言ったけど、違うフォルダから取り出すような感覚。ま、基本的にはきっちりイメージしてやればいい。武器に関しては、ボックスをイメージして一回ボックスを出してやって、ボックスの“全収納物取り出し”ボタンで一回出しちまえば見れる。ただし、この作業はアリーナかここでやれよ。周囲に迷惑だ。

 ・・・っと、終わったようだな。次はデュノア、あんただ。やることは分かってるだろうから説明はせんぞ」

 

 同じようにシャルロットがハンガーに自身の専用機を展開したのを確認すると、同じようにコンソールを操作しだした。

 

「追加するラインナップとしては、追加スラスターにワイヤーブレード、レーザー兵器が数種、ってところだ。あんたが一番苦労したぞ、武装考えるの。いろいろ持ってるし。ま、その代わりちょっといじりたいんだけど、いい?」

 

「・・・いいけど、何するの?」

 

「何、ちょっとCPUを改良して出力の特性やらを変えるだけだ。と言っても、できるだけ同じように使えるように配慮するから、その辺は安心してくれ」

 

「というか、そうじゃないと困るんだけど・・・」

 

「そーだよなぁ・・・お、追加武装のダウンロードは終わったな。んじゃ、ポコポコポコっと・・・」

 

 妙な擬音を口にしながら明らかにその擬音には似合わぬ、某百裂拳かと見まがうようなタイプ速度で一気にコンソールを操作していく。その間、いくつもの画面が立て続けに表示されては消えていく。

 

「・・・え・・・」

 

 その光景を見ていた楯無が驚きのあまりしばし絶句した。簪も、その隣で言葉を失っている。もともと口数の少ない簪はともかくとして、常に人を食ったような、つかみどころのない楯無が絶句するという光景はなかなかに新鮮だった。

 

「どうしたのよ、簪」

 

 様子がおかしいということを察したのか、隣にいた凰が聞くと、半ば呆然とした様子で答えた。

 

「いや、だって・・・。彼、出力特性とか、全部マニュアルでやってる・・・」

 

「・・・それってどれくらいすごいの?」

 

「えっと・・・」

 

「計り知れないわよ、そんなの」

 

 言いよどんだ簪に代わり、楯無が答える。

 

「言うなれば、パソコンの根幹プログラムのエラーチェックや効率化をすべて手動で行っているようなもの。私だってこんなリスキーな真似しないのに・・・。こんなことできたら、立派にIS技師名乗れるわよ」

 

「一応、元IS技師なんですけどね、俺。・・・さて、終わった。全体的なパワーを上げてあるけど、その分出力特性がややピーキーになったのと、燃費がちょっと悪くなってるから、その辺気を付けてくれ。

 んじゃ、次はラウラだな。あんたもちっとばかし根幹プログラムをいじることになるな。インストールする特性上」

 

「わかった」

 

 そういって、今度はラウラが自身の専用機を展開した。それを確認して、また高速で万がコンソールを操作しだした。そのまま、顔だけを―――より正確には目線だけを別ディスプレイに向けた。それから少しして、先ほどと同じような光景が出現した。

 

「お、できた。やってみればできるもんだな。っと、そんなのはどうでもいいか。追加武装はスラスターがほとんど。あと、短剣が二本と、ガトリングに、超高出力レーザーカノン。レーザーカノンについては連射不可だからな。注意してくれ。

 んでもって、ちょいと面倒なことをするから、こっちでだいぶ時間が食われると思う」

 

「面倒なこと?」

 

「具体的には、拡張領域(バススロット)の追加、基本パッケージの変更、ってとこか。あと、できれば機動力上昇をできればやりたいけど・・・。こっちはまあ、できればいいな、ってとこ。でも、そうすると処理限界いっぱいいっぱいになるかもしれないからなぁ・・・。ま、その辺は様子を見ながら、だな」

 

「処理限界・・・?」

 

「ISってのはパイロットの思考によって操作される。ということは、まあ、ある程度機体のスペックにも影響はされるが、最終的に処理の判断を行うのはパイロット自身、もっといえばその脳だ。その脳を補助機能として、主となる演算は機体自身が行っている。パソコンでも、一気に多数の処理を行えば動作が重たくなったり落ちたりするように、ISの機体にも能力低下が起こる可能性があるんだよ。戦場のど真ん中でそんなことが起こってみろ、文字通り命取りだ。だから、だいぶ安全設計になるようにしてあるんだよ。あ、ちなみにここまでやった3人に関しては問題ないから。全部の武装を同時展開して射出とか、そういう無茶苦茶やんなければ大丈夫。

 おし、ダウンロード完了。んじゃ、いっちょやりますか!」

 

 そういって高速でコンソールを操作する。今度は、二つのディスプレイにまったく違うと素人目にわかるような内容が表示されている。が、その二つを難なく、持ち前の高速操作で処理していた。先ほどの技術についで飛び出した超人的な技術に、周囲は今度こそ息をのんだ。

 

「・・・敵じゃなくてよかった」

 

「それはこっちもだよ」

 

 思わず一夏が漏らしたつぶやきに、同じようにつぶやきで返す。その言葉には、今まであった余裕が消えていた。

 

「・・・よっし、終了!・・・っだー、なんでこんな面倒くさいプロテクト使ってるんだよあれか機密の漏えい防止ってかんなことしなくてもパッと見どれが待機状態なのかわからないから奪いにくる輩とかいないしそもそもこれの所有者なら並大抵の刺客なら返り討ちだしそれに奪えるくらいの腕前なら大抵のプロテクトは突破できるってもんだから大して意味もないだろうがぁ!」

 

 一息に悪態を長台詞で言い終えると、軽く肩で息をしながらラウラのほうを振り返った。

 

「うーむ、やっぱり機動力の改善のほうは無理だった。その代わり、基本パッケージについては、今までのレールカノンがなくなって、今回新しく取り付けたスラスターがついてる。レールカノンについてはほかの武装と同じく、量子変換した状態で格納されてる。イメージすれば今まで通り出てくるはずだ。パンツァー・カノーニアについては、ボイスコマンドで“ツヴァイ・カノーニア”で二本の砲身が出てくるし、“パンツァー”で防御シールドが出てくるように一応設定されてるけど、ま、慣れれば思考で一瞬だな。その辺は、まあ、ラウラならどうにでもなるだろう。

 よし、んじゃとりあえず最後、簪」

 

 その言葉を聞いて、簪が打鉄弐式を展開した。それを確認して、さらりとコンソールを操作する。

 

「追加される武装としては―――」

 

 そこまで言うと、ひとりでに別ウィンドウが動き出した。

 

「―――複合実体シールドをメインに、チャフとフレアのそれぞれの発生装置。あとは、ハイパーセンサーの高感度化にステルス、ってところだな。複合実態シールドのほうは―――」

 

 そういうと、再びウィンドウが多数出現する。

 

「―――シールドっていうより、どっちかっていうと飛び道具的な意味合いが強い。盾として、っていうより、それに内蔵されてるガトリングのほうが怖いかな。口径もでかければ威力も大きい。その代わり、こいつを使うとどうしても動きが重くなるのと、長時間ばらまけば、その閉鎖的な構造上排熱がうまくいかなくなって破損する可能性も高い。理論上だと限界は3分ってなってるけど、できれば半分以下が望ましい。冷却にはそれなり以上に時間がかかるし。ま、とにかく、前線指揮機っていうのをコンセプトにしたからな。ラウラだけだと万が一に対処ができない。となると、次に向くのは簪かな、と。ま、余計なお世話かもしれないが、あって損はないはずだ」

 

 そういいつつあと少しコンソールを操作するとゆっくりと振り向いた。

 

「さて、これで追加武装のダウンロードは終了。理論上はすぐ使えるはずだ。とりあえず、使いづらかったりしたらデータとともに俺に持ってきてくれ。できる範囲で改善の努力はする。

 とりあえず、見せたいものってのは以上。

 一応言っておくが、これから使いにはかかるなよ」

 

「かかれないわよ。もう疲れたし」

 

「それもそうだな。いろいろありすぎた。・・・先生、明日、俺らは休日でしたよね?」

 

「明日あさっては土日の振替で休みだ」

 

「なら寝させてもらいますか。んじゃ、俺は部屋に戻ります。お前らもしっかり休めよ~」

 

 そんなのんきな声を残し整備室を去ろうとする万を、背後から千冬が呼び止めた。

 

「待て、黒川。更識妹の機体に乗せた武装は、明らかにアラスカ条約違反だ。教育者として、それを見過ごすわけにはいかない」

 

「そりゃそうですよね。チャフもフレアも立派に兵器ですから。

 ・・・で、どうするんです?俺を拘束でもしますか?」

 

「最悪、そうせざるを得んだろう」

 

 その言葉に万は軽く眉を上げた。

 

「だが、本当に大群がここに押し寄せてきたら・・・」

 

「防衛力としてISを起動せざるを得ない。そうなれば、アラスカ条約は形骸化する」

 

「その通りだ。だから、今はお前を拘束しない。お前の在学中までにもし襲撃がなかったら・・・」

 

「わかってますよ。あと、庵に関してはどうなろうと俺は文句言うつもりはありませんので。じゃ、失礼します」

 

 そういって片手をひらひらと振りながら、今度こそ整備室を後にする万に、生徒全員が呆気にとられていた。

 

 こうして、長い、本当に長い一日が終わりを告げた。




はい、ということでね。
個人的には、こんなことが実際に起こってたら、今まで利権を持っていた人々は少なくない反感を覚えると思うのですよ。というわけでこういうシーンは書きたかったシーンです。ある意味こういうシーンを入れたかったからこそちと無理のある設定をぶち込んだともいえます。

最後の一文を書くときに気付いたんですけど、なんと30話から日付が進んでないんですよね。ここでようやく終わるという。どれだけ物語が停滞していたかを改めて知ってとても驚いています。次からは日常を少し書きつつ、物語を進めればな、と思っています。
あと、40話というのは盛りすぎでしたね。目標としては50話くらいまでにおさめられれば、と今は思っております。

では、また次回。
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