【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、どうも。

修理に出したはずなのにうちのPCの調子が悪く、しばらく書けませんでした。申し訳ない。
起動してから1時間持たないとかやめてほしい。いやマジで。まあ修理前は10分持つことがほとんどなかったと考えると多少はマシになってるんですけど。

まあそんなのは置いといて。今回分どぞ。


35.一夜明けて

 万は少なくない疲れを感じながら自室に戻り、ベッドに倒れこんだ。今日だけで少なくない数の体晶を使っている。自分が思っている以上に脳はボロボロだろう。体のほうも少なからず負担がかかっていることはわかっている。だが、こちらもダメージは大きいだろう。

 

(こりゃ、やばいかな。過去にもあれの使いすぎで廃人コースっていうこともあったらしいし。いい加減セーブしねえと)

 

 手を天井に向けて広げ、もう一度閉じる。体のほうは大きなけがもなさそうだ。これなら、しばらく休めば今まで通りだろう。脳も、しばらく能力を封印すれば問題はないだろう。不便ではあるが、我慢しなければならないだろう。

 

(せめて、最後の力だけでも、残しておかないとな)

 

 とりあえず、今日のところはもう寝よう。一にも二にも、今必要なのは休息だ。そう思って、能力で自身の脳波を操作せずに、ただ眼を閉じた。幸いなことに―――といっても当然といえば当然だが―――、疲れがたまっていたらしく、そのまますぐに眠りに落ちた。

 

 

 次の日の朝、目が覚めると人の気配がした。慌てずに寝返りを打つように空となっているはずのベッドに体を向け薄目を開ける。そこには、庵がすやすやと寝息を立てていた。自身の経験上、ここ以外に特に音がない以上、人の気配は彼女で間違いないだろう。そう判断すると、静かに身を起して、そのままセイリュウの待機状態である眼鏡をつけた(なお、アイギスの待機状態である腕時計は、寝ている間はずっとつけたままである)。時間を確認すると、10分ほど遅れてはいるものの概ねいつも通りといった時間だった。なおもぐっすりといった様子の庵を起こさないように静かに身支度を整えていると、部屋の机上に置手紙が置いてあることに気付いた。これまた静かに手を取ると、静かに黙読した。

 

 

 さて、これを読んでいるということは目を覚ました、ということだろう。

 

 まず、いくつか業務連絡だ。

 

 庵に関してだが、どういう処分になっても文句は言わない、というお前の言葉に甘えることにした。もろもろの事情を加味しても飲み込む人間でないといけない。お前が適任だ、ということで教員一同落ち着いた。なので、お前は庵と同室になってもらう。本来、教師陣の頼むところだが、事態が事態なだけに頼める人間がいなくてな。わかっているとは思うが、拒否権はない。

 そして、彼女の身分に関しては、IS学園に編入させるということで落ち着いた。もともと、黒騎士もゼフィルスも顔の見分けを付け辛い機体であることもあり、知っている人間などごく一部だろう。クラスは3組だ。あのクラスだけ専用機持ちが編入していなかったからな。

 身分としては、一夏の双子の妹、ということになっている。正確には双子ではなく年子なのだが、見た目で判断できる人間など皆無だろう。編入は休暇明けだ。

 

 襲撃に関しては、かなりきな臭い、としか言えない状況だ。今現時点で確証はつかめていないが、それらしい、というようなことはいくつか挙がっているらしい。曰く、ばらばらになった兵器のパーツらしきものが流れてきている、下仕官が妙な動きを見せている、などなど。

 こちらに関しては、限りなく黒に近いグレー、としか言えない。

 

 あと、お前のISについては秘匿するということで教師陣の意見が一致した。以降、有事が発生するまで、あの場にいた全員には守秘義務が発生する。むろんお前もだ。もしこれを破った場合、何が起こるかは保証できん。それだけは覚えておけ。

 この手紙は読み終えたら処分しておけ。焼くなり刻むなり好きにしろ。以上。

 

 

 

 文面、書体からしてまず間違いなく千冬のものだろう。彼女の字は数えるほどしか見たことがないが、それだけでも筆跡を覚えるには十分だった。穴のあくほど読み直し、しっかりと内容を反芻すると、灰皿の上で手紙に火をかけた。簡易的とはいえシンクもある部屋だ、水道も無論ある。その水道に手ごろなタオルをしっかり濡らして絞ると、火は下火になっていた。灰皿の上からタオルをかけ、少ししてからとると、紙と少しあった煙草の吸殻は燃えて灰となって、火は消えていた。

 

 何はともあれ、寮監室へ来いと言われている以上、行く必要があるだろう。だが、教師である以上、この時間は学校に詰めているはず。昨日の今日ということで、外出届は出さなくてもよく、しかもなおかつ未使用のアリーナは届け出を出せば使用可能と来ている。普通の生徒は休日ということで各々自由自適に過ごすと思うが、少なくともそうしない人間に数人心当たりがあった。そう思った万は、静かにIS学園の制服に着替えると、寮監室へと足を向けた。

 

 

 

 寮監室の前で、一回身なりを確認する。やましいことなど特にない。だが、あの先生の前ではどうしても背筋が伸びる。問題ないことを確認すると、静かに二回ノックした。

 

『誰だ?』

 

「黒川です。お呼びと伺い、参りました」

 

『わかった。入れ』

 

「はい、失礼します」

 

 声をかけてドアを開ける。その先には、自身の担任である千冬がいた。

 

「で、俺に何の用です? ・・・って、聞くまでもないですかね」

 

「まあな。なら早速だが・・・。アイギスはどうするつもりだ?」

 

「しばらくの間、存在自体を隠します」

 

「そういう話ではない。登録はどうするつもりだ?」

 

「それならもう済ませてあります。もっとも、企業名はともかくとして、開発者その他もろもろは、すべて偽造ですけど」

 

「そうか。では次に、庵のことだ」

 

「それこそあなた方の問題だ。俺には関与する理由がない」

 

「いや、これは質問だ。・・・なぜ助けた?」

 

「最初は単なる情報収集ですよ。で、助けた後はただ単に好奇心です。どんな奴なのか、興味がわきまして。それ以上でも以下でもないですよ」

 

「本当か?」

 

「本当です」

 

 あくまでも疑り深い千冬に対し、万は人を食ったような笑みで答えた。

 

「・・・そうか。要件はそれだけだ。下がれ」

 

「んじゃ、失礼します」

 

 一言そういって部屋を出る。背を向けた瞬間に、万の顔はまるでお面のような無表情になっていた。

 

 

 それから少しして、フリーの射撃レーンに銃声が響いていた。ゆったりと寝そべって遠くの射撃の的をスコープ越しに覗く。少ししてから、何回か連続で大きな射撃音が響いた。長く息をついてから、もう一度スコープを覗いた。

 

「全弾命中、うち60%以上が中央とは・・・腕を上げましたわね」

 

「そんなに当たってねえ。56、7%ってとこだろ・・・。てか、ぬるりと出てくんな、心臓に悪い」

 

「あら失礼、以降気を付けますわ」

 

 優雅に笑いながら近づいてきたセシリアに対し、静かに言った。

 

「・・・で? 何の用だ?」

 

「わたくしのティアーズの整備をお願いしたいのです。お願いできます?」

 

「OK、お安い御用だ。・・・てか、よく俺がここにいるってわかったな?」

 

「決戦の時が近い、というのに、自分だけ何もしない、というのは、いささか考えにくいと思いましたの。前に万さん、ライフル狙撃が苦手だとおっしゃっていましたから、それを克服しようとしてここに来た。違いまして?」

 

「違わねえな。まったく、慧眼恐れ入るよ」

 

 軽く笑いながら、万はライフルを軽く担いで出口に向かった。

 

 

 

 その後、整備室に入った二人は、展開されたティアーズを前に立っていた。

 

「具体的にどんな感じなんだ?全体的に武装とかがしっくりきてない感じか?」

 

「いえ、むしろ武装は複雑な作りなのに使いやすく、驚いていますわ。しかし、スラスターのほうがどうしてもピーキーすぎる印象がありまして・・・」

 

「あー、OK。つっても、たぶんたいした違いは出ないぞ。それでもいいか?」

 

「構いませんわ」

 

「OK、んじゃはじめるか」

 

 そのままパタパタとコンソールを操作し始めた。まもなくして、万の顔が目に見えて渋くなった。

 

「あっちゃー、こりゃ使いにくいわ。訂正、これ意外と変わるかも」

 

「と、いいますと?」

 

「一番ピークパワーが出る代わりにとんでもなくピーキーになってた。こんなの初見じゃ誰でも手を焼く。ある程度最大パワーを犠牲にしてでも出力特性がマイルドになるようなセットに仕上げるから、これでなんか変なところがあったら教えてくれ」

 

「ありがとうございます」

 

「いいって、これに関しては俺のセッティングミスだし。幸いなことに履歴とかも残ってるから、それに近い形になってくれればいいな、ってとこ。ほかに要望があればできるだけやってみるけど、ある?」

 

「できれば、で構いませんが、ロールの速度を上げてもらえるとありがたいのですが・・・」

 

「OK、了解。ちょい待ちな、すぐ終わるから」

 

 そういってさらに追加でコンソールを操作すると、ゆっくりとスクロールする画面を凝視し、やがて満足げにほほ笑んだ。

 

「よし、これでOK。また調整が必要なら連絡くれ。あ、それと、俺はしばらくここにいるから、誰かが捜してたらそう言ってくれ」

 

「ありがとうございます。覚えておきますわ」

 

「おう、んじゃ」

 

 お礼を言うや否やすぐ走っていくセシリアの後姿を見ながら、万はすと顔を引き締めた。昨日の今日ということで、整備を必要とする人間が大量に出てくるだろう。どちらにせよ、ああいった手前、しばらくはここにいなくてはならない。ならば、その間に少しやれることをやっておこう。そう思い、見かけ上封印してあるところにある、展開こそされているもののそれだけの機体に向けて語り掛けた。

 

「さて、んじゃやりますか。素直な反応(レス)を期待してるぜ・・・銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

 

 そういいつつ、さらりと仮想ディスプレイを叩き、数値等の整理を始めた。

 

 

 予想に違わず駆け込んできた専用機もちのそれぞれの要望に応えながら、ほとんど片手間ではあるが、万は銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の復旧作業を完遂した。といっても、あれからこれだけの時間がたてば、さすがに自己修復能力でほとんどが修復されていたため、万が手を加えたのは、実質散らばっていた数値の整理と合理化、それと追加武装をいくつかインストールしただけであった。追加武装といっても、セイリュウで得たデータを基に、自身のアイギスに載せる予定だったプロトタイプで、こちらも片手間に過ぎなかった。

 

「あとは、パイロットがどういう反応をするか、だな」

 

 そう思って、この事態を想定してあらかじめ用意しておいた書置きをコンソールの前に置き、万は整備室を出た。

 

 

 

「・・・で、私の前に来たということは、つまりはそういうことというわけね?」

 

「ええ、そういうこと、です」

 

 日数にすればほんの数日のはずなのだが、どこか相当久しぶりのように感じる学校に行き、直接職員室に行った万は、そのまままっすぐナターシャのもとへと向かっていった。

 

「俺の使っている整備室にあります。いつでも大丈夫です」

 

「わかったわ、ありがとうね。そうね・・・今晩20時、アリーナを使えるようにしておくということでいいかしら?」

 

「分かりました。んじゃ、今日の20時、整備室で」

 

 一例をしてから、くるりとその場で回って去っていく。そのまま職員室を出ていく。その姿からは、ひたすらに何も読み取れなかった。

 

 

 そして、その後、夜。約束通り整備室を訪れたナターシャを招き入れた万は、奥に鎮座する福音にかかっていたカバーをばさりと取り除いた。そこには、新品かと見紛うような輝きを持った福音がいた。その輝きにか、しばらく見とれていたナターシャが、やがて静かに漏らした。

 

「ありがとう。もう、大丈夫そう」

 

「わかるのか?」

 

「言ったでしょ。私は、物の記憶を読み取ることができる。だからわかるの。この子が、もう大丈夫だって、いつでも飛べる、って言ってる。・・・アリーナの使用許可は取ってあるわ。お願いできる?」

 

「元からそのつもりです。念のため細かいセットアップを行いますんで、乗ってください」

 

そういわれると、ゆっくりと福音に腰かけた。その横のコンソールを高速で操作し、多少なりとも変化のあった体に機体を馴染ませる。

 

「よし、これで一次移行(ファーストシフト)は完了です。続いて、飛行準備に入ります。操縦者は、垂直カタパルト申請をお願いします」

 

 あくまで事務的な態度でコンソールを操作しながら言う。すると、すぐにモニターが切り替わる。

 

「システムチェック開始。射出時刻、20秒後に設定。パワーユニット、問題なし。上部開口、問題なし、あと5秒で全開。コースチェック、問題なし。計測機器チェック、計測された値は誤差範囲内、問題なしと推定。システム、オールグリーン。

カウントダウン、5、4、3、2、1、ゼロ!」

 

 最後の一声とともに、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は轟音とともに空へと舞いあがった。髪が後ろへとなぶられる感覚が収まると、万は自身の能力で開口部からアリーナに立った。そこから、リンクをあらかじめつないでおいたセイリュウのディスプレイに表示された数値群を見る。

 

「数値としては、これで予想の範囲内です。コントロール性などに難があるのなら何なりとおっしゃって下さい」

 

『全く問題ないわ。・・・それにしても、不思議ね』

 

「それはよかった。・・・何がです?」

 

『飛べなかった時間は短かったはずなのに、こうして飛んでみると久しぶりに飛んでいるかのよう・・・。心が洗われる気分だわ』

 

「そりゃよかったです。最近、俺は空飛んでばっかだったんで、そういう感覚はなくなってきているんですけど」

 

『あら、そうなの? でも、わかる気はするわね』

 

「ま、俺はあくまで“技師”のほうが強いんですけど。で、細かなフィーリングはOKですか?」

 

『大満足よ。で、もうひとつのお願いは大丈夫なのよね?』

 

「ええ。そちらが大丈夫なら早速はじめますけど、どうします?」

 

『なら、お願いしましょうか』

 

「OK、了解です。んじゃ、いきますよ」

 

 そういうと、そばにあった端末を一気に繰る。すると、大量の仮想ターゲットが表示させる。

 

「武装は通常通り拡張領域(バススロット)にありますんで、量産機と同じ要領で取り出せるはずです。無論、銀の鐘(シルバー・ベル)も実装済みです。いつでもいけます」

 

『わかったわ』

 

 そういうと、手始めに大量に展開されていた的を一気に銀の鐘(シルバー・ベル)で一気に破壊する。この武装の特性上、納得のいく話ではあるが、実際に目にしてみると壮観だ。

 

「さっすが広域殲滅特殊武装・・・。ま、この程度は想定範囲内ですかね。出力の上昇度合いも想定の範囲内です。使用フィーリングはどうです?」

 

『全く問題ないわ。次は追加武装のテストでもいい?』

 

「むしろそれは俺が聞くことなんですが・・・。ま、些末なことは気にしないで行きましょうか。テストのほうはいいですよ。新しく的を出します」

 

 さらに端末を操作。すると、また大量の的が出現する。

 

「頼まれていた武装はとりあえず一通り搭載しておきました。搭載した武装内容を送信します」

 

 そういって、今度はセイリュウの仮想ディスプレイを操作する。一瞬でいくつかのテキストファイルが福音に転送された。

 

「とりあえず、今乗ってるのは以上です。なんか質問等あれば答えられる範囲で答えますが」

 

『特にないわ。・・・というか、よくこんなに用意できたわね?』

 

「俺を誰だと思ってるんですか? 睡眠なんて、数日のうちに固めてとればその前は寝ずに3、4日くらいはいけますし。ま、そんなのはどうでもいいや。とりあえず、計測機器は問題ないですから、さっさと始めてください」

 

『了解』

 

 そういってその手の中に現れたライフルを構えて的を次々に打ち抜いていく。その光景を、万はモニターと見比べながら見ていた。

 

 

 

 ひとしきり飛行を終えて、ナターシャはふわりと万の前に飛んできてISを解除した。と同時に開口一番呆れた口調で言った。

 

「まったく、本当に人間離れしてるわね、あなたって」

 

「一応褒め言葉として受け取っておきます。・・・で、どうでした、追加武装のフィーリングは?」

 

 万としては自分が周りに比べてどうとかはどうでもいいので、そちらのほうを聞きたかった。技術屋としては、その解答如何によって修正する必要があるからだ。今からならデータもある程度は確認しなくても覚えているから、その分作業も効率化できる。

 

「まったく問題ないわ。しいて言えば、ライフルとSMGのバースト切り替えが慣れないけど・・・。そんなのは使っていれば慣れるだろうし」

 

「切り替え、ですか・・・つまみの位置ってことですか?」

 

「そうね、そうとらえてもらって構わないわ。前使っていたものと少し位置が違うから、それで、ね。でも修正とかは必要ないわよ」

 

「・・・そこまで言うのなら、そのままにしておきますが・・・。本当に大丈夫ですか?今なら、細かいブラッシュアップでもすぐに終わりますが」

 

「大丈夫よ」

 

「分かりました。その前に、整備室によってもらえますか? 念のため、今のテストフライトによる機体への影響と、細かい調整を行ますんで」

 

「了解。頼りにしてるわ」

 

 ほほ笑みながら肩を一つたたくと、そのまま二人は整備室へと歩く。その間、細かい話は一切しなかった。というのも、万はセイリュウに先ほどのデータを流しながら歩いていたため、話しかけることができなかったのだ。仮に話しかけていても、まともな返答は期待できなかっただろう。それは、隣を歩いていたナターシャもよくわかっていた。

 整備室に入ると、万はコンソールの前に立って準備をしだした。それを見て、ナターシャもハンガーに福音を展開する。展開が完了したのをちらりと見ると、万は再びコンソールを操作しだした。

 

(元IS技師だっていうけど、こんなレベルまずいないわよ・・・。学園都市の超能力者とは聞いていたけれど、彼、いったい何者・・・?)

 

 そのコンソールを操作するスピード、次から次へと目まぐるしく映る画面を確認する能力、さらにそれを分析して意味のあるものにする理解力。どれも、並みのIS技師ではなしえない芸当だ。それを、目の前にいる青年はさらりとやってのけている。そのことに、少なくない驚きを覚えた。

 

「気になるんならこっちきたらどうだ?」

 

 その操作風景を一心に見ていたナターシャは、その万の声が発せられたことでようやく部屋に誰かが入ってきたことに気付いた。そこには、楯無姉妹に連れられた庵がいた。

 

「あら、なんで私たちがいるってわかったのかしら。あなた、一度も後ろ振りむいてないのに」

 

「メガネのレンズに反射したんだよ。これだからメガネってのは便利なんだよ。で、何の用だ、生徒会長」

 

「別に、用ってほどのものでもないわよ。庵ちゃんに、この学園案内してただけ。どうしても、夜に案内したほうが都合がいいからね」

 

「あんたが楽しみたいだけなんじゃねえのか」

 

珍しく(?)殊勝な理由に、万が混ぜっ返す。その返答はすぐに飛んできた。

 

「失敬な、そんなわけないじゃない。私はただ、善意で・・・」

 

「え、違うの?」

 

 直後、ドサッという音。大方、簪の一言が止めとなったのだろう。

 

「ま、そんなのはどうでもいい。で、どうしたんだ?」

 

「庵ちゃんが、あなたのもとへ連れてってくれ、って。ここ最近、連続で整備室に詰めてたから、ここかな、って」

 

「あー、そういうこと。悪い、見ての通りこっちは取り込んでるから、用事があるなら後にしてほしいんだが」

 

「終わるまで待っている。それに、私もここでの用だから、特に問題はない」

 

「あっそ。なら少し待ってて。・・・と、とりあえず調整終了です。少々出力特性が変わっていますが・・・ま、本当に若干変わった程度なんで、問題ないと思います。この程度なら、使って数分で慣れるでしょう」

 

「わかったわ。ありがとう」

 

「いえいえ、飛んでる最中に機体の不調で落ちた、とかなったら、シャレになりませんから」

 

「それでも、よ。じゃ、私は退散するわね」

 

「はい」

 

 そんなやり取りの後、彼女は整備室を出ていった。その背を見送ってから、万は正面から庵を見据えた。

 

「で、どうしたんだ、庵さんよ」

 

 その優しげな口調とは違い、その眼は相当以上に鋭かった。

 




 はい、というわけで。
 今回は少々物語を動かせたかな、と思います。と言っても、ほとんど動いていないですけど。
 このストップ&ゴー度合は本当に、どうしようもないですね。

 そして、コピーした瞬間に気付きましたけど、意外と文字数が多かったんですよね、今回。8000字超えましたから。8000字くらいお前なら簡単に越せるだろうとか言わない。

 ではまた次回。
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