なんかこれがプロローグでもよかった気が・・・まあ気にしない。
ではどうぞ。
とあるIS企業の研究所にあるIS研究機格納庫兼研究室に、どう贔屓目に見ても高校生以上には見えない少年はいつもと同じように誰よりも早く来ていた。
少年の名前は
いつも通り誰よりも早く来て、ISの分析、装備の強化などに取り掛かった彼は、試験機のデータを確認もかねてもう一度取り直すために試験機の近くへ歩み寄った。
万が誰よりも早く来ている理由の一つがこれだ。女性がどうしても強くなりがちな職場である以上、このようにデータを確認し直す、ということをおいそれとできるわけではないのだ。
またいつものように手慣れた動作で仮想ディスプレイを出現させ、素早くキーボードを操作する。自分の望む項目を出すと、手元にあらかじめ用意してあった紙に求めていた数値をメモしていく。同じように何機かある研究機すべての数値を取ると、席へ戻ろうとした。
それはたまたまだった。
いつもなら躓かない程度の低い段差に躓いて、バランスを崩した。その拍子に手が横に出て、その手が研究機の一機に触れた。
その瞬間、頭の中に大量の情報が流れ込んできた。それはちょうど過去に体験した学習装置の、脳に直接情報をインプットされた経験に近かった。
思わず目を閉じ顔をしかめたのも一瞬、目を開けるとそこには起動した研究機のISがあった。
「・・・あれ・・・?」
確かにデータ採取のためにアクセスはしたし、その時に一時的に起動もした。が、それをした後は絶対シャットダウンさせていて、今回もちゃんとしていたはず。なのに、なぜ・・・。
まさか、と思いながら仮想ディスプレイを表示させ、起動履歴を調べた後、腕時計で現在時刻を調べる。確かに2,3分ほど前に起動し、一回シャットダウン。そして今しがた起動したような履歴がそこには表示された。
そして、先ほど流れてきた情報。
「・・・まさか、な」
自分がISを起動させたとでもいうのか。男であるこの自分が?ありえない。そう思いつつ、もう一度シャットダウンし仮想ディスプレイを消去する。
また手を同じ研究機に当てると、やはり情報が流れ込んでくる感覚とともに目の前のISは起動態勢に入っていた。
「・・・えぇー・・・」
ありえないと思っていても一応検証してみたくなる自分の癖をこれほど恨んだことはないだろう。なにせ、そのせいでその万に一つもないと自分で思っていた可能性が正解であると導き出せてしまったのだから。
あまりにも意外すぎたその可能性が正解だと知ってフリーズしていたその時、研究室のドアが開いた。
完全に思考停止していてほかのことも全く気付かなかった万はその音にすら気づかなかった。
「おはよー、毎朝偉いねーよろ坊」
入ってきたのは万と親しい先輩の研究者だった。本人は世間話でもするような雰囲気で話しかけたのだが、当の本人から一切反応がないことから不審に思い近くに寄って行った。
顔を覗き込んでみると完全に放心状態といった風情で、何も考えられないといった様子だった。
「おーい、よろ坊?どーしたー?」
呼びかけながら顔の前で手をかざしてみるが全く効果はない。試しにコンと擬音がつくように肩をたたくとようやくこちらに気づいたようで体を震わせ年相応の悲鳴を上げながらこちらを向いた。
「うわぁ!って先輩か・・・。いつの間にそこに?」
「ちょっと前。てかマジでどうしたの?心ここにあらずってレベルじゃなかったけど・・・」
そこまで言ってISが起動状態にもかかわらず、仮想ディスプレイが表示されていないことに気づく。
「あれ、もしかしてIS起動できちゃったとか?」
その先輩も軽口のつもりで言ったのだろうが、目の前の少年の顔が一瞬で硬くなったのを見て、地雷を踏んだ可能性があることを悟った。
「・・・え、まさか」
「実演したほうが早いですね」
そういってさっさと仮想ディスプレイで目の前のISをシャットダウンすると、万はISに手を触れる。その瞬間、淡くISは光り、起動状態になった。それを見た先輩は絶句する。
「・・・マジかよ・・・」
「それは俺のセリフですよ・・・」
軽くため息をつきながら万は答えつつ、ISをもう一度シャットダウンする。
「いやー、まさかもうさっそく二人目の男性IS操縦者が出るとはなー、しかもこんな近くから」
「俺もびっくりですよ・・・ん?『二人目』?」
万はその言葉をあっさり聞き流しかけ、先輩の言葉の一部に疑問を持ちおうむ返しに聞き返す。
「おろ、聞いてない?少し前にISをたまたま起動できた男がでた、って話。だから二人目」
一応社会人なのでニュースにも目を通すが、さらりとしか目を通さないので対して興味がない項目はほとんど覚えていないのだが、それはしばらく話題になったのですんなりと思い出すことができた。
「ああ、そういえばそんな話もありましたね。でもどうしましょう・・・」
「どーもこーもねーよ。どうやっても隠し通せねーんだからいっそのことばらすぞ。お前の身分は伏せることになっちまうが・・・」
「構いません。そちらのほうが都合がいいでしょう。で、処遇はどうなります?」
「それなんだがな、こっちにも考えがある。いったんあずからせてもらえねえか?」
「・・・お願いします。俺じゃ何もできないので」
「おう、頼まれた。先輩の力ってやつ見せてやるから覚悟しとけ。とりあえず、お前はいつも通り今日の仕事をしっかりこなせ、いいな?」
「はい」
「よし、それでいい。じゃな」
始業の時に万がISを起動できてしまったことは全員に伝わったが、メンバーは冷やかしはしたもののいつもと変わらず接してくれた。こういう時程このよく言えばフレンドリーな、悪く言えば無駄に馴れ馴れしい職場に感謝したことはないと万は思った。
言われた通りその日の仕事をしっかりこなしていると、終業時に例の先輩から声をかけられた。
「ちょっといいか?」
「あ、はい。朝の件ですか?」
「ああ。つっても、こんなとこで話す内容じゃねえし、ボスにも話を一応したい。悪いがアポはもうとってある。いいか?」
ボスというのはこの研究所の所長のことだ。たまに抜き打ちで仕事を見にきたり、メンバーを巻き込んで突然パーティをやるとか言い出したりするが、人当たりはよく信頼も厚い。万もボスを信頼していた。
「いいかもなにも、アポとってある以上どうしようもないでしょう?それに、これは先輩に任せたんですから、判断には従います」
「OK、サンキュ。んじゃ、今から所長室に行くぞ」
時間には余裕を持たせたいからな、といかにもこの先輩らしい一言にちょっと待ってください、と言いながらデータの保存とパソコンのシャットダウンを素早く行い、さっさと席を立った。
「・・・はい?」
その数十分後、所長室で万は素っ頓狂な声を上げていた。
「え、と、つまり・・・?」
「つまりも何もない。お前さんはIS学園へ進学してもらう。ISの操縦はここでも学べるだろう。出身学校は学園都市の学校の名義を借り受けることで合意した。先方とも話はつけてある」
要領を得ない少年の回答に年長者は先ほど言った内容をより詳しく噛み砕いたうえで繰り返した。
「それにな、よろ坊。どんな事情があるかは俺らは知らねえけど、お前くらいの年でこんなとこに出向なんて珍しい。結果としてまともに学校通えてなかっただろ?」
「・・・まあそうですが」
「なら騙されたと思って学生生活ってのを満喫してきな。絶対いい経験になる」
先輩が強く推す。プレゼンとかでなければそこまで自分の意見を押し付けない先輩がここまでヒートアップするのは珍しかった。ということはそこまで悪いことではないのだろう。
「・・・わかりました」
「あぁ、それと専用機だが、君の研究室の人間に話を通してある。そっちで開発しなさい」
「ありがとうございます」
「この程度、礼を言われるようなことではない。ましてや、君はまだ子供だ。大人にもっと甘えてもいいのだよ?」
万としてはただ純粋に感謝を伝えただけだったのだが、所長は穏やかに笑みを浮かべて答えた。
「こちらからは以上だ。二人とも下がりなさい」
「はい。失礼します」
二人とも順次挨拶をして所長室を後にした。
それから数日で彼らの総力を結集し彼の旅立つまでの数日の間に彼の専用機の装備、装甲など各種パーツがかつてないほどの高速で一気に仕上がり、間に合わない分は学園で量子変換の作業を行う羽目になったのはまた別の話。
はい、今回はこれにて。
字数が少ない・・・
でもここで切ると次の出だしがしっくりくるんですよねー・・・。
とりあえずアニメの展開に絡ませるだけならさっさとやれそうなんですよねー。
というわけでできればサクサク進めていきたいんですが・・・。まあ、努力します。
タグの指摘ありがとうございました。訂正ついでにいくつか修正をしておきました。
ではまた次回に。