【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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はい、どうも。

なんとかPCが直って、なんとか書けました。どうやら部品の一つがショートしていて、それがいろんなところに波及していたらしいです。

ま、そんなのは置いといて。今回どうぞ。


36.万と庵

「そういえば、まだお互い名乗っていなかったな。黒川万だ。よろしく」

 

 口元には笑みすら伺える、柔らかな表面とは裏腹に、その眼だけはまるで射抜くように鋭かった。妙な動きをしたら即座に実力行使をするつもりだろう、というのは、深く考えなくてもすぐわかった。

 

「改めて、織斑庵だ。

 疚しい考えは一切ない。安心してくれ」

 

「悪いが今はその言葉に素直に頷くわけにはいかないってのが建前ってやつだ。俺らは、両方ともスコールとのチャンネルを持ってる。疑われるのがわかりきっている以上、表面上だけでも、お互いがお互いを牽制しあうのが双方にとってベストなんだ。俺個人としては、あんたのことは信用したい。けど、それとこれとは別問題だ。・・・悪いな。

 ・・・で、何の用だ?」

 

「私の機体にも、手を入れてはくれまいか?」

 

「あー、ま、良くも悪くも目立ちすぎたからなぁ、おたくの機体・・・。

 で、具体的には?塗装?追加武装?それとも全体的なブラッシュアップ?」

 

「・・・そのすべてをできる範囲で、というのはできないだろうか?」

 

 それぞれの要求の目的は、この上なくわかりやすいものだ。塗装に関しては、学年全体に対して、一度は完全に敵対したことに対するもの。追加武装や全体的なブラッシュアップについては、純粋な戦力強化だろう。

 だが、その言葉に万は思わず渋い顔をした。いくら彼の作業効率が少々かじった程度の人間では何をしているかわからないレベルとはいえ、

 

「・・・無茶ぶりにもほどがあるだろ」

 

 さすがにこの要求すべてを満たすとなると、不可能の一言に尽きる。

 

「・・・すまない、無理ならどの範囲ができるのか教えてほしい」

 

 もっとも、庵のほうもさすがに要求がすべて通るとは思っていなかったのか、しおらしく言ってきた。

 

「まず、武装は無理。あんたの戦闘スタイルとか、どんな得物を使ってきて、得意としているか。BT適正値。そもそも、黒騎士に積まれている武装。それらすべてがわからない以上、時間がかかりすぎる。どう見積もっても、一週間やそこらで済むもんじゃない」

 

 そこまで言い切ったところで、庵の肩が目に見えて落ちる。

 

「まったく、俺は武装“は”って言ったろうが。それ以外はどうにかなるぞ、たぶん。そこまで時間かからないし。ただ、そのためにはあんたの希望を少なからず聞く必要があるけど」

 

 カバッと擬音がつくような勢いで上がった庵の顔は、アニメならキラキラというエフェクトが間違いなくかかっているだろう状態になっていた。

 

(わかりやすっ)「・・・まあ、だからとりあえず専用機をここに展開してくれ。ああ、もち、点検状態にしてな」

 

 思わず喉まで出かかった本音は腹の中に押し込めてどうにかした。この数日間で何度使ったかわからないコンソールの前に立ち、準備。専用機の展開を確認すると、万はコンソールを操作しだした。

 まずは基本的なデータの確認。それをしないことには何も始まらない。しかし、万が目にしたのは、今まで経験したことのない数列パターンだった。

 

(白式と紅椿は見たことないけど、第三世代にも、第二世代にも見れないパターンだ。なんだこれ。いったいどういう法則がある?)

 

 今までとは違うその構成に、思わず食い入るように画面を凝視する。多様性という点において、level5クラスとされる能力の演算を可能とする頭脳がフル回転する。その思考から、ある一つの可能性が浮かび上がる。

 

「―――・・・まさか―――」

 

 一言つぶやくと、一気にコンソールを操作する。今までに得られた情報から推測された、まず信じがたい一つの可能性。

 

「・・・うっそ、だろ・・・マジか・・・」

 

 この機体名は、黒騎士。

 世界的に有名なISで、今日の発端となった機体名は、白騎士。

 白と黒。古くから対とみなされることの多い二つ。

 これらが表わすもの。

 それは、この上なくシンプルなものだった。

 

「・・・これだけハイスペックで、第一世代だと・・・。いったい何の冗談だ、おいコラ」

 

 目の前に表わされた、あまりに非情で、信じがたい事実に、思わず万は片手で前髪掻き上げた。しかし、目の前の情報は、ただただ真実だ。受け止めなければならないとわかっていても、そうそう簡単に呑み込めるようなものではなかった。

 あれだけ必死になって、いかに効率よく、より強力に、より早く動かせられるか。それのみを追求していた。それは、その環境に身を置いてきた自分が、誰よりも身に染みてわかっている。その結晶が、代表候補生の専用機だろう。パイロットも、そこらの人間ではない。勝つことを想定し、訓練し、鍛錬を積んできた人間たちだ。

 この機体は、その尽くを軽く一蹴できるであろうことは、戦った万自身よくわかっていた。まさにそれができる機体が、今ではほとんど引退している、老骨、アンティークと呼ばれる類のものであったなど、そうそう簡単に受け止められるものではなかった。

 だが、万にはおおよその理由がわかっていた。

 

「第一世代ってのは、今の世代とは大きく違い、()()()()()ISを大成させようとしたもの。今のものは、あくまで()()()()()()()()()()()もの。その部分は、小さいようで、とてつもなくでかい。

 真っ向のタイマンになったら、あくまで兵器であり兵士である人間の前に、安全な競技者が勝てる道理はない、か・・・。

 ・・・理屈じゃ納得がいくが、煮え切らんな」

 

 今現行で開発されているISを、改造されたエアガンだとすると、このISは大口径の実弾銃。もともと作られた目的が違う。どちらがより実践的か、と聞かれれば、答えは火を見るよりも明らかだろう。

 

(となると、まずは・・・)

 

「どうした?」

 

 明らかに様子がおかしい万を、横からひょこと庵がのぞいた。

 

「・・・ああ、何でもない。それより、塗装の色とか、特に希望ってあるか?」

 

「色、か?」

 

「ああ。表面にトンでも素材を使ってるってわけでもなさそうだし、大抵の塗料は使えるとみてまず問題なさそうだからな。結構細かい色まで指定しても、適応できるつもりではあるぞ」

 

「そうか・・・」

 

「あと、ちょっと飛行テストもしてほしいな。今現在、どういう不満を持っていて、どんな方向への調整をしてほしいのか。そこがわからないといじりようがない」

 

 データがわからない以上、少しでもデータがほしい。どの数列群が、どのように影響しているのか。それがわからないことには何も始まらない。

 

「わかった。なら、飛びながら考える。今から大丈夫か?」

 

「ちっと待ってな」

 

 そういって、コンソールをもう一度操作。一応、一年は振替休日となってはいるものの、登校そのものは禁止されていないから、アリーナを使用するということに関しては問題ない。あいているアリーナを使うことに関しても、許可があれば使用してよしというだけで、時間で禁止する校則がないことも確認済みだ。―――もっとも、本来不文律で常識的な時間にしか使用しないのだが。

 幸いなことに、この整備室から直通のアリーナは未使用だった。

 

「OK、大丈夫。乗って。カタパルトで発射するから」

 

 一言、そういった。カタパルトのカウントダウンを少し長めにとり、セイリュウと黒騎士のリンクをつなぐ。そこから、右と左に違う映像を投影した。右には、根幹数列群を。左には、出力等の生データを投影する。生データの計器を介さない解析など、今の万には朝飯前だった。また同様に、右と左で別々の情報を表示させてみるというのも慣れたものだ。

 庵が登場したことを確認すると、万はコンソールを操作する。特に何事もなく、カタパルトから黒騎士は飛び出した。

 

「よし、そのまま暫く自由に飛び回ってくれ」

 

『了解』

 

 計測されたデータと、飛行の軌道、そして根幹プログラム。すべてを並列で思考し、頭の中で一気にまとめあげる。やがて、意味不明な数列は、頭の中で意味のあるものへと変化を遂げていた。

 かなり全力で飛行しているらしく、得られたデータはかなりわかりやすいものとなっていた。下手にコントロールされると、数値が流動的になりがちなのだが、全力で飛ぶとそれがほとんどないからだ。それゆえに、思いのほかすぐに用件は終了した。

 

「もうOKだ。いつでも降りてきて大丈夫だ。なんかやりたいこととかあれば言ってくれ。俺のできる範囲でやる」

 

『大丈夫だ。戻るところは同じでいいか?』

 

「問題ないが・・・わかるのか?」

 

『大体、な』

 

 その言葉とともに、開いていた射出口から垂直に戻ってきた。そのまま、何事もなかったようにかがんで飛び降りる。

 

「よく戻るところがわかったな?」

 

「飛び出したポイントと飛んでいる位置の相対関係がわかればこのくらいできるだろう」

 

「・・・いやいや、あんだけ全開で飛んでいて、そこまで意識するってかなりの難易度だと思うんだが」

 

「そうか?」

 

 軽く呆れつつ応じる万に、どこか不思議そうに庵は言った。つまるところ、庵は方向感覚がかなりいいのだろう。少なくとも、高速飛行をしつつも、相対位置をほとんど意識せずにあてられる程度には。ならばと、万は腹をくくった。

 

「一応聞くが、あれって最高速だよな?」

 

「少なくとも、今現在では、な」

 

「OK、それだけ分かれば十分。で、あんたが良ければ、少々じゃじゃ馬になっても最高速を底上げすることはできる。けど、正直言って、この機体は、これ以上劇的な改良は望めないと思う。少なくとも、俺の腕では無理だ」

 

「それは、どうしてだ?」

 

「根幹プログラムにしても、それぞれの末端プログラムにしてもそうなんだが、とことん効率化が図られているんだ。一技術者としては、こっちが勉強になるような使い方ばかりだ。これほどまでとは正直思ってなかった。知らず知らずのうちに、俺は思い上がっていたらしい。いやはや、何事にも上には上がいるな」

 

 万の言は決して誇張ではなく、本心からのものだった。

 

「もっとも、これに対応できるあんたもあんただがな」

 

「そうか?」

 

「人間ってのは、意識してから行動するまで、ほんの少しタイムラグが存在する。個人差はあるが、大体平均で0.2秒ってとこだったかな。だから、普通の機体はその分を考慮して作動するまでにわずかな時間を設けるようにしてある。だけど、こいつにはそれがない。

 確かに、理論上こっちのほうが最高速、そして反応速度において高い数値を得ることができる。だけど、少なくとも俺はこうはしない。ちょっとでも大きくミスるとそれだけで大きく機体バランスを崩すことになりかねないからな。

 と、まあ、長いこと言ったわけなんだが・・・要約すると、これは、最高速、および作動速度において大きなアドバンテージを得ることができる。だけど、同時にほんのわずかなことで変化が起きてしまうということでもある。安定性を欠く代わりに、何よりも早い反応速度を得、最高速にもブーストをかけた、ってとこか。そういう、ある種ピーキーな機体を安定して稼働させるってことは、十分すごいと思うぞ」

 

 こればかりは、万も驚いた。最初、根幹プログラム群を見て戸惑ったのは、このプログラムのいわば“遊び”の部分がなかったのと、第三世代には必ずあるオートクチュールの部分を完全に機動のほうに使っていたことによるものだった。それさえなければ、あまりにもきれいなプログラムに、ある種の感動すら覚えたものだ。

 

「ならば、ブラッシュアップのほうはいい。現状、特に不満もないしな」

 

「OK。で、色のほうは決まったか?」

 

「大体は。銀色、というのは可能か?」

 

「OK、銀色ね。それは全体的に?それとも飾りでほかの色も入れる?」

 

「飾りでほかの色も入れれるのなら、ほしい」

 

「OK、んじゃ飾りの色も入れる方針でいくか。ちょっと待ってな」

 

 そういって今度はコンソールではなくパソコンを操作しだした。それからしばらく、タッチパネルを操作すると、やがて振り向いた。

 

「さてと、こんな感じで草案としたんだが、どうかな?」

 

 その声に反応して庵が横から画面を覗く。そこには、3DCADで製作されたと思われる、黒騎士が映し出されていた。そのカラーリングは、銀色をベースに、ところどころ黒や赤のラインが入っていた。

 

「ま、銀色ベースっていうから、こんなとこかな、って思ったんだけど・・・かなりこれだと雑だし。もうちょっと要求とかあれば、可能な限り反映させるけど」

 

「いや、基本はこのままでいい。というか、むしろこれをそのまま反映させるというのは可能だろうか?」

 

「いやまあ、不可能ではないけど・・・いいのか?こんな即興で作ったようなやつで。しかも、俺結構その手のセンス無いほうだぞ、自分で言うのもなんだけど」

 

「それを言ったら、私などそういったことに頓着したことなどない。どっちもどっちだろう」

 

 思いのほか、庵が食いついてきたことに驚きながら、万は画面を見つめた。

 

「・・・わかった。そこまで言うんなら、このまま反映させる。幸いなことに、塗料もここにあるし・・・ま、どうにでもなるだろ。ま、そんなのはどうでもいいとして」

 

 そこでいったん言葉を区切ると、パソコンの画面に目を落とした。

 

「これじゃ、“黒騎士”とは呼べねえよなぁ・・・どこが“黒”だよってなるし」

 

「・・・言われてみれば、確かにそうだな」

 

 今まで気づいてなかったのかよ、というツッコミは心の中にしまって、万は二の句を継いだ。

 

「ま、とにかく、新しい名前が必要だな・・・。どうする?」

 

「どうする、とは?」

 

「こいつはあんたの機体だ。何か希望があれば承るぜ?」

 

 その言葉に、暫く庵は考えていたが、やがて困ったような表情をした。

 

「といっても、特にこれという名前は・・・。しいていえば、“マドカ”というのが思い浮かびはしたが・・・」

 

亡国企業(ファントムタスク)連中にはモロバレだし、そこから情報が漏れるとも限らんな」

 

「やはり、そうだよな・・・」

 

 おそらく唯一浮かんだ名前も、万にばっさり斬って捨てられ、庵はがくりと肩を落とした。その反応を見て、万はばつが悪そうに頭を掻いた。

 

「あー、その、なんだ。希望がなかったら、俺が決めるが・・・。無論、最終的な決定はお前に任せるけど」

 

「ああ、頼む」

 

 こればかりは、彼女を責めることはできなかった。おそらく、組織として最低限の知識しか与えられていなかったのだろう。仮に自分に刃が向いたとしても、たやすくその価値観を歪められるように。その意図と、それを一瞬で読めた自分に嫌気がさした。

 だが、それでも思考は止めない。そのまま、頭の中でデータベースを繰る。少しして、名が少しずつ思い浮かんだ。

 

「ランスロット関連かな、やっぱ。その辺が思い浮かぶし、何よりしっくりくる」

 

「何なのだ、それは。槍か何かか?」

 

「ランスじゃない。人名だ。アーサー王伝説における円卓の騎士の一人で、その中では随一の芸達者な人間だ。あんたは、俺が白兵戦で勝てる自信がない、数少ない相手だからな。ぴったりかな、と。どうかな?」

 

「構わない。そのあたりに、私は疎いからな」

 

「OK。でも、ランスロットって直接名づけるのは気が引けるから、そうだな・・・レイクナイト、なんてどうだ?」

 

「ずいぶんと変わったな」

 

「まあね。ランスロットは湖の騎士って呼ばれていたから、そのまま横文字にしただけだけど、どう?」

 

「どう、と言われても・・・。ただ、湖の騎士というのは、この機体に合う気がする。なんとなく、だがな」

 

 振り返って自身の機体を仰ぎ見て、優しく微笑む庵の目を見て、万はふつとどこか来るものがあった。その時の万にはそれが何かわからず、すぐに頭の中のスイッチを切り替えた。

 

「さて、さっさと塗装やっちまうか。離れてな、念のため」

 

 そういうと、どこからともなく塗料を取り出した。それを近くの機械にセットし少し操作をすると、その足でコンソールを操作し、すぐさまその場を離れた。

 

「さて、と。塗装開始、っと」

 

 すると、その機械が動き出し、やがて塗装が始まった。やがて機械が動き出し、塗装をしていく。念のため離れておけ、と言った万の言葉を裏付けるように、塗料を撒き散らしながら下地が一気に塗られていく。下地が終わると、先ほどまでの塗り方とは打って変わって慎重になったかのようにゆっくりと塗っていく。そんなことが暫く続き、機械の稼働が終わったころには、まるで先ほどの画面から飛び出してきたかのような、黒騎士改めレイクナイトが佇んでいた。その輝きには、隠し切れない高貴さがあふれていた。

 

「・・・綺麗だな」

 

 思わず、そんな言葉が万の口から出た。意識せずとも口からこぼれた一言だった。

 

「・・・そう、だな。礼を言う」

 

「いいって。俺のほうも、これを見て大満足だし。・・・さて、ちょっと待ってな、すぐ終わる」

 

 それからさっさとコンソールを操作し、1分経つか経たないといったタイミングでその操作を終えた。

 

「よし、これで登録も終了。これで大丈夫。念のため、暫くここで放っておく必要があるけど、そんだけ。とくに問題なし」

 

「暫く放っておくのは何か意味があるのか?」

 

「学園都市の特殊塗料を使ったからそんなことはないとは思うけど・・・念のため、塗料が乾くまでの時間。たぶん、5分も置いておけばどうにかなるんじゃない?」

 

「わかった、5分だな」

 

「ん。それと、無断で飛ばないことな。飛ぶんだったら、誰か先生か、俺か、まあとにかく一声かけること。OK?」

 

「わかった」

 

「よし、んじゃ、今日はこれまで、だな。ほかにも用件があれば話は別だけど」

 

「ならば、部屋について少々取り決めをしたいのだが」

 

「あー、それは後でいいか?とりあえずは腹が減って仕方ねえからよ。飯を食いながらで」

 

「わかった。しかし、食堂などに出向いたら目立つのではないか?」

 

「部屋で作って食えば問題なし。何でかは知らんけど、ここの寮は全部屋に簡単なキッチンがあるからな。どうでもいいけど、寮に戻るんなら制服に着替えておけよ」

 

 最後の一言で、庵はようやく自分がどのような恰好であるか思い出したらしく、万同様コンソールを操作して制服を量子変換した。そのまま手早く制服に着替えると、レイクナイトを見ながら万に言った。

 

「でも、この後は特にやることもないのだろう?ならば、ここで部屋について取り決めて、そのあと部屋に移動してから夕飯のほうがいいのではないか?これこそ、放置するわけにはいかないだろう」

 

「・・・それもそうだな」

 

 確かに、こんなところにいかにも専用機です、といった機体があれば、持ち主が発覚するどころか、いろいろ根掘り葉掘り調べられかねない。もっとも、学生にお遊び程度で破られるようなプロテクトは組んでいないが。それでも、面倒なことになるのは間違いないだろう。

 とにかく、暫くここで部屋の取決めやらなんやらといったことを決めておいて、ご飯を食べている間はただ純粋に世間話で済ませるべきだろう。

 

「では、まず料理についてなのだが、これについては私は一切できない。だから、とやかく言うつもりはない」

 

「OK、ま、それはしゃーないわな。できないことに対して口出すとか俺でもしたくないし」

 

 それについては納得。てっきり組織で必要なことしか学んでいないのなら突拍子もないことを言い出すだろうと思い込んで―――生活については必要か、と思い直し―――

 

「こちらの洗濯物等についてもそちらにお任せしたいのだが・・・」

 

「いや、待て、ちょっと待て」

 

 前言撤回。この手の突拍子もないことを素面で言えるところを見ると、やはり一般常識というか、倫理観というか、そういったものが欠如しているらしい。

 

「仮にも俺は男で、おたくは女。衣服含めて全部俺が洗うっていうのは俺としてもいかがなものかと思うんだが」

 

「・・・すまない、何が問題なのかさっぱりわからない」

 

 予想していたとはいえ、この返答にはしばし言葉を失った。どうやら、この手のことをこの少女に言っても特に効果はないらしい。頭を抱えたくなるところを、ため息をつく程度に止めた万は、とりあえずこの話題は横に置いておくこととした。

 

「・・・まあ、この手の話はまたあとでいいや」

 

「いいのか?」

 

「いいんだよ。また教えなきゃいかんことがあるってことが分かっただけでも収穫だし。・・・で、次の話ってのは?」

 

 その言葉に促されるように、庵は言葉を発した。

 

「うむ。ベッドの位置については、今の状態で構わないのだろうか」

 

「それはこっちから聞きたいことなんだが。そっちが大丈夫ならこっちは一向に構わないし」

 

「なら、今の状態でいいか?」

 

「問題ないぜ」

 

「ありがとう。しばらくの間、食事はどうしようか?」

 

「俺が作り置きしとく。だから食いっぱぐれるってことはないし。俺の料理って結構評判いいらしいし」

 

「そうなのか。なら、心配なさそうだな」

 

「おうよ。もし何か問題があったら全部俺の責任ってことでどうにかなるし」

 

「もし、あなたが寝坊したりしたら、どうしようか?」

 

「万でいい。あなたなんて呼称を使われるとむず痒い」

 

 もっとも、普段から上品な口調のセシリアは例外だが。

 

「で、寝坊した時、か・・・。文字通り、ぶっ叩いて叩き起こしてくれても構わないが」

 

「わかった。ではそうしよう」

 

「ちょっと待てぇぃ!冗談だから本気にするなし!」

 

「・・・そうなのか?」

 

 どうやら、冗談もあまり通じないようだ。

 

「まったく・・・。寝坊した時は軽くゆすってくれれば起きる。それでも起きないときはここを押せ」

 

 そういって見せたのは自身の腕時計。そこのひとつのスイッチを指さしていた。

 

「これは、身体にちくっと注射することで覚醒を促すってもんだ。もしこれでも起きないようなことがあれば、遠慮無くぶっ叩いてもいいけど、あくまでぶっ叩くのは最終手段。OK?」

 

「わかった。・・・そういえば、塗料のほうは大丈夫だろうか?」

 

「あー、多分もうそろそろ大丈夫。試してみたら?」

 

 その言葉に背を押されて、展開された状態のレイクナイトに触れても、その指先に塗料がつくようなことはなかった。そのまま待機状態にすると、左手首に金属質のリストバンドのようなものがまかれた。

 

「よし、んじゃ部屋に戻るか。んで、飯にしよう」

 

 そういって、二人ともその場を去った。




 はい、ということで。
 今回は万&庵回でした。

 今回を書き出して、そういえばこの二人自己紹介してねえやって気づいて驚いてました。とっくの昔にしている気になってました。

 黒騎士に関してはオリジナルです。もしこの後別の設定が出てきたらそげぶされそうで怖い。でも黒と白だし、千冬さん存在知ってたし。このくらいはありえそうだな、というのは思っていました
 んでもって、ごまかしとして黒騎士をレイクナイトに。正直言って、この辺は書きたかったところです。アイギスを鈍色にしようか銀色にしようか迷って最終的な結論がこれでした。

 それと、ちょっとわかりにくかったかもしれないので追記を。
 家事云々について二人が話し合っている場面なのですが、これは庵としては自分の分まで任せてしまうということが問題なのであって、一般的に親密な間柄(家族、恋人など)以外で男女の洗濯物を一緒にするということに関して問題は感じていなかったわけです。なので、万がなぜその場で性別を出して問題提起したのか、意味が分かっていない、というわけです。
 次似たような場面があれば気を付けます。申し訳ない。

 さて、ここから数話、日常回を挟んで、クライマックスに突っ込んでいく予定です。たぶん、ここから長くは続かないとは思いますが、なにとぞよろしくお願いいたします。

 では、また。
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