【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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 はい、どうも。

 思いのほか早く仕上がりました。当人も驚きです。

 さて、今回分どうぞ。


39.新兵器開発

放課後のアリーナで、二人は向かい合っていた。機体を展開し、己の得物を持ったレイクナイトの姿は、その名の通り騎士を彷彿とさせる。対するセイリュウは、いつもに増して静かで、その静けさが不気味だった。

 突然鳴り響いたブザーに両者が一気に飛び出す。一瞬で最高速まで到達し、そのまま近接格闘に持ち込む。凡人ではまず目でしか追いつけないほどの速度で一気に己の得物を使って戦っていた。セイリュウはどこからか取り出したのか、長い棍棒を器用に使って剣と渡り合っていた。

 

「凄過ぎて参考にならない・・・」

 後学のために見学していた周囲の生徒の一人がぼそりとこぼした。それもそうだろう、いったい何が起こっているのかを正確に理解できるとしたら、教師の一部だけだろう。

 その間も、接近しては得物を叩き付け、離れたと思ったらその直後には鍔迫り合いを繰り広げている。また離れたと思うと今度は銃を打ち合っている。相手のほとんどを回避してこちらのほとんども当てにかかる。その一射一射が大外れしていないことからも、牽制ではないことが見て取れる。あまりに上下左右にめまぐるしく移行するアクロバット寸前のような飛行は、それでいて攻撃を受けずに当てるということを考えられた飛行だった。そういう飛行機動はオート操作では少し以上のラグが発生する。そのため、少なからずマニュアルにする必要がある。その状態でこの戦闘は、なるほどレベルが違いすぎて参考になどできないだろう。

 やがてその踊りのような戦闘は終わった。というのも、仕切りなおした瞬間に、セイリュウのパイロットの青年が声を上げたからだ。

 

「ストップ。今日はここまでだ。映像を見よう。その後で、お互い反省点を洗い出す」

 

 その声に、レイクナイトのパイロットである少女も動きを止めた。そのまま二人は連れ添ってピットに戻った。

 

 

 

 ピットに戻って、三つの画面に同時に映像を流した。そのそれぞれが別アングルで二つの機体のどちらかないしは両方を映していた。

 

「さすがに、無駄が多すぎたか」

 

「そだな。ちょっとパフォーマンスの部分を大きくし過ぎた感はある。けど、基本ができてこそのパフォーマンスだ。そういうことを考えると、まあ、この辺だろ」

 

「もし一兄(いちにい)がこういうことをしようとしたら・・・」

 

 一瞬、一兄って誰だと思ったが、すぐに誰を指すか頭の中で特定することができた。

 

「あいつだったら、そうだな、一分は持たんな。んでもってその間に何もできずに落とされる」

 

「そういうものか」

 

「ああ。特にあいつは高速機動しながらの作業は苦手の最右翼としてるらしいからな。まったく、その辺しっかりしねえと雪羅も活かせないだろうに」

 

「雪羅には砲撃も搭載されているのだったか、確か」

 

「その通り。つっても、本人があの射撃センスだから、滅多に使わない。それに、あいつはそういう小賢しいこと考えるより、剣一本で突貫するほうが強い。そういうやつだ」

 

「確かに。冬姉(ふゆねえ)もそうだった」

 

 そのコメントを聞きながら、万はもう一度立ち上がった。

 

「さて、なら今度は的当て競争だ。今度の敵は、それこそ雲霞のような大群だ。なら、その手の訓練は必要だ」

 

「分かった。さっそく始めようか」

 

 その万の言葉に庵も立ち上がる。その反応を見て、傍のコンソールをさっさと操作しにかかった。

 

 

 

 

 そのあとの訓練では、二人の間だけという限定的な環境ではあったが、連携の確認もした。さすがは亡国企業(ファントムタスク)の切り札とまで言われた人物、そのあたりの飲み込みは早かった。だからこそ、万もさっさと順応して連携をとることに成功していた。

 

「ま、今日の訓練の収穫はでかかったな」

 

 食堂で夕食の秋刀魚定食をつつきながら万が言った。対面に座った庵は、その言葉に首を傾げた。

 

「ふぉふなおふぁ?」

 

「口の中の物飲みこんでから喋れ。行儀わるい。

 今日の訓練のおかげで、お互いの弱点、それを補うための戦闘方法、それに仮想敵の戦闘までやることができた。こいつは大収穫だよ。それに、そこまでわかってくれば、武装の構想も練れたしな」

 

 何回かに分けて口の中の物を呑み込んだ庵は、それに食いついた。

 

「もうか?」

 

「頭の中ではもうある程度の構想は―――」

 

「どんなものなのだ!?」

 

 万の言葉に、食事そっちのけで身を乗り出す。その目の中に星を見たのは間違いではないはずだ。

 

「落ち着け。それとメシはちゃんと食え。

 今のところ考えてるのは光学系の多機能ビットに、容量が許せばだけど、山嵐の改良型を載せるつもりだ」

 

「山嵐、というと、あれだな、打鉄弐式に搭載されている、マルチホーミングミサイル」

 

「そそ。あれを光学系の兵器にも対応させたりとか、ま、その辺は出来上がってからのお楽しみってことで。できるだけ急ピッチで仕上げるけど、ま、すぐには難しいだろうね」

 

「そうか」

 

 その言葉に少々以上にがっくりといった表情を見せた。あっさりと秋刀魚定食を食べ終えた万は、横に座ってから庵の頭にぽんと手を置いた。

 

「大丈夫だ。絶対間に合わせる」

 

 その言葉に、庵は笑って頷いた。

 

 

 部屋に戻ってから、庵がふと思い出したように言った。

 

「そういえば、今朝起きたときに万のベットにいたような気がするのだが・・・。気のせいだろうか?」

 

「気のせいじゃね?大方寝ぼけてたんだろ」

 

 万の嘘はいつも自然だった。息をするように嘘をつくとはこのようなことを指すのだろう、としばしば思った。

 

「さて、勉強で分からんこととかってあるか?」

 

「そのあたりは問題ない。むしろ、知っているような問題ばかりで退屈なくらいだ」

 

「退屈なのはいいが、授業サボるなよ」

 

 もっとも、そんなことを言っている万が授業をさぼっていることがあるのだが、そのあたりはご愛嬌だろう。

 

「さて、整備室は開いているようだし、ちょっくら行ってくるか」

 

「私も行きたい」

 

 その言葉に、万は振り返った。庵にふざけたような表情は見受けられなかった。

 

「きっとものすごく退屈だぞ?」

 

「構わない」

 

 一歩も引かない、といった風情の庵を見て、万は一つため息をついてから言った。

 

「分かった」

 

 姉弟そろって頑固というか、一途というか、そういったところがあるらしい。

 

 

 整備室に入った瞬間に万は右手を横に振った。右にいた庵は予備動作を読み取ったのか、すと後ろに下がって事なきことを得ていた。すぐ後にキンという硬質の音がして、カランと何かが落ちる音がした。

 

「あらぁ、ずいぶんな歓迎ね?」

 

 闇の中から聞こえた声に万はその方向を正確に睨んだまま唸るように返した。

 

「うるせえ。闇討ちの可能性もあったからな、警戒しないわけにはいかねえんだよ」

 

 そういって電気をつける。そこには“Ca不足?”と書かれた扇子を持った、水色の髪に赤い目の女生徒がいた。

 

「誰がカルシウム不足だ、誰が。てかなんで元素記号なんだよ、カタカナじゃねえのかよ」

 

「だってカルシウムって長いじゃない?」

 

「高々5文字だろうが。つーか、それ鉄扇だったんだな」

 

「まあね。護身にもなるし。ほら、私ってばか弱い乙女だし?」

 

「あんたがか弱い乙女なわけあるか。むしろ人を化かして食らう女狐じゃねえのか?」

 

「あらやだ、酷いわね。で、その子が例の編入生ちゃん?」

 

「まあな。急だったから俺のルームメイトだ。で、俺がここに来るって言ったらついてくるって聞かなくてな」

 

「へえ。面白い子ね。

 初めまして、この学園の生徒会長、更識楯無よ。よろしくね」

 

「織斑庵です。よろしくお願いします」

 

 自己紹介に対して、庵も自己紹介する。変わらない楯無の食えない笑顔に、万はそっと腹話術を使って耳打ちした。

 

「気を付けろよ、人化かすのが大好きな変人だから」

 

「ちょっとそこ!変なこと言わない!」

 

「俺は別段変なことを言ったつもりはありませんが」

 

「人を化かすのが好きって、そんなわけないじゃない!悪評の流布よ!」

 

「あ、そうでしたね。正確には妹を溺愛していてウザがられている腹いせに人を化かすのが大好きな変態さん、でしたね」

 

「なおのことひどいわよ!」

 

 まるで漫才のようなやり取りに、庵はクスリと笑った。その顔を見てか、万が話の方向性を変えた。

 

「ま、とりあえずシスコン変態生徒会長は置いといて―――」

 

「シスコンはともかく変態じゃ―――」

 

「俺らは目的を果たすとするか」

 

 合間に入る抗議を完全にスルーして万はコンソールをいじりだした。例によってそのスピードは規格外に早い。腰につけたボックスを放り投げると、何もないハンガー部分に材料がガラガラと音を立てて落ちた。材料と一口に言っても、銀色、銅を思わせる光沢のある茶色、何やら樹脂と思われる白に近い色など、パッと見ただけでもかなりの種類が混ざっていることが分かる。

 

「さて、始めるか」

 

 そう言って軽く腕まくりをする。もう一度向かい合い、操作を再開する。コンソールを操作するスピードはさらに上がった。

 

「あれからさらに・・・!?」

 

 驚きのあまり楯無は絶句する。その反応を聞こえていないかのように―――実際聞こえていないのだろう―――周辺機器を一瞬で操作しながら、自分の望むものを一気に形作っていく。多数の金属や非金属材料があっという間に形を変えていく。

 

「さて、今日はこの辺かな」

 

 そういった頃には、もうすでにそれぞれどれがどういった部品になるのか大体想像することができるくらいにはなっていた。

 

「なんていう速度・・・」

 

 楯無はいまだに驚いているようだった。といっても、庵も自分の機体の調整くらいはできるが、これほどの速度でというのは到底できない話だ。

 

「ま、コツつかめば結構簡単ですよ」

 

「そういう問題かしら・・・?」

 

「そういうもんです。とりあえず、部屋に戻らないと。織斑センセにどやされる」

 

 そういいながら、やや遠くに転がっていたボックスをとって部品をその中に格納する。戻ってくると、すっと庵の手を取った。

 

「さて、軽く走んぞ」

 

 そのまま部屋の扉を閉めて、ランニング程度のスピードで走り出した。

 

「ふうん。面白い取り合わせね。

 

 残された楯無は、楽しそうに笑いながら扇子を広げた。そこには“今後に期待”と書かれていた。

 




 はい、というわけで。

 今回もまた日常というか。うん。こういうのがあってもいいかな、と思いました。
 若干短いですが、ここらが区切りよかったので。

 サブタイは悩みに悩みぬきました。新兵器は次回ですね。もっとも、我ながらちょっとチート入っているかなー、と思っていますが。

 ではまた次回。
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