【完結】IS―二人目は万能の天才!?―   作:緑竜

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 はい、どうも

 たぶん夏休み最後の投稿です。もしあそこから完成させることができたら、一気に書き溜め大放出で終わりますけど。

 それでは今回どぞ―。


45. 最終局面―中波―

 金色のISを操るスコールに対して、万は手を止めずに聞いた。

 

「そういえば、あの蜘蛛女はどうした?オータムって言ったっけ?」

 

「あの子は、今回はお留守番よ。それに、何度かあなたとコンタクトをとっている私や、そもそも顔をほとんど知られていないデメテルに比べて、あの子だったらその場であなたたちに牙を向けかねないもの。一応、この戦いが終わるまではお互いできるだけ干渉しないということになっているしね」

 

「ま、ボスであるおたくがそれを破ってこうして接触している以上、説得力はないがな」

 

「あら、破っているのはどちらかしら?そもそも、横槍を入れたのは認めるけど、その後に会話を切り出したのはどちら?」

 

 そういわれるとぐうの音も出ない。確かにプライベートチャンネルを開いたのは万だし、今の会話の口火だって万だ。

 

「あっそ。ま、利害は一致してるんだ。とっとと終わらせるぞ」

 

 それだけ言って、もう一度シルベル・レプリカの起動準備に入った。

 

 

 

 楯無の下にたどり着いた麦野は、少々面食らった。というのも、楯無のほうも完全に戦闘終了しており、楯無自身は霧纏の淑女を()()()展開した状態だったからだ。

 

「あら、麦野さん、なぜこっちに?」

 

「通信だとわからないこともあるからな。それより、この様子を見るに、こっちも、か」

 

「ということは、そっちも増援はぱったり止んでるわけ?」

 

「まあな。遠目ながら、壁みたいなものを確認した。仕事人の小僧ならあれくらいは朝飯前だろうが、この学校にそんなことをできる能力者って―――」

 

「はっきり言って、いないと思うわ。それほどの力を持っていたら目立つもの」

 

「だよなぁ・・・敵じゃなければいいが」

 

「少なくとも敵じゃない」

 

 突然横から割り込んできた声に、ふたりともとっさに身構えた。

 月明かりに照らされ出てきたのは、自分たちと同じか少し下くらいの少女だった。

 

「やっぱりテメェか、デメテル」

 

「覚えていたのね。それと、やっぱりって?」

 

 相変わらず抑揚の少ない口調だ。

 

「あの壁、遠目だが、土かなんかでできてたんじゃねえのか?で、あんたの戦闘スタイルも土を使ったモンだ。共通点があるのなら、可能性も十二分にあるだろ?それに、あの金ぴかは目立つしな」

 

 そういって空を指さした。そこには、鈍色に協力するように舞う青と、少し離れたところで殲滅をする金色があった。

 

「なるほど。気づかれないように入ったつもりだけど」

 

「いつ来たのかはわからなかったが、あんだけ派手に壁作っちゃモロバレだ」

 

「そう。あなたたちのためだと思ったのだけれど」

 

 表情も少ないが、その表情は微かに残念がっているようだった。

 

「ま、でも助かったのは確かだ」

 

「お礼を言われる筋合いはない。あの子がいるところを守るのは当然のこと」

 

 あの子というのが誰を指すのかはわからないが、それは今考える必要のないことだろう。

 

「どうやら、利害は一致しているようね。なら、協力してくれないかしら?」

 

「なれ合うつもりはない。結果的に共闘することになるかもしれないけど」

 

「なるほどね」

 

 どうやら、前交わした万との約束に従う方針のようだ。それに二人は顔を見合わせて笑った。もっとも、いつも通り食えない笑みの楯無とは対照的に、麦野のそれは獰猛な肉食獣のそれだったが。

 

「なら、そういうことにしておきましょうか」

 

「そうだな。さて、これからどうする?ってか、おたくの作った壁っていうのはどれくらい食い止められるもんなんだ?」

 

「原始的な手段を使えば、一枚当たり2分と仮定したところで大体10分くらいだと思う」

 

「原始的な手段・・・よじ登るってことか?」

 

 それに対し、こくりと頷く。確かに、壁をよじ登るなどという装備をわざわざ持ってきているとは思えない。となると、学園都市の歩兵の力を借りることになるのだが、それでも大能力者レベルがいたとしても時間がかかる。二分というのはある意味では妥当かもしれない。計算をそのまま当てはめるのなら五枚分の壁を作ったということになる。

 だがそれでも油断はできない。あくまで10分というのも仮定の話なのだから、その時間を無駄にするわけにはいかない。

 

「さらに壁を作ることは?」

 

「できなくはないけど、時間がかかりすぎる。間に合わないかもしれない」

 

「それなら危ないわね・・・。この状況に誰もいないのは、流石に危険だし」

 

 そういうと、楯無は少し考えた。防衛力を高める方法。そして、短時間でもできそうな方法。

 

「デメテルさん、って言ったっけ?ここらを中心に、半径45、いや念のため60mくらいの地面を強化したいのだけど、可能かしら?」

 

「ただ純粋に硬くすればいいの?重くし過ぎちゃ駄目とか、そういうのはない?」

 

「しいて言えば目立たないように、ってくらい。できる?」

 

「それだけしか条件がないのなら」

 

「ならお願い。麦野さんは、一時的に空中戦の援護をお願い。あなたならここからでも十分狙えるでしょう?」

 

「了解」

 

 その簡易の指示に、楯無は動かなかった。槍もだらりと下げ、自然体だった。

 

「お前はどうするんだ」

 

「ここで守るわ。さっきも言ったでしょう?ここに誰もいなくなるのはまずいって」

 

 相変わらずその心は読めないが、そこに覚悟があることくらいはわかった。

 

「分かった。じゃあ、行くか」

 

 麦野は自身の機体を出した。訓練機によく似た、艶消しの臙脂の機体は夜に溶けるように飛び立った。

 

「私もここを守る。あの子がここでどんな生活を送っていたのかは知らないけれど、知っている人が悲しむのを見て何も思わないほど冷たい子ではないから」

 

 どうやら、この少女にとって“あの子”というのはよほど大切な存在らしい。疑問に思い、聞いてみることにした。

 

「ちょっと気になっただけなのだけど、あの子、って誰なのかしら」

 

「私の妹。本人が知っているかはわからないけど」

 

 短く答えると、デメテルは空中に何やら文字を走り書き出した。

 

 

 

 もっとも敵が集中しているところにスコールという強力な戦力が援護に来たことにより、かなり戦闘は楽になっていた。また、本来地上の生徒を攻撃するはずだったミサイルと歩兵も、目論見を大きく外れることになってしまい、かなり手詰まりになってきていた。

 だが、戦況がよくなってきたところに、簪から凶報が入った。

 

『敵、大量に接近している模様。数は推定10000!』

 

「はあ!?見間違いじゃねえの・・・か!」

 

 思わず大きな声が出た。戦闘しながら簪の声に耳を傾ける。

 

『残念ながら違うみたい。私だって信じたくないけど・・・』

 

 その言葉を聞いて、剣を振り回し、時折銃を撃ちながら考える。

 

「・・・分かった。そっちはとりあえずそのまま援護。ただし、庵は戦闘に加わってくれ」

 

『分かった。あ、それと言い忘れてた』

 

「手短に」

 

『セイリュウに深名さん?が乗ってる。なんかセイリュウが迎え入れたみたいに』

 

 その言葉に、軽く目頭を押さえたくなった。何やってんだあいつは。誰に似たのか自由奔放で、でも結果はそれなりにいい。だけどこの行動はさすがに想定外だった。

 

「分かった。とりあえず、そこは放置で。とにかく、」

 

 死ぬなよ。

 一オクターブ下げられたその口調の真剣さに、通信機の向こうでひるんだような気配がした。が、すぐに気を持ち直したようで、すぐに了解と返事が返ってきた。

 

 

 それからというもの、一気に殲滅する万たちにも、増援が見えてきた。どうやら学園都市だけでなく、外の物も混ざっているようだ。が、数が多すぎた。

 

「仕方ない、か・・・」

 

 そういって取り出したのは体晶。今の状態を考えると、これを使うのは得策ではない。最悪、この後の人生すべてを棒に振ることになるだろう。しかし、このような事態となっては、これを使わないことには危険だ。

 自分一人と、この学校、そしてISにかかわる人間。

 重要視すべきなのはどちらかなど、考えるまでもなかった。

 

 体晶を口の中に放り込み、嚥下する。瞬間、自身の感覚が一気に研ぎ澄まされ、ハイパーセンサーと自分の感覚、両方によって敵がどこにいるのかを瞬時に把握することができる。その感覚に、かなりの負担がかかっていることもすぐに分かった。

 

「あれだ。あれが仕事人だ」

「生け捕りにしろ」

「最悪殺せ」

「あいつの仇ィィィィィィィィ」

「殺す・・・殺してやる」

「今死ねすぐ死ね骨まで砕けろぉ!」

 

 さまざまな声も、感覚によって聞こえてしまう。直接聞こえることはないが、自身の能力で観測できてしまうのだ。

 

「やっぱり、か」

 

 自身の能力を使い、射出した鉄球に異常なまでの加速度を与え、操作しながら、万は冷めた頭で考えていた。

 

 

 そもそも、なぜ自分だけにここまで攻撃が集中したのか。自分()()に集中しているところを見ると、自分だけに合ってほかの人間にはない特徴があるとしか考えられなかった。

 

 人殺しの経験がある?―――そんなことを煎ったら軍人のラウラも同じだ。

 ISに明るい?―――そもそも、そんな人間などいくらでもいる。

 神童?―――昔の話だ。それに、織斑千冬という規格外もいる。

 

 ならば、―――学園都市、それも暗部絡みだろう。

 

 万にだけ集中しているのは、ただ単に航空戦力で出張ってきているのが万だけだったからだろう。もし麦野が下におらず、上にいるのなら同時に襲われている可能性がある。そこまで考えて、この采配にして正解だったと万は思った。

 やがて、万は周りの機体ほとんどが、先ほどと違う機体になっていることに気付いた。その直後、彼の頭の中に演算式が組みあがる。

 

「さて、やるか。―――二人とも、少し離れていてくれ!」

 

「了解ですわ!」

 

「分かったわ。期待しているわよ、坊や」

 

 声を張ると、即座に二人は離脱した。今度は目を閉じる必要などない。もともと、彼は体晶と相性のいい体質なのだから、暴走させれば大抵いい結果に転ぶ。あとはそのまま解放してやればいい。蛇口の大本たる元栓を開放してしまえばいいだけだ。

 

 周囲が凍り付く。

 まず、アイギスに斬りかからんとした機体が凍り付き、その周囲の機体が凍り付く。その光景に、一部の機体は一目散に逃げ出すが、もう遅い。先ほどとは比べ物にならないほどの速度で次々に凍り付く。ハイパーセンサーで二人はもう完全な効力外に逃げていることが確認できていたから、万も遠慮などは一切なかった。

 先ほどとは比べるまでもない速度と範囲を持ちながら、その凶悪な威力はそのままに、万の周囲すべてが凍り付いていく。そこだけ、まるで氷によって時が止まったかのようだった。

 

 

 

「凄まじい、ですわね・・・」

 

 効力外に脱しながらも、なお背面飛行で万から距離をとったセシリアが、その光景を見て絶句した。その隣で、スコールはバイザーの下で食えない笑顔を浮かべていた。

 

「本当に、ね。だけど、あの子にしては、ちょっと珍しい気がするわね」

 

「そうですわね。彼は、効率性を重視するお方ですから。確かにこの手段は有効ですが、ここまでする必要はないですわね」

 

「そういうこと。まあ、目的は読めるけどね」

 

「目的・・・。それは、いったいどういう・・・?」

 

「じきに分かるわ。・・・さて、そろそろやりましょうか」

 

 直後、まるでばねのようにらせんを描いていたゴールデンドーンの熱戦がまっすぐ前に伸びた。それを見て、セシリアもスナイパーライフルを構える。

 

「いいこと、敵機が落下を始めたら、一気に撃つわよ」

 

「承知しておりますことよ」

 

 スコープをあえて低倍率にして、万の様子と首位の敵機の様子が分かるよううにする。低倍率でも相手を狙い撃つことなど、今のセシリアには可能だった。同時に、ビットも動かす。ゆっくりと射撃体勢に移行していった。

 やがて、機体が次々と地に堕ちていく。その瞬間、セシリアの目には迫りくる機体しか目に入っていなかった。無感情に引き金を引く。意識的に感情を殺しでもしなければ、人差し指を動かすことはできないと、直感的に感じていた。

 自身のライフルから光が迸り、隣のゴールデンドーンの熱戦から炎が奔る。その光は二つの機体を正確に撃ち抜いていた。先ほどのような、まるでガラスが崩れ落ちるようではなく、正真正銘きりもみ落下していく。あえて、セシリアはその光景を見つめた。一瞬でも確かな隙となりえる。だが、これは紛れもなく自分が奪った命だ。それには、ちゃんと向き合う必要があった。

 

「お嬢ちゃん」

 

 慌てて様子のないスコールの声。セシリアも気づいていた。だからこそ彼女は、手に持った武器をサーベルに切り替え、振り返りながら突き立てた。

 突き飛ばすような感覚とは大きく違う、骨を砕き、肉を貫く感覚。耳元で聞こえる断末魔。どんどん小さなものになっていく、相手の―――おそらく女性の―――呼吸。そして何より、自身の胸から腹部にかかる、暖かな液体。それが何なのか、考えるまでもなかった。微かに焦げ臭いにおいはとどめに放ったビットから出た光の影響か。だがそれも、今の彼女の前ではひどく無機質なものにすぎなかった。

 そのまま無慈悲に剣を引き抜く。傷口からさらに血がどぶりと溢れた。そのまま、相手の駆動鎧は落ちていった。その光景は目で追わなかった。

 

 この作戦を考えた青年も言っていた。“この戦いでは人死にが出る”と。当の昔にその覚悟はできている。先ほど、その青年と背中を預けて戦ったときにはこの手の敵はいなかったが、その時にはもうすでに覚悟はできていたし、直後のあの空間を凍結させたかのような―――実際そうなのだが―――ことをあの青年が行ったことで、その覚悟は確固たるものになっていた。

 

「やるわね、お嬢ちゃん」

 

「とうに覚悟はできておりますゆえ」

 

 その目は、まだ続く戦いを見据えていた。青年は、さらに迫りくる敵に対して、再び一騎当千をかけようとしている。それをさせまいとセシリアが飛んだ。次の瞬間に、バイザーの裏に文字列がよぎった。

 

[Blue Tears clear to fulfill the required conditions of Second Shift.

Preparation of Second Shift is already conpreted.

Second Shift --- start.]

 瞬間、ブルーティアーズが光に包まれる。一瞬の光が収まったのちに現れたのは、先ほどより一回り大きくなり、より頼もしくなったブルーティアーズだった。直後、バイザーの片隅に文字列が短く表示された。

 

[Second Shift finished --- clear.

New name of Blue Tears is “Noblesse Oblige”]

 

ここに、ブルーティアーズ第二形態“ノブレスオブリッジ”が誕生した。

 




 はい、というわけで。

 ブルーティアーズ、覚醒です。機体の名前に関しては、完全に変化した、つまりはセシリアの専用機は「ノブレスオブリッジ」という名前になった、と考えてください。
 でも基本的な機能はブルーティアーズとほとんど変わりません。ならなんで名前変えたんだよっていう。

 ちなみに名前に関してはほかにもパラディンとかが候補に挙がっていたのですが、最終的にこれに落ち着きました。
 セッシーにはこれが一番似合うかなー、っていう。

 あと、個人的にはセッシーが剣突き立てるシーンを異常に生々しく書いていて後でドン引きしてました。

 さて、また次回。
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