今更ですけど、万の名前は苗字は適当に思いついたやつ、名前は能力名からとりました。
とりあえず、今回分どうぞ。
それから一週間ほどした、IS学園の1年1組教室。
しばらく生徒が着席したまま小柄で童顔な女性が入ってきた。
「みなさん、入学おめでとう。私は副担任の山田真耶です」
入学の緊張からか、教室は依然静まり返っている。
とにかく話題を、ということからとりあえず当たり障りなく学校の説明をさらっとする・・・が、依然として静かな教室を打破しようととりあえず自己紹介をさせる。
そんな状況を冷め切った目で見る人間が一人。黒川万だった。
彼にとってこんな特異な環境など、裏の世界に比べれば屁でもない。緊張など一切せず、周りを見渡し冷静にそれぞれがどんな人間なのかを判断しようとしていた。
軽くあくびをしつつ自己紹介を聞き流しながら顔と名前を機械的に叩き込む。だが、途中でスムーズな流れは途切れる。
織斑がなにやら考え事をしていたようで、全く話の流れを聞いていなかったらしいのだ。
「『あ』から始まって今『お』なんだよね・・・自己紹介、してくれるかな・・・?だめかな・・・?」
その声で我に返ったようで、ややしどろもどろになりながら織斑一夏は立ちあがる。
「え、と。織斑一夏です。よろしくお願いします・・・」
そこで一回深呼吸すると。
「以上です!」
とたんにクラスのほぼ全員がずっこけた。ほぼ、というのは万のみが頬杖を変えずにそのままにやりと笑んだからだ。
(こいつはなかなかに面白い。いや、ただ天然なだけか・・・?)
そしてそこからはまたスムーズに流れ、
「次は、黒川・・・くん、お願いします」
おい、今絶対漢字読めなかったろ。というツッコミは内心にひっこめつつ、立ち上がった。
「学園都市から来ました、黒川万です。名前は漢数字の万と書いて『よろず』と読みます。趣味は読書で、一応これでも能力者です。一時期企業にいたのでISについてわからなくなったりISのトラブルとかが起きたら、呼んでくれたら役に立てるかもです。短い間か長い間かわかりませんがよろしくお願いします」
それだけ言ったところで教室の扉があき、パンツスーツの凛々しい女性が入ってきた。その女性を確認すると、山田先生は心底安堵したような表情になった。
「織斑先生、会議は終わったんですか?」
「ああ。山田君、挨拶を押し付けてすまなかったな」
そういってそのまま教壇に立つと表情を引き締めた。
「諸君、私が織斑千冬だ。貴様らを一年で使い物にするのが仕事だ」
そこまで瞬間、女子特有の黄色い声がまるで爆発するようにはじけた。
それに対し千冬はため息をついて
「まったく、よくもまあこれだけ馬鹿者が集まるものだ。それとも私のクラスだけに集中させているのか・・・?」
あきれる千冬に何やら驚いている様子の一夏、そして浮足立つ少女たち。改めてこういったものを目の当たりにしたときの女性の底力には恐れ入りながら黒川は頬杖をついたまま苦笑して乾いた笑いをもらしていた。
千冬が一喝して黙らせたうえで二人はまた学校について話し出す。
それを見て万は千冬だけは怒らせないようにしようと強く思った。
さっそく授業が始まった。最初は基本的な座学だが、万にとってはもはや常識であるようなことをやるため、完全に頬杖をついて新しい武器の構想を練っていた。
ふと周囲に目を向けてみると、一夏は教科書にかぶりついてはいるが内容は全く頭に入っていないようだ。
その後姿を見て万は疑問が思い浮かぶ。
(あのバカ、何をしてる?入学前に配られたあの分厚いのに基本的なことは書いてあったはずだが・・・。ま、大方読んでなくてさっぱりわからんってオチかな)
そう、入学前に配られた資料の中には分厚い必読の参考書があったのだ。もっとも、万は読み飛ばしていたが。
案の定、先生にわからないことはないかと聞かれたら全部わからないときた。山田先生はこの回答は予測していなかったらしく、盛大に動揺している。周りのクラスメイト達もいったいどこにわからない要素があったのか、といった顔をしている、
だが、千冬だけは違った。姉弟ゆえか、このような事態もある程度予期していたのだろう、冷静に織斑に問いかける。
「織斑、入学前の参考書は読んだか?」
「え、と。古い電話帳と間違えて捨てました」
ひどく答えにくそうな返答に対し返ってきたのは出席簿のフルスイング。
毅然と再発行するから一週間で覚えろと宣言を食らい、一夏は撃沈していた。
(・・・まあ、力くらいにはなってやるかな。向こうしだいだが・・・)
そう思ったときに自分が想像以上にお人よしであったことに自分で驚きながら、それは自分のやってた仕事がそうだったからか、と顔に出さず考える万であった。
「ちょっといいか?」
件の授業の後の休み時間、万は声をかけられた。名前と顔は機械的に叩き込み一致させたが、さすがに声までは一致させていない。だが、声の高さから話しかけた相手に見当をつけると、内ポケットに忍ばせてあるものから布越しにいくつかノートを取り出して中身をチェックすると、それらを机の上に放った。
「ほい、これでいいか?」
意味が理解できず、とりあえずそのノートの一冊を手に取り中身を見る。その中にはISの用語が書かれていた。ところどころ簡略化されたISと思われる図も載っており、見やすくなっている。
「ああ、サンキュ。・・・てかどうしてわかったんだ?」
とっさに沸いたいくつかの疑問の一つを一夏は真っ先に問いかけた。
「なに、簡単な推測だ。お前、さっきの授業でわからなさ過ぎて頭抱えてたろ?とすれば誰かに教わりに行く可能性が高い。勉強は早くからやっておくに越したことはないからな。とすれば知り合いの可能性が高いが、どうせならISに関して詳しく知ってるほうがいい。となると自己紹介の時ISに詳しいってことを言った俺か、もう一人いるわけだが、なら男である俺に来る可能性が高い。ってわけだ」
「・・・すげえな。これ、いつ返せばいい?それと、もう一人って?」
「質問は一度にいくつもしないほうがいいぜ?まあひとつずつ答えると、簡単な推測だって言ったろ?それと、それはやる。どうせいくつか作ってあるんだ、それはその中の一冊ずつにすぎない。それ読めばだいたいISの用語は覚えれるはずだ。と言っても、参考書を併用して使ったほうがいいぜ、そういったもんの種類は多いに越したことはない。最後にもう一人ってのは・・・」
そこまで一気にに万が言ったところで声をかけてきた生徒がいた。
「ちょっとよろしくて?」
「・・・噂をすれば、だな」
「ん?」
その声に万はため息交じりにつぶやき、一夏は軽く目を上げた。
「まあ、それがこのわたくしに対する態度ですの?」
「要件があるなら手短にお願いできるか?イギリス代表候補生、セシリア・オルコット」
高飛車な態度にいらだちを隠さずに万は相手に言う。
その話しかけてきた生徒――セシリアは万がいまだに顔も上げずに面倒くさそうに言ったことにひどく癇に障ったようで、こちらもややいらだち交じりに言った。
「まあ、わたくしが何者か知ってのその物言い、最初ですのでまあ許して差し上げましょう。それはともかく、織斑一夏さん?」
「え、俺?」
まさか矛先が自分に向くと思っていなかったからかさっそく渡されたノートに目を通していた一夏は顔を上げた。
「ええ、わたくしはあなたに用があってまいりましたの。どうやら、あなたはお姉さまと違いISに関しては素人同然のようですから、泣いて頼むというのなら、私が教えて差し上げてもよろしくてよ?」
「あいにくと、こいつのコーチには俺がつくことになったんだ。悪いな」
口をはさむべきでないかと思いつつ万はセシリアにいう。
だが、そこで一夏がおずおずと口を開く。
「え、と。二人ともちょっといいか?」
「どうしました?さっそく師を変えようと?」
「いや、そうじゃなくて。・・・代表候補生ってなに?」
その言葉に、聞いたほとんどはずっこけ、セシリアは怒りか何か、とりあえずひどくいらだったような表情になりその場に立ちつくた。唯一変化がほとんどなかった万でさえ頬杖をついたまま「そっからかよ・・・」とため息交じりにつぶやいた。
「・・・いいか織斑、代表候補生ってのはISの国家代表の候補生として、国家から相応の援助を受け、ISの操縦訓練その他もろもろを積んでいるやつらのことで、平たく言っちまえばISのエリート。例えるなら、オリンピックの強化選手のようなもんだ。んで、一部例外を除き、代表候補生には専用機がある。こんなところでいいか?」
万は頬杖をついたまま、通り一遍の説明を行う。説明を行いながら、横目でセシリアの様子をうかがう。予想に違わず、プライドの高い彼女は嫌悪をあらわにしていたが、万の説明が的確だったからか、何も言ってくることはなさそうだった。
が、さらに一夏は疑問が生まれたようで、また質問をする。
「え、専用機ってそんなにレアなのか?」
もはや周りで聞いているクラスメイトはあきれて物も言えない様子で何も反応を示さない。が、万はさすがにここまで無知とはしらず、遠慮なくため息をつくと一言、「お前なあ・・・」といい説明をしようとしたが、セシリアが何か言おうとしていることに気づき黙る。
それに対し皮肉のこもった笑みを万に向かって浮かべた後、セシリアは口を開いた。
「世界に現存するISの数は467機。そして、ISに必要なISコアはISの生みの親たる篠ノ之束博士のみ製造可能で、当の本人は量産を拒否していますの。結果、世界各国は限られたISをうまくやりくりしていますの。これでお分かりかしら?」
「ついでに補足すると、ISのいくつかは研究に当てられるから、第一線で活躍するISはそれ以下しかない。まあ、どんなに多く見積もってもだいたい450ってとこか。つまるところ、そんだけしかない中で自分専用のISがあるってことはそれだけで十分ステータスになりえる、ってことだ」
さすがは代表候補生、すらすらと素人にもわかりやすく説明をしていく。セシリアの説明が終わったところで万は補足した。一夏は驚きとともに納得した様子でへえ、と声をもらす。
補足をした万に対し不満そうにセシリアは顔をゆがませ、そのままの表情で言い放った。
「・・・さっきからなんなのですのあなたは!?このわたくしが懇切丁寧に説明して差し上げているのに、まるでわたくしが無知であるかのように頼まれていない口添えをなさって、何様のつもりですの!?」
「気を悪くしたのならすまない。どうも穴のある説明ならその穴を埋めようとしてしまう性分でね」
いらだちからヒートアップするセシリアとは対照的に、万はいまだに頬杖を突きながら興味なさげにこたえる。その態度がさらにセシリアをいらだたせる。
「だいたい、なんなんですのその態度は!?このわたくしが話しかけているというのに、ずっとそのような体勢で・・・!」
「あんたと俺はクラスメイト、それ以上でも以下でもない。目上ってわけでもあるまいし、なんでわざわざ態度を改めなくちゃいけねぇんだよ、面倒くさい」
頭に血がのぼっていくセシリアとは対照的に、とことん無関心な態度の万。怒りに震えたセシリアがとうとう爆発しようとした矢先にチャイムの音が鳴った。
「・・・あなた、覚えてなさい・・・!」
半ば怨念がこもったような声でセシリアは万に言い放つと、自分の席に戻っていった。
午後の授業の千冬が担当の授業で、千冬は思い出したように言った。
「ああ、そういえばクラス代表を決めていなかったな。クラス代表とは、クラス代表戦への出場、生徒会の話し合いや委員会への出席など・・・まあ、クラス長のようなものと考えてもらえればいい。自薦、他薦は問わん。誰かおらんか?」
その声に即座に何人かが一夏を推薦する。大方、男であることをいいことにマスコットにしようという魂胆だろう。ブリュンヒルデの弟ということでさらにその効果は倍増だ。
そこまでは万にとってはまあよかった。
「え~、私はよろずんでもいいと思うけどな~」
穏やかでどこか間延びしたような声で口を挟んだのは布仏本音だ。それに続くように何人かさらに万を推薦する声が上がる。
「今のところ、候補は織斑に黒川か。ほかにはおらんか?」
千冬がそこまで行ったところで、席を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がった生徒が一人。
「納得できませんわ!」
その立ち上がった勢いのままセシリアは言う。
「このわたくしに、一年間しかも男を代表として従えと言いますの!?代表にふさわしいのは、このセシリア・オルコットですわ!だいたい、文化としても後進的な国に暮らさなくてはいけないこと自体私にとっては・・・」
その言葉に対し、口を開いたのは一夏だった。
「イギリスだって大したとりえないだろ。世界一まずい飯で何年連続覇者だよ」
「あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」
議論が白熱しようとしたところで、万が軽く手を上げた。
「あー、ちょっといいか?」
思わず噛みついた一夏は思わぬ横やりに安堵などが入り混じった複雑な表情を浮かべ、セシリアはこの上ない嫌悪をそれぞれ万に向けた。
その表情をこめかみに青筋を何本か立てた笑顔に変えたセシリアは静かに言葉を発した。
「・・・なんですの?」
「んー?ちと疑問に思ったことがあってねぇ。そこにいるブリュンヒルデや、ISの開発者の篠ノ之束も日本人なんだけどぉ、その辺どう思ってんのかなぁ、みたいな?」
軽口をたたくように言う万だが、言っていることは相手の痛いところをついている。
セシリアもそれを自覚したのか、開けようとした口を閉ざした。
「あーあー、それにあんたの国も底が知れるねぇ?」
「なんですって!?」
あくまで軽口のような口調は崩さない万の挑発にセシリアは食いついた。かかった、と内心ほくそえみながら万は続ける。
「だって、あんた代表になる可能性は少なからずあるんでしょ?もしあんたが代表だったとしたら、あんたの発言は国家の発言だ。それで今みたいなセリフを言っちゃったら、日本ならともかく、特にイスラム圏なら間違いなくドンパチになるだろうなぁ。その辺、自覚したうえで発言した?」
「・・・それは」
「してねえだろうなぁ、してたらそもそも言わねーし。で、そうなったらその騒ぎの元凶たるあんたは、引き金を引けるの?」
そういって頬杖をついていない手を銃のようにして向ける。
「それはもちろんですわ!」
笑顔で軽口をたたくように言う彼に対しセシリアはいらだちを募らせていく。
「じゃあ試してみようか」
それはまるでちょっと遊ぼうか、というような風に言った。
「試す?どうやって?」
それに対しセシリアは鼻で笑う。
「こうやって」
そういった次の瞬間、彼女へ向けていた手の中にリボルバー式の拳銃がどこからともなく握られていた。むろん、銃口はまっすぐセシリアの頭に向けられている。
それに対し、クラスの何人かが短く悲鳴を上げ、セシリアは怒りに赤く染まった顔のまま目を大きく見開いた。
そしてその銃が実銃であるかを示すように安全装置を解除する。その瞬間、その赤く染まった顔はみるみる青ざめていった。
「―――実際に銃を向けられる覚悟もねえのに、撃てる、だと?」
青ざめたセシリアを確認してから、今までの軽口はどこかへ失せ、軽い殺気すらも放ちつつ彼は言い放つ。
「恥を知れ」
その一言とともに彼は銃を机におろした。
「ふ、どうせ撃てなどしないでしょう?見え透いたこけおどし・・・」
その精一杯強がった言葉は轟音によって強制的に黙らせられることとなった。放たれた弾丸は彼女の頭をかすめ、幾筋かの毛髪が地面に落ちた。
セシリアがゆっくり目を向けるとそこには硝煙を上げた銃を構える彼の姿があった。
「頭ぶち抜いてほしいのならそうして差し上げるけど?」
表情を完全に消去し、今度こそはっきりとわかる殺気を伴って彼は言う。その光景にクラスの誰もが息をのみ、セシリアは静かに席に腰を下ろした。
「話は済んだか?なら三人はこれを引け」
そういって千冬がどこからともなく取り出したのはくじだった。
「なるほど、ちなみに当たりは何本です?」
「一本だ」
ちょうどいい、軽い運試しだ、と言いながら気軽に引く万だが、結果ははずれだった。
「まー、そうそううまい話はねえよな」
結果的にあたりを引いたのは一夏だった。必然的に、初戦はセシリアと万が相対することとなる。
「よし、では代表決定戦は一週間後、第三アリーナで行う。二人とも準備をしておくように」
その言葉で授業は終了した。
「てか、男二人しかいねえんだからてっきり一緒にすると思ったんだがなぁ・・・」
学校に二人しかいない男の片割れである一夏は隣に歩く万に向かってこぼす。
「まあそういうなっての。俺のほうは急だったし、コネもなかったしな。ある種仕方ねえだろ」
「そういうもんかな・・・」
「そういうもんだ」
あくまでも冷静に返す万にそういえば、と一夏は切り出した。
「あの時、お前どうやってノート取り出したんだ?」
「あー、そういえばまだいってなかったか」
そういいつつ制服の内ポケットに手を伸ばして出てきたのは小さな箱状のもの。
「こいつはISの量子変換を解析、応用して作ったもので、俺は量子変換ボックスって呼んでる。つっても、まだ試作品だからこの世にはこれも含めて20もない。もっとも、ほかの人間が同じものを開発してれば話は別だけどな」
「何それ?」
「ISは量子変換って技術で武装を展開したり収納したりするわけなんだが、その技術を応用して、このちっさい箱の中にいろんなものを収納できるって優れものだ。まあ、今現在だと一個作るのにコストがかかりすぎるから量産化はまだ見込めないわけなんだがな」
「へえ、それは便利だな」
「ま、とりあえずまだ試作段階だし、何より故障すると中身もパーになる可能性があるのがなぁ・・・」
「それはいやだな・・・」
「ま、もっと安定すれば、価格を犠牲にしてでもってとこなんだが」
「そういや、お前って学園都市から来たってことは、超能力ってやつを使えるのか?」
「ま、一応な。それと学園都市の6割は無能力者、つまり能力をつかえない。しかも残りの4割の中でもあってないような程度の能力しか持たない奴なんかいくらでもいる。つまるところ、学園都市出身だから能力者とは限らないってこった」
「へえ、で、お前はどんな能力をつかえるんだ?」
「ま、それはいつかいうさ」
そういってふと一夏は気づく。
「あれ、もしかして黒川の目って・・・」
「万でいい。その代り俺も一夏って呼ぶし。で、目については俺がハーフだからだ。母親がロシア系でね、顔だちや肌の色は父親に似て東洋系になったんだけど、瞳の色だけこの色になった」
そう、万の瞳の色は灰色だったのだ。彼の目をしっかりのぞかなかったからわからなかったが、改めてしっかり見ると綺麗だった。
「それより、ここじゃねえの?」
そんなこんなで、二人が無駄話をしてる間に一夏の部屋の前に来ていた。
「あ、ほんとだ」
「じゃ、俺向こうだから。何かあったら呼べよー」
そういって万はひらひらと手を振りながら自分の部屋に行った。
人数の関係上一人部屋となった部屋で万が寛いでいると、何やら周りが騒がしい。ゆっくりさせろよという本音を胸にしまって部屋の外に出ると、なぜか一夏が部屋の外で部屋に向かって何やら言っている。
「ったく、どうしたんだ?」
とりあえず、万は一夏に問いかける。
「いや、これは・・・」
そういう前に扉から何やら出ていることに気づく。それは明らかに木刀だった。
大方一夏が何か同居人の逆鱗に触れたのだろう、と見当をつけると一夏に問いかける。
「とりあえず中入れ。うるせえ」
そういって万はその場を離れた。そして、寮監室へ向かった。
その夜に一夏とそのルームメイトが千冬の大目玉を食らったというのは、風のうわさで万の耳にも入ってきた。
そして、その後日。
「織斑、お前の機体だが、準備までに時間がかかるぞ」
「へ?」
「訓練機の予備がない。データ収集もかねて、学園で専用機を用意するそうだ」
その言葉にクラス全体がざわつく。万は相変わらずけだるそうにしているが、いつも通り頬杖をついたまま「マジかよ・・・」とつぶやいた。・・・頬杖がデフォルトというのは考え物だが。
「それって本当ですか?」
「こんなところでうそをついてどうする。とにかく、それまでは基礎知識を覚えて待て。いいな?」
「・・・はい・・・」
ややしょげたような返答に、後ろのほうで万はにたりと口をゆがませたとかそうでないとか。
なにせ、一夏にはやや無理やりともいえる方法で教えているのだから。まあ、当の教えている万は期限に間に合わなかったら自分の部屋で学園都市に無理を言って持ってきた学習装置を使う覚悟すらあるのだが、それはあくまで最後の手段として考えているのでまだ使っていない。
何とか学習装置を使うことなく、何とか一般学生レベルには基礎知識もついたころ、ちょうど代表決定戦の日がやってきた。だが、一夏のISはいまだ届いていなかった。
そして、目の前のディスプレイには浮遊する青い機体。
「これがあいつの機体なのか・・・」
「ああ。起動時間は俺らとは比べ物にならないレベルで多いから、あの機体はもはやあいつの手足同然だろうな」
「なのにそんなに余裕なんだよ!?」
のんきにいう万に一夏は驚きつつ問いかける。
「いくらISを手足同然に操れたところで、必要なのは搭乗者の技量と覚悟だ。兵器をスポーツの道具としか考えてない甘ちゃんに俺は遅れをとらねえよ」
言いながら万はピットからグラウンドのほうへ歩いていく。
「ちょっと待てよ、生身でISに対峙する気か!?」
「まさか。そんなマネするわけねえだろ。んじゃ、ちょっくら行ってくらぁ」
そういって彼はピットの入り口から軽く跳躍してセシリアに相対した。
うわあ、一気に文字数多くなった。
ちなみに、前回3000字、プロローグと一話の合計、5000字、今回、8700字。
字数にして今までに書いた量の合計をこの話だけで上回ってます。w
まあそんなことはともかく、次は代表決定戦です。
ようやく万のISも出てきます。
ではでは。誤字とかあればお願いします。