前の話が夏休み最後の投稿だといったな?あれは嘘だ。
正直に言って、これの前の話はさっさと書いてました。前回のあとがきにも書きましたが、自分でも剣で人を殺すシーンをあんなに生々しく書くとは思わなかったので、その胸糞っぷりを少しでも晴らしたいというのもあったんだと思います。
それでは今回どぞー。
ブルーティアーズが
「呆けてる暇はないぞ。とっとと新しいスペック把握して合流しろ。何なら戦っている間に把握するのも可」
あえて回線をプライベートチャンネルに切り替えてから話す。直後、ノブレスオブリッジのビットが特殊な軌道を描き、様々な方位から迫りくる敵を落とした。どうやら、ビットの動きの制御を補助するAIが組み込まれたようだ。
それと同時に、操縦者たるセシリアの動きも変わっていた。今までよりも先を読んで動くようになった。それに加えて、二次移行した結果機動力も上がった。その結果、キルスコアの伸びは急激に上昇した。
「大丈夫か?」
やがて、万が訊いてきた。
「体は何ともありませんわ」
「そういう問題じゃねえ」
まだ足りないとばかりに群がってくる敵を次々に落としながら、セシリアの返答を即座に斬って捨てた。
「
わざわざこちらに向き合い、真正面から目を見て万は問いかけた。だが、その言葉が終わりきる前に、セシリアはその手に持った銃を放った。万の顔のすぐ横を通り、直後に爆音。それを確認してから、彼女は言った。
「今は、そんなこと言っている場合ではないでしょう?」
それを言ったセシリアがどんな表情をしているのか、彼女自身にもわからなかった。ただ、一つ言えるのは、もう今までの日常に戻ることはできないだろうということだ。
「・・・分かった。引き続き頼む」
それだけ言うと、万は得物を握りなおした。その顔は、どこか悲しげだった。そのまま次々に敵を屠っていく姿は、まるで赤い吹雪で舞う踊り手のようで、どこか魅入られてしまうようなものだった。もっとも、魅入られようものならその命を無情に散らされる魔性の魅力だろうが。
だが、いくら彼らが奮闘しようと、敵の数はほとんど減らなかった。そんな中、実弾とレーザーが雨あられと振り注いだ。器用なもので、セシリアと万だけでなくスコールにも当たらないようにしっかりとコントロールされていた。その光景を見て、万はにやりと笑った。
「さっすが庵。凩を完璧に使いこなしてやがる」
「そうですわね・・・」
セシリアはその圧倒的な実力に驚いていた。
庵の実力は群を抜いている。それはあのテストの時からわかりきっていた。だが、こうも間近で見せられると、やはり圧倒されるものがある。だが、こちらもむざむざ負けてなどいられなかった。なにせ、こちらは二次移行した機体なのだから。
その思いが、新たな文字列を表示させた。
[Noblesse Oblige’s One-off-Ability is available.
It name is “Noblesse Oblige”.]
微かな光が、ブルーティアーズよりスラスターが増え、機体のサイズも一回り大きくなったノブレスオブリッジを包む。それが兆候だと、セシリアはすぐに分かった。
ブルーティアーズのビットが、手にしたスターライトブレイカーの周りに集まる。その機体の名前が冠せられた一撃が、その砲門から発せられた。その極太のビームは、多くの機体を撃ち落とし消えた。しかも、その威力にしては、シールドエネルギーの消費は少なかった。
これこそがノブレスオブリッジの
普通に使えば明らかにオーバーキルである。もし競技で使おうものなら、これで相手のシールドエネルギーの大半どころか、一撃でシールドエネルギーが吹き飛んでも不思議ではあるまい。
スターライトブレイカーは出力をオーバーロードさせたためか、暫く冷却が必要なようだ。だが問題はあるまい。接近された時のためにと、万に近接戦闘の心得を受けている。彼にとっては、場合によってはお互いに片手間だったり合間だったりといった状態だったが、それでも続けた分だけ成果は出ていた。国家代表レベルと張り合えるとは言わないが、少しは粘れるくらいにはなっていた。その程度でも腕があれば、そう大して腕のないレベルの相手など楽勝だろう。そう思いつつ、片手に取り出すのはリーチのあるサーベルではなく取り回しのきくタガー。これだけ乱戦なら、こちらのほうが便利だと判断した。これも、あの青年から教わったことだ。
「いいか、セシリア。間合いによっては、武器の選択が明暗を分けることもある」
「それはそうでしょう。近距離からライフルを使う人間などいませんわ」
ある戦闘訓練の終わった夜、夕飯を共にしながら二人が会話している。
「うんにゃ、場合によってはそれが有効だとなりえる。ライフルは長距離狙撃銃だ。つまり、弾の初速は拳銃に比べ遥かに早いし、命中精度も高い。一説ではライフル弾の初速は拳銃のそれの三倍、もしくはそれ以上に匹敵すると言われるほどに、な。つまり、拳銃では削りきれなかったり、拳銃でも十分な距離だが、より正確に狙いを定めたいときだったりするときやなんかに、スナイパーライフルを持ち出すって言うのも、まあアリなわけだ。
他にもいくつか、武器の選択が必要な時がある。何かわかるか?」
「実弾とレーザー、ですか?」
「ま、それもある。が、俺が言いたいのは別だ。近接戦闘でも、武器の選択が重要な時があるんだよ。時として、な」
「それは、槍か剣か、ということですの?」
「まー、それもあるっちゃーあるかなー。俺が言いたいのはそういうことじゃない。そもそも、あんたの近接スタイルに、槍なんて言葉はないだろう?」
「・・・まあ、それもそうですが」
「だったら、この際教えても意味はない。んでもって、俺は今、一つヒントを出した。それをもとにして答えてみ」
それを聞いて、セシリアは考える。この青年がこういう言い方をするということは、これまでの会話の中にヒントが隠されている、ということだ。そこで思い当たった。自分の近接戦闘の時は、基本的にサーベルとタガー、つまり長剣と短剣だ。ということは、
「武器の長さの違い、ですか」
「その通り。さすがはセシリア、頭の回転が速い。
確かにタガーに比べてサーベルは一撃が重たい。それに、リーチが長いということはそれだけで武器となりえる。だけど、それが仇となるときもある。長くなるってことは、それだけ重心が先に寄るってことだ。しかもだ、重心が遠くなるだけならまだいいんだが、剣自体の重さも、タガーに比べれば重くなる。ということは、取り回しが悪くなるってことになる。それに、セシリアの使うサーベルっていうのは細身の剣だ。比較的がっしりした、所謂ロングソードっていう部類にしなかったのは、ただ単に短剣との組み合わせを考えてのことだったんだが、ま、そんなの今はどうでもいい。とにかく、細身ってことは、無理に叩き切ろうとすることができない。正確には、できないわけではないけど、剣に大きな負担をかけることになる。最悪ポキリだ。これは、前言ったかもしれないけどな」
「そこで、引き斬るという技術が生まれたわけですわね」
「そ。だけど。引き斬るっていうのは、その名の通り剣を引くようにして斬ることだ。無造作に叩き斬るときとの大きな違いは、手首や腕の使い方だ。それによって、結果的に集中力も食うことになる。一対一ならまだしも、乱戦になったらこれは危険だ。いちいち斬るたびにそんなこと考えてたらやがて集中が切れてあの世行きだ」
、
「ですが、そこでタガーというのは―――」
「有効なんだよ、これが。
乱戦の時に必要なのは、周りの状況を見ること。タガーなら、一撃離脱を繰り返すって場合でも、かなり自由度が高い戦い方ができるだろうけど、サーベルはそうはいかない。ひっかけられたらそのままハチの巣にされるだろうな。そこでタガーなんだよ。タガーなら取り回しが利くからな。そういう乱戦の時にはこっちのほうがいいときもある。ま、これはその時になってみないとわからんところはあるけどな」
あの時は正直言ってぴんと来なかった。だが、こうしてみると彼の言っていた意味がよくわかる。確かに、この場面ならサーベルで突いたり切ったりするより、タガーで機動力を重視して落としていくのが得策だろう。それに、ブルーティアーズにはそこまで負担はなかったらしく、そちらはまだ使える。ただし、こちらも乱発はできないだろう。だが、それでも十分である。その判断の下、敵のもとへ飛び込み、その短剣で落とす。もうその手の感触に嫌悪を強く覚えることはなかった。敵を感じて振り返った先にいた敵の群れは鈍色と銀色によって蹂躙されるように撃ち落とされた。
「クーリングタイムか?」
「ええ」
「なら下がってろ。庵」
「分かっている」
短いながらも確かなやり取り。その一言で、二人は敵の群れに対してその切っ先を向けた。それを挑発と受け取った相手がまず機関銃を連射してくるが、それを問題にする二人ではない。万のほうはそのショルダーアーマーで受け止め、庵はその剣ですべて弾いた。茫然とする二人に、セシリアを中心として背中合わせになった二人が銃を円形に乱射する。
「守られるだけに、甘んじるつもりなど毛頭ありませんわ」
「だけど、お前は後方支援向きの戦闘スタイルだろ?」
「近接も鍛えられました。それは、他ならぬあなたがご存知でしょう?」
そこまで言われれば万も黙って頷くしかなかった。
「分かった。無理するなよ。庵、スリーマンセルで動くぞ」
「了解」
その号令と共に、三人とも敵の群れの中に突っ込んでいった。後ろから追撃にかかった敵は爆炎に包まれる。
「あら、若い子のほうが楽しいだろうっていうのはわかるけど、お姉さんみたいな大人の魅力というのも乙なものよ?」
妖艶な笑みは、見るものを魅了し堕落させる魔性の笑みか。それに、敵は明らかに二手に分かれた。
一方、一夏達は苦戦を余儀なくされていた。万の下に敵が集まってきているとはいえ、それはあくまで氷山の一角。いくら元軍人で軍用ISを駆るナターシャがいるとはいえ、あくまで彼女は一人しかいないのだ。一夏も含めた生徒も、ある程度覚悟を決めてかかっているとはいえ、所詮はその程度だ。だが、それもやがて崩れた。
一夏が目の前の敵を数頭落とす間に、後ろに敵が接近してきた。生憎なことに、凰もシャルロットも違う敵を相手にしていて、援護ができない。一撃覚悟で振り返ると、そこを一筋の光が貫いた。その部分の損傷が完全に焼け爛れていることから、その威力の高さがうかがえる。射出元を見ると、そこには閃光を纏った麦野がいた。
「悪い、助かった」
「口を動かす暇あったら手動かせ、クソガキ」
いつもよりかなり口が悪いが、気にしている暇はない。とにかく、戦況が少しでも好転するのならば万々歳だ。そう思いながら、一夏は再び剣を振るった。その剣がまた更に敵を捉え、落としていく。少なくない嫌悪感は消えないが、そんなことを気にしている暇はない。
「案外やるじゃねえか」
「やらなきゃいけないからな」
周りには頼りになる仲間もいる。振り返っている暇はない。それに、この手はすでに血濡れだ。ならば、今やることは一つしかない。ようやく、腹がくくれた。
「やらなきゃ、やられる」
また一機と倒しながら、一夏はその言葉を口の中で反芻した。その様子に、麦野はやれやれと言った様子で首を振ると、右手にナガミツを展開して再び突っ込んでいった。先の閃光と、その時に持っていた得物がライフルだったことから遠距離型だと決めつけていたのだろう、相手が一瞬怯んだ隙を見逃すほど第四位たる彼女が甘いはずもなく、その機体も含めて数体があっという間に地に堕ちた。油断せずにOビットを空中に放ち、さらに数機を堕としにかかるが、これは躱された。
「さすがに同じ手を何度も食らうほど甘くない、か」
ならば仕方ない。万から本当にここぞというときにしか使うなと言われて渡されていたものを使うときだろう。
「本当に、本当にピンチだったりとか、そういう場面のみ、こいつを使え」
そういって渡されたのは透明なケース。その中身は白い粉末。だが、
「必ずしもいい結果が出るとは限らないと思うけど?」
「それでもだ。何もないよりマシ。それとも、ビビってるのか?」
「まさか」
「なら受け取っとけ。俺の分はあるから大丈夫だ」
そういって押し付けた彼の目は、今までにない光を宿していた。
「分かった」
その場面を思い出しながら、麦野は手に透明なケースを取り出した。その中身は白い粉末。それを少し、ほんの少しだけ経口した。それだけでも、変化は激烈だった。勝手に頭の中で起動式が組みあがる。ビットなど関係はない。ただ自分が手を前にかざすだけで、複数の光の球が出現した。そこから光の筋が伸びていく。その近くに味方がいることなどお構いなしに、その光は敵を一気に貫いた。
「ちょ、危ないじゃない!」
ギリギリで当たらなかった凰が抗議の声を上げるが、迫ってくる敵は見逃さない。ややボーっとする頭を半ば無理矢理に動かし、右手の長剣を振るう。その範囲にいた戦闘機は回避が間に合わず、片翼をもがれ落ちていった。それにとどめの一撃を放ったところで、シャルロットが気付いた。
「麦野さん、まさか、さっきのって・・・体晶、だっけ?」
「ああ。だから今の私には近づかないほうがいいぞ」
遠距離からの砲撃を自身の能力で作った楯で無効化し、そのまま極太のレーザーとして打ち出して攻撃とする。その光景は、まさに蹂躙だった。
はい、というわけで。
サブタイトルは基本的にここにコピペしてから決めているのですが、ざっと誤字などないか確認して、その直後に決まりました。過去最短くらいですかね。
で、あんまりにも長くなりそうなので思い切ってスパっときっちゃうことにしました 。このペースだとあと5話くらいでエピローグに入るかなーと思います。最速で日曜日から一日一話で書き溜め放出して終わりになるかなー、といったところです。
ではまた次回。