何とか今エピローグを書いている最中でございます。
何が言いたいかって、今日で残りの3話(この話除く)をエピローグがかけ次第1時間間隔くらいで一気に放出して終わらせます。
計画性も甲斐性もない主のせいで一気に急転直下で終わることとなります。申し訳ない。
というわけで、その序章たる今回どぞ―。
「増援が無くなってきた。どうやら終局に向かってるみたい」
『そうか、それは吉報だな』
今もなお前線で戦い続ける青年に、簪が無線を入れる。答える声は心なしか安堵が含まれていた。
「でも注意して。まだ増援が途切れたわけじゃないし、増援のほとんどはそっちとこっちに向かってる」
『りょーかい。そっちも死ぬなよ。きついと思ったらその場を放棄してすぐに逃げろ』
「分かった」
通信を切る。瞬間、弾丸が飛んでくる。だがそれは、自分にあたる前に割り込んだ黒い影によって真っ二つに斬られた。
『ご無事ですかマスター』
「大丈夫。ありがとうね」
『いえ、当然のことですので』
ブラックバードの合成音声と会話をして、簪は再び周囲に目を向けた。おそらくステルスも使用していたのだろう、レーダーに映っていた数より多い敵影が周囲に合った。だが、こちらも万謹製のステルスを起動させているし、そもそもこの程度で負ける自分ではない。
「行くよ、打鉄弐式」
自身がその身を預ける機体に一言つぶやくと、簪は敵へ飛んだ。近距離からフレアを放つと、本来ジャミング用として使われるそれは十二分な威力となって相手を撃墜させた。見えないところからの一撃は確かに有効だったが、すぐさまこちらに狙いを定めて撃ってきた。おそらく、熱源を探知してきたのだろう。万ならばその辺まで誤魔化すこともできそう―――実際は彼でもできない―――だが、今の自分には不可能だ。こうなることは予想できていたから、ステルスはすぐに解除する。直後に、山嵐を一気に射出した。万により手を加えられた山嵐は、従来の性能を上回る60連射マルチロックオンということも可能としていた。その最大火力を周囲に叩き付ける。一部、否、目算で半分は落とされたものの、その周囲には銀色の小さな紙のようなものが漂っていた。弾頭にチャフがついていたのだ。このあたりの小技も含めて調整してしまうあたり、つくづく彼には敵わない。
それが何かを断定するまでの短い間は、簪が薙刀で複数の敵を片付けるのには十二分な間だった。もとより、この身は暗部に通じるもの。死体など見慣れている。殺人に関する忌避感など、当の昔に消え去っていた。同時に、脇に抱えられる形で備え付けられた春雷を一発放ち、遠方に見える敵も撃破する。
後方支援の機体というと、近接戦闘が不得手であることもままある。が、その先入観に簪は当てはまらなかった。遠い敵は山嵐と春雷で、近い敵は薙刀で圧倒する。だが、それもこれも思わぬ援護に助けられていることに簪は気づいていた。
先ほどからステルスと自身の能力によって、光の反射、音、赤外線を打ち消し、電波の反射すらも消したセイリュウは完全に場を引っ掻き回していた。
敵からすれば何も見えないし何も聞こえない、電子類も全く反応しない、なのに攻撃は存在し、こちらは着々と倒されている。いくら警戒していても、攻撃がどこから来るのかも、どのような手段で来るのかも、攻撃されるか、引き金が引かれる瞬間までさっぱりわからないのである。いくら歴戦の兵士でも、これが恐怖を呼び起こさないことがあろうか。この場において、完全にそのパイロットたる深名は最強だった。
しかも、この機体が考えうる多くの状況に対応したものであったことも幸いしたのだろう。レーザーで来ることもあれば、実弾で来る時もある。しかも、レーザーが
そのあまりにも無茶苦茶なキルスコアに、相手はやがて、彼女のことを“ハデス”や“死神”などと呼びながら散り散りに逃げていった。それを見た簪は指示を出す。
「ガンチャリオット、ブラックバード、追い打ちをして。もし他機との交戦区域に入った場合、共闘してもいいし、そのまま追撃してもいい。ただし、同士討ちは避けること」
『了解しました、マスター』
「深名さんはここにいて、私と一緒に支援を。あの人のことだから、セイリュウも多少以上に支援ができる機体になってるはず」
「分かったわ」
深名の返答はやはり―――と言っては変だが―――虚空から聞こえた。
「さて、支援を再開しましょう」
一言そう言いつつ、仮想のコンソールを出現させ、操作する。返答の声は聞こえなかったが、その処理の速度から手伝っているであろうことは容易に想像がついた。
その頃、万たちはいまだ苦戦していた。いくら増援が無くなってきたとはいえど、元から居た兵が消えるわけではない。その雲霞のごとき大群はいまだに万たちを苦しめていた。
「だー、いったいどんだけ湧いて出て来やがんだ、こいつら!」
さすがの万もここまでの大群は想定外で、思わずぼやくが、それに対する答えは思いのほか近くから来た。
「ぼやいている暇などありませんわよ」
クーリングタイムが終わったのだろう、自身の真の得物たるライフルを構え、周囲に向けて一通り放ち、万の背中に自身の背中を合わせてセシリアが言った。
「ま、そりゃそうなんだけどよ」
そういっているそばから敵が来る。だが、それはどちらかというと敗走だった。半ば無視を決め込もうと思ったが、それを負う機体を見て、その気持ちが変わった。片手に持った、槍と見まがうような簡素な銃を逃げて来る相手に向けると、そのまま数発放つ。そこまで細かく狙いを定めたわけではないが、どうやら急所にあたったようで、そのまま当たった相手が数機地上へと落ちていった。
『助かりました、盟主』
「どこでそんな言い回し覚えたんだよ。むず痒いからやめてくれ」
『では何とお呼びすれば』
「普通に黒川でも万でもいい。とにかく、蹴散らすぞ」
残りの逃げようとした機体も、どうやらはらをっくくったらしく、こちらにその得物を構えている。どうやら戦うしかないようだ。
『御意にございます、黒川殿』
いちいち大げさな言い方には少々むずがゆいが、彼女らにとっては万こそ“親”なのだ。そう聞かせ、何とか堪えることにした。
「津波ってのは最後が一番でかい。こっからが本番だ、気張れよ!」
「「『『了解!』』」」
その頼もしい返事に背中を押させる語りで、再び万は空を蹴った。最初のような物量作戦ではなく、完全に新型兵器や学園都市性と思われる兵器を投入した戦いとなってきていた。
そんな中、万の能力による観測に妙な反応が検知される。直感的に嫌な予感を覚えた万は、それに対して自分の能力を発動させ、防御とした。少し遅れる形で、その防御壁に不可視の弾丸が突き刺さる。が、この程度ならば普通に防御に成功した。が、当の本人は盛大に舌打ちをしていた。
「やっぱりきやがったか。てか、ようやくお出ましか」
そこにいたのは、青少年たちが操る、ISではない駆動鎧の群れだった。
「あと懸念されるのは、能力者が駆動鎧をまとってくること、かな」
「それって、超能力者がISに乗っているようなもんってこと!?」
真意をすぐに見抜いた凰が声を大きくする。慌てたように唇に手を当てた万に、凰は少々頬を染めながら居住まいを正した。それを見て、万も続けた。
「でもま、概ねその認識で間違ってないかな。おそらく、その手に使われるのは皇位能力者ではなくて、いいとこレベル3だろうな」
「っていうと、どのくらいの強さなの?」
シャルロットが口に出した疑問は、全員が思っている疑問だろう。それに対して、万は少々考えてから言った。
「そーだなー、俺はレベル4の中でもかなり強い部類だからな。自分で言うのもなんだけど。レベル3っていうと、個人差もあるけど、俺みたいな
「区別をつけることは可能なのか」
「ほぼ無理。しいて言えば、パイロットが精々言って俺らくらいの青少年か、それより下かってことくらいかなー」
ラウラの疑問を、万はバッサリと斬って捨てた。
「あと、戦闘ノウハウとかもおそらく脳に直接インストールされてるだろうから、かなりの強敵だぞ」
「仕方ねえ。一気に片を付けるか!」
幸いなことに、体晶はまだ残っている。即座に離脱可能な空間移動系、彼の能力ではそもそも干渉すること自体が不可能な振動操作系や浮力操作であれば、能力で干渉することはできない。それに、ありえないとは思うが高位能力者がこの手の機械に乗っていたら、いくら応用力に富んでいて、出力もそれなりにある万でも太刀打ちできない可能性も否定できない。
だが、観測くらいはできる。それに、能力者軍団の中に空力系の能力者がいることは把握済みだ。それくらい観測できない万ではない。それに、それくらいの対策はあちらさんも立てているだろう。空力系の能力者は一人で、それも捨て駒と見るべきだろう。ならば、自分のやるべきことはただ一つだ。
自身の能力を使って、その応用で
「壊せ」
その一言だけだった。だが、相手は一瞬のうちに目を見開き、そのまま墜落して行った。
今万が行ったのは、心臓の周辺に超音波を当て、的確に壊死させるという作業だ。どんな人間でも、心臓が壊死してしまえば簡単に殺せる、というわけだ。直接触れなければ使えず、しかもピンポイントで触れる必要があるので、そんなしょっちゅう使うわけにもいかないが。
ありえないといったような表情のほかの兵士に、万は薄く笑いかける。
「何を驚く必要がある?あの世界ではこんなことは日常茶飯事だ。違うか?」
その一言の直後に、再び瞬間加速。一瞬とはいて、相手はその身を逸らしにかかるが、今回の狙いはそちらではない。一瞬で相手を斬り伏せると、その勢いを生かして空中宙返り。その過程で短剣を複数投擲、それらは過たず相手の頭部を貫いた。が、2、3本は逸らされたり、はたまた破壊されたりした。
「おいおい、壊してくれるなよ。あれでも作るの結構大変だったんだぞ?」
軽口をたたきながら、その目はもう既に異常の域だった。だが、そうなることなど万も承知の上。だからこそ、無駄遣いせずにここぞの時までとっておいたのだ。回復したかどうかは微妙なところだが、消耗していないのならそれだけで上等だ。
「最後の戦いだからな。大盤振る舞いと行こうか!」
ここに、狂気の殺戮者にして、暗部時の依頼達成度90%以上という伝説の
それをすぐに悟った相手は、能力も多分に使った白兵戦へと切りかえた。万はそれに対して上等だと左手で指先を上にして手招きする。その意味を理解したのだろう、とびかかってくる相手を、万は2本の長剣で迎え撃った。
隣で戦況が変化した。それは、セシリアも分かった。
『お止めなさい』
一瞬だが援護に行こうとしたところを合成音声が止めた。そこを振り返ると、相変わらず見事なコンビネーションを披露する二機の姿。
『これは盟主の戦いです』
『そして、そこにはおそらく、見方は盟主しかいません』
『あなたが行っても命を散らすだけ』
『そして、おそらくそのようなことは盟主も望んでいない』
『ですから、お止めなさい。盟主のためにも、自分のためにも』
そこまで言われて、だがそれでも、万のほうを見た。自分には何もできないかもしれない。それでも力になるだけでもしたかった。
「どうか、ご無事で」
無線に一言だけ告げる。そのまま、自分は二機の戦闘の援護に向かった。
一夏達の戦況はやはり思わしくなかった。いくら一夏がある程度吹っ切れ、麦野が援護に入ったとは言え°、一夏の機体は如何せん燃費が悪すぎるのだ。そんな折、敵の群れを割いて赤い閃光が飛んできた。その閃光は、問答無用で白式に触る。その瞬間、かなり減っていた白式のエネルギーが回復した。
「ありがとう、箒」
「そんなことを言っている場合ではないぞ」
お礼を言ったのにこのような言葉。こういうのを、女は強いというのだろうか。そんなことを思いながら、一夏は改めて敵の下へ飛んでいった。そのまま、その剣を横薙ぎに振るう。それだけでまた1機、地面に向かって落ちていく。もう何期目かもわからない。だが、嫌悪感はいまだに取れなかった。
「やっぱり、後味悪い」
「そんなことを言っている場合ではないだろう」
思わず漏れた一言にもこの反応だ。やはり、自分は出るべきではなかったのか。そう思っている時に、一瞬で目の前に回った箒から、遠慮会釈なしの張り手がさく裂した。そのまま無言でまたどこかへと飛んでいく。
「ありがとな」
腹をくくれたつもりではあったが、まだまだだったらしい。だが、今の張り手でようやく踏ん切りがついた。もう飛んで行ってしまった幼馴染に一言礼を言うと、一夏は飛んできた砲弾を一刀両断した。
「・・・手段を選んでる場合じゃないんだ」
自分に言い聞かせるようにつぶやいて、再び構える。その目は、今までよりもいっそう厳しいものとなっていた。
はい、というわけで。
万君が今回で使ったやり方は台詞でぴんと来た方もいたんじゃないでしょうか。そういう人はおそらくガリレオ好きな人ですね。
にしてもあれですね。レーダーに映らず、熱源探知にも引っかからず、目で見えることはもちろんない。なのに攻撃が来るってホラーですね。どこぞの鉱石でも持ってきたのかっていう。名前覚えてませんがw
ここから先、話数も少なくなってきましたが、どうかお楽しみください。
ではまたあとで。