先ほどはサブタイトルを変な状態で投稿して申し訳ありませんでした。
さて、今回どぞ―。
『どうか、ご無事で』
その声を聞いた瞬間に、万は果たしてその願いを自分が聞き届けることができるのかと思った。いくら学園都市でもほとんど類を見ない応用性に富んだ能力者とはいえ、これだけの強化された上に駆動鎧をまとった能力者たち相手に無傷とはいかないだろう。その時に、彼女の言う無事ということが果たしてできるのか。その不安が心をむしばみかけた。
だが、その不安も飛んでくる攻撃に吹き飛ぶ。飛んできた弾丸が電気を纏っていたところを見ると、消音性に富んだ電磁力狙撃か。確かにどれほどの能力者でも、反応できなければ何の意味もない。しかし、その程度に屈する彼ではない。容易にそれを止めると、お返しとばかりにはじき返す。その反応の速度を想像していなかったのか、何とか防御はできたものの一応のダメージを負った形となったようだ。それをよく確認する暇も惜しんで、再び敵の群れへと突っ込んでいく。
どうやら、遠距離から攻撃する能力者を集めてきているようで、これらの白兵戦能力はお世辞にも高いとは到底言えないものだった。それくらいは、少し剣を交えて場わかる話だ。そう見切り、今度は大きな銃口に刃がついたような、銃剣にも似たものを取り出した。一気に近づいて突き立てようとした瞬間に、その周囲を光が包んだ。
(ちっ、閃光系か!)
完全に想定していなかったわけではない。人間の目は、暗いところに慣れるより明るいところに慣れるほうが遥かに早い。それを利用したのが閃光弾というものだ。だが、こんな乱戦では少なくとも多用していいものではない。こちらも、一瞬でフィルターがかかったものの、その一瞬が隙となって襲い掛かってきた。が、その程度だ。
もう片方の手で長剣を薙ぎ払う。あたりこそしなかったが、その反応に敵は一瞬ながらも怯んだ。それが決定的な隙となった。
「蹂躙しろ」
薙ぎ払うと同時に放射状に展開されていたショルダーアーマー。それが指すものはただ一つ。光の嵐による蹂躙により、さらに敵が何機も落ちていく。もはや数えている暇などない。
そもそも、いくら不意を突いた強い閃光で視界を潰そうとも、その程度で空間把握を潰せるはずもない。こちらから相手に干渉ができないということは、相手からこちらにも干渉ができないということだ。目が利かないのならば目を閉じればいいだけの事。その状態ならば、視界に使っていた部分も演算に回すことができる。ただでさえも体晶によって半ば無理矢理に強化している状態なのだ。それだけでどこに敵がいるかなど簡単に分かるというものだ。この程度、造作もない。
「さてと、一気に片を付けるか」
戦闘を間延びさせる意味もない。もうかなり消耗してきている。それに、この手の相手は、同じ穴の狢である自分が最適だ。その覚悟と共に、目を閉じたまま近接戦闘に入っていった。
一方、セシリアは苦戦していた。有象無象の雑魚ばかりであったのならばよかったのだが、あとから援護してきた人間が異常だった。
「おいおいおい、何してんだこの阿呆ども」
見方を仲間とみなさず、必要ならば使い捨てるタイプであることは一発で分かった。それゆえに、彼女は少なくない嫌悪の感情を覚えた。
「こんな小娘・・・だけじゃねえな、ちっと歯ごたえがありそうなババアもいるが、ま、ほぼ生娘だけの集団に何手こずってんだ」
「も、申し訳ありません」
「謝ってほしいわけじゃねえよ。結果を出せ、結果を」
機体もほかのそれに比べると一回りから二回りほど大きい。何より、その体から発せられるオーラが違った。それは、ほかの人間とは比べるものがおこがましいほどに狂気に満ち溢れたものだった。
「お嬢ちゃん、悪いことは言わないから、ここから離脱しなさい」
「いえ、ここでこのまま戦いますわ」
その言葉に込められた意志に、スコールは一つ息をついた。
「分かったわ。死なないようにね」
「言われるまでもありませんわ」
そういうと、セシリアは両手の得物をそれぞれ構えた。
「ほう、嬢ちゃん、なんだか様になってんなぁ」
「一応、褒め言葉として受け取っておきますわ」
言いつつ、ライフルを一発撃ち放つ。それを短剣で切り裂きながら一瞬で肉薄する相手を、セシリアも短剣で受け止めた。
「なるほどなるほど、なかなか読みのいいやつだ」
「わたくしでも、馬鹿正直に正面から撃った弾が当たるほど甘くない相手であるくらいはわかりますわ」
「ほう、おもしれえじゃねえか」
会話をしつつ、両脇腹に備え付けられたブルーティアーズの実弾砲を向け二発同時に放つ。あえて威力を落とした弾頭を選択したことにより、落ちずに怯んだ相手に、ライフルからサーベルに変えたもう片方の手を薙ぎ払う。が、それをまるで長座体前屈のように体を曲げて、躱すどころか蹴りを一発食らうことになった。
「ほう、なかなか」
「そちらこそ」
短いやり取りをしながら、相手は嗤う。その表情すら狂気に満ちていた。
万の相手側はそれからも何度か光を放っていたが、万はさほど苦にはしていなかった。まさか視界を奪われた状態で近接戦闘をするなど想定していなかったのか、何機かはなす術なく落とされた。
突っ込んだ勢いをそのまま乗せて突き立てた剣をそのまま横に力ずくで薙ぎ払い抜き、また飛んできた弾丸を斬る。先ほどもそうだが、急所を狙うのはいいが狙いをつけている時間が長すぎる。躱すよりそのまま斬ったほうが早いということを直感で理解するくらいには簡単な弾道だった。だが、このまま後方からちまちまと撃たれるのは面倒だ。そのままその狙撃手の下に飛び込むと、逆袈裟に斬り上げる。相手はとっさに銃で防御したのか、肉ではなく何か硬質のものを斬った感触が残った。そのまま返す刀で頭から一刀両断にする。生暖かい血の感触をその身に残しながら、万は振り返りざまに片手を前に出した。すると、先ほどには程遠いものの、そこにいた敵がすべて、まるで凍り付いたかのように動かなくなった。
「ったく、最初っからこうしときゃよかったんじゃねえか。何ちまちま戦ってんだよ俺」
誰にともなくぼやくと、通常機動で残りの敵を一気に切り裂いた。万はそのまま我が子の援護に向かって飛んだ。
この状況で一番劣勢になっているのは意外にもガンチャリオットとブラックバードだった。いくら彼らのコンビネーションが完璧とはいえど、元となった機体の性能がどうしても足を引っ張っていた。もともとがテストタイプである以上、出力より取り回しの良さを求められた結果だった。
そんな折、戦いの外から、彼女らを襲っていた機体の網をまるで食い破るように鈍色の機体が飛び込んできた。
『黒川殿』
「無事そうで何よりだ。とにかく、こいつら蹴散らすぞ」
『『了解』』
このじり貧の状況を救ったのは、その二機の作成者たる青年だった。その体はかつてないほどに血に塗れていた。それを気にすることもなく、容赦なく戦っていた。
「まったく、一騎当千なら万の大群を使えば押しつぶせるってか。本当に無粋だよな」
有効と分かっている。が、万はそれが有効であるということも分かっていた。次々に敵をなぎ倒す。が、相手もこちらの動きが少しずつ読めてきたのだろう。万が加わっても、なお劣勢に追い込まれることとなった。しかも、敵の勢いは収まっていくどころか勢いを増してきていた。
「こりゃステルス使ってこっそり大群送られたかな。仕方ねえ、やるか」
もう一度体晶を摂取する。周りがクリアになったのと同時に、微かな頭痛を覚えた。無理もない。ここまで負担をかけたのはまずない。被検体が自分であった以上、そこまで無茶をするわけにはいかなかった。かの有名な走り屋漫画の主人公がエンジンをブローさせてしまったように、限界ギリギリの無茶を続ければ負担がかかりすぎるのは自明のことだ。だがそれでも、それだけのことをする意味はあった。
ハイパーセンサーと照らし合わせ、正確な位置をつかむ。圧縮した空気の圧縮熱を吸気することでエネルギーとし、
(私たちも負けていられんな)
(そうだね)
2機の間のネットワークでやりとりをした2機もそれに続く。思考回路とほぼ直結状態の特殊ネットワークは、こういった場面での連携には絶大な効果を発揮した。ブラックバードが本陣に切り込み、ガンチャリオットが援護する。言葉にしてしまえばそれだけだ。だが、ガンチャリオットが引き金を引くのと、ブラックバードが射線を開けるのがほぼ同時というようなことを何回も繰り返されてはたまったものではない。お世辞にも高いとは言えない機体性能ながら、その能力は万にも匹敵するかと思われた。しかも、万の場合は単騎なので飽和させることは可能だが、こちらは2機のため、思考を飽和させることは難しい。“二騎当千”の戦いに、若干ながらも戦況はよくなるかに思えた。
その矢先だった。順調に敵を落とす万の頭に、突然痛みが走った。激痛とまではいかないものの、その痛みに一瞬動きが止まる。その隙を見逃すはずもなく、敵が襲い掛かった。目を開いた時にはすでに遅かった。多数の敵が一気にとびかかってきて、流石にすべて捌くのは不可能だった。
(くそ、が・・・!)
防御を捨て、一点突破で突破口を開き、離脱するのが最善手だと直感した。だが、それをしても、損害は決して小さいとは言えないだろう。最悪、撃墜のリスクもある。だが仕方ない。そう割り切った、否、割り切るしかなかった。
その時に、自分の後ろと横をかばえる位置に二つの機影が割り込んだ。自分に向かうはずだった攻撃はすべてその二機に向き、おびただしい黒煙を上げさせた。離脱した直後にその場所を見ると、ガンメタと黒の機体がそれぞれ地面に向かって行くのが見えた。
「お前ら!」
その瞬間に確信になった。いや、割り込まれた瞬間から、この可能性しかないとわかっていた。ただ信じたくなかっただけだ。
『マスター、どうか、この戦い、勝ってくだ』
最後まで言い切る前に、その通信は完全にノイズに呑まれた。それが指す意味は一つだけだ。少なくない衝撃が万を襲った。
感情に動かされるようではいけない。それはわかっていた。だがそれでも、完全に無力化するためか、あるいはデータ収集目的か、撃墜された2機の近くに敵が群がる様を見た瞬間に、その敵が見にくいハイエナのように見え、頭の中には明確な怒りが支配した。
攻撃を受けた相手からしたら、それは本当に何が起こったかわからないというものだろう。ただ一つ確実なのは、その体がもうすでに氷よりも冷たく、指一本でも動かそうものならそこから文字通り粉砕するということだ。
「触るんじゃねえよ、ハイエナどもが」
静かながら、それでいて激しい怒りを内包した声がした。その声がするまで、目の前に新たな機体がいることに気付かなかった。その青年が手にした大剣を振るうと、その瞬間に取り囲んでいた敵は尽く砕かれた。
「お前ら、最後まで俺をかばいやがって・・・」
その台詞とは裏腹な、まるで悪戯を叱る親のような口調。だが、次に瞬きをした瞬間に、その目には烈火のような怒りが宿っていた。その全身から発せられる怒りに、敵は思わず戦いていた。
「俺だっていつでも落とされる覚悟はしてる。だがな、落とされた後に、その死体を漁るっていうのは、一研究者としても、こいつらを生み出した人間としても、到底見過ごすことはできねえ。
てめえら、俺をここまで怒らせた、その覚悟はできてんだろうなぁ!」
その怒号より、その気配に、相手は完全に動けなかった。直後に、その体が光に包まれる。
[Aegis clear to fulfill the required conditions of Second-Shift.
Preparation of Second Shift is already conpreted.
Second-Shift --- start.]
その字を見た瞬間に、その意味を瞬間的に理解した。が、信じられないと思った。
本来、
[Second-Shift is finished --- clear.
Add new name to Aegis is “Nike”]
その閃光が収まった後に現れた機体は、まさにアイギスだった。だが、ショルダーアーマーの枚数が増え、腕や足にもついていた。
nike・・・そのまま英語読みすれば“ナイキ”なのだが、ここは“ニケ”だろう。アイギス・ニケ。それが新しい名前だった。
相手からしたら、茫然として見えたのだろう。敵の攻撃が一手に集まってくる。それに対して、いつも通りショルダーアーマーを展開し受け止める。衝撃を受け止めながら、万はぼんやりと考えた。
二次移行というのは、稼働時間と稼働率によるとされる。つまりは、超高稼働率で起動させ続けた場合、短時間での二次移行は十二分にありえる話だ。そして、この戦いと、その前の試運転も含め、ほとんどの場面は戦闘だった。ということは、稼働率は安定して高い状態だったのだ。それに、あの能力演算補助はかなり高い負担を強いる。それはつまり稼働率が半ば強制的に引き上げられるということだ。能力演算補助もそれなりの回数を踏んでいる。加えて、セイリュウから受け継いだ戦闘データのインストール。それらがすべて重なり合った結果として、この短時間の二次移行が実現したのではないか。そう考えると、不思議と納得がいった。
[Aegis’s One-off-Ability is available.]
相手の攻撃を受け止めると、その直後にバイザーに文字列が走る。それを万は見逃さなかった。使用を頭の中で指示すると、腕についたショルダーアーマー―――腕についているのでアームアーマーか―――が一枚飛んで、アイギスに向かって文字通り殴りかかってきた敵に張り付いた、と思うと、すぐにその機体はなす術なく地に堕ちた。そのパイロットはまるで雷に打たれたように目を見開き、体を硬直させていた。
[Aegis’s One-Off-Ability’s name is “Thunder of God”]
神の
とにかく、強力な力であることは間違いない。手にした剣にも、微かではあるが確実に電気が這っている。わずかではあるが、威力が上乗せされているのだろう。本来剣ではなく槍を持つべきなのだろうが、万は槍より剣のほうが間合いをつかみやすいという理由から剣を好んでいた。だが、ニケという名前も、神の雷という武器も与えられた以上、いつまでも剣を握るのはと、万は武器を槍に持ち替えた。もともと大抵の武器を扱うことのできる万にとってみれば、得物が変わったところで大きな違いはない。そのまま横薙ぎに槍を振るうが、そのくらいは敵も躱す。わざと吹き飛ばされたものもいたようだが、どれも致命傷となっていないことくらいは手ごたえで分かっていた。
いまだにくすぶる怒りの感情。それが、今、一番の原動力だった。そのままに一気になぎ倒していく。先ほどと同じように、電気で威力を強化された得物は、少ない手数で確実に敵を屠っていった。だが、その突撃思考の穴をついて、敵が背後に回った。それに対して脇から槍ではなく、もう片手のいびつな銃剣を刺して発砲し、撃破する。その隙をさらにつく形で、両脇から敵が襲った。一撃覚悟でショルダーアーマーを展開する。が、その敵はこちらに攻撃を加える前に、閃光によって地に堕ちた。
『少し頭を冷やせ!』
初めて聞く、庵からの叱咤の声。しかも命令形だ。だが、それだけ自分は、自覚している以上に頭に血が上っていたのだろう。
「悪い、サンキュ。おかげで少しは頭が冷えた」
『まったく、しっかりしてくれ』
呆れたような庵の声。だが、その声には少々安心も含まれているように思えた。
「ああ。もう大丈夫だ」
ここからは、理性で殺す。そう心の中で誓って、万は再び両手の得物を握った。
はい、というわけで。
強そう(小並感)
果たしてこの狂戦士の実力やいかに。
さて、アイギスが二次移行しちゃいましたね。早すぎる?知ってる。
でも書きたかったんだ。俺は悪く(ry
それではまたあとで。