宣言通りの一時間おきです。
といっても、こんな時間に起きている人のほうが珍しいので、朝ここを見た人は何があったし状態でしょうけど。
かく言う自分も眠いです。タイプミスボロボロしてます。
ではこんかいどぞー。
一方、セシリアのほうはなかなかに苦戦していた。突然現れた敵が想像以上に強かったのだ。遠距離から近距離から、うまく間合いを取って戦うあたりはさすがといえるが、自分のほうが劣勢であることくらいは自覚していた。
「やっぱりなかなかやるな」
「いえいえ」
本当はこんな無駄口をたたいている余裕などない。何より、自分はとてつもなく怖いのだ。
「そういう嬢ちゃんが一体どんな声で鳴くのか・・・、ああ、楽しみだねぇ」
「そうはいきませんわ」
そう言って短剣を真っ直ぐに構えなおす。
「ここから先は通しませんので」
「ほう、ますます鳴かせたくなったよ」
そう言って再び己の得物を振るう。男は戦斧でこちらは短剣なので、まともに打ち合うことはせずにいなす。それだけでも、セシリアにとってみれば難しかった。近接戦闘の技量も上がっているとはいえ、もともとセシリアは遠距離から攻めるタイプ。対して、相手はどうやら近接のほうが得意としているようだ。距離をとってもすぐに距離を詰めてくる上に、技量は一夏のそれよりも上をいく。この上なく厄介だった。
スコールのほうにはどうしてか狙わずに、セシリアばかり狙う。白兵戦を主にしているからか、スコールも手を出しあぐねていた。最初は鞭で援護することもあったが、それをすることでセシリアの指が止まってしまうことが多くなり、もう援護をしてくることはなくなった。するとしても、たまに爆炎を放つくらいだ。それだけでも十二分にありがたいのだが、それだけだ。それに、相手はそのあたりの対策は万全なのか、爆炎程度では歯牙にもかけていない。
(・・・あら・・・?)
今、何か引っかかった。何が引っかかったのかはわからない。だが、何か引っかかった。
(落ち着きなさい、セシリア・オルコット。いったいなにが引っかかったのか、そこに糸口があるかもしれませんわ)
再び迫ってくる相手に対して攻撃を受け止めながら、セシリアは必死に頭を巡らした。
「いいか、戦っている最中は思考を止めんなよ」
「それは、当たり前のことではありませんの?」
少し前の昼下がり、セシリアと万は二人で昼食をとっていた。白兵戦の訓練の映像を見て復習しながら、万は言った。映像の中で、セシリアは万に見事な一本背負いを決められていた。
「まー、そりゃそうなんだがな。この時俺が持っている武器は?」
「短槍ですわね」
「てことは、一気に懐に飛び込んできた時点で考えられるのは?」
「・・・打突、ですか?」
「でもこの場面、ちょっと巻き戻して・・・と、ここ。槍の先はそっちに向いてるだろ。しかも、俺はこの角度だと槍が見えなくなるんだ。つまり、ここから打突をしようとすると、背中越しになる。背中に目がついてるわけじゃねえからな、自然とあてずっぽうになる。んな適当な攻撃は当てづらいし、何より背中を見せた時点でがら空きだ。どっからみても攻撃のチャンスだよな。てことは、普通はしない。あるとすれば、この槍が仕掛け槍で、何か仕込んでいる場合だけど、俺はこの訓練ではそういう類は使わないって前に宣言しておいたからな」
「ということは、打突ではなく、他の攻撃」
「そ。てことは他の攻撃だ。ここまで間合いを詰めちゃったら、まず長物はない。とすれば、暗器の類か、体術だ。どっちにも共通するのは、リーチが短いってことだ」
「ということは、下がるのが賢明ですわね・・・。でも馬鹿正直に下がると槍が来ますわよね。となると、この場合ですと万さんは右手で槍を持っていますので、右側に飛ぶのが最善ですの?」
それに、万はにんまりと笑って指を一つ鳴らした。
「理解が早くて助かるよ、マジで。その通り。できる限り背中を取る。この手の戦闘の基本な。
つまりは、ここではその場で短剣を使って攻撃するんじゃなくて、右側、つまりは俺の背中側から攻撃するのがベスト。で、この時に気を付けるのは?」
「反撃ですわね。あなたがみすみす隙をさらすとは思えませんから、何か逆転の一手を仕込んでいるのでは?」
「その通り。実際にちょっとばかし映像を進めてやると・・・ほれ、ここ」
少し動画を進めると、セシリアがちょうど投げられるシーンでいったん止めた。その右手を指さした。
「槍を逆手で持ってるだろ?これは、背中を取られたときに攻撃できるようにっていう発想だ」
「・・・気づきませんでしたわ・・・」
「そりゃ気づかないようにしてたしな。もし、そういうところに気付いていたら、俺ならあえて左に飛ぶ。背中を取ろうっていうのは当然の発想だからな。だから、あえて反対の発想も考える。
ISには思考補助AIってのがついてる。これくらいも慣れればできるはずだ。でも、それにはもともとそういう思考ができるようにしておかなきゃいけない。だから、戦いながら思考を停止させないことが重要なんだ。戦っている最中に敵が見せたちょっとしたことが、突破口につながることもある。覚えておけよ」
(爆炎は歯牙にもかけていない。ですが、レーザーには反応している・・・。それに、白兵戦闘も、できる限り躱している。これはいったい・・・?)
逆ならまだわかる。スコールの爆炎に比べれば、こちらのライフルのレーザーは火力で大きく劣る。しいていえば、レーザーのほうが狙いをつけやすいくらいか。そこで、ひらめいた。そして、それをつく手段も、こちらにはある。
「スコールさん、わたくしに考えがありますの。協力をしていただけませんこと?」
「面白いわね。どうやら、あなたはあの坊やの秘蔵っ子みたいだし。いいわ、付き合ってあげる」
そう言うと、スコールは自身の鞭を敵に対して振るった。煩わしそうにそれを払うとセシリアに向かって飛ぶ。だが、それに割り込む形でスコールがその攻撃をはじいた。それに、相手は不愉快そうに一つ舌打ちをする。
「どきな、オバサン」
「あらやだ、私はそこまで年取ってないわよ?」
妖艶に微笑むスコールの年齢はわからない。が、相手の気を引くことはできたようだ。
「そのまま暫く気を引いていただけますか?」
「分かったわ。任せなさい」
そう言うと、再びスコールは近接戦闘に持ち込んでいった。相手は業腹な様子だったが、いくら突破しようとしても、スコールはその卓越した操縦技術をもってそれを許すことがなさそうだと判断したようで、当初の方針を切り替えてスコールから倒すこととした。その背後で、セシリアはライフルを静かに構えた。ビットがいくつか周辺を守るように飛ぶ。まるでセシリア本人だけでない、もう一人見えない誰かが背中にいるように、牽制の射撃はピンポイントで決まっていた。だが、残りのいくつかのビットは、セシリアの持つライフルに集まってきていた。
(わたくしの考えが正しいなら・・・)
おそらく、これで撃ち抜けるはずだ。そう思考しつつ、セシリアはそのままの体勢でゆっくりと機体を動かしながら光学迷彩を発動した。これで外からは見えなくなったはずである。
そのまま静かに時を待つ。神経をこの上なく集中させ、引き金を引く右人差し指の指先にそれを集束させる。
[“Noblesse Oblige” is available.]
その表示を確認して、セシリアはライフルだけでなく、ビットも完全に制御化に置いた。今までは不可能だった。が、今ならできる。根拠をうまく説明することはできないが、セシリアには確信があった。
これは一発勝負。いわば賭けのようなものだ。もしこれが失敗すれば、警戒されて二度目はない。
そして、その時は来た。ゆっくりと頭を内側にして大きな円を描くように動きながら狙いを定めると、一瞬ながら鍔迫り合いで両者の動きが止まる。その瞬間を逃さずに、セシリアは引き金を引いた。
先ほどとは打って変わった、集束された代わりに計り知れないエネルギーを内包した光が、敵機を操る男の眉間の上を射抜き、そのまま体の下へ貫通した。その男は、その獰猛な笑みのまま目を見開き、そのまま落ちて行った。その顔は、どこか楽しそうだった。
狂ったような強さだったが、狂っていたからこそ助かったということか。セシリアと早く戦いたい、そのためには目の前のスコールをとっとと撃破せねばならない。そのことだけが頭にあり、結果として後方からの支援に向いたセシリアの存在を忘れてしまうという、なんとも皮肉な事態を生んでしまったのだろう。もっとも、それはセシリアの姿が見えなくなったということも少なからず関係しているだろうが。
周りに敵がいないことを確認すると、ゆっくりと息をついた。
「うまくいってよかったですわ」
「何よ、賭けだったわけ?」
その口調の割には言い方は険しくなかった。
「ええ。少なくとも確信ではありませんでしたわ」
正直に言って、今の一撃が決まるかどうかというのは賭けだった。確信がなかったし、何より立ち位置がひどく流動的になる状態で、クリーンヒットどころか機体にうまくダメージを負わせられる自信が絶対ということはなかった。加えて、
「ですが、可能性があれば試すしかないですわ。それが突破口となりえるのならば、なおのこと」
その言葉に、スコールは心底楽しそうに笑った。
「ふふ。やっぱりあなたは面白いわ。さて、当の坊やを援護しに向かいましょう。多分、あちらも大変でしょうから」
その一言と共に、ふたりともそろって飛翔した。
その頃、楯無は一種の瞑想状態にあった。周囲からは、依然として戦闘音が聞こえてくる。だが、ここから離れるわけにはいかなかった。
「強いのね、あなたは」
ぽつりと、隣に立つデメテルが言った。
「私は強くなんかないわよ。ここにいるのは必要だから。それだけ」
「でもわかるの。私も、本当は飛び出したくてたまらない。私に理性というものがなければ、とっくにこんなところ飛び出して行ってる」
「それは、あなたの言う、妹のため?」
その言葉に、こくりと頷く。雰囲気や物腰こそ本当に物静かで大人らしいが、こういうところを見ると、案外内面的なことは子供なのかもしれない。
「本人は、多分私が姉なんて知らないし、多分姉がいるってことも知らない。知っていたら、多分気付く。あの子は聡いから。でも、あの子が知らなくても、私はあの子を守りたい。守れなくて、大変な思いも、いやな思いもいっぱいさせたから。これからは、私が守ってあげたい」
その告白を楯無は静かに聞いた。その気持ちがまったくわからないわけではない。
「なんかわかる気がする。
私もね、妹が戦ってるの。前線で戦うんじゃなくて、後方支援に回すだろう、って言ってたけど。でもそれでも不安なの。
これでも一応、更識の当主だからね。私は家の仕事もしてたから、人の生き死になんて何度も見てきた。うちの家はね、そういうことは子供の頃には見せないで、理解ができるようになってからちゃんと教える。だから、更識は殺すけど、人を捨てるような真似は極力しない。やむを得ない場合は除くけどね。でも、あの子にはそういうのを見せてこなかった。私が望まなかったから。あの子にはそういうところを見られたくなかったしね。でもそれが原因で、一回こじれちゃった。運がいいのか悪いのか、その後は仕事もなかったし、そういうのを見せることもなかった。ただ、本人が私の知らないところでそういうのを見ていれば、話は別だけどね」
そこまで言ったところで、遠くを見ていたデメテルは楯無を見上げた。
「なら、なおのことどうしていかないの?あなたにはその力もあるのに」
「もう知っているのよ。あの子はもう子供じゃないって。守ってあげなきゃってずっと思ってたけど、関係が戻った時に、もうあの子も独り立ちできるんだ、って。だから信じ切れるのよ。今のあの子なら大丈夫だって。
妹さん、信じてあげられない?」
その言葉に、デメテルは微かに目を開いた。そのあとすぐに遠くにまた目をやって、ぽつりと言った。
「そうね。あの子は強いから。悲しくなるほどに」
消え入りそうな呟きだったが、不思議なほどはっきりと聞こえた。その直後、無線がつながる音がした。
『お姉ちゃん、そっちに敵接近、数は100!』
その声にすぐに神経が切り替わる。
「分かったわ。こっちで対処する。デメテルさん」
「分かってる。私は私のやれることをやるだけ」
相変わらず抑揚の少ない口調だが、どこか先ほどに比べて吹っ切れたような口調だった。
遠方に敵を見る。大群と呼べるほどのものではなさそうだが、この局面で送って来る相手がただものなわけがあるまい。
「まったく、最後の最後まで容赦ないわね」
あの青年からの援助はなかった。そもそも頭数に入っていなかった可能性もあるのだが、こちらの実力を信じているということでもある。あの青年のことだ、おそらく両方か後者だろう。そうでなければ無理を押し通してでもやるだろう。
「でも、私をこの程度で破れると思われているとは、心外ね」
学園最強は伊達ではない。この程度で破られると思われているとは、流石に侮りすぎとしか言いようがない。
「来るわよ!」
瞬間、こちらも蛇腹剣を展開し振るう。だがそのあたりは読んでいたのだろう、相手もやすやすと回避をする。だが、その直後に異変は起こった。
地面から無数の剣が出現して、一機に敵を貫いた。こればかりはさすがに相手も面食らったようで、一瞬動きが止まる。その隙を見逃さずに、
結果的に、楯無が繰り出す遠距離攻撃と清き情熱、そしてデメテルの奇抜な戦法にうまく対策のできぬままにやられていく、とはいかず、反撃の一つも入れようと思ったところに、無数の弾頭が降り注いだ。しかも、それに混じるように光学武器も雨あられと降り注ぐ。それになす術もなく敵は落ちて行った。
「ありがとう、助かったわ」
「私はやれることをやっただけだ」
そこに現れたのは銀色の機体。まるで湖に反射する月のようなその機体を駆るのは庵だった。
「デメテルさんも、ありがとうね。おかげで戦いやすかったわ」
「やれることをやる。それだけ」
その声は先ほどに比べてさらにそっけないように思えた。
「そういえば、万君のほうは大丈夫なの?」
何の気なしの問いかけに、庵は少々言い辛そうに答えた。
「・・・今の彼には・・・近づかないほうがいい」
その言葉は異常なほどに不穏な雰囲気を纏っていた。
一方、万のほうは大変なことになっていた。相変わらず万は強かった。が、時折顔を激しくしかめていた。その様はどこか激痛に耐えているようでもあった。そして、庵はもうその場にはいなかった。
圧倒的で、狂暴的なその力に、最後の一機が落ちて行った。あとから到着したセシリアの目に見える範囲で、もう敵はいない。絶え間なく続いていた戦闘音も消えていた。それは、長かったようで短かった戦いの終焉を意味していた。
バイザーはどこかで壊れたのか、その眼もとははっきりと見えていた。こちらを見た万の目は、明らかに正気を失っていた。
はい、というわけで。
大波じゃない?知ってる。これだったらほかのタイトルのほうがよかったです。だいぶ公開してます。これくらいは訂正するかもしれません。
さて、不穏な幕切れですね。次回どうなる。
さて、それでは、今はさよならを言うとしましょう。