けど字数はそこまで多くないからまあ納得か。
それでは今回どぞー。
ピットを軽く跳躍し、そのままゆっくりと生身で相対した万にセシリアは驚いていた。
「あなた、生身でISに相対しようとおっしゃいますの!?」
その言葉に万は笑う。
「ははは、んなわけないじゃん。俺だって命は惜しいし?だから・・・」
そういった瞬間、彼の体を光がつつむ。そして、その光が収束したとき、彼は澄んだ藍色のISを身にまとっていた。
「こいつで行かせてもらう」
セシリアのほうに表示されたのは「敵機認識:JPマルチテストタイプγ型」の文字。
「いやに長い名前ですのね」
「まあな、こいつはもともと研究機だったのをカスタムして譲り受けただけだしな。名前がやたら長いのはそのせいだ。ま、その名が示す通り多目的利用を目的とした試験機だ。装備を換装すれば精密作業も可能だぜ?まあ試したことなんざ数えるぐらいしかないけど」
「ずいぶんと口が回りますのね」
「今言ってるのは戦闘とは関係ないただの無駄話だ。いくらしゃべっても問題はねえだろ?」
「そうですわね。では、最後のチャンスを与えましょうか」
「チャンス?」
「誰の目にもここでわたくしが勝つのは火を見るよりも明らか。故に、この場で無礼を泣いて謝るというのなら、許さないこともなくってよ?」
その言葉に万は鼻で笑う。
「言葉は正しく使いな。それはチャンスじゃねえ、ただの無条件降伏だ。それに、たとえそれをしたところで、許してくれる保証なんざどこにもない」
「・・・そう、では」
その時、万のISが警告を告げる。
―――敵IS、狙撃態勢へ移行―――
「お別れですわね!」
その瞬間、手に持ったライフルからレーザーがほとばしる。それはまっすぐ万のもとに飛んできたが、それを万はなんてことはないかのようにかわす。続く第二射以降も万はかわしていく。
「踊りなさい、わたくしとブルー・ティアーズが奏でるワルツで!」
高らかにそう宣言するセシリアに対し、冷静に弾道を見切って、万はかわし続けていた。
どれだけ撃ってもそれはすべて直撃することはない。その事実を認識し、セシリアは一度間を取った。これ以上連射しても徒にエネルギーを消費するだけだからだ。
「初見でブルー・ティアーズ相手にここまで耐えたのはあなたが初めてですわ。ほめて差し上げましょう」
「ふーん、そりゃどーも。とりあえず、そろそろ下ごしらえでも始めますかね」
「お生憎様。そんな時間は与えませんわ!」
そういって背面から4基のビットが飛び出す。データ通りと万はほくそえんだ。
「ボールリリース、スタンバイ」
ボイスコマンドで万は言う。そしてビットから出るレーザーをかわしながらその身には金属製の球体が無数に装備された。それをレーザーをかわしながら少しずつばらまいていく。
「そのようなものをばらまいたところで、問題にするわたくしじゃなくってよ?」
あくまで敵の狙いは万本人。そしてビットもライフルもその射撃精度は素晴らしいものだった。
そして、ある程度たったころ、万は周りを見てあえて通信をつなげたうえでつぶやく。
「そろそろ、終わりにするか」
そして、今度はビットの光線をかわさずにその場で回転して更なるボールをリリース、それに光線をはじかせることで対処する。
「なるほど、頭を使いましたわね。でも、それだけじゃ甘いですわよ!」
そういってライフルを構えなおすセシリアにこともなげに万は言い切る。
「まあ、少なくともあんたよりは頭使ったしな」
その次の瞬間、レーザー弾が直撃した。
そして、黒煙の中から飛び出したのは、セシリアだった。
あろうことか、彼女は死角から飛んできた光線によって貫かれたのだ。
「馬鹿な、いったいどこから・・・!?」
そう、相手はまだ一切の武装を展開していない。展開したものといえばISと例のボールくらいのものだ。
「ま、種明かしはおいおい。じゃあ・・・」
そういって彼は口を横に裂くように笑った。
「イッツ・ア・ショウ・タイム」
そして彼の手にショットガンと思われるものが出現する。
「この距離でショットガン?笑止ですわ!」
そうセシリアは離脱しつつ自身のライフルを撃つが、ことごとく彼にそらされる。
「ああ、普通はな」
そういって彼は引き金を引く。そこから出てきたのは無数のレーザー。なるほどこれならショットガンの欠点である射程距離の短さを程度は打ち消せるだろう。
だが彼が撃ったのはブルー・ティアーズがいる方向とは全くの別方向。
「どこに撃ってらっしゃいますの?」
それに対しセシリアは余裕の表情を崩さない。
「いや、俺は撃ち間違っちゃいねえよ」
そういいながら今度は照準を変えてもう数発。だが、それもセシリアに向けたものではない。
いったい何を考えている、と思った彼女は回避に徹せざるを得なくなった。
無数のレーザーが彼女めがけて飛んできたからだ。しかも、回避した先にもレーザーが来る。
いったい何事か、と思い回避した先には夕闇を思わせる青があった。
はめられた、と思ったときにはもう遅い。前には武装を棍に変えた万、その他全方位にはレーザーが迫る。とっさに近接武装を呼び出すが、
「遅い!」
彼の一喝とともにそのナイフは宙を舞い、その次の瞬間棍が胴に入る。絶対防御は衝撃までは緩和しない。一瞬意識が飛びかけたところに棍がさらに一閃し、セシリアは墜落した。だがそれでは終わらない。彼女のシールド残量はわずかながらまだ残っていた。
「ちっ、浅いか。まあいい。フィナーレだ」
舌打ちとともに言った万は心底愉快そうに嗤うと手に持っていた棍を彼女に向かって投げつけ、その直後先ほど使ったレーザーショットガンの雨を降らせ、とどめに彼自身が槍で攻撃、それを彼女の肩に突き立てたところでブルー・ティアーズのシールド残量が0になった。
試合終了、勝者黒川万。とアナウンスが流れた直後、
「あっけねえな、もうちょっとは楽しめるかと思ったんだけどよ」
と勝者は漏らす。そこに先ほどまでのいたぶることによる愉悦の表情はなかった。
「参考までに伺っておきますが、あなた、エネルギーはどのくらい残っていますの?」
セシリアはあくまで余裕な万に対し問いかける。
「ん?んー・・・ま、70%は残ってる、とだけ言っておく」
それを聞いて愕然とする。確かにこちらの射撃はあたった数の方がどう考えても少ない。だが、そこまでとは。数字だけ見れば圧勝ではないか。
「ま、俺は次を考えますか。そろそろ一夏のISのパーソナライズも終わりかけてるだろうし。連戦でもいいけど・・・さすがにそれはないか、一応ここ学校だしな」
のんきにそういう万。だが、セシリアは相手の言葉にさらに驚愕を露わにした。
「あなた、まさか時間稼ぎで戦っていましたの!?」
「ん、まあそれもある。あれだ、昔のアニメのセリフを借りると、『時間稼ぎでも構わんが、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?』ってやつだ。今回はフラグクラッシュ成功だったけどな」
あっさりと肯定する万にセシリアは落ち込んだ。と同時に目の前の男がわからなくなった。
代表候補生である自分に対し一方的な勝利、しかも時間稼ぎも目的とした状態で。
つまるところ、自分よりおそらくこの男は上を行くだけの技量を持つ。その疑問がさらりと口を走らせていた。
「・・・あなたはどうしてそんなに強いですの?」
「んー・・・、しいていえば必要だったから強くなった、ってとこかな。それに、IS“が”最強なんじゃない。重要なのは搭乗者の技量と意志だ」
って似たようなことを一夏にも行ったんだがな、と万は付け加え、自身はISを解除してじゃあなーと言ってピットに文字通り“飛んで”戻っていった。それをさらりと流し・・・かけ、セシリアは何度目かわからない驚愕とともに叫んだ。
「なぜ生身で空を飛べますのー!?」
むろん、それにこたえられる人物はそこにいなかった。
万がピットに戻ると、そこには白いISのパーソナライズをしている一夏がいた。
山田先生はパーソナライズで忙しそうにしているが、残りの二人は歩いてきた万に気づいて声をかけた。
「よくやった、黒川。上出来だ」
「さすが万だな。すげえよ」
と褒めるのは織斑姉弟。山田先生は集中しているのか声もない。
「いやいや、それほどでもないですよ。余裕って見せていましたけど、さすがは代表候補生、手ごわかったです」
そんなことを余裕のある表情でいう万に千冬は軽く笑っていった。
「よし、次は織斑と黒川だな。黒川、次の試合のタイミングはどうする?」
まさか自分に話題を振られるとは思っていなかった万は面食らうが、すぐに平静を取り戻して答える。
「そうですね、一夏のパーソナライズが終わり次第で」
「ならあと数分だぞ、準備しろ」
「りょーかいです」
そういってひらひらと手を振りながら一度ISを展開して近くの簡易エネルギー補給装置でエネルギーを回復させる万には疲れすら読み取れなかった。
(こいつは、何者だ・・・?)
そんな様子を見て千冬は万を空恐ろしくさえ感じるのであった。
先に出て空にたたずんでいるところに、一夏のIS――白式が飛んできた。それを確認してから万は通信をつなぐ。
「遅かったな、一夏」
「お前が早いんだよ。そもそも、こっちはパーソナライズ?やってたんだからお前よりは遅いだろ」
「ま、それもそうか。じゃあ・・・」
そういって万はその手に棍を展開させる。
「構えろ。いざ尋常に、ってやつだ」
「ああ」
そういって一夏も片手に剣を展開させた。
二人が武器を手に戦いを繰り広げている中、教師二人、そしてセシリアは管制にいた。
「惜しかったな、オルコット」
「気遣いは無用ですわ。少なくとも今のわたくしでは歯が立ちませんでしたもの」
「そういうな。お前は善戦していたと思うぞ。それに、あいつはあまりにも戦いなれている。こういってはなんだが、あまりにも相手が悪すぎた」
「そうですね・・・。そもそも、あのような装備があるということは・・・」
「ああ。おそらくはたいていの装備に何かしらの対策がされていると考えたほうがいいな。そして、それを扱う技量もな。・・・おそらく、現時点で一年最強クラスだろう」
「そんな・・・!」
「おそらく、あいつ自身の頭の回転の良さも影響しているのだろうな。だからこそ、それだけ装備を展開できる。そら、もうそろそろ勝負がつくぞ」
目の前のモニターを見ると、二人のシールドエネルギーの残量がそれぞれ表示されていた。確かに一夏のシールドエネルギーは一気に減っていっていき、0になった。
―――試合終了、勝者黒川万―――
そのアナウンスを聞くと、二人は降下しピットへ戻っていった。
さてさて、今回はこんなところで。
いい感じで切れたからここまで。
別に次の展開が思いつかなかったからとかではない。
ではでは。