エクストリーム魔王狩り転生バトルロワイヤル   作:丸米

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エクストリーム‼国境線上の竜族大決戦編
やられ役負け犬噛ませ犬。無様だなァ敗北者は!ここ掘れワンワンワンワン!


 こんにちは、皆さん。

 私の名前を憶えておいででしょうか。

 

 そうです。

 マルマル・エルドです。

 

 相棒であるリビング・デッド君が魔王様によって破砕され。森の遥か彼方まで投げ飛ばされた哀れな魔法使いです。

 

 あのあと投げ飛ばされた私は何とか浮遊魔法を駆使して命からがら森から脱出する事に成功しました。

 

 さて。

 その後──遠目から森を見ていたのですが。

 

 

 森は燃やされ。

 堤防が破壊され氾濫がおこり。

 そして凄まじい浄化魔法の余波で辺りが輝きに包まれ。

 

 それはそれは──酷い有様でした。

 あんな魑魅魍魎化物鬼畜生の百鬼夜行の巣窟に私は一歩踏み出していたというのですか──

 

 

「ひ、ひ、ひぇ~~~」

 

 こ、こんな所にいつまでもいられません! 

 私は魔王様への憧れをかなぐり捨ててでも、アルドミア魔法学園都市国家に帰らなければなりません....! 

 

 私はあそこの首席です。つまり一番出来がいいって事です。

 あそこはあったかい寝床と、ご飯と、研究室があるのです。いえーい。私勝ち組です! 欲にかられた馬鹿どもは燃やされているか氾濫した川に流されているかのどっちか! やったぜ! 

 

 さあてではでは。さっさとこんな場所から暖かな我が家にレッツラゴー! 

 

「よぉ」

 

 声が聞こえた。

 

 そこには──。

 

「ま、魔王様....」

「お前を生かしておいてよかったぜ本当」

「あ、あの~。その。背後にいる方々は...」

 

 そして。

 魔王様の後ろには──何やら。何処かで見かけた事がありそうな人々がいました。

 

 怪我をしているが、凛とした佇まいの女性。

 これまた怪我をしているが、東方の武道着を着込み笑みを浮かべた小柄な女性。

 そして──エルフの女性。中背と小柄の二人組。

 

「魔王狩りの祭典に参加していた奴二人。そして俺の協力者一人。そんで、よく解らないけど元【聖女】だという女が一人」

「....」

 思い出しました。

 この二人──【原初の勇者の末裔】と【武王】の二人ではありませんか。

 

「はっはっは。この小童がかの魔法学園の首席か。人は見た目によらぬの。まあわらわが言えたことではないがな」

「本当ですよ全く...」

 

【武王】と【原初の勇者の末裔】が話している。

 両者とも、怪我をしている。特に【武王】は酷い有様で。全身包帯を巻き、肌の隅々から打撲痕が見える。

 

 ──え。魔王様、このメンツから生き残った挙句。懐柔までしているの? 

 

 背筋に流れる汗が、妙に冷たい。本当に冷たい。嫌な予感というか。本能の信号がガンガンと身体全体に警鐘を鳴らしている。

 

 

「さあて。アルドミア魔法学園主席の、マルマル・エルドさん」

「は、はひ...」

「俺達を──その魔法学園都市とやらに連れていってもらおうか。話はそれからだ」

 

 

「さあて」

 

 魔王狩りの祭典が終わり、【聖女】も打ち倒し。

 ではその先をどうするべきかを考え──魔王は、途方に暮れていた。

 

 隠れなければならないのは解る。

 解るのだが──隠れどころを見つける事も己の力ではできないだろう。

 

「これからどうすりゃいいんだ」

 

 そう呟くと。

 

「一先ず潜伏先の確保ですね。──魔王様程のお方ですと、隠れるだけでも一苦労です」

「本当にその通りだよ。どうすりゃいいんだ」

 

 はぁ、と一つ溜息を吐いたその時。

 

「.....む」

 

 

【聖女】に打ち倒され、意識を失っていた──【武王】ヤナギ・ソネサキが目を覚ました。

 

「げ」

 

 魔王はその瞬間身構えるが──ヤナギはその様を見て、一つ笑い声をあげる。

 

「そう構えるな魔王。今わらわの気分は最高潮だ。最高の戦いを行い、最良の敗北を味わった。今更お主と事を構える意味はない」

「そりゃあ良かった...」

 

 どれだけ手傷を負っていようとも。この女は──恐らくこの世界でも指折りの戦士。今の自分が勝てるわけもない相手だ。

 

「願わくば──再度【聖女】と戦いたかったが。お主たち、勝利を挙げたのだな」

「まあ、な」

「して」

 

 ヤナギの視線の先。

 そこには──二人のエルフの姿がある。

 

「弓使いのエルフが一人。──もう一人は誰じゃ」

「さあ....? なんか、聖女の中から出てきたんすよ」

「なんじゃ。あ奴、胎児抱えながら戦っておったのか」

「んな訳ねぇだろ」

 

 カガルは、──ウルドと名乗ったエルフの少女を甲斐甲斐しく世話している。

【聖女】の衣服で鮮血に染まっていない部分を裁断し、そこから少女用のワンピースに拵えていた。

 

「ウルド。何処か気分が悪かったりはしないかな?」

「気分は悪くない。でもお腹がすいた」

「ごめんね。今この森には獣一匹、食える野草の一つもない....。保存食の干し肉ならあるが、今はあまり消化に悪いものを食べさせるわけには...」

 

 その様子を。

 ジッと、魔王とヤナギは見ていた。

 

「....姉妹? いや親子かの?」

「何度でも言うが.....あのちっこい方のエルフは【聖女】から出てきた」

「何だそれは」

 

 魔王もヤナギも、うーむと唸る。

 状況がイマイチ掴めていない。

 

 

 その、ウルドというエルフの少女は。

 ──エルフ最大の特徴ともいえる、尖り耳がない。完全に削られ、人間と同じ形状となっている。

 

「.....本当に。【聖女】に勝ったのだな」

 

 そして。

 暫くすると──焼けた森の奥から、【原初の勇者の末裔】のベギム・クスフントが現れる。

 

「そうだよ。勝ったよ。──まあそこの化物の力を借りたがな」

「わらわは貸した覚えはない。わらわの力を上手く利用したのはお主らだ。誇れ」

「....」

 

 

 そして。

 ベギムの視線は──カガルと、ウルドの二人に向けられる。

 

「カガル氏。──この少女は」

「....聖女の素体となった、エルフの子です」

「...」

 

 事情を聞かされていたベギムは、信じられないものを見る目でその光景を眺めていた。

 

 

「....ウルドは、自分の名前以外何も覚えていないのですね?」

「覚えていない」

「そうですか....。さて」

 

 ベギムが来訪し、全員が揃ったところで。

 カガルは──皆に向け、言葉を放つ。

 

「魔王様。──ワタシは幾つか貴方に嘘を吐いていました。ここに謝罪・訂正を行いたいと思います」

「嘘?」

「そう。──ワタシは魔王様に【聖女】の存在について幾つか嘘を吐いていました」

 

 魔王が聞かされていたのは。

【聖女】とは王族で。最強の浄化魔法の使い手で。次期教会の指導者で。教会が持つ最大の戦力であると。ザっと纏めるとそういう情報だった。

 

「【聖女】は王族ではありません。──【聖女】は。エルフの肉体を使って肉体が再構築され、そこに歴代の【聖女】の魂を入れ込んだ──いわば、転生体のようなものだと、ワタシも思っていました」

「へ?」

「でも実態は──歴代【聖女】の魂を入れ込み、その【聖女】の肉体の外装を纏うような形で【聖女】は作られていたようです。──ほら。聖女の肉体が陶器のようになって、そこから崩れていったでしょう?」

「....ああ。そうだったな」

 

 そう。

 何やらカガルの魔法によって【聖女】から光の煙のようなものが上がって。カガルの合図の下それを魔王の魔力で消した瞬間──【聖女】の肉体は崩れ去り。そこからこの少女が生まれてきた。

 

「要は。このウルドというエルフの少女の肉体の中に別の魂を入れ込んで。そして別な肉体を纏わせていた──という感じになるでしょうか。元はエルフでした」

「別にいいけどよ。なんでわざわざ嘘を吐いたんだよ」

「元々の素体がエルフだと知れば。──ワタシが同族を復讐で殺そうとする冷酷なエルフだと思われるかもしれませんし。そして魔王様が【聖女】に対して容赦が生まれてしまう可能性も考慮しまして」

「ああ。成程...」

 

 確かに、初手で「復讐って楽しいですよね」トークをぶちかます女だ。そこに同族殺しまで入れ込まれたらもう役満に近い。

 

「その話が本当ならば.....隠さねばならないのは魔王だけ、とはいかないようですね」

 

 ベギムが、ううむと唸りながらそう呟く。

 

「【聖女】の素体に選ばれるほどの逸材など、そうそう見つからないでしょうし。間違いなく教会の人間も取り戻しに来るでしょう」

「だろうな。──要はこのウルドなるエルフに、もう一度あの魂を入れたらまたあの怪物を生める訳だろう? 取り返そうとしない理由がない」

「....」

 

 カガルもまた同じ可能性を考えていたのだろう。

 少しばかり表情が歪む。

 

「.....皆はこれからどうするんだ? 俺は当然逃げ回り雲隠れするつもりだが」

「.....どうするかな。今更私は祖国に戻るつもりはない」

 

 魔王が尋ねると。

 真っ先にベギムがそう答えた。

 

 彼女の武具は【聖女】に破砕され、もう行方不明だ。

 彼女が勇者の末裔であるという根拠が──戦いの中で紛失した。

 

 魔王も狩れず。武具も失った彼女が──祖国でどういう扱いを受けるのか。知らぬ彼女ではないのだろう。

 

「ワタシも潜伏先を何とか見つけなければなりませんね。──暫くは、この子を守らなければならない」

 

 ウルドの頭を撫でながら、そうカガルは言う。

 

「そして──ウルドには身を守れる術を身に付けて欲しい。魔法と、何かしらの武器術を教える時間が欲しいですね。これから教会に狙われるというのならば、猶更」

 

 カガルの方針が決まると。

 ヤナギもまた口を開く。

 

「わらわは己の力不足を痛感した。修行と学習と、そして手練れとの戦いの機会を所望し旅をしようかの」

 

 全員分の答えを聞き。

 よし、と魔王は呟く。

 

「おっしゃ。ならヤナギ以外全員、一先ず”潜伏先が欲しい”という目的はあるな。ベギムも祖国に戻らねぇなら、住処は欲しい所だろ」

「まあ、そうだな...」

「そして。──ヤナギも、修行が出来て、程々に戦える環境があるならそこに来てくれるって事だな」

「まあ、そうじゃの」

「なら、一つ聞きたい。──クルデアの教会の影響力が少ない国って何処だ?」

 

 そう聞くと。

 

「....クルデアと国交があまりなく。尚且つ教会の信者が少ない所か」

 

 ベギムは魔王の問いに少しばかり考え。

 そして、「あ」と一言呟き──結論を導いた。

 

「....アルドミア魔法学園都市国家」

「魔法学園都市国家?」

「ああ。──魔法による産業によって経済活動が行われ。そしてそれら魔法産業を司る各団体が各々が連盟して作り上げた学園──アルドミア魔法学園が中心にある城塞都市だ」

 

「....魔法による産業?」

「そう。要は魔法によって経済活動が行われていて。そして魔法の研究機関を作り上げている。金持ちの魔法使いが運営している都市だ。──ここはクルデアの影響力が極めて少ない」

「なんで?」

「クルデアは異種族を嫌うが、アルドミアは異種族出身者を優遇している。エルフオーク竜人ドワーフ何でもござれ。──なので、基本的にアルドミアはクルデアと仲が悪い。クルデア出身の学園在籍者はほぼいなかったはずだ」

「へえ。成程ね。アルドミア魔法学園都市....」

 

 その言葉を聞き。

 そう言えば、とカガルは言う。

 

「確か一人いましたよね。──この祭典に参加していたアルドミアの魔法使い」

 

「ああ。いたな。ゴーレム使いの魔法使いだったな。──確か学園の首席かつ。産業連合体からゴーレムの設計技術を提供した事で、既に相当な謝礼金と研究費を貰っているとか、なんとか...」

 

 ゴーレム使い。

 

 そのワードに、魔王の脳裏に何かが浮かんでくる。

 

 

「そいつって──陰気が立ち込めて、言葉遣いが若干怪しい女じゃなかった?」

「ああ! いたなぁ。沼地の砂利よりもじめじめした女だった覚えがあるぞ。ずっと一人でぶつぶつ呟いておってなァ」

 

「カガル。──俺が最初に戦ったゴーレム使いの女がいただろ。アイツで間違いないか?」

「間違いありませんね」

 

 よし、と魔王は呟く。

 

「あの女の性格はよ~く解っているぜ。森から投げ飛ばしてやったが。アイツはすぐに国に逃げ帰るよりも、この付近で森の中覗いている可能性の方が高い。──探そうぜ」

「.....アルドミアに行くんですね」

「あたぼうよ。──はい。一緒にアルドミア行く奴この指とーまれ!」

「指には止まらないが私も行こう。一度行ってみたいとは思っていたんだ」

「ワタシも行きますかね。確かに、現状を考えるとベストな気がします」

「わらわも行くぞ。お主らといれば、教会の強者共と戦える機会に恵まれるやもしれぬからな。──共に行くのならばこの指を握ればいいんだな?」

「ぎゃあぁああああ! いてぇ! いてぇぇぇぇぇぇ! やめろ折れる潰れるゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 ニコニコしながら、魔王が立てた人差し指を握り込むヤナギは、さながらプレス機の如き万力であった。

 固まり切ってないコンクリに触れて痕が残る要領で、魔王の指先にはヤナギの握力の痕跡がくっきりと残っていた。

 

「では魔力探知をしながら──そのゴーレム使いを探しましょうかね」

 

 こうして。

 

 魔王・エルフ×2・勇者・武道家──という。何とも不思議なパーティーが、出来上がったのであった。

 

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