チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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日間ランキング入りしていたことに、読者のみなさまに感謝感激です。
てな訳でどうぞ。


学園祭で勝負?ないない

二学期は本当にイベントが多い気がする。

学園祭に修学旅行……女尊男卑が蔓延るこの世界でなかったら、普通に楽しめていただろうに。

 

「あ、二人とも机はもうちょっと右に移動させて」

 

リオンの指示の下、ダニエルとレイモンドの二人が如何にも高そうなテーブルをミリ単位で配置していく。

オレ達が三日間で開かれる学園祭でやるのは喫茶店。メンバーはオレとリオン、ダニエルとレイモンドに加え、リビアとアンジェ嬢の計六人だ。

 

「おい、エド!そのティーセットは高いから大事に扱えよ!」

「分かってるさ。内装も含め、かなり金をかけてるんだからな」

 

リオンの怒鳴り気味の要望に、幾つものティーセットが乗せられているトレイを運んでいるオレは何てことのないように返す。

この空き教室の内装は業者を呼んで本格的に改装したからな。当然、茶葉や菓子も高級なものである。

ちなみに金はオレとリオンで折半した。曲がりなりにも金はあるからね。

 

「二人とも、この喫茶店にお金をかけすぎじゃない?ここまでやる生徒は少ないと思うよ」

「かけすぎなもんか。オレとリオンはやり過ぎなくらいが丁度いいんだよ」

 

レイモンドの至極当然の疑問にオレはそう返す。

何せオレとリオンは悪い意味で目立ってるからな。適当にすれば間違いなくボロクソに叩くだろうからな。

それ以外の理由ももちろんあるけど。

 

「それに学園祭にはオレの最近できたツテで来賓が来るしな。子爵家以上の人間だから、相応の催しじゃないと失礼だろ」

 

学園生活の傍ら、領主として働く羽目にもなったからな。放課後はダンジョンより交渉テーブルに付いてる時間が長いし、多忙だからオレ主催のお茶会も開けなくなっている。元々無駄な出費だったから気にしてないけど。

 

そんな多忙な日々だったから、自然とツテが多くなる。数日前にあの鉱山からレアメタル等も新しく見つかって、削岩機モドキや運搬用のエアカーが活躍してるしな。

その削岩機モドキはパイルバンカーを作る際にできた副産物だけど。

 

「来賓って……完全に傘避けだろ」

「否定はしない」

 

リオンの呆れたような呟きにオレは特に否定することなく頷く。

元々は学生ゆえに交渉時間が確保できなかったオレに対し、向こうが提案してきたことなのだ。ご子息達も一緒に来るということで、オレは今回の件を了承しただけだ。

 

「今回の交渉は製造法が確立、量産可能となった鋼材の売買だからな。魔導伝導率が既存の鋼材より高いから、詳細に決める必要があるんだよ」

「そんな重要なことを学園の喫茶店でやるな」

「そこは大丈夫だ。どちらかと言うと今回は内容の確認だからな」

 

今回の交渉は向こうが提示した条件をオレが頷くか否かだからな。新しい鋼材が手に入るか否かだから、向こうも無茶な要求はしない筈だ。

もっとも、オレの勘で信用できる相手しか選んでないけど。商人から伯爵に成り上がったオフリー家は黒い噂から真っ先に除外したし。

にしてもオフリー家もホントしつこい。再三断ってもしつこく食い下がってるし。

 

「本当にエドワードは黒いな」

「うん。明らかに周りからの仕返しの傘避けにする気満々だね」

 

ダニエルとレイモンドまで冷めた視線をオレに向けてきた。

 

「ちなみにどちらも娘さんを連れてくるぞ。しかも婚約者なし」

「俺、エドワードと友達で良かったよ」

「僕もだよ。こんな千載一遇のチャンスを与えてくれるだなんて」

 

変わり身早いなおい。一応、息子も来るけどな。

 

「てかエドワード。この相場で大丈夫なのか?」

「相場より少し安い程度だから問題ない。どんな料金設定でも、向こうはイチャモン付けるだろうから、良心的な安さにした方がマシだ」

 

オレらが開く喫茶店は、間違いなくイチャモンとクレームの嵐になるからな。お偉いさんが喫茶店に来てくれるのは本当にラッキーだよ。

そんなこんなと話してると、メイド服に着替えたリビアとアンジェ嬢が空き教室に入ってきた。

……お腹や腰周りを引き締めるデザインだったから、胸が本当に強調されているな。うん。

リオン、グッジョブ!!

 

「変じゃありませんか?」

「ちゃんと似合ってるさ。サイズの方も問題なさそうだな」

 

心配そうに自身の格好を聞いてきたリビアに、オレは正直に答える。

実際、ダニエルとレイモンドも顔を赤めてるし、リオンも同意するようにウンウン頷いているしな。

 

「リオン。胸を強調しすぎているが、本当にこれで良いのか?もっと落ち着いた感じが良いと思うが?」

 

そう言葉を口にするアンジェ嬢は恥ずかしがる様子もなく、堂々とした佇まいでメイド服のデザインについてリオンに意見してくる。

意外だな。こういった服とは無縁と思っていただけに。

 

「アンジェは着慣れてますね」

「これとは違うメイド服を着ていたからな」

「アンジェが?」

「行儀見習いとして王宮で二年過ごしたからな」

 

リビアとアンジェ嬢のそのやり取りで、アンジェ嬢がメイド服に抵抗がない理由が分かった。

 

「ひょっとして礼儀作法とかの関係ですか?」

「似たようなものだ。特に私のような立場は色々と、な」

 

メイドは作法に厳しいし完璧だからな。見習いメイドとして過ごせば、嫌でも作法が身に付く。

それもかつての婚約者の為に頑張ったのに、全否定されたからな。本当に同情するよ。

 

「それよりもリビアも似合ってるじゃないか。初々しい感じが実にいい」

「私もちょっとこの制服は気に入っています」

 

アンジェ嬢がリビアに抱きつき、抱きつかれたリビアも少し照れながらも嬉しそうにしてる。

 

「何て尊い光景だ」

 

リオンから洩れたその言葉に、オレはウンウンと頷いた。

この光景は本当に尊いよな。二人には、今後も心のオアシスでいてほしいな。

 

「いいよね」

「いい。これが本当に学園の女子なのか?俺たちは夢を見ていないか?」

 

レイモンドもこの光景の尊さに同意し、ダニエルは夢である可能性を疑うほどに感嘆している。

確かにここの女子は酷いからな。男はATM扱いだし。

後、出し物はクラスではなくグループ単位。だから今回オレ達の出し物を手伝わせることで、例の件はチャラにするという契約で二人は参加している。

 

「リオンたちに制服はないのか?」

「ありますよ。来賓の対応もあるのでしっかりとしたやつを」

 

アンジェ嬢の疑問にオレがそう答える。

何せ格の高い燕尾服だからな。馬子にも衣装となるだろ、うん。

 

「来賓?誰か来られるのですか?」

 

リビアが疑問を露に聞いてきたので、オレは先ほどリオン達に伝えたことをリビアとアンジェ嬢にも伝えた。

 

「エド……完全に学生たちの傘避けとして利用してるだろ」

 

アンジェ嬢は頭痛を堪えるように項垂れた。

そうは言っても賭けの件は借金までした彼らの自業自得だしなー。特に貴族は安易に折れたら図に乗るし。

 

「だからこんなにもお金をかけたのですか?」

「オレの方はそうだな。リオンは完全に趣味だけど」

 

なんせリオンのお茶にかける情熱は本当に凄いからなー。唯一の娯楽と言っていいくらいに。

 

「確かに。リオンの茶狂いは指折りの域だからな」

「失敬な。俺は茶狂いじゃない。師匠のお茶に惚れ込んでいるだけだ」

「どうだか。実際、約束すっぽかしてその師匠とお茶を買いに行っただろうが」

 

リオンの反論にオレが先日の件を含めてツッコミを入れた瞬間、ダニエルとレイモンドは冷めた眼差しをリオンに向けた。

 

「しかも先にお茶会開いたら、幽霊のような表情で詰め寄ったし」

「当たり前だろ。せっかく二人の為に買った茶葉を無駄にするような真似をしたんだからな」

 

あー、ハイハイ。ソウデスネー。

 

「あはは……リオンさん。その……お茶はいいんですけど、お菓子が美味しくてその―――」

 

リビアが少し言い淀んでいると、アンジェ嬢がリビアに抱きついた。

 

「私はふくよかな方が好きだぞ、リビア。もう少し肉付きがよくても大丈夫だ」

「私もアンジェみたいにスタイルがよくなりたいです」

「嬉しいことを言ってくれる。だが、リビアも綺麗な脚をしているじゃないか」

「そ、そうですか?」

 

リビアとアンジェ嬢は本当に仲が良いな。身分を越えた友情は美しきかな。

ダニエルとレイモンドがオレとリオンに嫉妬の視線を送ってくるけど知らん。そもそも二人とは付き合えないから。身分がおもくそ違うし。

 

いや、リビアの場合はおバカファイブとくっ付けられるから行けるかもしれないが、リオンの今までの言動からして危険な橋を渡ることになる。

そんな事をさせるくらいなら、いっそ今のままでいい。友人を危険な目に合わせるのは、望ましくないからな。

 

「リオンッ!ちょっと話を聞きなさいっ!」

 

そんな空気を破るように、涙目浮かべたジェナさんが獣人の奴隷と共に空き教室に入ってきた。

 

「……何の用?邪魔だから帰ってほしいんだけど」

 

見事なまでのリオンの塩対応。まあ、絶対に面倒ごとだからあまり乗り気しないから当然だけど。

取り敢えず、ジェナさんの用件を聞くことにはなったが。ダニエルとレイモンドの二人には席を外してもらったが。

 

「実は……親友と喧嘩しちゃったの」

 

何でもジェナさん曰く、領地から資源が発見されて将来金持ちになる子爵家の跡取りの取り合いになったとのこと。

 

「あ……愛とかないんですか?その男性が好きとか……」

「貴族の結婚にそんなもの必要ないわよ!大事なのは甲斐性!」

 

本当にジェナさんの発言は酷い。完全に男をATM扱いしてやがる。てか、この前の決闘の一件でちっとも懲りてないな。こりゃ。

……ん?ちょっと待て。

 

「その資源ってレアメタルじゃないですよね?」

「?そうだけど?意外と男子の間でも持ちきりだったかしら?」

「……オレの予想が正しいなら、ジェナさんが横取りしようとした立場では?」

 

オレがそう聞いた瞬間、ジェナさんは露骨に顔を逸らした。そんなジェナさんの態度にリオンが眉を顰めた。

 

「おいエド。どういう事か詳しく教えろ」

「実はその鉱山の開発にオレの方にも声がかかってな……採掘向きの機械を開発してたから、それの購入取引の際に結婚の話題も出たんだよ」

 

この世界の採掘方法は基本、ピッケルやツルハシの原始的なものだからな。削岩機モドキは作業効率を上げる素晴らしい機械だから、鉱山関係でも話は持ちきりだ。

鉱山の仕事は重労働だからな。力もいるし体力も使う。人員の確保自体も大変だから、それらをカバーする機械を欲するのは当然の流れだ。

 

まあ、その削岩機モドキは悪用防止の為にわざと重く作ってるけど。鉱夫は大抵が空賊等の罪人だし。

ちなみにウチの鉱夫……元空賊連中はウチの職人達に懐柔された。美味しい飯と遣り甲斐のある仕事で見事に改心した。今は何名かは新しい浮遊船の建造に携わっている。

 

「その話で出た相手がどう聞いてもジェナさんじゃなかったので、もしかしてと聞いたら案の定だった」

「なるほど。そりゃ姉貴が百パー悪い。はい、解散」

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

完全に助ける価値なしと判断したリオンは話を切り上げようとしたが、ジェナさんは未練がましく食い下がった。

 

「あんたが私と親友の間に話を付けてくれたら解決すんのよ!腕っぷしだけはあるんだから、大事な姉を助けなさいよ!」

「大事?辞書で調べて来い」

 

ジェナさんの懇願をリオンはバッサリ切り捨てた。

 

「だって、あんたって強いじゃない?だからちょっと親友と男子にお姉さまをよろしくって言ってくれればいいのよ」

「完全に脅しだろ!」

 

確かにリオンの言う通り脅しだな。それも失敗に終わる類の。

今回の件、ジェナさんが全面的に悪い上に嫌われ者のリオンが脅せば印象が更に悪化するだろ。リオンだけでなく、リオンの身内であるジェナさんご自身も。

 

「そんなの駄目です!」

「―――何で?」

 

あまりの酷さにリビアが口を出した瞬間、ジェナさんは冷たい目でリビアを睨み付けた。同時にミオルという奴隷もリビアを睨んでくる。

 

「え……えっと……」

 

そんな二人の睨みにリビアが畏縮していると、リオンがリビアを庇うように前に立った。

 

「俺の答えを言うぞ。絶対に嫌だね。それからあんまりリビアを苛めるなよ。何かあればアンジェが黙ってないし、エドも腹黒い方法で報復しに来るぞ」

 

おい、リオン。オレを何だと思ってやがる。やるとしてもちょーっと盛った話を周りに流すと本人に告げるだけだぞ。

 

「……ああ。リオンの姉だろうが容赦はしないぞ」

 

アンジェ嬢が睨みを効かせてそう告げると、ジェナさんはバツが悪くなった表情をする。

 

「わ、悪かったわよっ。それにしても役に立たない愚弟ねっ」

 

ジェナさんはそう言って立ち去ろうとしたので、オレも一つ言っておくか。

 

「ジェナさん。今回の件は始めから無理ですよ。仮に実行できたとしても、リオンの悪印象が悪化して間違いなく針の筵になりますから」

「…………」

 

それがトドメとなったのか、ジェナさんは意気消沈して教室から出ていった。ミオルはオレ達を一瞥してからジェナさんの後を追ったけど。

……あの無表情、かなり怪しいな。何か企んでなきゃいいけど。

 

「ちょっと怖かったです」

「気にする必要はない……とも言えないな。身分の差はどこにでも付いてくるからな」

 

今回の件はリビアがつい口を出してしまったことが原因だからな。平民に口出しされて、平然としている貴族はそうはいない。

オレとリオンは前世からの価値観、アンジェ嬢は憔悴していた時に寄り添ってくれたから身分の差を気にしなくなっているが、大抵の貴族は上下関係を重視するものだからな。

 

「身分の差……ですか」

「ああ。こればかりは環境や育ちに起因するからな。オレ達と今後も一緒にいるなら、その辺りは覚悟しといた方がいいぞ」

 

オレがそう言うと、リビアの表情が曇る。明るい話じゃないから当然だけど。

 

「それでも何かあったら相談くらいはしろよ?手酷くやられたら、きっちり対応してやるから」

「エドさんが対応すると言うと不穏に聞こえますね……でも、心配してくれてありがとうございます」

 

リビアはオレの言葉に少し引きつつも、それでも笑みを浮かべて感謝を口にした。

その笑顔を見たオレは少し照れ臭くなって、露骨にリビアに背を向けてしまったよ。

 

「大変だ、リオン!エドワード!」

「と、隣の空き教室に!」

 

そのタイミングでダニエルとレイモンドが慌てたように空き教室に入ってきた。

 

「そんなに慌ててどうした?隣の空き教室で何かあったのか?」

「実は……いや、説明するより実際に見た方が早い!」

 

妙に焦った感じの二人に連れられるように、アンジェ嬢に留守番を任せて件の空き教室に向かうと……

 

「暇があれば来てくれ。歓迎するよ。喫茶店“プリンセス”をよろしく」

「は、はい!」

「通います!三日間、全力で通います!」

 

クソ殿下がチラシを配って女子にキャーキャーされてる現場に遭遇した。

あー……なるほど。隣でクソ殿下達が喫茶店を開くのね。

 

「喫茶店を隣同士に並べるなんてあり得ないだろ」

「リオンとエドワードへの当てつけかな?実行委員にも、決闘の時に賭けに負けた人がいたし」

 

ダニエルとレイモンドがオレとリオンに視線を向けるが、この程度の嫌がらせなら別に構わないさ。だって儲ける気はないんだし。

クソ殿下はこちらに気付いて意味ありげな笑みを向けてくるが、オレは気にせずスルー。

 

「バルトファルトにファーレンガルド。お前達も喫茶店を出すらしいな。俺達も喫茶店を開くつもりだ。良かったら来てくれ。―――歓迎するぞ」

「厚意は感謝しますが無理です。当日は来賓の対応に忙しくなるので」

 

オレが勝ち誇った表情をしているクソ殿下にそう返すと、クソ殿下は間抜けな顔となった。大方、予想していた反応と違うことに肩透かしをくらったんだろうな。

 

「来賓の対応?お前達の喫茶店にか?」

「有名貴族の子爵以上の方達がね。息子と娘さんも来ますから、隣の喫茶店に行く暇はないんですよ」

 

仁辺もなくそう返すと、クソ殿下は少し不機嫌な顔となる。嫌味を言ったのに嫌味で返されたら、面白くないだろうからな。

 

「お、お茶とお菓子のセットで百ディア!」

 

クソ殿下から受け取ったチラシを見たリビアが、そのチラシの内容に驚いて目を回し、そのまま倒れそうだったので咄嗟に支える。

チラシの内容を確認すると……ぼったくりレベルの料金設定だった。

 

「ん?安すぎたか?だが、これぐらいがちょうどいいとマリエが言うからな。本当はもっと稼ぎたいんだが」

「……何れくらいでだ?」

「この十倍くらいは」

 

…………。

 

「それを聞いた後だとマリエがマトモに見えるな」

「そうだね。初めてアイツがマトモに見えたよ」

 

お茶とお菓子のセット一つで千ディア(日本円での十万)とか、ぼったくりのレベルを越えてるぞ。もはや新手の詐欺だ。

 

「貴族様ってすごいんですね……」

「いや。殿下達は例外だから。絶対に参考にしない方がいいぞ」

「そうだぞリビア。こいつらがおかしいだけだから」

「随分と余裕だな……だが、今度は負けないぞ」

 

一体何を競う気なんだろうな。売上?人気?元からどうでもいいことだ。

クソ殿下はそんなオレの呆れに気付かずに立ち去ろうとするも……

 

「お、おい。何で付いてくるんだ!?」

 

オレ達はクソ殿下達の喫茶店がどんな感じなのか気になったので付いて来ていた。

いやだって、お互い喫茶店をやるんだからどんな感じなのかは把握しとかないと。隣同士だから被ってたら面倒だし。

そんな感じで喫茶店“プリンセス”の内装を確認すると……

 

「ホストクラブじゃねーか!」

 

リオンがその内装を視界に入れて早々、ツッコミを入れていた。

空の酒瓶を戸棚に並べるとか、全然喫茶店らしくないじゃん。女子受けは良いだろうが。

 

「バルトファルトにファーレンガルドか」

「偵察かい?相変わらずコソコソと汚いな」

 

クリスとブラッドがこちらに気付き、ブラッドに至っては嫌味を飛ばしてくるがオレは然程気にせずに口を開く。

 

「いや。単にどんな内装なのか気になっただけだ。張り合う気は更々ないし」

「……その余裕が本当にムカつくね」

「だが、バルトファルトが悔しがる顔が見れただけでも価値があるな。やはりマリエの提案に乗って正解だった」

 

あー、このホストクラブのような内装はマリエの提案なのか。クソ殿下もそうだが、クリスとブラッドの格好も完全にホステスのものだし。

 

「今度の学園祭、勝つのは俺達だ」

「いや勝負しないから。そもそも此方は学園祭に来る来賓の対応に忙しくなるから」

「なら、その来賓は僕達が対応して上げようか?君達より余程上手く対応できるよ?」

「アホ。その来賓はオレの取引相手だよ。交渉や談話だから、女子受け狙いのこの喫茶店は論外だ」

 

オレがブラッドのアホ発言にそう返すと、二人して苦々しい顔になった。

 

「ファーレンガルド……やはりお前は汚いな」

「外部の力を借りるだなんて……本当に恥知らずだね」

「向こうからの提案に対して酷い言い様だな。……いや、悪い。元から酷かったな」

 

露骨な金稼ぎをしようとしている事を棚上げしている馬鹿二人の文句を、オレは嫌味を込めて謝罪する。二人してコメカミに青筋浮かべてるけど知らね。

そもそも学園祭で露骨に稼ごうとする時点でどうかと思うし。こういった催しは本来は交流を深める場なんだからな。

 

(本当に何なのよ、あのメガネのモブは!嫌味に堪えるどころか逆に嫌味で返してくるし!あのモブ野郎とは違う意味で相当腹立つわ!!)

 

向こうでドレス姿のマリエがめっちゃ睨んでいたが、オレは無視してホストクラブを後にするのであった。

 

 

 




「アイツらのスカシ顔は本当にムカついたけど、マリエが悔しがる顔を見てそれも吹き飛んだわ」
『エドワードの黒さは相変わらずジルク以上ですからね。対応も早い上に打つ手も比較的有効ですから、マスターも少しは見習ってください』
「いや無理だって。あんな鬼畜悪魔な対応は俺の心がもたないよ。それにエドは面倒臭い性格だし」
『ヘタレですね。エドワードが鬼畜悪魔で面倒臭い性格なのには同意しますが』
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