チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


行いの結果

「ジルク~ッ」

「大丈夫ですよ、マリエさん。私はこの通り無事です」

 

医務室で大声でわんわんと嘆いているマリエを、ベッドの上となった包帯だらけのクズジルクが宥める。

ジルクの怪我は肋骨が折れて腕の骨にもヒビが入り、治癒魔法込みでも完治には三日はかかる大怪我だった。

つまり、レース出場は不可能である。

 

「エアバイクのレースは賞金も高かったのに!わたじのじょうぎんがあああああ!」

 

……どう見てもクズジルクを心配してなかった。狙っていた賞金がオジャンになって泣いてるだけだった。

そんな中、リビアがオレに話しかけてきた。

 

「あの……何で治療に三日もかかるのですか?私ならもっと早く治療できるのに」

「それは普通じゃないから。リビアは本来の基準を学ぼうな」

 

リビアは天然の気があるのか、自身の治癒魔法の異常さに気づいていない。

力を振るう際はその力がどれ程のものか自覚しておく必要がある。強すぎる力が争いを呼ぶように、闇雲に振るえばそれだけ危険を招いてしまうのだ。

 

「そ、そうなのですか……?」

「そうなの。ここで披露しても悪目立ちするだけだから、静観してような」

 

第一、クズジルクにそこまでする義理もないし。こんなクズの怪我治して僻み妬みが悪化するのは割に合わないしな。

 

「わ、わかりました……」

 

リビアはクズジルクに対して申し訳ないと思っているのか、僅かに罪悪感を滲ませながらオレの言葉に頷いた。

良心が痛むのは分かるが、自覚がない内に披露するのは得策じゃない。本当に緊急時なら仕方ないが、今回はそうじゃないからな。

 

「しかし、何故レースの参加者達は示し合わせたようにジルクに妨害を……?」

「出場者の情報を軽く確認したけど……共通点が何処にも見当たらないのよ。本当に何でこんな事を……」

 

一年のまとめ役であるアンジェ嬢とエアバイクレースの責任者として此処に来たクラリス先輩は、今回の事態の原因が分からずに首を傾げている。

一応、件のレースに出場していた二人にも確認したが、まったく心当たりがないと本気で首を傾げていたので、間違いなく今回の妨害とは無関係なのだろう。

まあ、その二人も周りから妨害されたので無関係なのは証明されているが。

 

「本当よ!寄って集ってジルクを攻撃するなんて!あいつら全員に慰謝料を請求してやるわ!」

「私の事でそこまで怒って……」

「流石マリエ……」

 

マリエの憤慨にクズジルクとクソ殿下はうっとりしているが、マリエはさっきから金の話しかしてないぞ?

恋は盲目とは言うがこれは酷すぎだろ。実際、元婚約者二人は呆れたように揃って溜め息を吐いてるし。

 

「どちらにせよ、代役をたてるしかないか……」

 

アンジェ嬢が顎に手を当ててそう呟くと、実行委員の一人が口を開いた。

 

「それなら、バルトファルトかファーレンガルドのどちらかを出場させれば良いのではないでしょうか?」

 

……は?

 

「ええ!優秀な男子はほとんど他の競技に出てますから!」

「どちらも成績は選手レベルですから、十分代役として果たせますよ!」

「そうです!アンジェリカ様の評判にも関わりますし、ここはどちらかが代役として出場すれば、万事解決ですよ!」

「「「では、今すぐ手続きの準備とバイクの手配をして参ります!!」」」

 

トントン拍子で話が進み、勝手にオレかリオンのどちらかが代役になる前提で委員の人達は医務室から出ていった。

 

「「「「…………」」」」

「……そういう事か」

 

その展開に誰もが唖然とする中、オレは得心がいったように呟いた。

 

「おいエド。何か分かったのか?」

「……今回のジルクへの妨害は、オレかリオンのどちらかを代役として出場させるのが狙いだったんだろうな」

 

問いかけてきたリオンに対して、オレはほぼ正解であろう推測で答えを返す。

オレのその推測に誰もが理解できずに首を傾げる中、オレはその理由を口にした。

 

「その動機も、喫茶店への仕返しが思うように出来なかったからだろうな。来賓の存在で大々的な仕返しが出来ずに鬱憤が晴らせなかったから、人気の高いエアバイクレースで晒し者にしようと、足並み揃えて団結したんだろうな」

 

実行委員にもオレとリオンを逆恨みしている奴がいたし、成績もやろうと思えば把握できるから不可能ではない。

早い話、オレ達への仕返し目的であの暴挙に出たという事だ。

 

「……そういえば、件の選手達はあの賭けで大負けした人達ばかりだったわ」

「そう考えれば、追い上げ時にジルクを妨害しなかったのにも納得がいく。始めからジルクを負傷させて一位にする気だったのか」

 

オレのその説明で府に落ちたのか、クラリス先輩とアンジェ嬢は頭痛を堪えるような仕草で肯定した。

 

「つまり、私はその仕返しに巻き込まれたということですか」

「端的に言えばそうなるな。ボコっても良心が然程痛まない相手、というのもあるだろうが」

 

一年の選手は他にもいた筈だし、そいつらが仮病でも使えば代役の仕立てあげは出来た筈だ。

つまり、クズジルクがボコられたのは一種の自業自得だ。平気でルール破るクズだし。

 

「なら、責任取ってどちらかが出場して優勝しなさいよ!そして迷惑料として賞金全部寄越しなさい!!」

 

マリエは今回のクズジルクの怪我がオレとリオンのせいと分かると、代わりに出て優勝して来いと要求してきた。ご丁寧に賞金も全部渡せとも。

 

「馬鹿を言うな。エドの推測が正しければ、二人は絶対に出すわけにはいかない」

 

アンジェ嬢はそう言ってオレとリオンを庇うように前に立つも、その庇いは実質無意味なんだよな。

主にオレのせいで。

 

「……なあ、エド」

「言うなリオン。オレもこの状況は本当に予想外だったんだからな」

 

だって昨日、リオンが公爵閣下に会って件の空賊退治の交渉面での助力をお願いしたばかりなんだもん!借りを作ったばかりで恩を仇で返す真似をしたら、普通は怒る。オレなら絶対に許さないし!

 

「……俺が出場します」

「!?リオン、同情なら……」

「同情なんかじゃない!これは男の意地なんだ!」

 

その借りのせいでオレが代役に出てもリオンに対する心象は悪化してしまう。つまり、リオンが出場する以外に道はもう残されていないのである。

まさか保険の為の裏工作がこんな形で跳ね返ってくるとは……マジで最悪だよ。チクショウ。

 

「リオンさん、ひょっとして無理して……」

「違う!男には、例え危険と分かっていてもやらないといけない時がある!今がまさにその時なんだ!」

「リ……リオン……そうか。そこまで言うのなら……」

 

こうして主にオレのせいで、リオンは危険なエアバイクレースのジルクの代役として出場する事が決まるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

エアバイクがしまわれている格納庫にて。

 

『まさに策士、策に溺れるですね。空賊退治の保険でこのようなしっぺ返しが来るとは、私も予想外でした』

「まったくだよ!それがなければお前に押し付けられたのに!」

 

ルクシオンの辛辣な言葉とリオンの文句がオレに突き刺さる。だって、実際その通りなんだし。それでも言い訳や反論はするけど。

 

「さっきも言ったが、オレもこんな事態になるとは思わなかったんだ。いや、今までの行いの結果と言われたらそこまでだけど」

『キャプテンとリオンへの恨みが根強いという事だろう。晒し者にしないと気が済まないのは、精神が未熟な証ではあるがな』

「学生の精神としては普通だっつーの」

 

前世持ちのオレとリオンを他の奴らと比べても無意味だろ。精神年齢が普通に違うんだし。

 

『その割にはどちらも未熟のようですがね』

「「未熟で悪かったな!」」

 

確かに精神年齢的にいい歳したオッサンにしては大人気ない自覚はあるけどさ!

 

「それよりルクシオン。用意されたバイクは大丈夫なのか?」

『エドワードの予想通り、エンジンにトラブルが発生する仕掛けが施されていましたね。ですがすぐに取り除けますよ。マスター』

 

……予想してたとはいえ、本当に嫌われてるなぁ。逆恨みって本当に面倒。

まあ、確実に晒し者にしたいからこんな小細工をするとは予想していたから、仕返しの準備は整えてあるけど。

 

「マジで俺、嫌われすぎじゃない?」

『嫌われ具合ならエドワードとクソ腕輪と同レベルなので安心してください』

『抜かせ、クズ装置』

 

そう言ってハーツとルクシオンは互いの間で火花が飛び散るかのように睨み合う。本当に犬猿の仲な相棒達だよ。

 

「まあ、その細工の痕跡はわざと残しとけばいいだろ。フルスロットルで噴かしたら、こうなったという言い訳を通す為にな」

 

オレがそう言うと、リオンはドン引きしたような表情となった。

 

「本当に腹黒いよな……違法改造の責を嫌がらせした奴に擦り付けるとか」

「先にエアバイクを弄ったのは向こうだ」

 

まあ、どのみちリオンの不正行為には目を瞑るけど。クズジルクの不正を流したんだから、代役のリオンがズルしても誰も文句は言えないよね。仮に言ってもその持論をぶつけるか、責任を擦り付けるだけだし。

 

悪い笑顔を浮かべながらそう考えていると、オレとリオンへと近づく足音が聞こえて来る。

作業中のルクシオンを隠しつつそちらに身体を向けると、そこにいたのは優勝候補筆頭であるクラリス先輩の取り巻きの一人だった。

 

「あれ?優勝候補の先輩じゃないですか。どのような要件で?」

「ああ、実はな……そのエアバイクに……」

「ひょっとしてエンジンの細工についてですか?それならもう対処して解決してますよ」

「なんだ。もう気付いていたのか」

 

どうやら先輩はエアバイクの細工に気付いて忠告しに来たようだ。

 

「にしてもジルクの代理か……経緯はお嬢様から既に聞いているが、本当に災難だったな」

「そう思うなら手加減してくれません?どうせ周りから袋叩きにされてレースどころじゃないと思うんで」

「申し訳ないがそれは出来ない。俺のバイクの才能を買って支援してくれたお嬢様の信頼を裏切れないからな」

 

リオンの冗談であろうお願いに、先輩は苦笑しながらもクラリス先輩の信頼を裏切れないと言って断る。

その心情は良く分かるので、特に問題ないんだけど。

 

「おおう。クラリス先輩は本当に人望が厚いですね」

「実際厚いぞ。何たって、ジルクにクラリス先輩と話し合うように真っ先に直談判しに行ってたし、例の決闘騒ぎの時も田舎貴族のオレに土下座しそうな勢いで頭を下げてたし」

「ファーレンガルド男爵、その話は……」

 

オレの持ち上げに気恥ずかしくなったのか、先輩は少しおろおろしたように止めようとしてくる。

 

「本当に男気がありますね、先輩。アンジェの取り巻き達に見習わせたい位ですよ」

「バルトファルト男爵まで……からかわないでくれ……」

 

ガタイの良い先輩がここまで照れ臭そうにするのも新鮮だな。

まあ。おどけた話はここまでにして、少し真面目な話をするか。

 

「そういえば先輩は用意されたバイクの細工に気付いてましたよね?」

「ああ。バイクを整備した奴がニヤニヤしてた上に、エンジンに細工したと呟いていたからな」

「それならどんな細工をしたかは知らない事が通りますね。仮に異常な加速をこのバイクが出しても、それは()()()()()()()()()()()ですからね。先輩には、いざという時にその証言をしてもらえたら助かります」

 

オレが非常にいい笑顔で先輩にお願いすると、先輩は顔を引き攣らせてドン引きしていた。

 

「堂々と不正行為を相手に擦り付けるとは……ジルクの野郎より陰湿だな」

「否定しませんよ」

 

実際、陰湿かつ最低な行為だし。あくまで相手のやらかしを利用してるだけだけど。

 

「まあ、それくらいなら別に構わないさ。ファーレンガルド男爵には、本当に恩を感じているからな」

 

先輩はオレの要望を了承すると、そのまま立ち去っていった。

 

『手痛いしっぺ返しを食らったばかりなのに、全然懲りてないな。キャプテン』

「オレやリオンに跳ね返る分は問題ないさ」

「俺の扱い酷くね!?」

 

ハーツの呆れに対するオレの返しにリオンが食いつくが、オレは特に気にせずにリオンに顔を向ける。

 

「リオンだって周りに喧嘩を売りまくっているだろ。実際、また自身に大金賭けたんだからな」

「お前だってオレに大金賭けてるだろ」

 

リオンのツッコミが厳しいな。事実だけど。

決勝レースに出場する選手達は皆、エアバイクの操縦技術が高い。ラフプレーを仕掛けるのは確実だから、技術でも劣っているリオンが学園が用意したエアバイクで優勝する可能性は皆無と大勢が思っている。

 

つまり、リオンは大穴。当たれば大儲けだ。そして、こんな馬鹿げた仕返しを考え、小細工を仕掛けた連中にも大ダメージだ。

ちなみに儲けの三割は今回の迷惑料としてリオンに渡すけど。

 

『仕返しの為に賭け事をするとは、キャプテンの性格は本当に悪いな』

『一々癪に触りますが同感です。マスターも性格が悪いですからね』

「お前ら、本当は仲良いんじゃね?」

 

何だかんだで意見が一致しているルクシオンとハーツに、リオンは本当は気が合うんじゃないかと指摘する。

 

『ついにマスターの頭がおかしくなりましたか。失礼。元からおかしかったですね』

『おぞましい寝言は寝て言え』

 

その言葉は、辛辣な言葉で返されたけど。

 

「それじゃ、頑張って一位を取ってこい。オレは残りの連中への仕返しの準備をしてくるから」

「……お前は本当にえげつないよな」

 

リオンはもはや呆れているが、安全の為にもこれは必要なことだぞ。直接間接でも陥れようとすれば、地獄を見るという牽制の為にな。

そうして残りの連中への報復の準備を終え、代役のリオンが出場した決勝レースの結果は……

 

「ほら。約束の優勝賞金の三十万ディアだよ。良かったね~、マリエちゃん♪」

「ぐぎぎ……」

 

リオンがきっちり優勝を果たした。賭けで儲けた大量の白金貨をマリエに見せびらかして。

いやー。リオンが大穴だから倍率が凄いのなんの。おかげで喫茶店の元手が回収できた上に大量のお釣が出たよ。

リオンへの迷惑料を払っても儲けが勝ってるしな。

 

無事にリオンが優勝したので、オレは遠慮なく仕返しを開始。まずは細工の件を流してやった。細工した連中は大負けした奴らから袋叩きにされ、散々な目に合っている。

 

実際に細工されてたし、エンジントラブルの細工も意図的に残してたから、細工で下手を打って逆に手助けしてしまった―――という認識になっている。

いやー、金の恨みは本当に怖いな。細工した連中が否定しても、全然信用されなくなったし。

 

「ついでに今回の代役事情も流したからな。もう、女子の怒りが凄くて感心しそうだったよ」

 

もちろん、この事態を招いた連中にも仕返ししてやった。私的な理由でクズジルクを出汁にしたと匿名で流したら、関係者全員調べ上げられた上に、男子は総スカン、女子は白い目で見られるようになったよ。

ホント、イケメンフィルターが酷い上に賭けで大負けした女子は煽動が簡単だったよ。少々複雑だったけど。

 

「あ、悪魔……悪魔がいる……」

「……貴方は人の皮を被った悪魔ですか」

 

何故かマリエだけでなく、腹黒のクズジルクにまで引かれた。ちびっこエルフもオレから露骨に距離を取ってるし、解せぬ。

 

「いや、普通にドン引きするぞ。お前は本当に容赦がないぞ」

 

リオンでさえドン引きしてるが、良くも悪くも目立っているんだ。安易に手が出せないようにするには、やり過ぎな位が丁度いいんだよ。

握手には握手。拳にはロケットランチャーがオレのポリシーだ。

そんな感じでオレはリオンと共に医務室を後にするのだが……

 

「エド君!リオン君!」

「?」

「クラリス先輩?」

 

オレとリオンを探していたらしい、息を切らせたクラリス先輩と遭遇した。

そして、クラリス先輩から決勝レースの間に起きていた事を伝えられるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

クラリス先輩から話を聞いたオレは、リオンと分かれてある人物を探していた。

話の内容からして外にいると判断して探していると、その人物は中庭のベンチで項垂れていた。

 

「ここにいたのか」

 

オレの声に彼女―――リビアは優れない表情で顔を上げる。クラリス先輩から話を聞いて予想してとはいえ、相当参っているようだ。

 

「…………エドさん」

「クラリス先輩から話は聞いたよ。またあの女に酷く言われたようだな」

 

オレのその言葉にリビアは答えることなく顔を俯ける。

クラリス先輩の話では、あの屑女がまた難癖を付けてリビアとアンジェ嬢に罵声を浴びせたそうだ。その結果、リビアは耐えきれずに逃げ出し、アンジェ嬢は追いかけもせず、屑女の挑発に切れて乱闘騒ぎとなったと。

そんな再び落ち込んでしまったリビアの隣にオレは腰かける。

 

「エドさん。私は……どうしたらいいのか分からなくなりました」

 

そう口にするリビアの声は弱々しい。まるで暗い夜道を一人で歩いて不安になっている子供のようだ。

 

「私はアンジェと友達になれていましたか?……なれたと思いますか?」

 

友達になれていたか……ね。

 

「どうだろうな。友達の基準なんて人それぞれで曖昧だし」

 

何せ前世では何でも言うことを聞くのが友達とかいう、都合の良い解釈をする人間が存在していたみたいだからな。

 

「人それぞれ、ですか……」

「ああ。前にも言ったが身分の差……環境や育ちが違えば、そこから生じる価値観も違ってくるんだ。そういったものは関係を築く上で良くも悪くも付いてくるんだよ。それが今だったってだけの話さ」

 

実際、アンジェ嬢も似たような考えがあったのは事実だろう。身分とそれに伴う責任から来る思考ではどうしても上下を意識せざぬを得ないし、示しがつかないと周りにも舐められる。

 

「やっぱり……私とアンジェは友達じゃなかったのでしょうか……ようやく学園で同性の友達が出来たと嬉しかったけど……今日も私のせいでアンジェが責められましたし……それに、アンジェにとって……私は人間じゃないって……」

 

……クラリス先輩から聞いた話と微妙に違うな。確か、屑女の暴言に言い返せず、ぶちギレたんだったよな?

一応、確認しとくか。

 

「それ、アンジェ嬢がそう言ったのか?」

「それは……」

 

オレの質問にリビアは言い淀む。その反応からして、やはり肯定とも取れる態度になってしまっただけか。

 

「オレが聞いた話じゃ、アンジェ嬢はあの女の暴言にキレて取っ組み合いになったそうだ。そもそも、話の経緯を聞く限り、向こうの逆ギレだしな」

 

何せ学園祭初日の失態絡みだしな。完全に向こうの自業自得だし、リビアが原因ですらないし。

 

「むしろリビアがオレ達に怒ってもいいんだぞ?貴族事情に巻き込んでいるんだし。逆にオレらが謝るべき立場だろ」

「巻き込んでいるって……むしろ私が首を突っ込んで迷惑を掛けて……!」

「なら、こうして互いに申し訳ないと思ってるなら大丈夫じゃないか?」

 

オレのその返しにリビアは虚を付かれたのか、少し呆気に取られた表情となる。それもすぐにオレの言い分を理解してか、恥ずかしそうに顔を赤く染めていく。

 

「ま、お前がどうしたいのかは自分で考えればいいさ。オレに出来るのは事実確認とオレの持論を口にすることだけだけどな」

「……エドさんって、面倒見が良いのか悪いのか分からない時がありますよね」

「オレが関わる問題を解決しているだけだよ。人の問題を全部他人の手で解決したら、本当の意味で解決しないだろ」

 

顔を逸らしたリビアの言葉に、オレはそう言葉を返す。オレはあくまで自分の問題を解決してるだけ。その方法が腹黒いとも悪魔とも言われようが、きっちり解決する。さすがに他人の問題は手助け程度だが。

ましてやこの問題はリビアとアンジェ嬢の問題だ。距離を取るかそれでも近くにいるかは本人達が決めることだ。オレが決めることじゃない。

 

「……もう一度、アンジェと話をしてみます。すぐには無理かもしれませんが……」

 

そう決めたリビアの顔は不安が残っているが、それでもアンジェ嬢と話し合うことを選んだようだ。

 

「焦らなくていいさ。ちゃんと自分の気持ちに向き合えれば、少なくとも後悔はしないだろうからな」

 

オレはそう言ってリビアを後押しする。屑女もまた悪目立ちしたから大人しくしてるだろうし、その間に屑女の実家を空賊絡みで叩き潰せば、周りも落ち着くだろうしな。

オレは日が暮れるまでリビアの傍に座り、その帰りを見送るのであった。

 

 

しかし後日。自身の見通しの甘さを最悪の形で痛感する羽目となる事を、この時のオレは予想すらしていなかった。

 

 

 




『今回のエドワードの仕込みによって、恨みの矛先は幾ばくかはマスター達から逸れました』
「……本当にエドが怖い。俺でもあそこまでしないぞ」
『マスターは本当に甘いですね。少しはエドワードを見習うべきです』
「あんな悪魔なやり方を見習いたくねぇよ!俺の心がもたんわ!!」
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