連休初日。王都の港にて。
「若頭。指示通り、ヘビーアーマー状態のゼクトールとファイターアーマーが仕舞われたコンテナを持ってきました」
「助かるよシオンさん。ゼクトールとコンテナは一度港に下ろしてからパルトナーに乗せ変えてくれ」
ハンマーとライフルを背負い、パイロットスーツに身を包んだオレはゼクトールと装備を運んできてくれたシオンさんに指示を出す。
ちなみにゼクトールのヘビーアーマーは決闘用ではなく本来の仕様だ。左肩のアーム付きの複合シールドと最新式のライフルに加え、戦艦に搭載されるような大口径の砲撃兵器もマウントされている。上腕には内蔵されたミサイルランチャーモドキもある。
それにしてもパルトナーは本当に大きいな。七百メートル級なのに、すべてにおいて既存の船を上回っているからな。
こんな偽装船を作れるなんて、ルクシオンは本当に規格外だ。
『憎き敵を褒め称えるなキャプテン』
(悔しかったらもっと凄いところを見せろよ。お前は正規の魔装より劣っているんだからな)
本来の魔装は巨大化と飛行がデフォのようだし。それらは無くてラッキーだけど、巨大兵器と張り合うならそれに見合うものを見せろよ。
『その言葉、いずれ後悔させてやる。それよりキャプテン。気づいてるか?』
(気づいてるよ)
ハーツの言葉に内心で頷いて視線を向ければ、依頼者であるカーラがリビアに荷物持ちをさせていた。
カーラはそんなオレに気づいてすぐにリビアから自身の荷物をふんだくったが。
「ファーレンガルド男爵にバルトファルト男爵ー。こっちですよ~」
カーラはにこやかな笑みで挨拶してくるが、リビアの表情は明らかに暗い。
……一体何があった?
「女って怖いな。エド」
いつの間にか近くに来ていたリオンがカーラの変わり身の早さに戦慄しているが、オレはカーラの変わり身の早さよりリビアの方が気になる。
昨日分かれた際は幾ばくか表情が優れていたのに、今はその真逆だ。
「……アンジェとの仲直りに失敗したのか?」
リオンがリビアの様子から推測を口にするが、憔悴しきったような表情からしてそれとも違う気がする。
そんなリビアの後ろから、よく知った顔が目に入った。それも二人も。
「げっ」
リオンもその二人を視界に収めたことで、心底嫌そうな声を洩らす。オレは声こそ出さなかったが、露骨に顔を顰めてしまった。
そんなオレとリオンの反応に、ブラッドとグレッグの二人も嫌そうに表情を歪める。服装もパイロットスーツだから、良い予感が全然しない。
一先ず、ゼクトールと装備一式がパルトナーへと乗せ終えたので出発したのだが……
「俺の大事なパルトナーにチンピラを乗せるとか……最悪だ」
「オレも同感だ。まさかバカ二人も一緒とは……」
「誰がチンピラでバカだ!バルトファルトにファーレンガルド!」
「本当に君達は嫌な奴だな!」
オレとリオンの心底嫌そうな呟きに、乗船したグレッグとブラッドは怒りを露に噛みつくが、バカとしか言い様がないだろ!
「ご、ごめんなさい……!実はブラッド様にも声を掛けていたんです」
カーラが申し訳なさそうにそう謝るが、本当は欠片も思ってないのは手を取るように分かる。本当に思っていたらブラッドはともかく、グレッグは連れて来ない筈だからな。
「……彼女は元婚約者の寄子でね。助けを求められたから手を貸すことにしたのさ。報酬も出るし、その空賊は賞金首だしね」
「それを聞いて、俺も参加したんだ。マリエの助けになるからな」
そんなオレの心情を知らずにブラッドとグレッグはそう答えるが、あまりに酷いお花畑ぶりにオレは再びうんざりする。
何せ、空賊と戦うのにグレッグは槍一本。ブラッドに至っては丸腰だ。どう見ても空賊が操る鎧に踏み潰される姿しか想像できんわ。
「それで他の三人は?」
「いても迷惑だけど、あの三人は辞退したのか?」
「違うよ!三人は実家に呼び戻されたんだ!」
そうか。それは良かったよ。足手まといが追加されなくて。
「説教されると分かって実家に戻るなんて、アイツらも真面目だよな」
「ちなみにマリエは用事があるから来ない。危険だからどの道来させなかったけどね」
危険?このバカ二人は本当に危険を理解してるのか?戦闘経験豊富な集団を相手にするのを本当に理解してるのか?
一応、確認しとくか。
「取り敢えず、お前ら二人はどうやって空賊と戦うんだ?飛行船相手にどう立ち回るつもりだったんだ?」
オレがそう聞くと、ブラッドとグレッグは互いに顔を見合わせた。うん。その反応で何も考えてなかったのが良く分かったよ。
「お前ら二人は名前だけ借りるから何もするな」
「そうだね。本気で何もしないで欲しいね。わりとマジで」
「「なんだと!?」」
オレとリオンの要求にバカ二人は噛みつくが、何も考えずに依頼(罠)を受けたんだから本当に大人しくしといて欲しい。
ブラッドは百歩譲って仕方ないにしても、グレッグは脳ミソまで筋肉でできてるのか?本当に何も学んでないな。
「そ、そんな事言わず、皆で力を合わせて頑張りましょう!ほら、オリヴィアさんもお願いして!」
「…………」
カーラの言葉に、オレの隣に座っているリビアは何も答えない。完全に心、此処に在らずだ。
「……チッ」
そんなリビアの反応にカーラが舌打ちする。本当はこの依頼は罠だから連れて行きたくはなかったが、今のリビアは放っておけない状態だったからな。
……何事もなければいいんだが。
――――――
……まったく。あの馬鹿者達め。余計な気を回しおって。
昨日、お父様に二人が受けた依頼の事を伝えたら、リオンからとっくに話が通っていた。それも罠と見抜いた上で、家が出てきた際にお父様の名前を使う許可まで貰っていた。間違いなくエドの入れ知恵だろうな。
最初は分かっていながら何故依頼を受けたのかとも思ったが、向こうの動機の予想も聞き、勝算もあると理解した今では確かに早い内に対処した方が最善だろう。昨日の件もあるしな。
私に話を通さなかったのも、リビアとギクシャクしていたから気を使ったのだろうな。
そう考えると無性に腹が立つが、リオンにも発破を掛けられたからな。リビアと仲直りして、帰ってきたアイツらに嫌味の一つくらいは飛ばしてやるか。
そんな馬鹿者二人に内心で文句を言いながらリビアの部屋に向かったのだが……
「な……何だこれは……!?」
そのリビアの部屋の扉には落書きと無数の傷が付けられていた。
私は嫌な予感を感じながらも、扉をノックする。
「リ……リビア、私だ。アンジェリカだ。……いないのか?」
声を掛けても返事はもちろん、物音すら返ってこない。
……リビアは大丈夫なのか?
「あら。アンジェリカじゃない」
背後から不快な声が掛けられる。後ろへと振り向けば、やはりオフリー家の娘とその取り巻き二人がいた。
「……またお前か」
「随分と嫌われたものね……成り上がりがそんなに嫌いかしら?」
「成り上がり?随分と分不相応な事を口にする。成り上がった者達に失礼極まりないぞ」
オフリー家の娘の嫌味に、私も嫌味で返す。既に地獄に片足を踏み込んでいる相手だが、これぐらいはしないと私の気も収まらないからな。
「成り上がりに失礼?それってあの二人に対してかしら?」
「何が言いたい?」
私はそう問い返すが、大体の予想はついている。そして、彼女の口から出たのは予想通りの言葉だった。
「アンジェリカ……大事な取り巻き達と可愛いペットはちゃんと繋いでおかないと駄目よ。死んじゃったら悲しいわよね?」
……本当に理解していないな。昨日の代役騒動の顛末の噂は耳に届いている筈なのにな。
「言いたい事はそれだけか?」
「あら?随分と冷たいわね?やっぱり公爵家は周りを人間として見てないのかしらね?」
昨日までなら再び頭に血が昇っただろうが、今は然程イラつかない。近い内に多くを失う相手の戯れ言など、相手にする価値もないからな。
だが、次の言葉でそれも吹き飛んだ。
「ちなみにペットの方も出かけたわよ」
「……出かけた?」
「ええ。カーラの領地についていったわ。あの二人も本当に物好き―――」
その瞬間、私はこの屑の首掴み上げ、壁に叩きつけた。
「ぐっ!?」
「貴様、リビアに何をした?」
聞かなくても分かってる。部屋の扉の状態からして、手酷くやったに違いない。
「く……苦し……」
「お、お嬢様!」
首を閉められて苦しむ屑に、取り巻き二人が助ける為に近寄ろうとするが、私が睨むと怖じ気ついたように後退りした。
「は……離しなさいよ……!落ち目の家が偉そうに……っ」
落ち目?なら、理解させてやる。お前達の崩壊は目と鼻の先である事をな。
「お前はリオンとエドを舐めすぎだ。カーラの依頼がお前の罠であることはとっくに見抜いていたぞ」
「なっ……!?」
私のその言葉に屑はもちろん、取り巻き二人も怯えたように息を呑む。そんな彼女達に、更なる現実を叩きつける。
「それでもあの二人が依頼を受けたのは、お前達を叩き潰す為だ。将来の禍根に成りうる可能性を、この機会に刈り取る為にな」
私のその言葉で、取り巻き二人は自分たちの状況を理解したのか、歯をガチガチと鳴らして身体を震わせ始める。当然だ。罠に嵌めたつもりが、逆に自分たちが追い詰められていたんだからな。
「分かるか?お前は絶対に敵に回してはいけない奴らを敵に回したんだ。そして―――」
私はそこで屑を締め上げから解放する。
「お前は、私も敵に回した」
冷たい眼差しと底冷えする声でそう告げてやるが、屑はまだ理解できていなのか私を睨み付けてくる。
……本当に救えないな。ここまで言っても、まだ自身の置かれた状況を理解できていないとはな。
「処遇に関しては公爵家に委ねていたから、幾ばくか情けをかけるつもりだったが……もう容赦はしない。文字通り、お前の全てを叩き潰す」
私はそう告げ、その場を後にする。屑はまだ喚いていたが、取り巻き二人はその場にへたりこんで頭を抱え、身体を震わせて泣いている。
いくら後悔しようがもう遅い。二人の見せしめに私も便乗させてもらうからな。
そうなると、私も向かった方がいいだろう。かなりの無茶となるが、ここまでされて黙っているつもりはないからな。
……こうなる事も、予想できていただろうか?
――――――
……本当に性格が悪いな。リオンのやつ。
「はい。俺の勝ち」
「ウソだろ!こんなのインチキだ!」
「何連敗したと思ってるんだ!こんなのありえない!」
またしてもリオンとのカードゲームに負けたグレッグとブラッドはインチキと喚くが、リオンが最初からまともにやるわけないだろ。
そもそもオレが参加しなかった時点で察しろ。
にしてもカジノエリアまで作ってあるんだな。本当にパルトナーは至れり尽くせりだ。
「……なぁ。お前の元婚約者ってどんなタイプだ?」
ふと気になったのか、グレッグがブラッドの元婚約者について聞いてきた。まあ、今回の依頼の寄親だから気になったというところだろうが。
「……うーん。珍しいタイプの女子かな」
確かにあの屑女は伯爵家以上の家柄の中では珍しいな。僻みとやっかみで性格が捻曲がったんだろうけど。
「婚約が決まる前に数回顔を合わせただけ。典型的な政略結婚だよ。実際、数える程度しか話したことがないし、性格も趣味も知らないからね」
「何で婚約したんだよ?噂でも評判が悪いのばかりだし、メリットなんて一つもないぞ」
「メリットはあったさ。だから僕は彼女と婚約したんだよ」
グレッグの当然の疑問にブラッドはそう答える。
ブラッドの実家……フィールド家はクソ公国との国境を任されている。そこにオフリー家が外交で公国との交渉を成功させ、その見返りに婚約を打診したという訳だ。
「!そうか!ファンオース公国との外交か!」
「ようやく気づいたのかい?もっとも、その時は父も成功するとは思ってなかったけどね」
「成功した時は騒ぎになったからな。あの黒騎士に怯えなくてすむってよ」
黒騎士……クソであるファンオース公国の最高戦力。単機で幾つもの船を沈め、鎧も数え切れないほど討ち取った最強の騎士だ。その強さは王国の“剣聖”でも勝てないだとか。
その黒騎士もたぶん、逆恨みパワーで動いているだろうな。二十年前の戦争も、自身の行いが跳ね返った結果なのに一方的に恨んでるみたいだし。
「?ファーレンガルド。何でそんなに顔を顰めているんだ?」
ああ、露骨に顔に出てたか。まあ、昔にあれこれ強奪しておいて賠償金を踏み倒した相手に好感なんて持てないからな。
「エド。連中が来たぞ」
何の前触れもなくリオンが空賊が来たことを告げた。ルクシオンからの報告だな。
「意外と早かったな。数は?」
「飛行船が二隻だ」
二隻……五人を相手にするには十分な戦力だろうな。普通は。
「じゃあ、さっさと倒して終わらせるぞ」
オレはそう言って席を立ち、リオンも近くに置いてあったライフルを手に取って戦闘準備に入る。
ちなみにグレッグとブラッドの二人は……椅子に座ったままだ。
「お前ら、一体なんの話をしているんだ?」
グレッグのその言葉に、オレとリオンはずっこけてしまった。
「おまっ!?マジで言ったのか!?」
「敵がこっちに来てるんだよ!道中で襲撃される可能性も考慮してなかったのかよ!?」
オレとリオンのその言葉に、バカ二人はようやく気付いたような顔となった。
「そ……そうか!」
「なら俺達も戦わないと!だが、何をすればいいんだ!?」
「本当にお前ら酷すぎんだろ!?」
言われるまで本当に気付かなかった上、やることさえ分かっていないグレッグの言葉にオレはもう呆れるしかない。
「最初に言った通り、お前ら二人は船に待機してろ。いいな!?」
「何でだよ!」
「全然理解してない足手まといだからだ。ボケ!」
グレッグの言葉にオレはそう返すと、リオンと共に部屋を出ていく。
「ルクシオン。アロガンツの起動を」
『はい。マスター』
「ハーツ。ゼクトールに搭乗してすぐに魔装を部分展開だ。腕と脚、顔の右半分にな」
『了解だ。キャプテン』
互いの相棒に指示を出し、オレとリオンはそれぞれの機体へと搭乗。パルトナーの甲板へと姿を現す。
『既に空賊の船から、鎧が数機出撃してるな』
「飛行船の位置もパルトナーの後方上部……前方の大砲を意識しているな」
ま、その配置も無意味だけどな。
オレはゼクトールにマウントされた砲撃兵器を展開。腰だめに構えて狙いを飛行船に定める。
そして魔装によって正確に狙いを定めて発射。凄まじい反動と轟音と共に空賊の飛行船に直撃した。
船にダメージを与えたオレの砲撃に周りの空賊の鎧達の動きが止まる中、リオンのアロガンツがお構い無しとばかりに殴り飛ばし、空賊達をどんどん沈めていく。
『この化け物どもがぁあああああ!!』
そんな雄叫びと共に、空賊の一機が此方に近づいてくる。
オレは慌てることなく左肩に装備されたシールドの鋒をその鎧の頭部に向け、内部に仕込んであった先端が鋭い杭を衝撃と共に押し出す。
シールドの内蔵武器―――パイルバンカーで頭部を打ち砕かれた鎧はその衝撃で吹き飛び、パルトナーの甲板の上を転がる。
少しして、空賊達は白旗を上げて投降の意を示した。勝ち目がないと理解したのだろう。
「じゃ、さっさと全員無力化して締め上げるか」
『今さら締め上げる必要があるか?』
「言質はとっておかないとな。どこまで繋がりがあるのか、明確にしとかないと」
そういう訳で楽しい楽しい尋問タイム。最初の尋問相手はザ・海賊のような見た目をした隊長格のオッサンだ。
「じゃあ、聞かせてもらおうか。誰からの指示でオレらを襲ったのかを」
「グッ……!」
オッサンは悔しそうに表情を歪めるも、答える様子はない。さてはしらばっくれるつもりだな。
「まあ、別にいいよ。どうせ後ろ暗いことをやっている伯爵ご本人さんからの指示だろうし」
「ち、違う!オフリーの娘じゃない!」
あっさり墓穴を掘ったな、このオッサン。本当に隊長格か?
「あれ~?オレはオフリー伯爵とも、その小娘とも言ってない筈なんだけどな~?」
オレが嫌味たっぷりでそう言ったら、オッサンは口を滑らせたと気付いて冷や汗を掻き始めた。そんなオッサンの前で、オレはわざとらしく近くにあったライフルを手に持ち、ボルトアクションを行う。
「もう全部見当が付いてるんだよ。だから、お前が知ってることをすべて話せ。少しでも長く生きたいだろ?」
オレの底冷えするような声と冷めた眼差しに、オッサンは屈して全部白状するのであった。
――――――
夕方。ウェイン家の実家がある港にて。
「はー……日が落ちるのも早くなったなぁ……」
「この状況で何を落ち着いているんだよ!」
「一々騒ぐな。騒いだところで状況は変わらん」
「お前ら、凄いのか駄目なのか全くわからないぞ!」
ウェイン家の兵士達に銃を突きつけられている事実に、ブラッドとグレッグは喚いているが、オレとリオンからしたら予想の範疇だ。
「僕たちは空賊じゃありません」
「なら、なぜ空賊の船を連れている!?新手のスパイか!?」
「スパイじゃありません。こんな粗か様なスパイが本当に存在するわけないじゃないですか」
「そんな口八丁で我々は騙されないぞ!」
本当に埒が明かないな。そもそもそっちの娘さんも一緒に来てるのにさ。
その後、ブラッドと面識があったウェイン家の当主がこの場に来たので銃は下ろされたのだが……
「どうして僕たちは囲まれたんだい?そっちの娘さんに助けを求められたから駆け付けたのに」
「カーラが?」
ブラッドの言葉にウェイン家当主は一体どういう事かとカーラに顔を向けると、カーラは慌てて弁明を始めた。
「ち、違うの。私が相談したらこの子が大きく考えすぎて……!」
……カーラの奴、リビアに全責任を押し付けてうやむやにする気か?
それならもう、容赦はしない。お前にも地獄を見てもらう。
そう決断したオレは、事情を求めるウェイン家当主とリビアの間へと立った。
「そちらの娘がオレとリオンに今回の空賊退治の依頼をする為に、リビアに紹介して欲しいと相談したんだ。それでオレ達は駆け付けたんだが?」
「……失礼だが、君は誰かね?」
「エドワード・フォウ・ファーレンガルド。こっちはリオン・フォウ・バルトファルト男爵だ」
オレがリオンの紹介と共に自己紹介すると、ウェイン家当主は驚いた表情となる。そして、すぐに申し訳なさそうな表情となった。
「これはとんだご無礼を男爵様!し、しかし我が領地は依頼をするほど困ってはおられません。救援を求めたのは本当でしょうか?」
「嘘でわざわざここまで来たと?ロストアイテムまで持ち出したのに?」
オレがそう言って睨むと、ウェイン家当主は気迫に呑まれたように息を呑む。それでもすぐに言葉を紡いでいく。
「も、申し訳ありません。こちらも何がどうなっているのか……」
「なら自分の娘に聞けばいいでしょ。こちらも遊びではないんでね」
オレはウェイン家当主に無情に言葉を返すと、今度はカーラに視線を向ける。その視線にカーラは怯えながらも、苦しい言い訳をしようとする。
「わ、私は……その平民が……!」
「そうやって誤魔化す気か?もう面倒だから正直に言うが、こっちは今回の依頼の裏はとっくに見抜いているんだよ」
オレの決定的なその言葉に、カーラは絶望に叩き落とされたような表情となる。ようやく、自身が置かれた状況を理解できたようだ。
「だから、これが最終通告だ。このまましらを切るか正直に全部話すか……どっちかを選べ。もし誤魔化すようなら……黒幕共々お前達も叩き潰す。男爵二人に名門貴族の子息二人……貶めようとして無事に済むと思うなよ?」
ドスを効かせたオレの最終通告に、ウェイン家当主は完全に理解できないながらも非常にまずい状況に陥ってると悟ったのか、決死の表情でカーラに詰め寄った。
「カーラ!一体どういうことなんだ!?お前は男爵様達を騙したのか!?」
「あ……ああああああ~~~~!!!」
両肩を鷲掴みしたウェイン家当主の厳しい質問に、カーラは答えることなく、その場に崩れて泣き叫ぶのであった。
(エドの迫力が凄いな。まるで主人公のようだな……もうエドに任せておけば、俺はモブでいられるんじゃね?)
『無理ですね。マスターとエドワードは良くも悪くも一緒に見られているので』
(……エドって実は疫病神?)
『マスターの自業自得です。むしろ、目立ちたいのではないのかと疑うくらいですよ』
(好きで目立ってねぇよ!!)