チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


ダンジョンは三人で

ホルファート王国の貴族は元を辿れば冒険者。それはファーレンガルド家も例外ではない。

故に学園では先祖の苦労を知るために冒険者登録をし、ダンジョンに挑むという授業が行われている。一応授業なので安全はある程度配慮されてるので余程でなければ死ぬことはないだろうが。

何故こんな話をしているのかって?

 

「ダニエル……レイモンド……!あいつら逃げやがって……!」

「全くだ……こんなことなら意地でも巻き込むべきだった……!」

 

そのダンジョン探索の授業で絶賛問題が起きているからである。

 

「ご……ごめんなさいエドワードさんにリオンさん。アンジェリカさんがどうしても参加してほしいって……」

「いや、オリヴィアさんは何一つ悪くない。悪いのは逃げたあいつらだ」

 

オリヴィアさんは申し訳なさそうに謝ってくるが、リオンの言う通り悪いのは逃げたダニエルとレイモンドだ。

ちなみにウチのクラスの女子のトップ―――アンジェリカ嬢への挨拶は一応無事に成功したとのこと。公爵令嬢が目くじらを立てることでもないと判断すれば、周りの女子も積極的にいじめはしないだろう。

 

後、願うことならオレもこの場から逃げたい。だって……今この場にいるグループはイケメン五人衆が中心のメンバーだからだよ!!

命の危険と隣り合わせのダンジョンに挑むとはいえあくまで授業。本職の兵士や騎士の護衛は無粋とされている。

なので冒険者として成功したリオン、特待生のオレとオリヴィアさんが肉壁としてこのグループに強制参加となってしまった。ああ、胃が痛い。

 

「それでは皆さん、班を作ってください。ちょうど三十人ですので六人の班を五つほど」

 

先生の音頭で班決めが開始されるけど、大体組むメンバーは決まっている。

 

「取り敢えずオレやリオン、オリヴィアさんは同じ班で確定だろ。バラけるのは自殺行為だし」

「俺はそれでいいぞ」

「あ、はい!私もそれで!」

 

下手にバラバラにしたら、一人でダンジョンの中を進む羽目になりそうだし。

オレとリオンは冒険者として経験があるから最悪一人でも何とかなるが、オリヴィアさんは違う。冒険者登録したのはこの学園に入学してからだし、戦闘での知識も経験も不足している。なので一緒に行動した方が安全なのだ。

 

「いい加減にしろ!」

 

突然の怒声にオレはもちろん、リオンもオリヴィアさんもビックリして声がした方へと顔を向けると、そこには怒りで顔を真っ赤にしたアンジェリカ嬢と汐らしくビビっているマリエがいた。

え?何でマリエは呼び捨てなのかって?何となく敬う気に慣れないからだ。本人を前で口に出す時はさすがにさん付けするが。

 

「アンジェリカ。そこまでにしておけ」

「殿下!この者の我儘をお許しになるのですか!?」

 

ユリウス殿下とアンジェリカ嬢が口論する間にもマリエはユリウス殿下にくっついてるな。完全に挑発してるだろ、あれ。

 

「あれ、絶対に分かっててやってるだろ。二人が婚約者同士なのは周知の事実なのに」

「えっと……エドワードさん?それってつまりどういうことです?」

 

オリヴィアさんのその言葉に、オレは思わず転けそうになった。いや、普通に分かるだろ!?

自分の婚約者にあんな露骨にアプローチしてたら、アンジェリカ嬢でなくても普通に頭にくるぞ!オリヴィアさんは微妙にどこかずれてるのか!?

 

「なぁ……あのマリエって女、何かおかしくないか?オリヴィアさんは何か知ってる?」

 

リオンもアンジェリカ嬢とマリエの状況を不審に思ってか、オリヴィアさんに何か知らないか聞いてる始末だ。

 

「え?ええと……変というか……最近いじめが私よりも激しくなっているみたいです」

 

いじめがオリヴィアさんよりも激しい……ね。

周りのヒソヒソ話からしても、ユリウス殿下以外にも距離を詰めている男子がいるみたいだし。ある意味当然なんだけど……

 

「やめろ!」

 

それもユリウス殿下の一喝で止まったけど。

 

「俺達はマリエと組む。後は適当に編成してくれ」

「し、しかしそれでは人数が……」

「二度も言わせるな」

「は……ははは、はい!」

 

おーい殿下。最低限のルールは守ろうよ。王族の肩書きで強引に意見を通すなよ。

 

「アンジェリカさん。あんまり殿下を困らせないで頂きたい」

「全くだ。学園にまで外の関係を持ち込むなよ、イライラするぜ」

 

グレッグとジルクの二人は不機嫌そうにアンジェリカ嬢に苦言を呈したけど、普通逆だよな?聞けばユリウス殿下はお茶会にもマリエを招待したみたいだし。

おもいっきり婚約者からないがしろにされてるんだ。アフターケアもされずに放置されてんだから誰だって元凶に文句を言いたくなるだろ。

それを諌めるどころか助長するとか……本当にアンジェリカ嬢に同情するよ。

まあ、これ以上はどうしようもないのでダンジョンの方に集中するけど。

 

「見てくださいっ!見つけちゃいました♪」

 

ダンジョンに潜って早々、オリヴィアさんは嬉しそうに手に入れた魔石を見せてくる。

 

「おめでとう。こいつで百ディアは確実だな」

 

そんなオリヴィアさんにリオンは祝福の声を上げる。ちなみに一ディアは百円。つまりこの魔石は一万円だ。

それも長く続かず、オリヴィアさんは思案する表情になったけど。

 

「あの……ダンジョンって不思議ですよね。宝箱もあると聞きますし、誰かが用意しているみたいです」

 

誰かが用意している……ね。

 

「ダンジョンは昔の人の倉庫だったかもなー。つまりオレらは人の物を盗んでいる泥棒ってことになるな」

「ええっ!?」

「ぶふっ!?」

 

オレの返しにオリヴィアさんは仰天。リオンは吹き出した。

だってハーツ曰く、新人類と旧人類とやらが激しく争ってたようだし。その名残かなんかと考えれば辻褄が合いそうだし。

 

「それ、絶対に他の奴らに言うなよ!?言ったらその瞬間に袋叩きに合うぞ!オリヴィアさんもこの話は内密で!」

「わ、分かりましたリオンさん!」

 

リオンが焦った顔で口止めしてきたな。まあ、この国は冒険者に敬意を表しているからな。それに真っ向から喧嘩売るオレの発言はアウトすぎるから当然だけど。

 

「それにしても……班の人、私たち以外来ないですね」

「俺らみたいな成り上がりとは居たくないんだろ」

「先行させてモンスターを掃除してもらおうという浅い魂胆もあるだろうけど」

「そ……そんなぁ……」

 

貴族は基本的にプライドの塊だからな。オレらと一緒にいるだけでも屈辱だろうから体よく利用しようと考えるのはある意味必然だ。

 

「ま、先行しとけば先に金目のものに当たるから別にいいけど」

「そうだな。たんまり稼いでアイツらの悔しがる顔でも拝んでやるかな」

 

オレとリオンの発言にオリヴィアさんは何故か呆れたような視線を向けている。解せぬ。

 

「ところでエドワードさん。さっきから気になっていたんですが……」

「なんだ?」

「どうしてハンマーなんです?普通は剣や槍だと思うんですけど」

 

オリヴィアさんの言う通り、オレは背中にハンマーを背負ってダンジョン探索に挑んでいる。

どうしてかって?

 

「剣なんてちゃんと扱えなきゃあっという間に刃こぼれして駄目になるし、槍はもう振り回して叩いているレベル。銃は消耗品の弾丸の代金が高いから論外。つまり、鈍器が一番優秀」

 

なんせ剣は親父が呆れるほど駄目だったし、槍も同様。銃も弾がなければ鉄の塊だしそもそも出費が馬鹿にならない。

つまり、叩いて潰すハンマーが一番オレに向いているということだ。腕輪使えば別だけど。

 

「マジか。いや、確かに銃弾にかかった費用はわりと高かったけど、俺でも鈍器より銃を選ぶぞ」

「成功するまで結構カツカツだったんだから一緒にするな」

 

大昔の失態のせいで貴族の寄子にすらなれなかったし。

今は金に余裕ができたのでライフル銃で射撃の練習してるけど。命中率は五回に一回動かないマトに当たるぐらいだけど。

 

「……なあ、エドワード。お前、オリヴィアさんを狙っているのか?」

 

は?

 

「お前、いきなり何言ってんの?いくら準男爵とはいえ、平民であるオリヴィアさんと結婚なんて出来るわけないだろ」

 

愛人ならワンチャンかもしれないが、それはしたくないしな。前世の価値観からだけど。

オリヴィアさんが何故か悄気た気がするが、此ばかりは事実でどうしようもない。オリヴィアさんが最低でも騎士家の人間なら可能性はあったけど。

 

「……そうだよな。求婚なんてできる筈ないよな」

「選べるのは男をATM扱いする貴族女子だけだからな……ハァ」

 

本当に結婚相手選びにこんなに頭を悩まされるなんて。結婚しなかったらしなかったらで、周りの貴族から下に見られて村八分になるし。本当に嫌な世界だよ。

 

「えーてぃーえむ……?」

 

オリヴィアさんは何故か首を傾げているけど。別におかしな事は言ってない筈なんだけどなぁ……

 

(うーん……ルクシオンの言う通り、ガチで乙女ゲーの世界について知ってそうにないよな。けど、このままオリヴィアさんと仲良くなられても困るし……あの五人の誰かとくっついてもらわないと色々とヤバいし……しかしATM扱いされてることについてはマジで同意だな)

 

リオンがそんな事を考えているとは知ることなく。

オレ達はダンジョンの奥へと進んでいくと、開けた場所でデカイ蟻型モンスター【ジャイアントアント】の群れに遭遇した。

 

「あ……あれが……モンスター……!」

 

モンスターを初めて見たのか、オリヴィアさんはめっちゃビビってるな。こいつらは確か顎の力が強かったよな。

 

「数は……七体か」

 

オレはジャイアントアントの数を確認すると、背中に背負っていたハンマーを抜いて構える。

リオンは剣を……って、あれ居合の構えだよな?この世界の剣は西洋作りの筈だから、構造上出来ない筈だけど。ゲームでは問題なくできるけど。

 

「ふん!」

 

そうしている間にジャイアントアントが襲いかかってきたのでハンマー振り下ろして胴体を地面の染みにしたけど。

 

「一匹ッ!二匹ッ!!」

 

リオンも剣を抜いて……って、あれ刀だよな!?それも日本刀に似てるし!

まさかの日本刀モドキにオレは驚きつつも、オレはリオンと協力してジャイアントアントの群れを倒した。倒した割合はリオン五匹、オレ二匹だけど。

 

「つ、強いんですね、リオンさん。エドワードさんも」

「まぁ、これでも親父に鍛えられてきたしね」

「これくらいなら容易だよ。似たようなモンスターを倒したことあるし」

 

その過程で剣と槍は御臨終。ついでに怪我もしたけど。

あの蟻、頭部が結構硬いんだよな。それ以外はそこまで硬くないけど。

ハーツを使えば瞬殺できそうだけど、目の前でいきなり鎧姿になれば絶対に目を付けられる。刺客に怯えて過ごす毎日なんてゴメンだから余程でない限り人前では使わない。

 

「それに弱点も知ってたし、慣れればオリヴィアさんも簡単に倒せる―――」

「それよりもリオン!その刀を見せてくれ!未開のダンジョンで発見したやつだろ!?」

 

ダンジョンには現在では再現できないアイテムが眠ってるって言うし、リオンのその刀もロストアイテムと称される武器に違いない!

ハーツ?アイツは物騒な爆弾だ。ロストアイテムとは断じて認めない。

 

「ちょっ、お前はマジで落ち着け!鼻息がめっちゃ荒いぞ!!」

 

リオンがドン引きしてるが知らん!日本刀は芸術品だからな!

 

「って、痛てぇ!?」

 

不意に左腕に痛みが迅り、すぐに目を向けると猿型のモンスターに噛みつかれていた。

 

「くそ!」

 

オレはすぐにナイフを抜いて突き刺し、猿型モンスターを倒すも腕には歯形と血が残っていた。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「あぁ……これ位の傷なら大丈夫だ。後で消毒液かけて布巻いとけば……」

「ダメです!すぐに治療しますから!」

 

オリヴィアさんはそう言ってオレの左腕を取ると、傷口に向かって左手を掲げる。

するとオリヴィアさんの左手から淡い光が現れ、左腕の傷が徐々に治っていく。

これは確か……治癒魔法だったか?

 

「よかった……傷が塞がりました」

「あ、ありがとな」

 

オレは少し吃りながらもオリヴィアさんにお礼を言う。

確かこういった魔法は使い手の数が少なくて希少だった筈だが……

 

「私……昔からこれが得意だったんです。旅をしていた学者の先生に色々教えていただいてからは独学で……」

「そ、そうなのか……」

 

独学でここまでできるとか……確かに優秀な人材と言える。学園や国の判断は間違ってはいなかった。

けど、そうなるとオリヴィアさんの立ち位置が下手したら危ない位置になってしまう。

少なくともこの魔法が使えることは今は他の連中に知られない方がいい。

 

「お役に立てて良かったです」

 

……まあ、今はいいか。わざわざ水を差すのもどうかと思うし。後で言えば問題ないしな。リオンにも口止めしとかないと。

その後は何故かリオンがトラップの位置とかを把握していたので問題なく進め、無事に今回のゴールへと到達した。

 

「いやー、金属も魔石も大量大量♪」

「先行させられた時は貴族のボンボン共くたばれ!って思ったけど、たんまり稼げたしいいかぁ」

 

今回の稼ぎは三百ディアくらいかな?お茶会の出費で全部消えるだろうな。

 

「……どうして魔石はダンジョンにあるんでしょうか?魔石の鉱山といったのもありませんし」

「確か魔石の出現理由は解明されてなかったなー。案外、モンスターの糞だったりして」

「げ、下品ですよエドワードさん!?」

 

オレの考察にオリヴィアさんは慌てふためいたように叫ぶ。

けど、鉱山にはモンスターはいないし、ダンジョンにはモンスターが溢れてるから魔石とモンスターは関係ありそうだよなー。

 

「あ~、それはモンスター倒すと魔力が放出されて土に溜まって蓄積されていくの。それが石となったのが魔石」

「え……ええ!?」

「……はあっ!?」

 

リオンから常識のように告げた発言でオレとオリヴィアさんは驚いた表情でリオンを見やる。

当のリオンは今回の稼ぎで上機嫌で心此処にあらずの状態だ。

 

「……リオンさんって不思議です」

「オレもそう思う」

 

オリヴィアさんの言葉にオレは神妙に頷く。

モンスターへの攻撃が妙に的確だったし、トラップも把握してたし。

疑問が浮かぶと尽きないが……別にいいか。楽できたし。

今度の休みは一人でダンジョンに行くか。稼ぐのではなく、この爆弾に可能な限り慣れるように。

 

 

 

――――――

 

 

 

『ガードが皆無なので本当に監視が容易ですよ』

「何あの全身鎧の黒い姿は?授業の時よりめっちゃ強いんだけど」

 

ルクシオンが見せる映像には、素手でモンスターを引き裂いているエドワードらしき全身鎧の姿が映っている。

 

『あれが忌々しい新人類の兵器ですよ。マスターで言うところのチートアイテムです』

「マジか……けど、そんなアイテムは乙女ゲーにはなかった筈だが……」

 

攻略サイトにも、課金アイテム購入欄にもなかったよな。敵が使うアイテムとしても登場しなかったし。

 

『不安であれば私が本体を使って塵も残さず排除しますが?』

「お前本当にそればっかだな!?」

 

本当にどれだけ新人類とやらの遺産を消したいんだよ!

 

「てか何でこの前の授業で使わなかったんだよ!?舐めプか!?舐めプなのか!?」

『マスター。ブーメランを知ってますか?投げると自分の下へと帰ってくる道具です』

「俺は俺の平穏の為にいつも全力だ!」

 

 

 




「本当にこの状態はチートレベルだよな」
『当然だ。無限に近い魔力で魔法も使い放題だからな』
「起動時にごっそり持っていく上に体力もめっちゃ使うけどな」
『相変わらず文句が多いな』
「爆発するポンコツなんだから、文句くらい言わせろ」
『自分がポンコツなら、キャプテンは軟弱者だな』
「言ってろポンコツ」
『ほざけモヤシ』
「『…………ッ!!』」


『……本当に低レベルな言い争いですね』
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