「何で俺達がアイツの親衛隊に……」
「同感。不本意だが好都合なのは事実だけどな」
パルトナーの甲板、取り巻き達にちやほやされるマリエの姿にうんざりしつつ、オレとリオンは愚痴を吐く。
偵察ドローンも使ったルクシオン調査では、オレとリオンの聖女親衛隊入りは政治判断からだそうだ。そこに侯爵の思惑が混じっているのが面倒だけど。
それと、オレとリオンはかなり警戒されてしまっているようだ。リオンは戦力面でオレは勢力面。
どうやら冬休み中の万が一の備えが悪い方へ見られてしまったようだ。しかも近々計画を実行に移すような発言が出てきたようなので、本当に不穏しか感じない。
王宮はリオンとオレがマリエ……神殿側に寝返るのではないかと疑っているが、その可能性は微塵もない。むしろ嫌っているくらいだ。
だが、おバカファイブの篭絡事実がどうしても意識しているようで、日和見組は不安がっていた。それを侯爵側がまんまと利用したわけだが。
しかも、この件で公国への警戒度が下がってしまった。神殿が王宮内での権力を握ろうと動いていると判断したようで、冬休み前のオレとリオンと同じ状態になってしまったのだ。本当に状況がどんどん悪い方向に向かっててうんざりする。
ま、侯爵に対する反撃材料はびっしりあるけど。焼却処分しようとした手書きの書面はだいぶ押さえてるし。所々燃えてしまっているが肝心な部分はしっかり残ってるし、それが逆に証拠の信憑性を高めてくれている。全部ルクシオン本体に大事に保管してるから、秘密裏に処分される心配もないし。
「それでも最悪なのには代わりないだろ。何で俺がアイツの命令に従わなきゃならないんだよ」
そう、今回の冒険の旅はマリエの指示。目指す場所はエルフが暮らす島にある遺跡である。
その理由が借金。それもラーファンの実家から押し付けられた借金の返済の為である。それもおもわずドン引きするレベルの借金。
その借金のせいで王宮と神殿の両方で用意された予算は全部溶け、マリエは資金調達に走らなければならなくなったのである。
「本当はパルトナーも出したくなかったんだけど……」
「誰も船を出さなかったからな。オレが持つ船も親衛隊に取り巻き達……使用人に自主的に参加した学生全員を乗せられないし、連休中に片を付けるにはパルトナー以外の選択肢がなかったのもあるが」
実際、複数の船だと女子がぶつぶつ文句を言うし。船も新アーマーも完成が連休明けになりそうだし。
まあ、これ以上グチグチ言っても仕方ない。それに、上手くいけば転生者同士として話せるチャンスの場でもあるから、今は我慢するか。
「それより何でカーラもマリエの側にいんの?」
「大方、オレらへの嫌がらせだろ」
みみっちい仕返しとマリエ本人は思ってるだろうな。リオンはどうかは知らんが、オレは心底どうでもいい。
カーラへの落とし前はもう済ませてるし、そこから落ちぶれようが立ち直ろうが別に構わない。報復に動くなら、容赦なく潰すけど。
『もはや一種の才能ですね。あそこまで人生を楽しめてますから』
『電灯未満に同意するのは虫酸が走るが、浮き沈みが激しいのにああも楽しめるなら才能の域だな』
『虫酸が走るなら、永遠に黙ってなさい。飾りにもなれない装飾品』
『お前が黙れ。新人類の使い魔(笑)』
『マスター。今すぐこの世界の膿の切除命令を私に』
『キャプテン。この野球ボールモドキを今すぐ空の彼方にいるであろう本体へと投げつけろ』
「「だからやらないって」」
本当にぶれないな、お前達は。ここまで平常運転だと逆に羨ましいぞ。
そんな中で、マリエの使用人であるちびっこエルフ―――カイルは一人で空を眺めている。
「何だ。ご主人様を取り巻きに取られたのか?」
「話しかけないで貰えますか。僕、アンタ達二人の事、嫌いなので」
おーおー、言ってくれるねえ。好かれる要素が一つもないから当然だけど。
「取り繕う必要もないくらい嫌いなのか。そっち側が原因作ってるのに」
「……否定はしないけど、屑のアンタに言われたくないよ」
「オレが屑なら、そっちは自分達の行動を棚に上げて相手を罵倒する、性根が腐った臆病者だな」
カイルの嫌味に、そっちは性根が腐った臆病者だと嫌味で返したら、カイルは苛々したように睨み付けてくる。リオンは最初はイラッとしていたようだが、今は嫌らしい笑みで見守っている。
「……何も知らないくせに」
「それはお互い様だろ。お前だってオレ達の何を知っているんだよ。表面しか知らないから、痛い目を見るんだと覚えとけ」
オレはそう言ってその場を離れる。リオンも溜飲が下がったのかオレと一緒に着いてきている。
『見事なブーメランだな。マリエの件がそのまま返ってきてるぞ』
自覚してるよ。それで面倒かつ最悪な状況になったんだし。
「エドさん。リオンさん。目的の浮島が見えてきましたよ!」
「遺跡の近くにキャンプ地を用意だ!宝を一番に見つけるのは私達だ!」
今回の冒険に参加したリビアとアンジェ嬢もはしゃいでるなー。特にアンジェ嬢は普段は大人びているからこの反応は新鮮だ。
「アンジェは宝を見つけなくてもお金持ちだよね?」
「確かにそうだが……財宝を見つけるのに意味があるからな。昨日はワクワクして寝付けなかった」
リオンの疑問にそう返したアンジェ嬢は目を輝かせている。冒険者の血が騒いでいるのかな?
「私は財宝よりも遺跡を調べられるのが嬉しいです。古代の人達が、どんな暮らしをしていたのかが気になりますから」
「本当に楽しそうで何よりだ」
マリエの命令だけだったら、リオンは深く考えず……否、脊髄反射レベルで絶対に断っていただろうな。リビア達も興味を示したから、不承不承ながらもパルトナーを出したんだし。
「リオンには感謝している。王都にもダンジョンはあるが、やはり冒険は見知らぬ場所に乗り込んでこそだからな」
見知った場所の新たな発見も冒険醍醐味だけどな。オレの場合は爆弾だったけど。
「ちょっと!島が見えたんだから、早く上陸準備しなさいよ!私はさっさとお宝回収したいのよ!」
「あ゛?」
マリエの横柄な命令にリオンが苛立ちマックスで睨み付けると、マリエはビビったように縮こまった。
「じゅ、準備してほしいな~って。え……えへっ」
……根は完全に小心者だな、マリエの奴。やっぱり早急に転生者として話し合わないとマズイな。
こういうタイプは、想定外が起きたら真っ先に取り乱すタイプだから。
「パルトナーの所有者はリオンだ。文句でもあるのかな?聖女様」
「…………」
アンジェ嬢もマリエの横柄な態度にイラッと来たのか、少しきつめの口調で告げてくる。対してマリエは顔を逸らして誤魔化そうとしている。
「アンジェリカさん。マリエさんに何をするつもりですか?」
そんな言葉と共に、今回の冒険に参加しているジルクとグレッグの二人がオレ達の間に割って入る。ちなみに他の三人はマリエの実家への抗議でこの冒険には不参加だ。
「……何、注意しただけだ」
アンジェ嬢はそう言って素直に引き下がる。実際、注意しただけだしな。
「ここにいたのね。探したわよ」
そんな声と共に、またしても面倒な人物が輪に入ってくる。
ヘルトルーデ・セラ・ファンオース……侯爵の意向で王国に留学することになった道化の公女だ。
「……お前までついてくるとは思わなかったよ」
「悪いかしら?そっちの都合で留学させてるのに?」
アンジェ嬢の嫌味対して、ヘルトルーデも嫌味で返す。
何でヘルトルーデも今回の冒険に参加したんだろうな。ルクシオンの調査じゃ、侯爵からも放置されていたそうだが。
『一人はぐれて迷子になってたようですがね』
『迷子の姫か……笑えるな。ぷっ』
「誰が迷子よ!一つ目に腕輪!この船は無駄に大きいのよ!」
ルクシオンの報告とハーツの挑発に、ヘルトルーデが怒りを露に文句をぶつける。最初に会ったあの落ち着いた雰囲気が全然ないな。事実を知ったことでぐらついているんだろうけど。
「そもそもお世話の人は?一緒だっただろ」
「……いつの間にかいなくなってたのよ」
オレの質問にヘルトルーデは露骨に顔を逸らす。
てか、扱いが本当に雑になってるな。お飾りの王女なら、仕方ないかもしれないが。
「王宮は本当に何を考えているんだ?」
「完全に舐めてるんじゃないのか?客観的な事実を知らなかった道化王女だし」
「道化王女言うな!本国に連絡して王国に戦争仕掛けるわよ!!」
脅し文句に戦争というワードを使うなよ。当初の憎悪はなりを潜めてそうだけど。
まあ、過去のあれこれを積極的にぶつけるつもりがないのは今も変わらないが、向こうの心情を汲んでやる道理もない。客観的に見れば自業自得の逆恨みだからな。国のトップなら、という前提が付くけど。
「それは宣戦布告か?ヘルトルーデ」
「……冗談よ。今は王国に戦争を仕掛けるのは得策じゃないしね」
アンジェ嬢の厳しい声に、ヘルトルーデは涼しげな表情で返す。
それにしても今は……か。完全には諦めてないのかね?
しかし、見張り役は間違いなく侯爵の手の者だろうが……何で一人にしたんだろうな。職務怠慢と報告されても不思議じゃないぞ。
「そもそも何で参加したんだよ?」
「貴方達には関係ないでしょ。それと、嫌らしい目で見ないで頂戴」
リオンの質問をヘルトルーデは答えることなく、若干きつめで睨む。
嫌らしい目って……懐疑と疑惑の視線を性的な意味で捉えるとか、自惚れが酷いな。いや、元から酷かったか。
「……なんか、ゴメンね」
「どういう意味よ!?それにその憐れみの目は何!?」
リオンの哀愁漂う謝罪に、ヘルトルーデは憤慨して噛みついている。リビアとアンジェ嬢、マリエも見ていたから……うん。本当に御愁傷様。
「ファーレンガルド男爵!?その合掌は何!?それとどうして同情する視線を向けているのよ!?」
本当に大忙しの公女だな。
少しして、パルトナーはエルフが暮らす浮島の港に到着する。
「ちょっと!乱暴に扱わないでよね!」
「ご、ゴメン……」
……相変わらず男子の扱いが酷いな。
そんな中、グレッグが近くに置いてあった荷物を指差す。
「隊長に副隊長!この荷物は持っていくか?」
「隊長って呼ぶな。俺は自分の中で納得していない」
「右に同じく」
一応の利点はあるから渋々受け入れてるけどな。
「親衛隊の隊長と副隊長なら、俺たちの隊長と副隊長だろ?よろしくな!」
グレッグはそう言って豪快に笑う。
うーん……こうも明け透けなくオレ達に接するとは。本当に単純すぎないか?面倒がなくていいけど。
「亜人奴隷をこんな場所まで連れてきて、雑用は男子生徒にやらせるなんてね。王国って酷いのね」
ヘルトルーデは男子が女子に顎で使われている光景に呆れたように溜め息を吐いているが、そっちの国も別の意味で酷いからな?
「公国は違うの?」
「公国がこんな下品な事をするわけないでしょ」
リオンの質問に対してヘルトルーデは否定の言葉で返す。
公国も元は王国領だったのに、何でここまで違いが出たのかね?
いや、公国が出来てからああなったのか?それってつまり……
「ひょっとして、王国の今の状況も公国が関係してるのかね?」
「何でもかんでも公国のせいにしないで頂戴!」
オレの呟きに、ヘルトルーデが怒りを露に噛み付く。
「別に公国がどうこうしたとは思ってない。単に公国の件がきっかけになったんじゃないかと思っただけだ」
「あー……そう言われてみれば確かに。そんなに違うなら、公国が誕生した直後にそうなったと考えるのが普通だよな」
実際、公国が誕生してから更に王国から独立した貴族はいなかったし。公国が誕生した経緯も考えれば、そう考えるのが自然……。
……あれ?もしかして、第二、第三の公国誕生防止の為に女尊男卑の社会になったのか?だとしたら、泣ける。
「と、とにかく貴方達には同情するわ。将来の結婚相手が亜人種の愛人を公然と連れまわしているんだから」
お飾りの姫さんにまで同情されるとか……やっぱり王国のこの状況は異常なんだな。今しがた浮かんだ可能性を加味しても。
「公国にはそんな品のない女性はいないから、亡命するなら英雄に相応しい待遇を約束するわ」
「だったら過去の滞納した賠償金全部払えや。約束するなら過去の約束を果たしてからにしろや」
ヘルトルーデの勧誘に、オレは即座に真顔で言い切ってやった。
だって、過去の国家間の約束を反故したんだぞ?それを棚上げして勧誘とか、信用すらできないだろ。
「うぐ……い、言ってくれるわね……それについては後々考えておいて上げるわ」
ヘルトルーデは少し吃りながらも、髪を優雅にかきあげてそう口にする。
「副隊長?賠償金って何の話だ?」
「…………」
グレッグのその言葉に、オレはガックリと項垂れる。名門貴族なのに知らないとか……本当に家の教育はどうなっているんだよ。
「ちょっと!お宝探しは!?早く探しに行くわよ!」
「……貴方、聖女でしょう?お金に執着するのはどうなのかしら?」
「アンタに何が分かるのよ!こっちはね、家族が勝手に作った借金を返済しないといけないのよ。しかもさらに私名義で多額の借金を……!だから、お金が無いって大変なのよ!辛いのよ!!」
「……何か、ゴメンね」
しれっと更に借金が膨れ上がっていたらしいマリエの嘆きに、ヘルトルーデは同情から謝罪した。
「……あいつ、好き勝手してるのに、何でここまで不憫なんだろうか」
「むしろ、ここまで酷いから暴走してるんじゃないのか?」
リオンのどこか哀れむような呟きに対し、オレはそう言葉を返す。
自分達は借金までして豪遊して、そのシワ寄せを娘に押し付けるとか……ラーファンは真性のクズだと思う。
むしろ、そのクズ家族が原因でマリエはここまでの行動をやらかしたんじゃないだろうか。リオンだって、遺族年金目当ての結婚から逃れる為に行動したんだし。
まあ、その借金は全部ラーファンの実家に向かうけどな。
「とりあえず、先にこの島の住人と話をしにいくか」
「そうだな。さて、どこに向かえば……」
「僕が案内しますよ。ここ、僕の故郷ですから」
――――――
「もうカイルったら、自分の故郷なら先に言いなさいよ!お土産とか用意したのに」
いやいやマリエ。お前はカイルの雇い主だろ。雇い主なら少しくらい把握してろよ。
しかし、カイルの心情的にはどうなんだ?奴隷として買われて、主人と一緒に里帰りするのは……オレだったら胃が痛くなる。
「お土産はいりません」
先導するカイルはマリエにそう返して、無言で歩いていく。
「エドさん。カイル君、様子がおかしくないですか?故郷に帰れるのに、どうして落ち込んでいるんでしょうか?」
カイルの様子を見ていたリビアはオレにそう聞いてくる。
「何かしらの理由があるんだろうな。アイツの事情は知らないんだし、気に留めておく程度でいいだろ」
今のところ、誰かに迷惑をかけていないし。事情を知らないオレらが口を突っ込むのも迷惑だろうしな。
「結構歩くのね」
そう文句を言ってきたのはヘルトルーデだ。
「嫌なら港で待っていたら良かっただろ」
「私の勝手です。ここまで来たのなら遺跡も見ておきたいわ。それに……」
「それに?」
「……何でもないわ」
一体何を企んでいるんだろうな。少なくとも、侯爵とは別口だろうが。
『エルフか……大方、旧人類が生み出した種族だろうよ』
(根拠は?)
こう言う時、頭の中の会話は便利だな。本当に。
『新人類が生み出すメリットが一切ない。魔装もあるから、戦力面でもわざわざ作る必要性がない』
あー、確かに。新人類は魔法を使える人間なんだ。わざわざ自分達のアイデンティティーを脅かす存在を作るとは思えないな。
『それよりもキャプテン。この浮島に魔装の反応が二つ……いや、三つあるぞ』
……何だと?
(それはお前と同じ試作品か?)
『いや。反応からして正規品だ。状態までは分からぬがな』
このエルフが暮らす浮島に状態不明の正規の魔装の反応が三つ……いきなり面倒になったな。
『キャプテン。これは絶好の機会だ。上手くいけば、自分が超強化されるぞ』
それ、暴走フラグ!絶対にやってはいけない奴だろ!そもそも、お前と正規の魔装は色々と違うから厳しいんじゃないのか?
『パーツを魔素に分解して吸収すれば問題はない。コアパーツがあれば、手頃な駒として働かせることもできる。出力向上、魔法も更に強化可能と良いことづくめだ』
……気持ちがぶれたことは認めよう。
「着きましたよ」
そうこうしている内にエルフの村に到着したようだ。
自然に囲まれた数々のログハウス……そこには美形のエルフ達が暮らしていた。
「わぁ~っ。すご~い、美形ばっかり~」
マリエは目をハートマークにして興奮している。完全に面食いだよな。
そんな中、ジルクがエルフについて話し始めた。
「エルフ美形揃いですが、人間のように外見で美醜を判断してません」
「そうなの?」
「その者の持つ魔力で判断するようです。外見的な好き嫌いは殆どないそうですよ」
魔力で美醜を判断ね……だから学園にいるエルフは外見が酷い女子でも嫌な顔一つしないのね。
「さっきからどうしたよ?」
「話しかけないでください。自己満足のために優しくしないでくれますか。アンタみたいな勘違い野郎が一番嫌いなんで」
話しかけたリオンに対し、カイルはオレでも普通にぶちギれる言葉を吐き捨ててきた。
「……っ。俺もお前みたいな糞ガキは嫌いだ。お袋に、これが僕のご主人様ですってマリエを紹介して気まずい雰囲気になれ!」
「わかっていませんね。エルフにとって奴隷になるのは出稼ぎと同じですよ。奴隷と言っても待遇はマトモですし、貴方達男子よりよっぽど好待遇ですからね」
出稼ぎ……ね。つまり、こいつも出稼ぎ目的で外に出たと。この辺りは生まれや環境由来の価値観の違いだな。
ぶっちゃけ、喧嘩腰のカイルに嫌味の一つを言いたいくらいだが、わざわざ喧嘩を売る必要もないしスルーするか。
「カイル!」
そんな中で、出ているところは出ている小柄な女性エルフがカイルの名を呼んで駆け寄ってくる。
その女性に対しカイルは……
「……マリエ様。紹介します。僕の母、名前は“ユメリア”です」
自分の母親だと紹介した。
『王国の宝物庫には古代の鎧のパーツが飾られているそうですね。それを公国に譲ってもらいたいのですが』
「……あれは私の一存では決めかねますな。相応の利益がありませんと」
『でしたら、かの王国の英雄―――【外道騎士】と【悪魔騎士】を陥れる偽装書面を用意しましょう』
「でしたら、王国内の掃除にもご協力願いましょう。一部の領地の割譲も添えて」
『いいですよ。互いに良き取り引きができて良かったです』
「これであの小僧共を排除できる。次は実行役を用意せねばな」
ジー……
「フフフ……本当に愚かですな。英雄殿もそう思われるでしょ?」
「……ォォォ……憎……ィ……」
「おや、これは失敬。もう憎悪しか残っていませんでしたね」