地下牢の中。
看守に席を外してもらい、オレとリオンは王国の酷さにうんざりしていた。
「本当に貴族連中が酷すぎるだろ……」
『パルトナーやアロガンツを渡して技術も全部渡せば、命だけは助けてやると言っていたからな。胡散臭いだけだが』
「どうせ渡せば用済みで始末するくせにな」
『全くです。しかも途中で諦めたとはいえ、私のパルトナーを解体しようとしましたし……マスター、私とマスターでこの腕輪諸とも王国を滅ぼしませんか?』
「却下」
『キャプテン。こうなったら一暴れして、宇宙船諸とも王国を沈めるぞ』
「やらねぇよ」
そんな事したら、後が絶対に面倒になるだろうが。
「しっかし、神殿も侯爵と繋がっていたとか……ホント、笑えねぇ」
『本当に王国の内政は酷いの一言に尽きる。もう見限ってもいいのではないか?』
見限る……ね。それが出来れば本当に楽なんだけどな。
「そうしたいのは山々だが……見限るには友好な相手が多いんだよ。そいつら全員連れて逃げるなら別だが」
オレの家族や職人達はもちろん、ダニエルやレイモンド、クラリス先輩にアンジェ嬢……それにリビア。
彼等を無視して見限るのは、オレ個人として絶対にやりたくない。
『だから見限らないと?本当に損をする性格をしているな、キャプテン』
「別にいいだろ。それとリオン」
「何だよ?」
「オレの言葉に振り回されるなよ?オレが言ったから、という理由でやるならブン殴って無理やり逃がしてやるからな」
もしリオンが逃げる選択を取っても、オレはそれを尊重する。例の証拠の山だけは渡してもらうけど。
「……お前って本当に面倒な性格をしてるよな」
『まったくです。黙っていれば、マスターの協力を得られたでしょうに』
リオンとルクシオンが呆れているが、これはオレの絶対に譲れない一線だからな。
「ま、おかげで肚は括れそうかな。後であれこれ思い悩む人生なんて、本当に御免だからな」
『理解不能ですね』
オレもそう思うよ。
「じゃ、今の内に悪巧みといくか。後から後悔するなよ?」
「後悔なんて……何度だってするさ」
本当に絞まらないな。
――――――
数日後。
『
『マスター、ルクシオン。これが
魔笛の調査を終えたソウルとルクシオンとは別の人工知能―――“クレアーレ”が調査を終えた魔笛のデータを渡してくる。
『調べあげたのは
『私よ』
ソウルとクレアーレは互いに自分の手柄だと牽制しあう。本当に水と油だな。
『なるほど……魔力の繋がりを外部から強制的に断てれば、契約違反状態に落とし込められる可能性が高い、と』
『それと同時に代償も軽減可能……十分な成果だな』
『魔笛は確実に壊れるであるがな』
そこは別にいいよ。使用者の生存率が高まるならな。
「これ、上手くいけば王家の船は必要なくね?」
『その王家の船がどんなものかは分からないけど……この方法では再生能力は消えずに残るわよ。契約破棄すれば、その再生能力は無くなるみたいだけど』
一番厄介な再生能力は残るのね。リオンがラスボスに勝てない一番の理由は、この無限に近い再生能力からだそうだが。
まぁ、確かに消耗戦に持ち込まれれば、そのラスボスが圧倒的に優位だろうな。その上、超巨大だから本当に厄介だよ。
けど、これは朗報だからな。役立たずだった五馬鹿と違って。
あの五馬鹿はオレとリオンを助ける為に実家を頼ったが、惨敗。グレッグとクリスに至っては親にボコボコにされ、殿下はマリエの件を持ち出してミレーヌ様に叩かれた。
それと比べれば……否、比べるのも烏滸がましいくらい、ソウルとクレアーレはよくやってくれた。
「……オレが提案してなんだが、本当にいいのか?悪巧みを実行すれば、間違いなくお前の望みから遠ざかるぞ」
「お前もがっつり巻き込んでやるから大丈夫だ。補佐として、しこたまコキ使ってやるからな」
本当に良い性格してるよ、リオン。
――――――
さらに数日後。
ルクシオンとクレアーレは呆れたように告げた。
『どうやら最悪の方の展開になりましたね』
『ある意味、期待を裏切らなかったわね』
―――ミレーヌ様達は失敗してしまったか。
武装しているのか、ガシャガシャと足音を立てて大勢が近付いてきているよ。
「じゃ、我慢はここまでだな」
『キャプテンは何時から我慢していた?』
『むしろ好き勝手していたと思うのだが?』
してたぞ。地下牢生活中、ずっと。
オレは魔装を完全展開し―――手枷を力づくで壊すと同時に、鉄格子も蹴り一つで吹き飛ばした。
「な、何だ!?」
武装した先頭にいた侯爵派閥に属する三十代の子爵が驚愕の声を上げているが、オレは構わずに風魔法による衝撃波を放って全員吹き飛ばす。
「が―――」
あまり加減せずに衝撃波を放ったので、酒瓶を落とした子爵を始めとした騎士全員、そのままドミノ倒しで地面に倒れて気絶した。
……あれ?こんなに威力が高かったか?あまり加減はしなかったが、血が流れるほどは込めていない筈だぞ?
『魔装の一部を回収したことで出力が強化されたからな。元の三倍だから、威力も上がっていて当然だ』
……ルクシオンとクレアーレ説得して全部回収しとけば良かったよ。
それによく見れば、以前はなかった碧い爪が生えてるし。
「うわー……相変わらずのチートだな」
『魔法を強化するロストアイテムと報告していたのが功を奏しましたからね。向こうは完全に予想外だったでしょう』
リオンが呆れ、ルクシオンが淡々と説明する中、慌ただしい足音が聞こえてくる。
「二人とも、無事―――!?」
オレがそちらに顔を向けると、そこにいたのは木刀を持ったクリスと拳銃を持ったジルクだった。
なので、オレは魔装を解除して二人に近づく。
「ファ、ファーレンガルド……さっきの姿は……?」
「オレの奥の手。それより、お前達はどうしてここに来た?」
オレはクリスの質問に簡潔に答えつつ、此処に来た理由も聞く。
クリスとジルクが来た理由は……もう実力行使でオレとリオンを助ける為だった。
「お前ら、やっぱり馬鹿だろ」
「別にいいでしょう」
リオンが呆れ、ジルクは顔を逸らして返す。
まあ、実力行使で助けようとしたら実力で逃げ出そうとしてたから、色々と微妙なんだろうが。
「とにかく逃げるぞ。ブラッドとグレッグも、ユリウスも待っているからな」
「悪いが、行き先は決まってるぞ」
「行き先が決まっている?どこに向かうと言うんだ?」
そんなの、決まってるだろ。
「陛下と王妃様のところだよ」
――――――
会議室。
殿下と合流した時点で、陛下―――ローランド陛下が現れてオレとリオンを擁護派とミレーヌ様が待っている会議室へと案内された。ちなみに服装は囚人から学生のものへと着替えている。
「すいませんが、状況を教えてくれませんか?」
「元よりそのつもりだ。その為に、君達を呼んだのだからな」
公爵―――ヴィンスさんはそう言うと、クラリス先輩の父―――バーナードさんが説明していく。
公国の軍隊が王国本土に上陸し、百五十隻以上の艦隊と数えきれない程のモンスターの大群、超大型のモンスターを連れていたと。
そのモンスター達を魔笛で操っているのが、公国の第二王女―――ヘルトラウダであること。
さらに、それに便乗するように公国以外の国も攻めており、地方の軍は動かせないとのこと。
王国の戦力は神殿側の要請で援軍として出され、総勢二百隻だった艦隊はその超大型モンスターと目玉が多い不気味な黒い鎧によって三隻しか帰ってこずに惨敗だったこと。
そして―――その戦闘に参加していたらしいマリエは惨敗の責任を取らされそうとのことだった。
……本当に最悪の状況だな。歯車が全部悪い意味で噛み合いまくっているぞ。
それも、此処から巻き返すけどな。
「率直に尋ねよう。君達なら勝てるか?」
バーナードさんが真剣な表情でそう聞いてくる。もちろん、答えは決まっている。
「条件次第です」
オレのその言葉に、周りがどよめく。そんな中、ヴィンスさんが口を開く。
「その条件とは?」
「前提条件は、リオンが総司令官の地位を得ること。オレがその補佐に入ること。そこでようやく、他の条件が通せます」
これは絶対に通さなければならない条件だ。王国の戦力を従える立場に立つ。そうしなければ、人も切り札も動かせないからな。
本音を言えばオレかリオン、どっちかが総司令官になれればいい。だが、ロストアイテムと爵位、階位を考えればリオンの方がが適任なのだ。特に証拠の説得力を高める為にも。
「……信用、実績があまりにも足りないが?」
「無理なら俺もエドも逃げるだけです。ほぼ間違いなく―――このままでは勝てませんから」
リオンの真剣な言葉に、ヴィンスさんはもちろん、その場にいる全員が難しげな顔をする。ローランド陛下は仏頂面だ。
だが、本当にこの状況から勝ちを拾うにはこうするしかない。でなければ、疲弊して敗けるだけだ。
「仮にリオン君を総司令官にすると言えば、フランプトン侯爵が反対します。現在の王宮内最大派閥を敵に回すことになりますよ」
「そっちは問題ありません―――黙らせる材料は、たっぷりありますので」
ミレーヌ様の忠告に対してリオンがニヤリと笑みを浮かべた直後、一台のロボットが一つの封筒を持って現れる。ロボットの存在に周りが驚く中、そのロボットはその封筒をミレーヌ様へと渡す。
その封筒をミレーヌ様は首を傾げながらも開けて中身を確認すると―――その両目を大きく見開いた。
「これは……!」
「今まで集めてきた証拠の一部です。こうしている今も証拠は集まってますよ」
ロボットが持ってきたのはフランプトン侯爵が公国と裏で繋がっていたと証明する手書きの書面。それも、オレとリオンを嵌める為の密約の書面だ。
「……その気になれば、最初から自力で解決できたのね。そうしなかった理由を聞いても?」
「なるべく角を立てず穏便な解決を望んだからです。オレとリオンが解決すれば、内政は不安定になると思ったので」
「……本当に私達は、君達の期待に応えられなかったのね」
オレの言葉に、ミレーヌ様は情けなさを感じたように溜め息を吐く。
「……他の条件は?」
「パルトナーとアロガンツの返還。そして、聖女と王家の船の貸し出しです。リオンの持つロストアイテムと、王国設立の原動力かつ切り札たるそれらがないと、勝ちを拾えません」
オレの言葉にリオンが頷く。王家の船は周りに秘匿されているが、ミレーヌ様達でも押さえられなかったフランプトン侯爵の裏取引の証拠を押さえているからな。誤魔化しの下地はバッチリだ。
本当はマリエではなくリビアが必要だが、マリエを蹴落としてリビアを聖女にするのは時間もなければ現実的でもない。その手自体が非道過ぎてアウトだけど。
なら、マリエをダシにして切り札を引っ張り出して使うさ。さすがに修正しないといけないけど。
「本気か?」
「「本気です」」
不快感を隠そうとしないローランド陛下の言葉に、オレとリオンは速攻で頷く。
さて、どう出る?若造の無茶ぶりと突っぱねるか、それとも……
「……戦力の方はどうする?この状況では、期待できないぞ」
ヴィンスさんが観念したように、そう聞いてきた。ローランド陛下が睨んできたが、ミレーヌ様が鋭い視線を向けた瞬間にそっぽを向いた。
これだけで、どっちが上なのか分かってしまった。少し、哀しいかな。どうでもいいけど。
「そちらも大丈夫です。当てはありますから」
「それにツテも使います。後、陛下とミレーヌ様には少しお願いがありますしね」
今こそ、保険を派手に使う時だからな。アイツらにも、しっかり働いてもらうさ。
――――――
『本当にキャプテンは悪魔だな。商売のツテを使って出し渋りする連中を脅すとはな』
「少しでも効率的に動かせるようにする為だ。その為なら、脅すくらいはやってやるさ」
更にフランプトン侯爵の不正の証拠を提出し、根回しをミレーヌ様達に丸投げしたオレはリオンと共に次の準備に取り掛かっている。
それは飛行船に関する契約書面。保険を確実に動かす為の準備だ。
『勝算を匂わせ、協力しなかった場合の末路を要請と共に伝えていますからね。おかげで戦力が比較的集まっているようです。それでも日和見に徹する貴族は多いですが』
「そっちはもう放置するだけだ。説得にかける時間はないし、後は自己責任だ」
ルクシオンからの報告に、リオンはバッサリと言い切る。
『それとマスター。超大型の反応が二つあります。空と海から浮かんだ大地を挟み込むように進行しています』
「二体もいるのかよ……」
ルクシオンのその報告に、オレとリオンはゲンナリしてしまう。本当に、状況は最悪だな。
『今から逃げますか?』
「逃げないよ。彼処まで啖呵を切った後で逃げたら恥ずかしさで死ぬ。それに、勝算はあるんだろ?」
『王家の船が本当に役に立つなら、という前提が付きますがね』
なら、逃げるという選択肢はないな。
「ミスタリオン。ミスタエドワード」
後ろから声をかけられる。ルクシオンはとっくに姿を消している。
後ろへと振り返れば……そこにいたのは、リオンのお茶の師匠だった。
「……師匠」
「既に話は王妃様から聞きました。随分と無茶をしたそうですね」
内容とは裏腹に、お茶の師匠の表情はいつもの柔和な笑みだ。
「軽蔑しますか?」
「しませんよ、ミスタエドワード。確かに誉められた行動ではありませんが、強い決意で動いているは分かりますからね」
……本当に紳士だよ。リオンがお茶の師匠に惚れ込むのも、本当に納得だよ。
「ですから、君達は君達の正しいと思う騎士道を貫きなさい。私から言えることはそれだけです」
「……ありがとうございます。師匠」
リオンが深々と頭を下げ、オレもそれに倣って頭を下げる。お茶の師匠も軽く頭を下げてから、その場を立ち去った。
「……本当にあの人は紳士だな」
「師匠だからな。お前も師匠に師事するか?」
「全部解決してから検討するよ」
こうも背中を押されたんだ。絶対に、勝ってやるさ。
――――――
「お前ら、マジで挑むつもりなのか?」
「考え直しなよ。王国軍が全滅したモンスターに勝てるわけないよ」
物置のような教室で、ダニエルとレイモンドがオレとリオンの要請に首を横に振った。他の面々も同様だ。ちなみにクレアーレとソウルにはリビアとアンジェ嬢の方に向かってもらった。
ま、ダニエル達の反応は予想通りだな。ここにいるのも、実家から迎えが来るまで隠れる心算だったようだし。
だからこそ、対応策もあるけど。
「挑むさ。このまま王国が負ければ、良くて奴隷人生だからな」
「全くだ。修学旅行の時、アンジェ以外は殺そうとしていた連中が、降伏して素直に受け入れると思うか?絶対にあり得ないね」
オレとリオンがそう言うと、ダニエル達はその可能性に気づいて顔を俯ける。
何せ、内政が相当腐ってそうな国だからな。絶対にマトモな扱いをしないだろうよ。
「それに、この戦争に勝てば……男女の立場は逆転だ。選んでもらう立場から、選ぶ立場にジョブチェンジだ」
「それは王妃様と陛下が改善に務めると約束してくれたからな。喜べお前ら。これに勝てば、婚活地獄から脱出できるぞ」
全員が信じられないといったように目を見開いて顔を上げる。
そう。オレがミレーヌ様達にお願いしたのは、男女関係の改善。これをちらつかせれば、婚活に苦しむ彼らには絶好の飴となるからだ。
その際、ミレーヌ様はこの状況を“自業自得”と溢したので、この歪な女尊男卑の社会は反乱防止策の可能性が高まった。
それが嫌な形で跳ね返ってきたが、今は後回しだ。どちらにせよ、この戦争に勝たないと意味がないからな。
「それでも逃げるなら、無理強いはしない。逃げた結果、王国が勝てば逃げた奴は全員平民になるだろうけどな」
これは紛れもない事実だ。協力しなかった貴族にお咎めなしは、国としての示しがつかないからな。
「あ、悪魔め……」
「何が無理強いはしないだよ……実質無理強いじゃないか……」
否定はしないよ。
そこでリオンは、例の書面の束をはためかせる。
「それに、お前達の飛行船は俺らが握ってるしな。ここで協力しなかったら、毎日ご機嫌取りしなきゃいけないぞ?」
「「「「本当にやり方が汚い!!」」」」
こっちは本気で勝ちに行くんだ。悪魔だろうがやり方が汚なかろうが、やってやるさ。
「で、どうする?乗るか?乗らないか?」
「乗るよ!乗ってやるよ!!」
「どうせ地獄なら、救いがまだある地獄の方に行くよ!」
全員、観念したようだな。
「みんなありがとう!これからもずっと、友達でいようね!!」
「「「「「お断りだ馬鹿野郎!!」」」」」
リオンの満面な笑みに、全員が恨み節をぶつける。
『清々しい程に一方的な友情ですね。感心しますよ』
『下僕と書いて“ともだち”と呼ぶタイプの友情だな』
相棒達の皮肉を無視しつつ。
その後―――
「協力しないなら、貸してる飛行船は今すぐ返してね」
「所有権はオレらのままだから、いつ取り上げても問題はないからな」
「「「「「この外道と悪魔め!!」」」」」
レンタル組も同様の方法で協力させることに成功させた。
次は―――
「―――というわけだ、親父に兄貴。力を貸してくれ」
飛行船の艦橋で、王都から避難する民の移送の為に来ていた親父と兄貴に状況を説明し、協力を求めていた。
この飛行船は公国由来の技術も使った最新鋭。クルーの訓練も終わっており、戦力としては十分な役割を果たせる。
「まったく、エドは本当に馬鹿だろ」
「親父の言う通りだよ。しかも、本気で勝ちに行こうとしているんだからな」
親父と兄貴は揃って溜め息を吐き―――どこか観念したかのような表情で告げた。
「避難民を安全な場所に送ったらすぐに戻る」
「お前のとこの連中にもすぐに連絡を入れる。だから、そっちの仕事に集中してこい」
親父と兄貴の言葉にオレは感謝の意を込めて頭を下げ、そのまま艦橋を後にする。
人でごった返す港から王宮に戻ると、リオンがぼこぼこにされて縛り上げられたミオルを引き摺って来ていた。
「リオン。そっちは?」
「また親父に迷惑かけちまったよ。エドの方は?」
「オレも同じく」
どちらも手を貸してくれたことに、互いに苦笑する。
「ところでコイツはどうする?一応捕まえて連れてきたけど」
「相応の人物に引き渡すさ。あのクソジジイを追い詰める為にな」
既にミオル以外の実行犯も取り押さえている。抜かりはないさ。
そんな中で、バーナードさんがオレ達に駆け寄って来る。
「子爵に男爵。王国軍のまともに動かせる飛行船の数は五十隻程度だが、領主からの援軍は現時点で四十隻は集まっている。男爵の脅しに屈した形だがね」
合わせて九十隻か……まだ増える見込みだから上々だ。
「こちらはパルトナーと合わせて、五十二隻は確保しました」
「寄せ集め感は拭えませんが―――おっと」
段々と揺れが大きくなってきたな。
「単刀直入に聞こう。勝てるのか?返答によっては、家族を避難させたいのでね」
「公国軍には勝てます」
「問題なのは例の超大型だけなので。それさえ何とか出来れば、勝算はあります」
「本当に強いな……ファーレンガルド男爵」
「はい。なんでしょう」
「この戦いが終わったら、クラリスをもらってくれないか?卒業すれば子爵となるから、問題はないだろう」
……バーナードさん?冗談ですよね?目がマジですけど冗談ですよね?
それに合わせて嫌な汗も出てきたし。
「い、今は色々と忙しいですからね。その話は勝ってから考えます」
何故かリオンが恨めしげな視線を向けてきたが、無視だ無視。
「そうだな。―――もうすぐ、謁見の準備も終わるだろう。それまでは休憩をしていてくれ。それから、ご指名の人物も既に到着しているよ」
ミオルを騎士達に引き渡した後、案内されたのは謁見の間に近い控え室―――そこには五馬鹿とカイルにカーラ、そして、薄く汚れた白いドレスのマリエがいたのだった。
「エドさん達が公国軍と戦う?」
『うむ。リオンを総司令官とし、頭領はその補佐に入ることでな』
「学生を総司令官とその補佐にするなど聞いたことがない。名目上は陛下かユリウス殿下が大将になるのか?」
『いいえ。マスターが総司令官でエドワードが補佐で話は進むわよ。確実に確保できる戦力は、パルトナー含めて五十隻くらいと思うわ』
『頭領のツテも利用すれば、四十隻以上は集まるであろうな。そちらとは違ってな』
『あら?質はマスターの方が上よ。数だけ揃えばいいものじゃないでしょ?』
『いくら質が良くても数が少なければ無意味であろう。貴様と同じく』
『そっちは本来の能力をごっそり喪っているくせに』
『『…………!!』』
「け、喧嘩したらめっ!ですよ」
「青い一つ目も黄色い結晶も仲が悪いな……」