「衛兵!何をしている。こやつらをすぐに捕らえるのだ!!」
フランプトン侯爵が衛兵にオレとリオンを捕まえるように命令するが、衛兵達はその命令に従わない。
それどころか、フランプトン侯爵自身はもちろん、侯爵派閥の人間を次々と捕らえていく。
「な、何をしている衛兵!?何故私達を―――」
「そんなの決まってるだろ。―――お前達が、自らの利権の為に国を売り、王国を危機に陥れた反逆者だからだ」
オレが冷めきった声でそう答えてやると、フランプトン侯爵はオレを睨みながら反論した。
「ふ、ふざけるな!どうして私達が反逆者なのだ!私達は国を思って行動してきた。お前達のような―――」
「自分の派閥でない貴族の領地を公国に引き渡すことが国の為なのか?それも、オレとリオンを反逆者にでっち上げて」
オレが遮るようにそう言うと、フランプトン侯爵は虚を突かれたように言葉を失う。
そんなフランプトン侯爵に、オレは懐から取り出した封筒の中の一枚の書面を見せてやる。
その書面を見たフランプトン侯爵は、目を大きく見開いてガタガタと身体を震わせ始めた。
「これが何か分かるよな?なんたって、侯爵自身が書いたものだからな」
今見せてる書面はミレーヌ様が最初に見た書面。オレとリオンの罪の捏造の為の取引の書面だ。
「ば……馬鹿な。これは確かに燃やした筈……」
「最後までちゃんと確認しないと駄目だぞ?いつ、どこで、誰に回収されるか分からないからな?」
オレはそう言って、唖然とするフランプトン侯爵達に見せつけるように次々と証拠を開示していく。
公国と密接に裏で繋がっていた証拠の数々……その中には、修学旅行の件も含まれている。
元は公爵派閥の貴族を自身の派閥に迎え入れる見返りに、子息を使ってアンジェ嬢を公国に売るように指示したからな。しかも、公国とは適当なところで撤退するという取り決めまでして。
さすがにかなり燃えてしまっているが、肝心な箇所はちゃんと残って内容が予測できるのは幸いだったよ。
「そ、そうだ……これは偽物だ!貴様らが、私を嵌めようと!」
「こんな所々燃えてるのにか?偽物にしては、随分凝ってると思うんだけどなー?」
オレ一人じゃここまで上手くいかなかった。リオンとルクシオンがいたからこそ、完封なきまでに叩き潰せる証拠を多く集められた。
「フランプトン侯爵、見苦しい真似はお止めなさい。貴方は、完全に負けたのですよ。証拠は、今開示された分以外にもあるのですから」
ミレーヌ様が憐れみながらそう言うも、フランプトン侯爵は現実逃避のように騒ぎ続ける。
「何を言うか!この小僧が開示した証拠はどれも燃えた箇所があるではないか!このような証拠で、私の反逆罪が立証できると思っているのか!?」
できるだろ。全部手書きだから、どう見ても立証には十分すぎる証拠だろ。実際、周りの貴族達の侯爵派閥の人間に向ける目は冷たいものだし。
それでも、フランプトン侯爵は見苦しく偽物と言い張るのにはうんざりだが。
「もっと証拠が欲しいのか?」
リオンが意地の悪い笑みでそう言うと、ルクシオンが出現して謁見の間の中央に映像を映し出す。
そこには―――音声付きでフランプトン侯爵が公国の者とやり取りをしていた。
『王国の宝物庫には古代の鎧のパーツが飾られているそうですね。それを公国に譲ってもらいたいのですが』
『……あれは私の一存では決めかねますな。相応の利益がありませんと』
『でしたら、かの王国の英雄―――外道騎士と悪魔騎士を陥れる偽装書面を用意しましょう』
外道騎士と悪魔騎士って、オレとリオンのことか?酷い二つ名だな。異議を唱える気はないけど。
『でしたら、王国内の掃除にもご協力願いましょう。一部の領地の割譲も添えて』
『いいですよ。互いに良き取り引きができて良かったです』
『……これであの小僧共を排除できる。次は実行役を用意せねばな』
そこでノイズが入り、映像の画面が変わる。次に映ったのは、大量の手紙が入っている箱の横で対話しているフランプトン侯爵と一人の男性だ。
『この偽装のやり取りの手紙の山を、学園の者を使ってどちらかの部屋に仕込め。人選は任せる』
『畏まりました。侯爵様』
再び場面は変わり、今度は物陰に隠れるようにやり取りをしているフードを被って顔を隠した人物と、獣人の専属使用人―――ミオルである。
『この荷物をバルトファルト子爵かファーレンガルド男爵のどちらかの部屋に置け。もちろん金は払う』
顔はフードのせいではっきりと見えないが、声色から侯爵から指示を受けた男であるのは明白だ。
『いいぜ。そいつらは屑野郎で気に食わないからな』
ミオルが憎たらしい笑みで頷いたところで三度場面は変わり、今度はリオンの部屋。そこでミオル達専属使用人が自分達が運んできた荷物を見つかり難い場所へと置いて部屋を後にする。
そこから早送りで映像は流され―――その荷物から例の証拠とされていた手紙が初めからそこにあると知っていたかのように動いた騎士によって発見される瞬間までバッチリ映っていた。
「おやー?侯爵の捏造の証拠だけじゃなく、俺達の冤罪の証拠までバッチリだー。なんせ、例の証拠は運び込まれたものだったんだからねー?」
リオンがわざとらしく嫌味たっぷりにそう言うと、フランプトン侯爵達は顔を真っ青にして震えている。
何せこの世界では常識外れとはいえ、オレ達が提示した証拠の信憑性を高めるものを見せられたのだ。映像と書面……このダブルパンチを捌くのは、オレ達を侮っていた侯爵達には不可能だ。
「これらはもう既に裏は取れています。実行犯の使用人達も観念して白状しましたよ。この騎士も口を滑らせて、侯爵の指示で動いていたと白状しましたよ」
ミレーヌ様がこの映像は真実だとはっきりと明言する。実行犯は顔写真を渡してすぐに捕らえるように手配したからね。侯爵の手の者である騎士達も同様だ。
ミオルはたまたま逃れたが、事実を知ったリオンの父親によってボコボコにされて捕まえられた。本当は首を落としたかったそうだが、リオンが言い含めていたのでそこは堪えてくれた。
その間も、侯爵達にとって不都合な映像は流れていく。
『侯爵、本当によろしいのでしょうか?知らせでは、公国軍はモンスターを引き連れ、大艦隊で乗り込んできたそうではないですか。このままでは、攻め込まれた領主達は悲惨なことになります』
『予定よりも早かったのは事実だが問題ない。王国軍の編成を急げ』
『すぐに動ける部隊を派遣するべきでは―――』
『必要ない。公国が攻め込んだ領地は、密約で引き渡しが決まっている。この程度で公国が矛を収め、我々の支援をしてくれるなら安いものだ』
『で、ですが、想像以上です。下手をすれば―――』
『王国をまとめあげるための必要な犠牲だ。こちらには新しいロストアイテムの船がある。アレを解析し、取り上げとなる技術もあれば、いずれ失った領地も取り戻せる。それに、こちらと戦争する時は、公国がきりのいいところで退くことになっているからな』
明らかな国への裏切り行為を証明するやり取り。それを目の当たりにした騎士と将軍達は怒気と殺意を瞳に宿して侯爵派の貴族達を睨み付け、侯爵派の貴族達はどんどん顔を青ざめさせていく。
修学旅行以後、フランプトン侯爵の調査は続けていたからな。書面もバッチリ押さえてあるから、言い逃れは不可能だ。
ここから先は、神殿に対する交渉材料となるので終了。次に流れたのは、数時間前のやり取りの映像だ。
『侯爵様!王妃様が、バルトファルトを司令官に推薦し、ファーレンガルドをその補佐にするという情報が入ってきました!』
『あのような小僧共に籠絡されるとは情けない。多少有能でもやはり女だな。陛下も尻に敷かれて情けない限りだ』
映像の中のフランプトン侯爵は完全に不敬罪をやらかしたな。罪状はさらに追加されたな。
『それはともかく、公国が密約を破るとは―――』
『多くの同胞を失いました。我々はこれからどうすれば……』
『ヘルトルーデ殿下を交渉材料にする。奴らは、殿下と魔笛をどうしても取り返したい筈だからな。陛下には内密にことを進めるのを忘れるな。それから―――奴らに、バルトファルトとファーレンガルドの好き勝手にさせるな。魔笛がもう一つあり、超大型モンスターも計算外だったが、奴らも同等かそれ以上に危険だ。いざとなれば、陛下に責任を取ってもらい公国とは手打ちだ』
本当に酷いな。自分たちの失敗をローランド陛下に押し付けるとか。これが国の為とほざくのだから呆れるしかない。
「こ、こんなのはデタラメだ!こやつらは私を罠に嵌めようと―――」
フランプトン侯爵は必死に否定するも、周りの貴族達はもうフランプトン侯爵の言葉を信じていない。
何せ、最初に見せた映像は信用に足るものとミレーヌ様が判を押したからな。信用できると分かった以上、続く映像も事実だと判断するのは当然の流れだ。
「そんなに否定するなら違うという証拠を出せよ。オレ達のようにな」
「この証拠全てに対して弁明できるならね」
そのタイミングで、大量の書面を抱えた数体のロボットが謁見の間に入ってくる。
その抱えている書面は全部、侯爵達が公国と裏で繋がっていたと証明する書面。オレとリオンのでっち上げの証拠の倍の数はある、正真正銘の本物の証拠だ。
無論、ルクシオンなら完全コピーした偽物を大量に用意できるが、今回は敢えて実際に回収した分だけにした。こっちの方がずっと説得力があるからね。
そんな大量の証拠の前で、リオンはさらに煽っていく。
「残念ながら、信憑性が高い証拠はこうして山のようにあるんだよね。こんなに証拠があるのに、どうやって捏造だと証明するのかな?教えてよ、お爺ちゃん?」
言い逃れも誤魔化しも通用しない程の証拠の数々。それを目の当たりにした日和見組だった貴族達は言葉を失い、侯爵派の貴族達はこの世の終わりのような表情で項垂れる。リビアとアンジェ嬢に至っては唖然とした表情だ。
その間も、偵察ドローンで撮影されていた映像は流れていく。
『どいつもこいつも分かっていない!いったい誰が危険なのか分からないのか?アイツらは、公国の艦隊に完勝したんだぞ?その意味がどういう事なのか、本当に分かっているのか?』
『しかし、今は公国が問題です。ここはレッドグレイブ公爵とも協力―――』
『ならば、あの二人を公国にぶつけ、互いに潰し合いをさせろ!家族を人質にとれ。どんな手段を使っても構わん!いいか、奴らを甘く見るな。奴らこそが、危険な存在なのだ!』
『ですが、今の我々に―――』
『奴も奴だ!ヴィンスは一体何を考えている!?あの小僧共を好きにさせれば、それこそ王国は終わりだというのに!それで公国に勝てば、意味がなくなってしまう!奴らだけは、何としても潰さねばならん!!』
その言葉を最後に映像は終わる。
確かにオレとリオンは警戒されて当然だろう。もし、侯爵が本当に王国の為に働いていれば、この証拠の数々も眠ったままであっただろう。
だが―――お前達は自らの利権で動いたんだ。その責任は、ちゃんと取らないとな?
「さて、国の為と言いながら私欲の為に動いた侯爵様方?その結果がこの状況だから、反逆者と見なされて当然だと理解したか?」
オレのその言葉に、フランプトン侯爵はふてぶてしい態度で叫んだ。
「それがどうした?全ては国の為にやったことだ。この国を支えてきたのは私だ。私が、この国を支えてやったのだ!お前のような小僧にいったい何が理解できる!国を維持する為に、必要なことだったのだ!」
「国の為という免罪符はもう通用しねぇよ。お前が国ではなく、私欲で動いたことは明白だろ。その結果がこれ……お前は公国への対応を間違えたんだ。ヘルトルーデが傀儡だった事実も、向こうがまだ切り札を温存している可能性も知りながら、公国を甘く見て対応を間違えたんだ。でなきゃ、こうはならなかったというのにな」
フランプトン侯爵の敗因は自身の利益で動いたことだ。本当に国の為に動いていれば、自身が宰相となるのも十分にあり得たのだから。
「ふざけるな!政治も分からぬお前達に―――」
「分かってないのはお前だ。爺」
オレはフランプトン侯爵の言葉を遮るように、低い声を発する。そして、懐からリボルバー式の拳銃を取り出し、シリンダーを回しながら告げた。
「ここまで証拠があったのに、どうしてオレとリオンは大人しく反逆者として捕まったと思う?その政治とやらに配慮して、わざと捕まったんだよ」
オレはそう言って、拳銃の銃口をフランプトン侯爵の額に突き付ける。
「政治の中核……それをオレとリオンの手で排除すれば、内政は不安定になってしまう。レッドグレイブ公爵の力は弱まったままだし、下手したら泥沼の内乱となって公国が攻め込む絶好の機会となってしまう。だから、政治組が解決することを優先して捕まったんだ。それも、お前達と、それに便乗した連中によって台無しとなったがな」
おかげでその尻拭いをオレとリオンがする羽目となったから、散々だ。
この戦争が終われば、草案を叩きつけて丸投げしてやる。
「分かるか?お前達は、オレらがその気になれば何時でも返り討ちにできたんだよ。ここまで証拠を集めていた時点で、それにすら気づかないお前は―――無能な老害だ」
その瞬間、フランプトン侯爵は顔を真っ赤にして叫んだ。
「おおお、お前に何が分かる!私は国の為に身を粉にして働いてきたのだぞ!!」
「だから国の為になんて使うな。全部、自分が権力を握る為にやったことだろうが」
「その権力を、私が握らねばならないのだ!陛下や王妃が呑気に椅子に座っていられるのも、私が働いたからだ!だから私の判断は間違っていない!断じて、間違ってなどいない!!」
今度は開き直りか。だったら、全否定してやるよ。
「間違っていない?お前は最初から全部間違えてたんだよ。自分の益にならない者を排除するだけでのしあがり、逆の者には利用されていると知らずに媚びを売った。踏み込む度胸も探る慎重さもないお前は、ただの臆病者だ」
「わわわ、私が臆病者だと!?」
「臆病者か……確かにその通りだわ!無害な俺達を過剰に警戒して、危険と判断できる情報がありながら公国を軽視したお前は生粋の臆病者だよ!!」
オレのフランプトン侯爵の評価に納得したのか、リオンは嘲るような表情で同意する。
「そんな生粋の臆病者でも、責任はちゃんと取ってもらわないとな。王国を危機に陥れた責任は、自身の命でちゃんと取らないとな」
オレはそう言って、ガチリと撃鉄を下ろす。
「な、何を―――」
「ここまで確実な証拠がたっぷりあるんだ。不敬罪に反逆罪……この二つの罪が決定的な時点で、お前達の処刑は確実だ。今ここで死んでも、同じだと思わないか?何せ、裏取引に失敗した連中だからな」
オレのその死刑宣告に、取り押さえられている侯爵派の貴族達は嫌だ、死にたくないと恥も外聞もなく暴れ始める。
当然、フランプトン侯爵も暴れ回る。
「ふ、ふざけるな!!こんな―――」
「お前達の尻拭いは、オレとリオンがしっかり処理してやるよ。だから―――安心して死ね」
オレは必死に銃口から逃れようとするフランプトン侯爵の顔を掴み、逃げられないようにして引き金に掛けている指に力を込めていく。
「エドさん!」
リビアの声が聞こえてくるが、オレは無視して引き金を引いた。
カチンッ。
「「「「……え?」」」」
……外れか。運が良かったな、爺。
「どうやら運はお前に味方したようだな。だから―――国によって正式に裁かれろ」
オレは理解が追い付いていないのか、放心状態のフランプトン侯爵にそう言って離れる。
それと入れ違いとなるように、リオンがフランプトン侯爵に近づく。
「取り敢えず、殴っておくね。俺に喧嘩を売った分のお返しとしてね」
リオンは笑顔でそう告げ、フランプトン侯爵の顔面を殴り飛ばした。
それを最後に侯爵と侯爵派の貴族達は衛兵達によって連れて行かれる。
それによって人はさらに少なくなったが……不穏因子は排除できた。
「さて、諸君。色々と不満も文句もあるだろうが……リオンの指示には従ってもらうぞ。何せ、お前達が侯爵達に便乗したせいもあって、こんな状況になったんだからな」
「どうしても嫌だと言うなら―――何時でも立場を代わってやるから、遠慮なく言ってこい。自分ならこの状況を覆して王国を勝利に導けるならな」
オレとリオンの言葉に、騎士や軍人たちは視線を逸らす。納得できないという態度が出ている者もいるが、ほとんどが諦めたかのような態度だ。
何せ、ここまで見事な逆転劇を演じたんだからな。反抗する気力はもうないだろうからな。
「そんなお前達に言ってやる。俺とエドの命令に従えば勝たせてやる。従わないならさっさと逃げろ。今のお前らに許されるのは、俺達の命令に従うことだけだ。だから、俺達の命令で戦って死ね。―――代わりにこの国を救ってやる」
――――――
謁見の間の騒動が終わった後、オレとリオンは部隊編成と段取りを整えていた。
「本当に最悪だ」
「悪いが文句を言う暇はないぞ。大急ぎで部隊編成しないといけないからな」
オレはそう言いつつ、急いで迎撃部隊の編成の草案を出していく。
それに対し、ハーツが疑問をぶつけた。
『決戦の編成よりも迎撃部隊の編成を急ぐ理由はなんだ?キャプテン』
「おそらく連中は、早朝に王都に奇襲を仕掛けるからだ」
何せ、超大型は動きが遅いからな。それに超大型の警戒に誰もが必死だ。その穴を突いて奇襲を仕掛けるのは常套手段だ。向こうの立場なら、オレなら絶対にそうするからな。
『確かに明け方の早朝は気が緩んでしまうタイミングですね。夜通しで警戒する以上、格好の隙となるかと』
「そうなると……連中はどこから攻めてくるんだ?」
「ほぼ間違いなく上空からだ。下からじゃヘルトルーデと魔笛がある王都そのものを破壊する羽目になるし、左右は大幅に迂回しないといけないから時間的に現実的じゃない。上空なら、限界まで高度を上げれば警戒の目をすり抜けられる」
「ルクシオン。王都上空周辺の警戒はできるか?」
『通信状況が悪くなっていますが、範囲を絞れるなら問題ありません』
本当にルクシオンは優秀だな。どこぞの腕輪とは大違いだ。
「……なあ、エド。お前はマジであの爺を殺すつもりだったのか?」
「少なくともそう覚悟して引き金を引いた。確率は二分の一でもな」
あの時の拳銃には弾が三発……それも一つ間を空けて装填されていた。
どうしてそんな周りくどいことをしたのか……それは、必要なことだったからだ。
「リオンはルクシオンが最悪アロガンツを動かしてくれるが、オレはそうじゃないからな」
公国と戦争すれば、間違いなく人を殺さなければならない。もう、不殺が通用する域を越えてしまったのだから。
超大型を操るヘルトラウダは今後の交渉の為に生かせる努力はするが、それ以外は被害面から積極的に取るわけにはいかない。
だから、人殺しの覚悟を固める為にオレはああいった行動を取った。事前に陛下達から許可をもらってな。
「……無理するなよ」
「それはお互い様だろ」
リオンの心配する言葉にオレはそう返し、まだ震えている右手で作業を続けるのであった。
「だから私は反対したんだ!」
「何を言うか!お前だって侯爵の意見に従っただろ!」
「そういう貴様だって!」
「お前こそ!むしろ賛同していただろうが!」
『見事に責任を押し付けあってますね。もう無駄だと言うのに』