チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


それぞれの戦い

王都から少し離れた遥か上空が戦場となった頃。

艦隊が段階的に空へと上がっていく光景を見て、俺は王宮の廊下を駆けていた。

 

「ジルク!」

 

ようやく見つけたジルクはパイロットスーツに着替えている。その事に疑問を覚えつつも、俺は今の状況をジルクに問い質した。

 

「どうして艦隊が出撃している?戦力はまだ集まっていない筈だぞ」

「……又聞きですが、公国の軍隊が本隊とは別に王都に接近していたからだそうです。それも、予想の範囲内だったそうですが」

「なら、何故別働隊で王国を攻める?」

「おそらく、ヘルトルーデ王女殿下と魔笛を取り返そうとしているのではないかと」

 

ジルクのその推測に、俺は苛立ちをぶつけるように壁を握りしめた右手で叩く。

 

「バルトファルトとファーレンガルドは何をしている!」

「既に迎撃に出ています。殿下は王妃様と共にお下がりください」

「馬鹿を言うな。俺も出るぞ」

「それはなりません」

 

突然母上の声がしたのでそちらに顔を向けると、そこには護衛に守られた母上とヘルトルーデがいた。

 

「母上、俺も出撃します。母上たちはすぐに避難を」

「ユリウス、貴方に戦う力はありません」

「それはジルクも同じではないですか!」

 

俺に戦う力がないのなら、同じく鎧を持っていないジルクも戦う力はない筈。

その考えは、ジルク本人によって否定された。

 

「実家に頼み、一機用意してもらいました。他の三人も同じです」

 

性能は三人の方が上ですが、っとジルクは小さく呟くが、俺は一人仲間外れにされたショックからジルクを責めた。

 

「どうしてだ?どうしてお前たちが俺を裏切るんだ!?お前たちは協力しようと言ったじゃないか。あの言葉は嘘だったのか?マリエを一緒に守ろうと誓った、あの言葉は嘘だったのか!?」

 

俺のその言葉にジルクは俯く。そんな俺を母上が止めに入った。

 

「お止めなさい、ユリウス。貴方の使命は生き残ることです。それに、王宮にはもう鎧も飛行船もありません。ここは素直に私達と避難しなさい」

 

そんな……いや、まだ鎧も飛行船もある!

 

「まだあります!公爵家なら、まだ鎧も飛行船も残ってます!すぐに俺が向かえば―――」

「―――貴方はレッドグレイブ公爵家に何をしましたか?公爵家は、既に貴方の支援者ではないのですよ。それに、公爵家の飛行船は総司令官の指示で防衛隊に参加しています」

 

今から行っても無駄だと母上が暗に告げるも、俺は構わずにその場から駆け出すのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

王宮内が慌ただしくなった頃。

私はリビアの手を引いて走っていた。

 

「本当に大丈夫なんでしょうか?エドさん達は……」

『今のところ、戦線はこちら側が若干優位となっておる。三つの防衛線を潜り抜けた鎧やエアバイクが攻めてきているが、防衛隊が対処しておるぞ』

「普段より通信のノイズが酷い中で、ルクシオンが範囲を絞って発見できたんだ。私達では気付かずに奇襲をマトモに受けていただろう。とにかく、王家の船まで移動するぞ」

『そこが一番安全だからね。警備のロボットも向かわせるから安心しなさい』

 

クレアーレの言葉に私は頷き、王家の船を目指して廊下を走る。

本当はこうなる前にリオンとエドと会って話をしたかったが、王家の船に選ばれてしまったせいで私達も忙しくなり、クレアーレとソウルも今は会いに行かない方がいいと釘を差された為、二人に会うことはできなかった。

 

「私達に愛想が尽きたんでしょうか?」

『『それはない―――むっ』』

 

リビアの不安げな呟きをクレアーレとソウルは揃って否定した瞬間、自身の身体をぶつけるように小競り合いを始めていく。

 

『某の言葉に被せるな、青』

『それは私のセリフよ、黄色』

 

……本当にこの使い魔たちもルクシオンとハーツと同じく仲が悪いな。罵詈雑言がないだけマシかもしれないが。

王都の空には既に何隻もの飛行船が姿を見せている。その中には公爵家の飛行船の姿もある。

次第に発砲音と爆発音が聞こえるようになる中、私達の前に肩で息をするユリウス殿下が現れた。

 

「殿下、こんなところで何をしているのですか!?すぐにお逃げください」

 

私は殿下が此処にいることに驚きながらも、急いで逃げるように提案する。それに対し、殿下は私に頭を下げた。

 

「アンジェリカ、頼みがある。お前が持つ戦力……公爵家の艦隊を貸して欲しい」

 

殿下のその頼みに私は一瞬驚くも、すぐに意味を理解して首を横に振った。

 

「彼らは私の部下ではありません。命令できるのは父上か兄上、もしくはリオンかエドだけです。なので、その申し出には従えません」

「なら、鎧一つでもいい。俺は卑怯者にはなりたくないんだ」

「駄目です。殿下、我々と一緒に避難してください」

 

殿下に万が一があれば、王国は不安定になってしまう。それは陛下も王妃様も同じだ。

そんな私の拒否の言葉に、殿下は暗い表情で顔を上げた。

 

「……お前の気持ちを裏切った俺が憎いのか?だから、俺に力を貸さないのだな?」

 

殿下が私を裏切ったから……か。言われてみれば、確かにそう捉えられるな。その気は微塵もなかったのだが。

いや……いつの間にか殿下に対して憎しみも悔しさも感じない。それよりも、早くリオンの顔が見たい。

だからこそ―――私は正直に自身の気持ちを話した。

 

「少し前までなら、憎かったのは事実です。でも、もう私は―――リオンが好きですから。なので、殿下のことはもう恨んでいませんよ」

 

私はそう言って微笑むと、殿下は何故か見惚れたような表情になる。

そのタイミングで、武器を持ったロボット達が私達の前に現れた。

 

『それじゃ、早く地下に行きましょうか』

「ああ。殿下も連れていってくれるか?」

『それくらい、お安いご用よ』

 

クレアーレが了承すると、ロボット二体が殿下の両脇を抱えてそのまま引き摺るように連れていく。

……思わず、笑いそうになったよ。

 

「アンジェ……」

「私は大丈夫だ、リビア。色々と吹っ切れた」

 

私は笑顔でそう言い、リビアの手を握る。

リオン、必ず帰ってこいよ。エドも、リビアが待っているのだから必ず帰ってくるんだぞ。

 

 

 

――――――

 

 

 

公国軍の艦隊。その旗艦にて。

 

「外道騎士と悪魔騎士め!またしても我々の邪魔をするのか!!」

 

奇襲部隊の責任者である公国の白髪の重鎮は苛立ちを露に吐き捨てる。

フランプトン侯爵との裏取引で公国軍を撃退した英雄―――外道騎士と悪魔騎士を偽のやり取りの書状で反逆者に仕立て上げて封じた筈が、艦隊を率いて戦場に出てきているのだから予想外にも程があった。

 

「最低でも魔笛は回収せねばならぬと言うのに……!」

 

今公国にある魔笛―――ヘルトラウダが使っている魔笛は空の守護神と海の守護神を呼び出せるのに対し、奪われた方の魔笛は大地の守護神を呼び出すことができる。

だからこそ、ヘルトルーデを救出するという大義名分で奇襲部隊を作って一足先に王都に襲撃をかけたのだ。

 

「強引に突破した飛行船はどうなっている!?」

「そ、それが……別の艦隊が陣を取っていたと報告が……鎧部隊とエアバイク部隊も強引に突破していますが、そちらも同じようで……」

 

奇襲が完全に読まれ、逆に劣勢となっている事実に責任者は地団駄を踏み始めた。

 

「どうしてだ!?どうして、奇襲が失敗に終わる!?我々が王国を蹂躙する筈が、何故追い詰められているのだ!?」

 

何とか八隻を強引に突破させたにも関わらず、別の艦隊によって迎撃され、本懐を果たせずにいる。

外を見れば、黒い鎧―――アロガンツの背中のコンテナからはミサイルが放たれて飛行船に襲いかかり、紫の鎧―――ゼクトールが右手に持つ三つの武装を一つとしたオレンジ色に輝く巨大な光の刃が飛行船を斬り裂く。

 

「既に半数以上の船が沈みました!鎧も次々と撃ち落とされ……これ以上は……!」

「そんな事は分かってる!こうなれば、飛行船を王都の城に―――」

 

船も軍人も犠牲にしてでも王都にダメージを与えようと命令した矢先、ゼクトールが艦橋の前に降り立った。

 

『この船が旗艦だな』

 

そんな声が聞こえたかと思うと、ゼクトールは例の巨大な光の刃を宿した武器を両手で掲げる。

 

「ま、待て!早ま―――」

 

責任者は命乞いをするも、その身体はオレンジ色の光に包まれるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ヴ……」

『また吐くか。これを処理する自分の身にもなってもらいたいものだな』

 

ハーツの呆れにオレは返すことなく、口元の魔装だけを解除して口を拭う。

旗艦を潰したオレは、大型のビット兵器と二つのガンブレードを一まとめとした状態を解除する。

 

『旗艦が潰れたことで、一部の者が白旗を上げ始めているな』

「降伏した場合は警戒しつつ受け入れるように前もって指示は出しているから、一応は従ってくれているな」

 

それでも、抵抗を続けている奴等の方が多いがな。

 

『死ね!悪魔騎士ぃいいいいい!!』

 

そんな雄叫びと共に後ろから公国の鎧が斬りかかるが、光の刃を発生させた小型のビット兵器に刺し貫かれ、そのまま力を失ったように動かなくなる。

そのタイミングで、リオンのアロガンツが隣に降り立った。

 

『……エド。こっちは粗方片付いた。残りは部隊の者に任せ、俺とお前は王都に辿り着いた連中の対処に向かうぞ』

「……ああ」

 

リオンのその指示にオレは頷き、共に王都に向かって飛んでいく。

道中の公国の部隊は群がる奴だけを吹き飛ばして向かうと、王都にも戦闘の被害が出ていた。それも現在進行形で。

 

「もう勝負はついただろうが」

『全くだ。修学旅行の時といい、こいつらは何でまだ戦うんだよ』

 

とにかく、今は連中の対処だ。

オレはリオンと二手に分かれ、未だに抗戦している公国の連中の対処に向かっていく。

特に避難場所を攻撃している連中を優先的に潰し、避難民の安全を確保していく。

その中で、アトリー家が保有している飛行船が公国軍の襲撃を受けていた。

 

『待って、この船は軍艦じゃないわ!避難民を乗せているの!』

 

この声……クラリス先輩か。避難民の脱出を手伝っていたのか。

 

『避難民でも関係ない。王国の外道共は殺して罪を償わせる』

 

……関係ないだって?

 

「外道はお前達の方だろうが」

 

オレはわざと周りに聞こえるようにそう告げると、オレは避難民を乗せた飛行船を攻撃していた公国の鎧を赤熱化したガンブレードで躊躇いなく縦に両断する。

 

『な―――』

 

真っ二つにされたお仲間の姿に固まる公国の連中に構わず、オレは銃のように構えたガンブレードから炎の槍を発射して鎧の胸部を撃ち抜く。もちろん、操作しているので避難民を乗せた飛行船には掠りもしない。

そして、残り一機となった鎧に近づき、ガンブレードで両腕を叩き斬った。

オレは両腕を失った鎧の首もとを掴み上げ、船から引き離して告げる。

 

「もうお前達の負けだ。命が惜しければ、素直に降伏しろ」

『ふざけるな!誰が王国の外道に―――』

 

降伏する気がないと分かった瞬間に、オレはガンブレードを胸部に突き刺し、物言わぬ骸へと成り下がらせる。

その光景に互いのエアバイク部隊の動きが止まる中、オレは放電準備した状態で告げる。

 

「降伏勧告は一度だ。今降伏するなら命は取らない。そうでなければ……分かってるな?」

 

オレのその最終通告に、公国の兵士達は観念したのか地面に降り立ち、両手を上げた状態でエアバイクから降りる。

 

「降伏した連中は無暗に殺すなよ。お前達も降伏した振りして襲いかかれば、その瞬間に全員殺すからな」

 

そう釘を差して、オレは骸と化した鎧を投げ捨て次の戦場へと向かう。

数十分後、公国の奇襲部隊は王国の迎撃部隊に敗北するのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

騎士や兵士、学生達が降伏した公国軍を拘束する中、私は紫の装甲を纏った鎧―――ゼクトールが飛び去った方向を見つめる。

一切の手加減のない戦い方。降伏勧告も一度だけと慈悲が殆どない対応。

明らかに、エド君は無理をしている。それは感情を殺したような声を出した時点で明白だったが。

 

「エド君……覚悟を決めたのね」

 

私は心配げに、そう呟くのだった。

 

 

 

――――――

 

 

 

浮かび上がる大地と海の隙間。

その隙間に、ルクシオン本体はいた。

 

『ついに子機とのリンクが切れましたか。マスターの指示とはいえ、不安が尽きませんね』

 

その不安の最大の理由がプロトタイプの魔装にある。あれは新人類の凶悪な兵器の原点とも言える兵器だ。そんな兵器がルクシオンのマスターであるリオンの近くにいる。それだけで、他の不安要素は些事となるのだ。

それも、海面から顔を覗かせた大きな人の顔をした超巨大モンスターによって一応は隅に追いやられたが。

 

『何とも大きなモンスターですね』

 

ルクシオンは落ち着いた感じでそう呟くと、その超巨大モンスターに対してスキャンを開始していく。

 

『調査した魔笛のデータだけでなく、実験場から回収したデータもあって良かったです。おかげで―――正確に把握できます』

 

ルクシオンは以前回収したエルフに関するデータを応用して、魔力を色で識別するセンサーを作り上げた。

武装の方も、魔力への簡易干渉ができるように改造済みだ。

 

そんな自身の改造を施したルクシオンは主砲を発射。大地に突き刺さっていた腕を全て切断して黒い霧へと変える。

ルクシオンの攻撃に超巨大モンスターは海面から次々に触手を放つも、それはルクシオンから放たれたレーザーによって意図も容易く切り払われる。

 

『色の異なる魔力を切断しましたが……どうやら本当に効果があるみたいですね』

 

ルクシオンはどこか迷うような仕草をした超巨大モンスターに対してそう言いながら、一発のミサイルを叩き込む。

ミサイルは命中すると大爆発を起こし、超巨大モンスターを吹き飛ばしてしまう。

 

超巨大モンスターから黒い霧が吹き出し、周囲の視界を覆い尽くすように広がる。それに構わず、ルクシオンはレーザーを発射して色の異なる魔力を次々と切断していく。

魔力を切断する度に、超巨大モンスターは徐々にその場から移動しようと動く。

 

『この分なら、貴方と使用者の繋がりは切られますね』

 

しかし、当然ながら問題はある。

いくらこちらで魔力の繋がりを断ち切ろうと、もう一体の繋がりがそのままであれば使用者は死ぬことだ。

そっちはあの憎たらしい新人類の兵器に任せるしかないのが、本当に不本意で屈辱極まりないが。

 

リオンとパルトナー、今のアロガンツではもう一体の魔力の繋がりを断ち切ることができない。子機とのリンクが切れ、最低限のサポートしかできなくなっている今では、どうやっても不可能なのだ。

 

『あれが死ぬのは構いませんが、マスターの生存率に繋がっているのが本当に不愉快ですね。それに、その後もどうなるか不明なのも問題です。総合的に判断すると、この状況は避けられない事態だった可能性が高いので』

 

ルクシオンは今まで集めた情報から、どう転んでも公国側から攻めてくるのは必然であると判断していた。

言ってしまえば、早いか遅いかの差。例えフランプトン侯爵を早々に排除していても、聖女を得た教会の暴走で同じ状況に陥った可能性も十分にあり得た。

 

『その意味では、ベターなベストと言えますね。最悪には変わりありませんが』

 

ルクシオンは超巨大モンスターの動きを封じ、魔笛の使用者との繋がりを断ちつつ、艦内にあるファクトリーにあるシュヴェールトの改修を続けていく。

 

『例の素材の複製には一苦労しましたが、これで本格的に始められます。シュヴェールト、マスターの為に生まれ変わりなさい』

 

 

 

――――――

 

 

 

空の守護神と共に移動する公国軍本隊。

その旗艦の中で、ヘルトラウダは信じられない報告を受けていた。

 

「救出部隊が奇襲に失敗した挙げ句、目的も果たせずに全滅した……と?」

「はい。最後となった通信では、外道騎士と悪魔騎士が出てきていたようで……」

 

重鎮の一人である壮年の男の報告に、ヘルトラウダは顔を顰める。

一番厄介だと考えられていた可能性―――リオンとエドワードが戦場に出ることが現実となってしまったのだ。

王国は数日前の敗北で戦力の招集に必死で、勝負も本隊への突撃になると考えて不意を討つ形でヘルトルーデの救出と魔笛の回収の為の部隊を送ったのだが、それが見事に読まれて失敗に終わってしまった。

 

「……再度、姉上の救出部隊を派遣するのは?」

「それはなりません。最初の奇襲が失敗した以上、同じ手は二度も通用しないでしょう。逆にイタズラに戦力を消耗するだけです」

 

重鎮のその言葉に、ヘルトラウダは悔しそうに口を噛む。

 

『ォオオオオオオオッ!!』

 

そのタイミングで、旗艦の甲板に立っていた黒い不気味な鎧が咆哮を上げる。

黒い不気味な鎧は身体中の目玉をギョロめかせると、コウモリのような翼をはためかせてその場から猛烈な勢いで飛び立った。

 

「バンデル!?」

 

黒い不気味な鎧―――【魔装】を身に纏ったバンデルの突然の行動にヘルトラウダは驚きを露にする。

ヘルトラウダがバンデルと再会したのは数日前の侵略の時だ。その時点から、フランプトン侯爵との裏取引で手に入れた魔装を纏っていたが。

その光景を見ていたのはヘルトラウダだけではない。別の飛行船で待機しているクロウも、その光景を見ていた。

 

師匠(せんせい)……」

 

飛んでいった方角からして、王都に向かったであろうバンデルにクロウは不安げな表情で呟く。

 

(久しぶりに再会した師匠(せんせい)はどこかおかしかった。上層部は魔装の影響だと説明していたが……本当にそれだけなのか?確かにあの師匠(せんせい)の戦いは圧巻の一言だったけど……師匠(せんせい)らしくないとも思った……)

 

だが、この状況でクロウにできるのは戦うことだけだ。

クロウは自身の無力さを痛感しながら、師が消えた空を見つめる。

そんな中、ヘルトラウダは重鎮達に問い質していた。

 

「あれはどういう事だ?何故、バンデルは勝手に動いた?」

「それは私達にも分かりませぬ。方向からして、王国の王都に向かったと思われますが……」

 

重鎮の困惑したその返答に、ヘルトラウダは目を閉じる。あの速度では足の速い飛行船でも追い付かないからだ。

 

(こうなっては仕方ありません……バンデル、どうかお姉様をお願いします)

(まさか、命令もなく勝手に動くとは……例の薬で王国への憎悪のみが残り、我々の命令でしか動けなくなった筈なのに……)

 

ピキ……

 

ヘルトラウダが祈り、重鎮が苦々しく思う中で響いた小さな音に、その場にいた誰もが気付くことはなかった。

 

 

 




「何で連中は避難場所を優先して狙うんだよ」
『傍受した内容からして、一人でも多く王国の人間を殺したいようですね』
「本当にどっちが外道だよ。逆恨みした挙げ句、相手は駄目で自分達は何をしても良いと考えているんだからな」
『戦争はいつもこんなものですけどね』
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