チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


愛という名の精神攻撃

王国軍と公国軍が激しく戦っている。

例の巨大モンスターはパルトナーが抑え込み、互いの飛行船が激しく撃ち合い、鎧達もぶつかりあっている。

その様子を私は見ながら、震えているリビアを抱きしめて支えていた。

 

「リビア、少し休め」

 

私はリビアを気遣うも、リビアは首を横に振る。そして、涙を零しつつ両手で頭を押さえながらも口を開いた。

 

「……苦しいです。どうしてみんな戦うんですか?こんなに苦しいのに―――どうして?」

「どうして……だろうな」

 

私は答えを学んできた筈だが、実際に目の当たりにすると答えが分からなくなる。

 

「ちょっと!この船の周りにも敵が集まってきているんですけど!」

「静かにしろ!」

「は、はい!」

 

マリエが情けない叫びを上げたので一喝すると、縮こまったように頷く。本当に情けない聖女様だ。

 

「周囲には護衛艦もいる。それに、この船は簡単には落ちない」

 

実際、公国軍の攻撃はバリアによって弾かれ、モンスターや鎧ですら侵入できない程だ。

 

『一番脅威のアイツはパルトナーが抑え込んでるから、この船は落とせないわ。そこの盾要員が働いているのもあるけど』

『この程度の輩に破られるわけがないであろう』

『それじゃ、二人とも準備はいい?あと、マリエも』

「オマケ扱いしないでよ!」

 

クレアーレのオマケ扱いにマリエは文句を言うが、私が睨み付けるとサッと顔を逸らして黙った。

私は泣き続けるリビアを支え、優しく語りかける。

 

「リビア、こんな戦いは早く終わらせよう。出来るな?」

 

私の声にリビアは頷き、胸の前で両手を組む。

私もそれを真似ると―――声が聞こえてきた。

 

《助けて!死にたくない!》

《母さん、助けて!》

《痛い……痛いよぉ……》

《だから、戦争なんてしたくなかったんだ》

 

消えていく命と声が全身に響くように感じ取れる。

リビア……お前はずっとこれを感じ取っていたのか?こんなにも胸を痛める声を一人で。

その事実に私は胸の苦しくなる思いと共に、自身への情けなさを痛感する。

 

『オリヴィアの能力に反応してるわね。やっぱり、この機能は後から付け加えられたものね』

『共鳴、増幅に近しいな。偶然か必然かは分からぬがな』

 

クレアーレとソウルが考察していると、マリエが声を上げる。

 

「いやぁあああ!前から大きなモンスターが!」

 

泣き顔となっているマリエの言う通り、モンスターが大きな口を開いてヴァイスに迫って来ている。

それも、強固なバリアによって阻まれたが。

 

『某が防いでいる間に早く処理しろ』

『命令しないで頂戴―――それ』

 

ヴァイスの主砲がそのモンスターを簡単に撃ち抜き、吹き飛ばす。

 

『マリエも働いて頂戴』

「え?何をすればいいの?」

『二人の真似をして、後は聖女の力で何とかしろ。何もしなければ、あの世の一方通行だ』

 

ソウルの言葉にマリエが慌てたように私とリビアの真似をして祈り始めると、船全体が震え始めた。

それと同時に暖かい気持ちが溢れ、落ち着いてくる。

そんな私の心に思い浮かんだのは、四人で楽しくお茶をする光景だった。

 

 

 

――――――

 

 

 

後ろから放たれる光に気付き、オレは黒騎士のジジイに警戒しながら後ろを確認した。

周囲の鎧も飛行船も動きを止め、戦闘も中断している。

モンスター達は、ヴァイスから放たれた光に触れた瞬間に黒い霧となって消えていっている。

 

「これが……王家の切り札なのか」

 

多くの鎧が、手に持っていた武器を落としていっている。敵味方問わずにだ。

通信装置のノイズも鳴りを潜めていき、空を覆っていた分厚い雲すらかき消えて青空が見える始末だ。

 

「愛の力って本当に―――」

 

その光景にオレは軽く戦慄していると、戦意が急激に衰えていく。

―――まるで、無理矢理に戦意を奪われたようだ。

 

(もう争わないで。私は―――こんな戦いを見たくない。お願い、戦いを止めて!)

 

リビアの悲痛な声が聞こえてくる。

また、彼女を傷つけ―――

 

『キャプテン!』

 

その声にまるで夢の中にいたような感覚が消え、現実へと引き戻される。

 

「―――っ!かはっ……い、今のは……」

 

思考がクリアとなったオレの疑問に、ハーツが答えた。

 

『精神干渉攻撃だ。オリヴィアとの相乗効果で無差別広範囲攻撃となったみたいだがな』

 

精神攻撃って……それも無差別とかタチが悪いだろ。

 

『精神攻撃に気付いて自分がすぐに防御を張ったが、通常ならあれで終わっただろうな』

 

ハーツの言葉にオレは確かにと頷く。

あれはとてつもなく凶悪な精神攻撃だ。ある程度覚悟があったオレでも戦意が根こそぎ奪われたのだ。

大抵の……それも思考停止したような憎悪に流されるまま戦っている連中には抗う術はない。

 

「モンスターも消えるのは何でだ?」

『推測だが……強制停止の命令を強引に受信させられたからだと判断する。魔笛も、音色を介してモンスターに命令を送っているからな』

 

強制停止……確かにしっくりくるな。モンスターは元々は戦争の戦力だったみたいだし。

見れば、例の超大型が不気味な声を上げて消え去っている。範囲からして、もう一体の方も同じ末路を辿っていそうだな。

 

「ハーツ。例の切断は上手くいったのか?」

『しっかりやってやったぞ。あの過剰搭載船がちゃんと仕事していればという前提が付くが、最悪でも衰弱して倒れる程度に収まっているだろうよ』

「それなら上々だ」

 

本来は死ぬのを、そこまでグレードダウンしたんだ。

ルクシオン本体だって、しっかり仕事をしているだろうから心配ない。

……ハーツと張り合う意味でな!

 

「一先ず、向こうの切り札は潰えたんだ。さっさと降伏勧告を……」

 

そこまで言って、オレは違和感に気付いた。

 

「……黒騎士のジジイがいねぇ!?」

 

オレは慌てて周囲を見渡すも、あの目玉をそこかしこにギョロめかせた鎧を身に纏った黒騎士のジジイの姿が見えない。

一体どこに……!?

 

『キャプテン!例の魔装の反応がヴァイスに向かって進んでいるぞ!!』

「何でヴァイスに向かうんだよ!?」

 

ハーツからの報告に、オレは疑問を露に問い質す。

 

『おそらく、例の精神攻撃で均衡が完全に崩れたのだろう。実際、進路上に公国の船があろうと構わず突き破るように突撃しているようだ』

 

どうやら、ヴァイスから放たれた精神攻撃でギリギリ保っていたらしいバランスが壊れてしまったらしい。

本来は敵味方問わずに暴れるのに、判別できていたのは皮肉にも薬のおかげだったようだ。

オレは戻ってきたビット兵器を収納すると、ヴァイスに向かって一気にゼクトールを加速させた。

 

 

 

――――――

 

 

 

『ォオオオオオオオオッ!!』

 

バンデルは獣の如き咆哮を上げながら、ヴァイスへと一直線に向かっている。

その道中にあった邪魔な飛行船や鎧は持っていた大剣と魔法を駆使して排除し、ついにヴァイスへと到達する。

 

『グヌゥ!?』

 

ヴァイスとの距離が目と鼻の先となったところで、強固なバリアが弾き飛ばしバンデルの行く手を阻む。

 

『ガァアアアアアアアアッ!!』

 

バンデルは大剣は力任せに振るい、何度も自身を阻んだバリアに叩きつける。

大剣がバリアに叩きつけられる度にヒビが入り、徐々に大きくなっていく。

ヴァイスも武装を全部バンデルに向けて放つも、バンデルは避ける素振りも見せずに大剣を振り続ける。

 

そして、バリアが破れるのと同時にヴァイスの全砲撃がバンデルに命中する。

煙が立ち込めるが、そこから大してダメージを負っていないバンデルが現れ、ヴァイスの甲板に降り立った。

 

『ァアアアアアアアアアッ!!』

 

バンデルが雄叫びを上げると共に、左手から光線と思わせる程の火柱が上る。

その火柱はヴァイスの船体を突き破り、至るところで火を噴かせ始める。

バンデルは更に攻撃を加えようとしたところで、艦橋から声が飛んでくる。

 

『待ってください。もう止めましょう。こんな戦い、終わらせないと駄目なんです!』

 

オリヴィアはバンデルにそう呼び掛けるも、今のバンデルには届かない。届く筈がない。

当然、バンデルは艦橋に向かって大剣を構え、そのまま潰そうとする。

その攻撃は、後ろからの攻撃で中断された。

 

『そこまでだ!』

 

白く、マントを着けた鎧が剣を持って向かってくるも、バンデルは大剣の腹で簡単に吹き飛ばしてしまう。

 

『ぐあっ!』

 

そんな声に構うことなく、緑色の鎧がライフルを撃ってくるも、魔装の装甲を弾くだけで終わってしまう。

 

『くっ……これを弾きますか』

 

緑色の鎧に乗っているジルクは苦虫を噛み潰したように呟くが、バンデルは構わずに巨大な火球を放ってジルクの鎧を吹き飛ばす。

今度はバンデルの周囲に展開されたスピアが間接部分を突き刺すも、逆に突き刺さった部分から折られて使いものにならなくさせられる。

 

『このぉおおお!!』

『これ以上やらせるか!!』

 

赤い鎧と青い鎧―――グレッグとクリスが挟み込むように攻撃を仕掛けるも、大剣と尻尾で難なく吹き飛ばしてしまう。

 

『グゥオオオオオオオオ―――ッ!!』

 

バンデルは再度咆哮を上げ、周囲に無数の火球を無差別に放つ。

放たれた火球はヴァイスに、護衛艦に、鎧に―――味方である公国の者にまで命中し、炸裂する。

 

『ぐっ……なんだ、アレは?敵も味方もお構い無しなのか?』

『どう見ても正気に見えねぇよな?』

『だが、私達がやることは変わらない』

『そうだね。愛するマリエを守ることには変わりないよね』

『ええ。この命に代えても、マリエさんは必ずお守りします』

 

五人の鎧は既にボロボロで満身創痍だが、それでも退かずに戦おうとする。

 

『ゥゥゥ……』

 

バンデルは呻き声を上げて大剣を掲げようとすると、何者かに突然吹き飛ばされる。

吹き飛ばした者の正体は……エドワードが駆るゼクトールだった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ヴァイスがもうボロボロじゃねぇか」

『オリヴィア達が無事なのは不幸中の幸いだがな』

 

本当に正規の魔装の無双振りに戦慄していると、黒騎士のジジイは新たな標的に狙いを定めたかのように突撃してきた。

オレはすぐにガンブレードで受け止めるも、パワー負けして吹き飛ばされてしまう。

 

「完全にパワー負けしてるぞ!」

『無意識に抑えていた力が、余すことなく発揮されているな。もしかしたら薬の影響もあるやもしれん』

「脳のリミッターが外れたというアレか!?」

 

もしそうなら、本当に最悪な薬だな!

そんなやり取りをしている間に黒騎士のジジイが猛烈な勢いで迫って来ている。

 

「クソッ!」

 

オレはガンブレードから連続で光線を放つも、黒騎士のジジイは軽々しく避けて体当たりしようとしてくる。

オレはそれを避け、背中にマウントされたままの大型のビット兵器の先端を黒騎士のジジイに向け、そこから光線を放つ。

 

振り返っていたらしい黒騎士のジジイはそれも避けると、身体中の目玉から熱線らしきものが放たれる。

オレはすぐに艦橋の前に移動して小型のビット兵器を正面に展開してバリアシールドを展開。放たれた熱線を防ぐ。

艦橋だけ防御していたので、それ以外は撃ち抜かれて火の手が更に上がっていく。

 

「リオンはマジで何してんだ!?」

 

オレがまだ来ないリオンに文句を言った直後、無数のミサイルが黒騎士のジジイに命中した。

 

「遅いぞリオン!」

『助けたのに文句言うなよ!遅くなったのは認めるけどさ!!』

 

リオンはそう言うと同時に、アロガンツがゼクトールの隣に降り立つ。

 

『それよりコイツはマジで誰なんだよ。せっかく終わろうとしてたのに』

「黒騎士のジジイだ。薬によってもう正気がないみたいだが」

『嘘だろ!?』

 

オレがもたらした事実に、リオンは本当に驚いたように声を上げる。

 

『黒騎士の爺がチート使うとか……マジで勘弁してくれよ』

「悪いが文句を言う暇はないぞ。何とかして―――」

 

その時、湖がせり上がり、そこから山が出現した。

 

「今度は何だ!?」

『―――嘘だろ』

 

何の前触れもなく湖から出てきた山にオレは困惑していると、リオンは信じられないといったように言葉を溢す。

 

『キャプテン。あれはソウルが調べあげた魔笛のデータの中にあった超巨大モンスターだ』

「何だと!?」

 

あれがリオンが言っていたゲーム―――初作のラスボスか!?

 

「何で出てくるんだよ!?」

『分からん。少なくとも、誰かが魔笛を使ったとしか……』

 

そう話している間に、黒騎士のジジイが動いた。

 

『オオオオオオオオッ!!』

 

黒騎士のジジイが如何にも灼熱光線と形容すべき火炎放射を放ってきた。

オレとリオンはすぐさまシールドを張って防ぐも、ヴァイスにダメージがどんどん蓄積されていく。

このままじゃ、被害が拡大するだけだ。

 

「リオン!お前はあの超大型をどうにかしろ!!オレはアレをどうにかする!!」

『ちょ、おい―――』

 

オレはリオンに一方的にそう言い、切り札を切った。

 

「ハーツ!オーバードライブだ!!」

『了解だ。キャプテン!』

 

その瞬間、全身から碧い光が放たれ始める。

肉体の負担を度外視した過剰出力状態―――【オーバードライブ】を発動したオレはその力でゼクトールの出力を強引に跳ね上げる。

 

オーバードライブの恩恵を受けたゼクトールは、機体の各部から漏れ出るように碧い光が放たれていく。

その状態で飛び上がり―――ほぼ一瞬で黒騎士のジジイとの距離を詰めた。

 

『グヌゥ!?』

「場所を変えるぞ、ジジイ!」

 

オレはそう叫ぶと、組み付いた状態で落下し始めたヴァイスからどんどん距離を取っていく。

 

『ガァッ!!』

 

黒騎士のジジイが力任せに振りほどくが、ヴァイスとの距離は十分に取れた。艦隊からも引き剥がしたから、周りを気にする必要もない。

 

「せっかくだから、張り合ってみるか?万全の試作と壊れた正規、どっちが上かをな」

『あんな壊れた魔装に負ける筈がないだろう』

 

相棒のそんな張り合いに苦笑しつつ、オレは黒騎士のジジイが振り下ろした大剣をガンブレードで受け止めるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

―――時は少し遡る。

 

「ラウダ……ラウダ……」

 

私は魔笛を片手に持ち、大事な妹の名前を口にしながらラウダの私室を目指していた。

王国の謎の攻撃で憎しみも何もかもが奪われ、戦う気力を失いながらも妹の傍にいたいという思いから覚束ない足取りで廊下を歩いていた。

空の守護神が消えてしまった以上、ラウダの命はない。もしかしたら、もう息を引き取っているのかもしれない。

 

それでも、傍に居たかった。

家臣に色々言われて会えなかったけど、今はとにかくラウダに会いたい。それが、今の私に残っているものだ。

そうしてラウダの私室に入ると―――目を疑った。

 

「……え?」

 

私の目に入った光景はうつ伏せで床に倒れたラウダの姿。すぐ近くには粉々となった魔笛の残骸がある。

それ以上に目を奪われたのは、ラウダを容赦なく踏みつけている重鎮の姿だった。

 

「小娘が失敗しやがって!親も親なら、子も子だな!戦争に反対したから殺して、何も知らない娘達をいいように利用したのに!」

 

……え?

利用した?私達を?父上と母上を殺して?父上と母上は事故で死んだんじゃなかったの?

 

「黒騎士も黒騎士だ!戦争を望んでいたのに、いざあの役立たず共を殺したと知ったら我々に牙を向けやがって!だから薬漬けにし、侯爵との密約で手に入れた魔装も使って戦争の道具に仕立て上げたというのに!悪魔騎士に抑え込まれるとは本当に使えない!!」

 

バンデルを薬漬け……?じゃあ、バンデルの様子がおかしかったのは……

 

「もう終わりだ。何もかもおしまいだ。都合の良いことだけ教えて、躊躇いもなく命を差し出す程に仕立て上げたのに。あの化け物を使えば王国に勝利し、土地を、浮遊石を大量に手に入れられると思ったのに。まさか、王国が無力化するとは!」

 

その時、私の脳裏にあの言葉が甦った。

 

『このままだと、自分の国によって全部失うぞ』

 

悪魔騎士……エドワードのあの言葉。まさに、その通りになった。

何も知らず、道化の自覚もなく良いように利用されたせいで……全部失った。

両親も。騎士も。妹も。

 

「フフ……」

 

私は力なく笑いつつ涙を流しながら、魔笛を吹く。

 

「な―――」

 

魔笛の音で男は私に気付いたが、もう遅い。

魔笛によって出現したモンスターは、私の意に従い男に襲いかかって食らいつく。

 

「や、止め―――」

 

男の命乞いを無視し、私はそのまま部屋を後にする。

もう、すべてがどうでもいい……全部失ったのなら、全部壊してしまえばいい。

 

「……そうよ。もう、全部壊れてしまえばいいのよ。私には、もう何も残っていないのだから」

 

私は甲板に出ると、再び魔笛を吹く。

呼び出すのは大地の守護神―――空の守護神と海の守護神と同じく、命を対価として呼び出せる強大なモンスターだ。

 

「全部……全部、みんな消えればいいのよ!私から何もかも奪ったのなら……今度は私が奪ってやる!こんな世界、滅べばいいのよ!!」

 

呼び出された大地の守護神は私の命令に従い、周りにいるすべてを攻撃していく。

そう……それでいいのよ。世界のすべてを滅ぼすまで暴れなさい!!

 

 

 

――――――

 

 

 

身体に力が入らない。

魔笛も粉々に砕け散った。

空の守護神だけでなく、海の守護神も破られた以上、私は代償によって死ぬだけ。

 

憎しみも恨みも奪われ、私は何の為に死ぬのか分からなくなる。

そんな私に、容赦なく家臣が蹴りを加えていく。

痛いのに動けない。叫べない。本当に死ぬのかと思っていると、信じられない言葉が耳に届いた。

 

「小娘が失敗しやがって!親も親なら、子も子もだな!戦争に反対したから殺して、何も知らない娘達をいいように利用したのに!」

 

……え?お父様とお母様を殺した?

 

「黒騎士も黒騎士だ!戦争を望んでいたのに、いざあの役立たず共を殺したと知ったら我々に牙を向けやがって!だから薬漬けにし、侯爵との密約で手に入れた魔装も使って戦争の道具に仕立て上げたというのに!悪魔騎士に抑え込まれるとは本当に使えない!」

 

バンデルが薬漬けに……バンデルの様子がおかしかったのは、魔装の影響ではなかったの?

それが事実だと思ったら……涙が出てくる。

お父様とお母様を殺した彼らに良いように使われて死ぬだなんて……何も知らないで死ぬ方がよっぽど良かった。

 

彼らからしたら都合の良い道具が失敗して死ぬだけ。それはあまりにも……悔しくて、哀しかった。

ごめんね、お姉様。一人にしてしまって……何も知らなかった不出来な妹で、ごめんね。

私は死を予感しながら大好きなお姉様に謝り続ける。

 

……。

…………。

……………………。

…………?

 

……どうして、意識が消えないの?

そこでようやく、私は有り得ない事態に気が付いた。

 

「……わ、たし……生き、てるの……?守護神を……呼び、出したのに……どうして……?」

 

身体の倦怠感が凄まじく、立ち上がることさえかなりの労力を使うほどだが、確かに生きている。

見れば、私を蹴っていた重鎮の姿が見えない。飛び散った血の跡があるだけだ。

 

「お……ねえ、様……」

 

私は力が入らない身体に鞭を打つように何とか立ち上がり、壁に身体を預けながらお姉様を探すのであった。

 

 

 




「最近、アイツがしつこいんだよねー」
「私も……何度お断りしているっすのに……」
「お互い、迷惑な男に付きまとわれて大変だね」
「そうっすね、ノエっち。今はこのクレープを食べて嫌なことは忘れるっすよ!」
「そうだね、ティア。このフルーツたっぷりのクレープを食べて今だけは忘れようか」
『やれやれ。駄目マスターもノエルもよく食べますね。体重計を前に叫ぶ姿が容易に想像できますよ』
(余計なお世話っすよ、ラプっち!)
『そして、太りすぎで死ね』
(太らないっすよ!ちゃんと体重管理はしてるんすから!!)
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