チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


やっぱりアイツ、主人公だわ

本当にどうしてこうなった?

最初のラスボスは出現するし、黒騎士はチートを得て無茶苦茶強くなっていたし。その黒騎士はエドが相手しているけど。

弟子の野郎はヴァイスの攻撃で動けなくなっていたから放置したけど、こうなるとどう動くか分からないし。

 

「チートがあってこれとか、本当に嫌になってくるよ」

 

ヴァイスは黒騎士の無差別に近い攻撃で沈んでしまったし、あの超大型に対して打てる手が無くなってしまった。

そう思っていたら、超大型のモンスターが山のような部分から棘を出し、周囲にいた飛行船に向けて次々と放った。

 

「……は?」

 

その光景―――王国、公国と関係なしに攻撃している超大型モンスターの行動に俺は抜けた声を洩らす。

しかし、すぐに我に返ってルクシオンに問い質した。

 

「どうなっているんだ!?」

『不明です。少なくとも手当たり次第に攻撃しているようです』

 

制御できていないのか?いや、今はアレをどうにかしないと!

 

「パルトナーは!?」

『邪魔をされ、思うように超大型を攻撃できていません』

 

パルトナーは超大型に攻撃を続けているが、周囲の公国軍から集中砲火を浴びて思うように攻撃できていない。

 

「俺の船を狙う暇があるなら、あの超大型を先に何とかしろよ!!」

 

どう見ても異常事態にも関わらず、構わずパルトナーに攻撃している連中に俺は苛立ちを露に吐き捨てる。

そんな中、仮面の騎士―――もとい殿下が俺に話しかける。

 

『バルトファルト、ここからどうする!?新たな超大型が出てきた以上、倒す方法を失った我々が不利だ!』

「分かってるよ!」

 

実際、パルトナーも残った弾薬を全て吐き出した直後に限界がきて、集中砲火によって沈んでしまったしな。

 

『―――お待たせしました』

 

そのタイミングで、ルクシオンの音声が普段のものになる。

 

『コンテナをパージします』

「ちょっ、おい!?」

 

いきなり戻ってきたと思ったら、エンジンノズルがある背中のコンテナを問答無用でパージしやがった。

 

「いきなり何してくれてんの!?状況はヤバくなってるのに!」

『問題ありません。シュヴェールト、来ます』

 

ルクシオンがそう返すと、上空から姿が変わっているシュヴェールトらしき飛行物体が近づいてきていた。

 

「あれは何?」

『シュヴェールトです』

「形が違うだろうが!」

『些細な問題です』

 

何処が些細な問題だよ!?もう、ほとんど別物になってるだろ!?

そんな俺の文句に構わず、シュヴェールトはアロガンツの背中に来て、そのままコンテナを接続していた部分と合体してしまう。

 

「すげぇ!合体したぞ!」

『ただのパーツの換装です』

 

シュヴェールトの新しい形状は、見方次第では飛行機や盾だからな。

そんな物を背負えば、翼を背負ったようなカッコいい姿だろ。エドの装甲換装に次ぐ男のロマンだ。

 

『バルトファルト……まだそんな隠し球を持っていたんだな』

 

殿下が沁々と呟いているけど、俺も知らなかったからね?

 

『システムのアップデートも完了しました。例の魔力識別センサーも使用可能です』

「お前も本当に何でもありだよな」

 

このままいっそ、あの超大型も倒してくれないかな?

 

『例の再生能力をどうにかしない限り、どうしようもありませんね。あれを呼び出した使用者が契約を破棄しない限り、唯の消耗戦となります』

「ですよねー」

 

あれを呼び出したのは間違いなくヘルトルーデさんだろうけど、どうして呼び出したのかが俺には分からない。

 

『ヘルトルーデの居場所の特定はすでに出来ています。最初の二体を呼び出した使用者も、衰弱状態ですが生存反応を確認しました』

 

もう一人の使用者……ヘルトルーデさんの妹さんはまだ生きているのなら、あの超大型の行動がますます分からなくなる。

俺が首を傾げていると、ヴァイスから脱出した小型の飛行船があの五人の鎧と共に、超大型に向かって進み始めた。

 

『クレアーレから連絡が来ました。アンジェリカとオリヴィエ達は、この戦いを終わらせる為にヘルトルーデの説得に向かうようです』

 

……説得、できるかな?いや、現状それしか思い浮かばないんだけど。

 

「なら、アンジェ達を護衛するぞ。ルクシオン、付き合え」

『そのままアンジェリカとお付き合いすればいいと思いますがね』

 

本当に一言余計だな!

俺は内心でルクシオンに文句を言いつつ、アンジェ達が乗る飛行船の戦闘に立って周囲のモンスターを大剣とレーザーで吹き飛ばしていく。

 

「レーザーが曲がるって凄いよね。後、速度がかなり出てるんだけど」

『慣れてください。慣れなければ、舌を噛むので黙っていることを推奨します』

 

本当にマスターをマスターとして扱わないよね。寂しかった筈なのに、妙に苛々するよ。

例の超大型モンスターはルクシオン本体が攻撃して動きを封じてくれているから、そこは助かっているけど。

少しして、ヘルトルーデさんがいる飛行船が見えてくる。

 

ヘルトルーデさんは甲板の上で座り込んでいて、その周囲をモンスターたちが守っている。

すぐ近くには、黒騎士の弟子がモンスターから攻撃を受けて戸惑っていた。

黒騎士の弟子はこちらに気付くと、厳しい声を飛ばしてくる。

 

『!外道騎士、何しに来た!?』

「戦いを終わらせる為に来たに決まってるだろうが!」

『まさか姫様を……!』

「そんな訳あるか!!」

 

少なくともヘルトルーデさんを説得しないといけないんだからな!

 

「そもそも何で無差別に攻撃してるんだよ!?」

『……俺にも分からない。すぐに駆けつけたが、ヘルトルーデ様は魔笛を握りしめているだけで動く気配すらなかったのだ。近寄ろうにもモンスターたちも近づく者を攻撃してきて……』

 

理由は向こうも分からないのかよ。一体何があったのか分からないが、まずは話を聞かないといけない。

 

「ルクシオン。周りのモンスターを片付けるぞ」

『了解です』

 

俺はシュヴェールトからの湾曲レーザーでヘルトルーデさんの周りのモンスターを一掃すると、俺は周囲を警戒しながらアロガンツを甲板の上へと降り立たせる。

 

黒騎士の弟子は……事態の解決を優先してか大人しくしてくれている。こういう所はあの五人にも見習ってもらいたいよ。マジで。

そんな中で、甲板へと降り立ったアンジェ達がヘルトルーデさんへと話しかける。

 

『ヘルトルーデさん、お願いがあります。もう、戦争を止めてください』

『最後まで暴れるのがお前の望みか?もう勝敗は決した。降伏しろ』

 

リビアとアンジェがヘルトルーデさんにそう話しかけるも、ヘルトルーデさんは一向に反応を示さない。

 

『もう終わりにしましょう。終わらせないと駄目なんです。このままだと、公国の人たちも死んじゃうんですよ』

『……それがどうしたのよ』

『なに?』

 

ようやく反応したヘルトルーデさんの言葉に、リビアとアンジェだけでなく、俺も目が点になってしまう。

立ち上がったヘルトルーデさんは、両手を広げて叫んだ。

 

『もう公国なんてどうでもいいのよ。私は、すべてを壊したくて堪らない。両親を、騎士を……妹を理不尽に奪ったこの世界を、滅茶苦茶にしたくてしかたないのよ!!』

 

え?妹さんも死んだの?マジで?

 

「……ルクシオン?」

『ヘルトルーデの言葉は間違ってますね。大方、ロクに確認せずに判断したのでしょう』

 

確認してないって……普通はちゃんと確認してるんじゃないの?

 

『理不尽にだと?お前達がしたことを棚に―――』

『戦争に反対していた両親を事故に見せかけて殺され、挙げ句の果てにはバンデルも薬漬けにされたことのどこが理不尽じゃないとでも?王国の人間は本当にめでたいわね』

 

泣き笑いの表情でアンジェの反論を遮ったヘルトルーデさんの言葉に、面食らってしまう。

公国ってそこまでやっていたの?自国の王様達を暗殺した挙げ句、黒騎士を薬漬けにするとか……普通にドン引きしかしないんだけど。

そういえばエドが薬云々は言ってたような……あれが黒騎士だっていう事実に驚いていたからちょっと自信がない。

 

師匠(せんせい)が……叔父上が、薬漬け……?』

 

ん?今、叔父上って言った?ひょっとして親戚だったの!?

まさかの事実に俺は驚いていると、超大型が放っている棘がこちらに飛んで来た。

 

「危なっ!?」

 

俺は咄嗟に割って入り、アダマンティス製の大剣で受け止める。

なんか、どんどん棘が此方に飛んで来てない?心なしか、超大型がこちらに近づいて来ているように見えるし。

 

『当然です。あれの繋がりも切っていますからね』

 

マジですか。

 

『この魔笛で守護神を呼び出せば、使用者の命が対価として払わされる。失敗しても、守護神が消えたから妹も死んだわ。一人寂しくね』

 

いやいや。その妹さんはまだ生きてるよ。

でも、素直に言って信じるかな?俺なら信じないね。

かといってこのままという訳にもいかないし……こうなったらダメ元で言ってみるか?

俺がそう考えていると、今まで空気だったマリエがおずおずと参加する。

 

『もう一度魔笛を吹けば、命までは取られないと―――お、思うんだけど』

『よく知っているわね。途中で止めれば、確かに死にはしないわ。二度と魔笛は使えず、守護神は私を殺そうとするけどね。でもね、そんな事はどうでもいいの。この世界を壊せるなら、私の命なんて安いものよ。―――私は妹の仇を討ちたいのよ!!』

 

か、完全にゲームに出てくる悲劇のヒロインのバッドエンドのセリフだよ。

ゲームでは呆れてたけど、現実だとこうも胸に響くんだね。できれば知りたくなかったよ。

もしかしたら、本来の流れで行けば妹さんはヘルトルーデさんの仇討ちの為に戦争を仕掛けたのかもしれない。きっとその妹さんもヘルトルーデさんのことが大切だっただろうし。

 

『それでも―――こんな事は間違っています。仇討ちをしてどうなるっていうんですか!妹さんは喜びませんよ!』

『五月蝿い、このお花畑!』

 

それでもなんとか説得しようとしたリビアを、マリエが激怒して怒鳴っていた。

 

『そもそも間違いって何よ!あんたに取っては間違っていても、彼女にしてみれば正しいことよ!仇討ちが間違っている?知るかよそんなの!それに、ヘルトラウダが復讐するなってあんたに言ったの?勝手に他人の気持ちを代弁してんじゃないわよ!図々しいのよ!』

『でも、このままじゃ―――』

『このままじゃ彼女が不幸でしょ?彼女の気持ちを無視して説教垂れてんじゃないわよ!』

 

お前はどっちの味方なんだよ!?いや、ヘルトルーデさんの気持ちを考えたら複雑だけどさ!

俺だってバッドエンドは好きじゃないし……こうなったら当たって砕けろだ!!

 

「だったらその妹さんに直接聞けばいいだろ!まだ死んでないんだからさ!!」

『『『『『…………は?』』』』』

 

俺のその言葉にヘルトルーデさんと黒騎士の弟子はもちろん、アンジェにリビア、マリエも揃って抜けた声を洩らした。

 

 

 

――――――

 

 

 

外道騎士―――リオンの言葉に私は苛立ちを覚えた。

 

「……何を言ってるのよ。私の話をちゃんと聞いていたの?守護神を呼び出せば対価として使用者の命が―――」

『だからその代償を軽くしたんだって!現に今、その影響でヘルトルーデさんを殺そうと超大型が攻撃してるんだし!!』

 

リオンはそう言いながら、こちらに向かって飛んでくる棘を背中に背負った物体から放った光線で撃ち落としていく。

 

『マスターの言っていることは本当よ。宝物庫にあった魔笛を私が調べ上げたからね』

『某も調査していたぞ。そなたよりもな』

『あら、そうだったかしら?』

 

青い一つ目と黄色い魔石が妙に張り合っているが、そんな世迷い言を信じられる筈がない。

 

「ほ、本当にヘルトラウダは生きてるの?生かそうとする理由が……」

『頭領はそれを笠にして、過去の滞納した賠償をふんだくると言っていたぞ』

 

聖女の疑問に黄色い魔石があっさりと答える。

……不覚にもあの悪魔騎士が悪どい笑みを浮かべて要求する姿が想像できてしまった。

 

「まったくお前たちは……」

 

アンジェリカが呆れたように頭を振るも、そこまで嫌悪感が見えない。

 

『ほ、本当にラウダ様は生きておられるのか……?確かに空の守護神の動きは、悪魔騎士の攻撃を受ける度におかしくなっていたが……』

 

バンデルの弟子……甥でもあるクロウは半信半疑で呟いている。

そんな中で、アンジェリカが私に話しかけてきた。

 

「リオンの言う通り、ヘルトラウダが生きているなら仇討ちをする意味もない。ここで退けば、まだ交渉の余地が生まれるぞ」

「……そうだとしても、公国に待っているのは、奴隷のような未来だけよ」

 

敗北した国家は、理不尽な条約を結ばれる。ましてや、互いに憎み合っていた間柄だ。

 

「そ、それなら。エドさんに相談したら良いと思います。エドさんなら、きっと良い方向に持って行きますよ」

 

オリヴィアがそう提案してくるも、私は頷かない。

だって……大切な妹の最後に見た姿が頭から離れないから。

一切抵抗せずに、男に蹴られていたあの光景が。本当に生きているとは、信じられないから。

だから、彼女らを殺そうと魔笛を吹こうとする。

 

「……え?」

 

視界の隅―――船内に入る扉の前にいる人物に目を奪われ、私は動きを止める。

壁に身体を預け、顔に蹴られた痕がありながらもそこにいた人物は……

 

「ラ……ラウダ、なの……?」

 

私はフラフラと、信じられない思いでラウダへと歩み寄る。

ラウダも私に近寄ろうとして―――その場に倒れてしまった。

 

「ラウダ!」

 

私は慌ててラウダに駆け寄り、身体を起こす。

触れた身体は冷えてはいたが確かに熱があり、顔色も芳しくないが生気もある。

 

「本当に生きているの!?ラウダ、お願いだから返事して!」

「お……ねえ、様……」

 

私の呼び掛けにラウダが弱々しくも応えてくれる。

私はラウダが生きている事が嬉しくて……その身体を力いっぱい抱きしめた。

 

「良かった……生きていてくれて……大切な妹が、犠牲にならなくて……!」

「お姉、さま……私は……ラウダは……うぁぁぁぁ……」

 

本当に奇跡のような事実に、私とラウダは何もかもを忘れて、互いに泣くのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「感動的な光景だね。思わずもらい泣きしそうになったよ」

『何一つ、状況は解決してませんがね』

 

ルクシオンがどこか呆れたように言ってるけど、空気読んでまだ見守ろうね。

 

『外道……いや、王国の英雄よ』

 

黒騎士の弟子は俺に向かってそう言うと、鎧を器用に操って頭を下げてきた。

 

『お前たちの事は憎いが……この瞬間だけは礼を言わせてくれ。ラウダ様の命を救っていただき、感謝する』

「礼なら俺よりエド―――悪魔騎士にしろよ。発案したのはエドだからな」

 

実際、俺一人ならそこまでやらなかっただろうし。だってモブだし。

やっぱりエドは、物語の主人公の気質があるんじゃね?結構ハッピーエンドに持っていってる気がするし。

よし。今度からエドに媚びを売って、面倒ごとを全部押し付けよう。

 

『忌まわしい兵器を使う相手に媚びを売るべきではありません。後、面倒ごとをエドワードに押し付ければ、エドワードは間違いなくマスターを巻き込みますよ』

「ですよねー」

 

ルクシオンがさらっと俺の考えを読んだ事には敢えてツッコミは入れず、同意するように呟く。

あのジルク以上の腹黒なら、絶対に状況を利用して俺を巻き添えにしそうだね。

やられたら、百倍返しでやり返す鬼畜でもあるし。

 

『ヘルトルーデ。ヘルトラウダが生きていた以上、復讐する意味はもうない。これ以上の戦いは本当に無意味だぞ』

『お兵士の人たちにも待っている家族がいます。これ以上、誰も死なせないでください』

 

アンジェとリビアの説得にヘルトルーデさんは涙を流しながらも頷き、魔笛を吹く。

優しい音色が響き、ヒビが入っていた魔笛が徐々に砕けていく。

 

『これで守護神は倒しても甦ることはないわ。守護神は私を殺そうとするから、あなた達はラウダを連れてここから離れてちょうだい』

『嫌、です……!お姉様、私は……!』

 

ヘルトルーデさんはヘルトラウダさんを俺達に預けようとするも、ヘルトラウダさんはそれを拒否している。

せっかくいい感じだからさ……これで終わらせたいんだよ。

 

「ルクシオン。派手にやるぞ」

『本当にマスターは仕方ないですね』

 

俺はアロガンツを浮かせると、超大型と向き合う。

そこでアロガンツの両手を広げ、魔法陣をいくつも展開していく。

 

「俺とルクシオン、アロガンツの力を合わせれば、すっごい魔法が放てるからね」

『私とアロガンツの力が九割で、マスターは一割ですがね』

「細かいことはいいの」

 

重なり合った魔法陣が輝きを放ち、その中央から大きなエネルギーが形成されていく。

それを圧縮して砲弾のような光を作り―――超大型に向けて放った。

砲弾が超大型に命中すると、盛大な爆発を起こす。

 

『超大型の消滅を確認しました。並びにアロガンツの出力が大幅に低下。これ以上の戦闘の継続は不可能です』

 

かなりアロガンツに無茶をさせてしまったな。パルトナーも沈めてしまったし。

 

「後は、黒騎士だけだな……」

 

俺はそう呟き、動きが著しく悪くなったアロガンツを動かしてエドを探すと、戦場のほぼ真ん中で焔と碧い光が激突していたのだった。

 

――――――

 

 

 

「炎の鎧に意味があるのかよ?」

『攻撃性は高まっているぞ』

 

炎の鎧を纏って攻撃性が上がった黒騎士のジジイの攻撃を、大剣モードのガンブレードで激しく打ち合っていく。

すでにゼクトールは間接部から火花が飛び散っており、いつ限界が来てもおかしくない状態だ。

 

『殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス!!王国ノヤツラハ、姫様タチノタメニィイイイイイイイッ!!』

 

黒騎士のジジイも獣のような呻き咆哮から、怨念の叫びに変わっている。

 

「ハーツ!ジジイと魔装の切り離しの準備は!?」

『既に出来ている。後はタイミングだけだ』

「十分だ!」

 

オレはそう返し、黒騎士のジジイへと突撃する。

黒騎士のジジイも大剣を大振りに構え、そのまま振り下ろそうとする。

そこでオレは大剣モードを解除。大型のビット兵器を飛ばして黒騎士のジジイの大剣の軌道を逸らす。

 

『ヌグッ!?』

 

振り下ろされた大剣はゼクトールの肩を掠め―――懐を取る。

 

「これで終わりだ!ハーツ!!」

『任せろキャプテン!―――ハウリング!』

 

ガンブレードと小型のビット兵器、すべてを黒騎士のジジイに向けて魔装だけを吹き飛ばす衝撃波を放つ。

その衝撃波を受けた黒騎士のジジイから黒い液体が魔装の右腕と共に吹き飛び、右腕を喪ったジジイの姿が露となる。

オレは咄嗟に右手を出し、落下しかけた黒騎士のジジイを受け止める。

 

「魔装の方は……」

 

オレはフリーとなった魔装を確認しようしたら、空から極太の光が降り注いだ。

 

「…………」

『あの人工知能め!またしても自分のパワーアップのチャンスを潰しおったな!?』

 

ハーツがすごく怒って興奮しているが、あれは回収したくなかったからな?

だって、黒騎士のジジイの怨念が籠っていそうだし。

 

『う……』

 

黒騎士のジジイが呻き、うっすらと目を開けている。

 

「……まだ助かるか?」

『もう助かりはせん。肉体もボロボロで、もって数分だ』

 

やはりか。あれだけ派手に暴れ回っていたからな。

 

『その声……あの小僧か……』

 

正気に戻ったのか?もしかしたら、魔装を引き剥がしたことで薬の影響も一緒に飛んだのかもしれないな。

 

『頼みがある……俺を……姫様達のもとへ、連れていってくれぬか……?』

 

……本来は聞く義理はない。だが、死に際の最後の望みだ。願いそのものも問題はないし、この程度なら聞いてやるさ。

 

「……分かった。ハーツ」

『あの船だ』

 

オレは瀕死の黒騎士のジジイにそう言うと、ハーツのナビゲートに従ってヘルトルーデがいるであろう船へと向かうのであった。

 

 

 




「やっぱりアイツは凄い騎士だ」
「そうだね。彼の背中は本当に遠いよ」
「まったくです。ファーレンガルド君もそうですが、バルトファルト君は本当に私達のずっと先を行ってますね」
「そんな二人に私は……いや、私達は必ず追い付いてみせる」
「ああ。我々も負けてはいられないな」
「「「「お前は関係ないだろ」」」」
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