チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


人質ならぬ植質確保

ハーツとラプラスの喧騒は敢えて放置し、オレ達はティアのラプラス秘匿の弁明を聞いていた。

 

「……つまり、ラプラスを奪われない為に隠していたと?」

「ハイっす。この国ではその……貴族の権威と横暴が酷いっすから……場合によっては強引に取られることもあるっすし……」

「情けない話だけど、ティアちゃんの言う通りね。聖樹を介した所有権でない限り、ダンジョンで見つけた物ですら貴族様に()られるわ」

 

ティアの言葉に同意するように、哀しげな表情でクレマン先生も頷く。

本当に共和国の貴族はお山の大将なんだな。ジャイア○ズム精神がここまで酷いとは……冒険者の権利に関しては王国に本当に感謝だね!もしハーツを共和国で見つけていたら……腕を切られた挙げ句、爆発によって死亡してただろうな。

王国の冒険者、万歳!

 

「ゴメンっす、ノエっち。友達なのに、隠し事をして。その上、まだ隠していることがあるっすから」

 

ティアはそう言って、ノエルに深々と頭を下げる。

……これはオレとリオンにも刺さるなぁ。オレとリオンも、似たような隠し事をしているし。

そんなティアにノエルは……優しく彼女の手を握り締めた。

 

「謝らなくていいよ、ティア。そんな事情なら隠しても仕方ないし……私にも話せないことがあるから、お互い様だよ」

 

この光景……リビアとアンジェ嬢並みに尊い。リオンも眩しいものを見るかのような表情で見守っているし。ノエルの隠し事に関しては複雑な気分だけど。

……そろそろハーツの方を止めるか。

オレは相変わらず罵詈雑言の言葉を放つハーツの端末ボディを掴み、同じく罵詈雑言で応戦していたラプラスから引き離した。

 

『キャプテン!?何故自分をこやつから引き剥がす!?』

「いや、これ以上は時間が惜しいから早く進みたいんだよ。此方の話も終わったし」

『フッ……劣化兵器が不様だな』

『キサマァッ!!』

 

ラプラスの挑発にハーツは激昂。再び体当たりをかまそうとオレの手の中で暴れているが、脱出できずに騒ぐだけで終わる。

 

「お前も挑発するな。今日の探索は日帰りで終わらせたいんだからな」

『お前の指図を受けるとでも?マスターでもない貴様の言葉を考慮する必要性すらない。忌々しい兵器を所持しているお前なら尚更な』

 

……本当に手が掛かる人工知能だな。これが当たり前なのかもしれないけど。

そんな敵対心丸出しのラプラスの返答に、ティアは思い出したかのようにラプラスを両手でがっしりと掴んだ。

 

「それならマスターの私を労ってほしいっすよ!何であの先生がある程度お話に付き合えば、落ち着くことを黙ってたんすか!?」

『何故聞かれていないことを報告しないといけないのですか?ナルシスから逃げ回る事に私を使ったのはマスターでしょう。ですから、あのまま精神的な疲弊で死ねば良かったのに』

「最後ぉ!絶対、最後の言葉が一番の理由っすよね!?私、ラプっちのマスターっすよ!マスターの命はしっかり守ってほしいっす!!」

『マスターが自分から危険に首を突っ込まない限り、お守りしますよ』

「それ、遠回しに守る気はないと言ってるも同然っすよね!?」

『ロイクからの暴行に対しても私を使わなかった、マスターの自業自得です』

「それを持ち出すのは反則っすよ!」

 

うーん、これは……ラプラスがティアを典型的に弄っているのか?まるでコントのボケとツッコミだぞ。ノエルも困ったように笑っているし。

 

「とにかく!ちゃんとマスターを敬ってほしいっすよ!」

『敬えるマスターであれば、私も敬っています。今の人類に敬う価値は微塵もありませんが』

 

何にせよ……ティアとラプラスの関係に口を出すのも野暮だな。何だかんだで、ラプラスはティアと一緒にいるし。何となく、リオンとルクシオンの関係に近い気がするし。

そんなこんなで、オレ達は探索を再開。ハーツとラプラスが後ろでいがみ合っているが、そこはスルーしている。

目的地に近づくにつれ、モンスターとの遭遇が頻繁になってきているが……マリエの情報では、それが苗木を手に入れるのに必須のようだ。

つまり、このまま進んで問題ないということだ。それに、ダンジョンでモンスターと戦うのは王国じゃ当たり前だし。

 

「大丈夫か、ノエル?」

「あ、うん。まだ大丈夫だよ、リオン」

 

肩で息をし始めたノエルをリオンが心配して声を掛けたが、本人は大丈夫だと返す。少し強硬だったし、無理をさせてしまったか?

ティアは少し汗をかいているが、余力は十分にありそうだし……クレマン先生は平気そうに見えるんだよな。念のため、クレマン先生に聞いておくか。

 

「学院ではダンジョン探索の授業は無いんですか?もしくは積極的にダンジョンに潜らないとか」

「ダンジョンに関する授業もなくはないけど……選択授業だから、必須ではないわね。それに、ダンジョンの探索は大人数で行うのが常識だしね。少なくとも、五人でやることはまずないわ」

 

選択式で必須じゃないのか。それに共和国の冒険者は、護衛と学者の二種類に綺麗に分類されていることがほとんどだと聞いているし。ダンジョンに潜った経験が少ないなら、ペース配分も上手くないのも当然かもしれないな。

 

「エド。此処で少し休憩しよう。俺も少し疲れたしね」

「そうだな。一度、装備も確認したいし少し休むか」

 

ちょうど休憩に適した場所もあったので、オレ達はそこに座って休息に入る。ここで強硬して帰りに支障が出たら、それこそ大変だし。

せっかくだし、軽く腹ごしらえしとくか。腹が減っては戦は出来ぬ精神だ。

 

「おい、エド。何で干し肉なんだよ。そこは茶葉と茶菓子だろ!」

「いやいや。ここで茶葉と茶菓子って……本当に持ってきたのかよ!?」

 

しかもティーセット一式に加えて、湯沸し器モドキも持ってきたのか!何で、ダンジョンに持って来ているんだよ!?さすがにキャンプ向けのカップとポッドだけど!

 

「何で日帰りの探索で持ってきているんだよ!?仮にも総当たりで探しているってのに……」

「師匠のお茶に近づくには地道な努力が必要なんだよ!それにお茶を飲めばリラックスするし、良いことだらけだろうが!」

「そのお茶に毎日付き合わされて、オレはもうウンザリしてるんだよ!」

 

事実、毎朝リオンの淹れたお茶に付き合わされているんだ。ヘルトラウダは使用人としての仕事を理由に上手く躱して、時折の付き合いで上手に楽しんでいるんだ。アインホルンの時から毎日毎日付き合わされて、こっちは精神的に疲れ始めているんだよ!

 

「お茶を馬鹿にするなよ!エド!師匠のお茶は本当に最高なんだぞ!」

「その点に関しては認めるが、その試行錯誤に毎日付き合わされているオレの身にもなれ!」

 

共和国に来てからリオンのお茶狂いが加速している気がするし、そんなリオンを諌められそうなお茶の師匠は王国にいるから意味がないし。

 

「それはお前が馬鹿舌だから悪いんだろうが!工夫して淹れても『旨いんじゃないか?』で具体的な感想を一つも寄越さないし!」

「そんなに拘るなら、飲ませた相手に毎回聞け!」

「お前以外に出来るか!」

 

クソッ!あー言えばこー言う!本当にお茶に関しては物凄く面倒臭いな!

 

『本当に低レベルな言い争いだな』

『そこの石ころに同意したくはないですが、全くもってその通りですね。本当に人類は愚かの極みだな』

「ホント、貶す時だけはどっちも結託するよな!」

 

ラプラスもルクシオンと同じく、本当に貶す時だけは結託するんだよな。もっと人間様を敬え!

 

『敬えるキャプテンであれば、敬っている』

『お前達を敬う価値は微塵もない。私が敬うのは昔のマスターだけだ』

「今のマスターも敬ってほしいっすよ、ラプっち」

『だからラプっちと呼ぶな。そんな略称など、私は認めていない』

「ハイハイ。それ以上は喧嘩しないの。リオンきゅん、私に美味しいお茶を淹れてくれないかしら?」

「……分かりました」

 

クレマン先生の仲裁でオレとリオンから始まった喧騒は一旦収まり、リオンのお茶を片手に休憩に入る。

 

「本当に美味しいわね。リオンきゅんの淹れたお茶は」

「うん。茶葉もそうだけど、淹れ方も様になってたし……」

「これと同じ味を出すのは、私には無理っすね」

 

初めてリオンが淹れたお茶を飲んだ三人は普通に楽しんでいるけど、オレはもう飽きているからな。どこがどう違うのか、オレには全然分からないし。

 

「エドワードきゅんはお茶を淹れないの?」

「いえ。お茶会を開けるくらいには心得はありますよ。お茶会すら開かないと女子から総スカンの上、今後の人生に大きく響く頃でしたし」

 

今は女子が必死に男子にすり寄っているから、その心配はないんだけどね。婚約しても婚活は終わっていないけどね!

それから十数分。十分な休息が取れたオレ達は再び探索を再開する。相変わらずモンスターの出現率は高いけど、苗木入手には必要不可欠だから仕方ないね!

そうしてモンスターを迎撃しながら進んでいき、今回の目的地へと辿り着く。最終地点―――聖樹の苗木と、その苗木を守るモンスターであるキメラビーストがいる広間へと。

 

「あれが、聖樹の苗木……?」

「本当にあったわね。まさか、このダンジョンに苗木があるなんて……」

 

ノエルとクレマン先生が聖樹の苗木に注視していると、キメラビーストが立ち上がって威嚇してくる。

それじゃ、ささっと終わらせるか。

 

「ハーツ、やるぞ」

『完全でなくとも、一撃で葬ってくれようぞ』

 

オレは魔装の力を利用して、ハンマーに風と炎の魔法を同時に展開する。キメラビーストは臨戦態勢のオレを見て飛びかかってきたが、ハンマーをフルスイングで放つ。

魔法によって威力が段違いとなった一撃に、キメラビーストは半身を爆散させる。そのまま魔素に還って消えていった。

うーん……これはオーバーキルが過ぎたか?苗木には被害は出てないみたいだし……別にいいか。モンスターラッシュで疲れていたし、早く終わらせるに越したことはないし。

 

「ボスが一撃かよ……楽できるからいいけど」

 

リオンはオレがキメラビーストを一撃で倒したことに呆れながらも、ささっと周囲の土を掘り起こして苗木をルクシオン製のプランターへと容れる。

このルクシオン製プランターは外界とは完全シャットアウト。苗木の保護に超最良な容れ物だ。聖樹の苗木は回収すると直ぐに枯れるらしいから、最高の環境に隔離されるこのプランターならその心配もないからね。

リオンが苗木をプランターへと容れたことで、キメラビーストが一撃で倒されたことに茫然としていたティア達が我に返ってリオンに詰め寄っていく。本当に苗木を回収しちゃったからね。

 

「ほ、本当にそれに容れて大丈夫なの?聖樹の苗木って確か、掘り起こすとすぐに枯れちゃうんじゃ……」

「大丈夫大丈夫。これの中なら、苗木ちゃんは枯れないから。何せ、大事な人質だからね」

「人質!?今、人質って言ったっすか!?」

 

聖樹の苗木が人質?全くリオンの奴は……

 

「リオン。言葉は正確にしないと駄目だぞ。聖樹の苗木は植物だから、この場合は人質じゃなく植質だ」

「変な言葉を作らないで!」

「本当に見逃していいのかしら……?神聖な聖樹の苗木を、人質にするあの子達に預けて……」

「心配せずとも、枯らす真似はしませんよ。聖樹の苗木は、共和国にとってとても重要で、大切な存在だと分かってますから」

「そうそう。そんな真似をしたら共和国と王国の戦争になるかもしれないし、俺達は平和主義者だからね」

「平和主義者……?本当にっすか?」

『平和主義なら、殴られても大人しくしていると思いますが?』

 

オレとリオンの言葉に共和国組は半信半疑だけど、嘘は何一つ言ってないぞ。握手に対して殴った相手にロケットランチャーを百発叩き込むけど。

 

「何にせよ、これであの糞野郎を引き摺り出せるな」

「ああ。聖樹の苗木を賭けた決闘なら、アイツも乗ってくるだろうからな」

「……本当に決闘を挑むつもり?とても勝算があると思えないわ」

 

クレマン先生は相変わらず難色を示しているな。そりゃ、共和国内における暴力は向こうが圧倒的に有利なんだ。それが分かってて、やるんだけどね。勿論、勝算はしっかり組み立てているけど。

 

「それでも、ですよ。アイツはどうせ、交換を提示してもこちらを見下して蹴っ飛ばすでしょうし。それなら、賭けの品として提示した方が遥かに建設的ですよ。苗木が手に入るだけでなく、見せしめも同時に行えるんですから」

「そうだね。あの糞野郎は絶対にそうするだろうね。むしろ、こっちが不利になるように裏で手も回しそうだしね」

 

ピエールならそれくらいはするだろうな。何せ、他国の王子様に躊躇なく危害を加えようとしたんだからね。抵抗らしい抵抗も封じる為に、人質も取ってきそうだし。あの手の奴は手出しできない弱者にしか手を出さないだろうし。

 

「そ、それじゃあ勝ち目なんてないじゃないっすか!?」

「いいや、逆だ。むしろ……アイツはもう詰んでいるんだからな」

 

オレはそう言って、今回の計画の一部をティア達にも話していく。相手の行動予測、ピエールとフェーヴェル家に対する最大級の制裁をね。

話を聞き終えたティア達は……顔を引き攣らせていた。

 

「そ……それはさすがにやり過ぎなんじゃ……」

「ほ、本当に容赦ないっすねー……嫌いじゃないっすけど」

「共和国の人間としては、見過ごすことが出来ないんだけど……」

 

ティアは意外にも呑み込んでくれそうだが、ノエルとクレマン先生は完全に引いている。そりゃ、端から見ればやり過ぎに入るだろうし。

でも、手心も加減もできる域は当に越えているし、その気もないからな。リオンもピエールが最も嫌がることで報復する気満々だし。

 

「残念ながら、穏便に済ませられる域を越えてしまっていますからね。留学生への理不尽な暴行に加え、他国の王子にも手を上げたんです。それだけに飽きたらず飛行船も強奪……この事態に対しての王国からの打診にさえ応じていないんです。もうとっくに国際問題になっているんですよ。単に共和国の議会が暴力を盾にして無視しているだけで、本来は制裁に動いてもおかしくないんです」

 

あくまで共和国が防衛に圧倒的に強いから黙らせられているだけで、関係のある国は煮え湯を飲まされているんだ。それに今の王国は情勢が不安定なままだし、ここで大人しく引き下がったら周りの諸国に舐められてしまう。

だからこそ、彼等には痛い目を見てもらう。暴力を封じた上での、怒涛の正論パンチも含めてね。

 

「……本当に耳が痛いわね」

「勿論、ピエールの取り巻き達にも報いは受けてもらいますよ。賠償という形で」

「ジャンの治療費に迷惑料……後、グレッグとブラッドの分も回収しないとね」

 

勿論、踏み倒せないように即日払いでね!

こちらの言いたいことは言い終わったので……次は小遣い稼ぎの時間だ。

 

「ここにある魔石も金属も、根こそぎ回収しないとな」

「そうだね。せっかくのお宝を放置するなんて勿体ないよね」

 

そう言ってオレとリオンはピッケル片手に、魔石と金属を採掘していく。希少?現状維持?王国の冒険者は持ち帰れる物は持ち帰る主義だから関係ない!

 

「さ、さすがに全部は回収しないで欲しいかしら……この場所の調査に支障がでちゃいそ―――」

「ノエっち、私達も回収するっすよ。学費と生活費を稼ぐチャンスは逃したら駄目っす」

「……そうだね。学費も生活費も大切だからね。全部はさすがに駄目だけど」

 

ノエルとティアも回収に参加。とは言っても、ノエルはストッパーの意味合いが強そうだけど。

回収した魔石と金属の一部はサンプルとしてナルシス先生に渡すか。かなり回収したと知ったら卒倒しそうだけど。

その帰り道で、ティアとラプラスにちょっとしたお願いを頼んだ。ピエールが何処まで手を出すかは分からないし、後手になったら色々な意味で大変だからな。

 

ナルシス先生にも報告した翌日、オレとリオンは学院の会議室で聖樹の苗木が入っているプランター片手に教師陣と対面していた。

一日遅れになったけど、時間も時間だったから仕方ないよね。それに、各所の根回しもする必要があったし。

早朝に報告して、すべての教室が自習になったみたいだけどそこは無視させてもらう。こっちにはこっちの都合があるし。

 

「バルトファルトくん!苗木をテーブルの上に置きなさい!」落としたら一大事なんだぞ!」

「一大事?俺が落としても、コイツは俺の持ち物なんで片付けはちゃんとしますよ」

 

教師の一人がリオンに苗木が入ったプランターをテーブルの上に置くよう注意するも、リオンはヘラヘラと笑って流すだけ。ま、落とした程度でプランターが割れる心配はないけどね。

だから、親切にその事をオレは伝える事にする。ちゃんと配慮してますアピールでね。

 

「ご心配なく。このケースは特別製なので、落とした程度じゃ割れたりしませんよ。こちらとしても、聖樹の苗木は大切な存在ですからね」

 

あくまで交渉材料として、だけど。事前に根回ししたナルシス先生とクレマン先生以外の教師は苗木を引き渡せと要求してきたけど、リオンが冒険者の権利を盾にして真っ向から拒否している。

その中で、こちらの様子を窺って黙っていた学園長が口を開く。

 

「何が望みだ?希望のものを用意しよう」

「俺の持ち物を返して貰いましょうか。あの糞野郎……ピエールに引き渡すよう言って貰えません?そうしたら、こいつを渡すのも考えてやりますよ」

「それは……できない。既にフェーヴェル家の所有物である以上、我々が口出しできる問題ではないのだ」

 

リオンの要求に対し、学園長は難しい顔で無理だと返す。この反応も予想通りだ。それが出来るなら、ジャンの時に厳正な対応が出来た筈だろうしね。

だからと言って、ハイそうですかと引き下がる気はないけどね。

 

「それでも呼び出しくらいは出来るでしょう?そもそも、あちらが不誠実極まりない対応をするから、此方も此処までする必要が出てきたんです。ピエールの浅ましい暴走が無ければ、苗木の所有権も含めて話し合いで応じましたしね」

「それでも俺達は優しいからね。苗木を持ち帰るかはまだ決めていないけど……このまま俺達を軽く見て一方的な要求を続けるなら、王国のパルトナーで迎えに来てもらって国に持ち帰りますよ。パルトナーなら、逃げるくらいは出来るからね!」

 

王国に貸しているパルトナーも引き合いに出して、このまま駄々を捏ねるなら苗木を持ち出す事を告げる。ロストアイテムで元公国との戦いでも多大な貢献をしたパルトナーだ。幾ら防衛に強い共和国の軍隊でも、外に逃げる高性能な船を捕まえるのは困難だと思うだろう。

そこで、ナルシス先生が口を開く。

 

「それをしたら、議会が黙っていない。最悪、強硬手段で君達に危害を加えるかもしれない」

「その前に、ピエールを呼び出せば済む話ですよ。先生」

「それなら……彼を呼び出したら、持ち出しに関しては一旦白紙にしてくれないかな?それが、私達の譲歩できる限界だ」

「ナルシスくん……それは……」

「学園長。残念ながら苗木の所有権は彼―――リオン君にあります。ピエール君も、聖樹の苗木について話があると伝えれば来てくれる筈です」

 

ナルシス先生の言葉に、学園長もそれなら……っと妥協してくれそうな表情をしてくれているな。このやり取りは事前に決めた茶番劇だけど。今の時点で苗木を持ち帰るのは悪手でしかないが、その気がないと相手が知ったら横暴に動くだろうし。だから、持ち帰りは交渉に引き出すカードとしてしか使えない。現時点では、だけど。

そんなナルシス先生の助言もあり、学園長はピエールを呼び出す事には応じてくれた。苗木の持ち出しだけは何としても防ぎたいのもあるだろうけど。

ここまでは順調……後はピエールの対応次第だ。

 

 

 




「な、ん、で!早々に面倒事を起こしているのよ!?何のためにラウダを外国に避難させたと思っているのよ!?」
「手紙には、ラウダ様に危害が及ばないよう尽くすと書かれてはいますが……万が一の時は、何なりとご命令を。ルーデ様」
「勿論よ、クロウ。万が一ラウダに何かあれば……部隊を連れて共和国に向かいなさい」
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