チートアイテムは色々な意味でアウトです   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


vs腹黒。交渉材料GET

第三試合のリオンとクリスの戦いは、瞬殺ではないがリオンの圧勝で終わった。

開始早々にリオンはドローン数機をクリスの周囲に展開して銃撃。もちろん威力は抑えられているが遠距離攻撃の手段がないクリスは手も足も出なくなった。

 

ソレに対してクリスはこんな戦いをして満足なのかとか、騎士道の欠片もないとか言ってリオンを非難してたけど、当の本人はどこ吹く風。

そりゃそうだろうな。リオンの行動はルール上、問題は一切ないし。銃を使ってはいけないというルールもなければ、その銃撃もちゃんと威力が抑えられてる上にコクピットも避けられていたし。

 

そもそも剣の腕前が高い相手にわざわざ近接戦を挑もうとはしないだろ。油断せずに戦っているのに自分が不利だから非難するとか、本当に自分本意だと呆れてしまったよ。

まあ、最後は剣を素手で折られた上に不幸自慢はマリエにやれとリオンに一蹴されてメンタルを粉々にされてたけど。

 

「こうなると殿下側が憐れになってくるな。手を緩める気はないけど」

「その憐れっぷりを助長したお前が言うセリフじゃないだろ。グレッグなんて最後、四つん這いで放心状態になったんだからな」

 

そりゃ言外にお前達は眼中にないと言ったも同然だしなー。アイツのプライドはもうズタズタだろうし。

 

「ああした方が復讐相手に一番ダメージがあるからな。直接やられるよりよっぽど効果的だろ?」

 

前世だったら当人にしかしなかったけど、この世界のルールは色々と日本と違うからなー。特に取り巻きが女性だと手を上げた時点で此方が無条件に悪者扱いだし。

それならリーダーにダメージを与えるのが一番痛い仕返しだ。だからリオン、そんなに引くなよー。

 

「それに勝っても負けても退学だし。だから、恐いものはもうほとんどない」

「ホントそれな。命乞いの手段も考えてるし」

 

その命乞いの手段もオレと同じだろうなー。てか、それ以外に手がないし。

そのまま互いに用をたし終えたので互いの鎧が鎮座している場所に帰っていると、オリヴィアさんとアンジェリカ嬢がどこか慌てたような表情で駆け寄ってきた。

 

「エドワードさん!リオンさん!どこに行ってたんですか!?」

「トイレ」

 

オリヴィアさんの質問にオレは間髪入れずにそう答えると、アンジェリカ嬢は何故か頭痛を堪えるような仕草をした。

 

「トイレって……私達はお前達を心配していたと言うのに……!」

「え、心配?何を?」

 

アンジェリカ嬢の言葉にリオンは本気で首を傾げている。オレも同様だ。

そんなオレ達の態度にオリヴィアさんとアンジェリカ嬢は互いに顔を見合わせると、その理由を話し始めた。

 

「リオンの姉を名乗る者が現れた。リオンの顔色が悪いから見てきてくれと言われたのだが……」

「加えてエドワードさんも一緒だったので……もしかしたらエドワードさんもリオンさんと同じじゃないかと思って……」

 

どうやらジェナさんに言われて二人は様子を見に来たようだが、あの典型的な性格悪い貴族女子の彼女が弟のリオンを心配するなんてあり得ないだろ。むしろ自分の身の心配をしてそうなんだが。

 

「そうか……実は大きい方とさっきまで戦ってたんだよね。我慢してたのが姉貴には分かってたのか……」

 

……あー、そういうことね。大体察した。つまり細工の為に二人を追い払ったという訳か。

一応、便乗しとくか。

 

「ま、それもお互い無事に解決したから大丈夫だけど」

「……そ、そうですか……」

「お前ら……もっと言葉を選べ」

「すいませんね。以後気をつけます」

 

顔を赤めるオリヴィアさんと再び頭痛を堪える仕草をするアンジェリカ嬢に、オレはそれだけ言ってささっと退場。そのままゼクトールに搭乗する。

 

「ポンコツ腕輪。どんな細工が施されたか分かるか?」

『……魔法の痕跡と種類からして魔法に反応する爆弾だな。位置は機体の背中装甲ゆえ、外せば簡単に逃れられるがな』

「やっぱ魔法で起動する爆弾か。短時間の細工としては常套手段だな」

 

この分だとリオンの鎧にもセットされてそうだな。実行したのはジェナさんだろうが、指示したのはおそらく……

 

「あれだけ反撃した相手にこんな裏工作するとか、見立てが甘いだろ」

『同感だな。下手に小細工したら腹黒キャプテンに首を絞められるというのを先程知ったばかりなのにな』

 

たぶん、死人に口なし精神だろうな。殺しても不幸な事故でごり押しする気だろうし。

それとハーツ、誰が腹黒だ。オレはやられた分を百倍にして返しているだけだぞ。

そんな訳で第四試合。相手はジルク。

 

『君達は強い。敬意を表しましょう』

「そうですか」

 

あのライフル、最新式の威力が高いやつだよな?かなりグレーゾーンだぞ。

オレとしてはかもネギだけど。

 

『両者、はじめ!』

 

審判が開始の号令を上げて早々、ジルクは後退しながら手榴弾を投げつつライフルをゼクトールの足下に連射。手榴弾はオレの足下で煙を立ち上らせて瞬く間に視界を奪っていく。

 

「煙幕か……これ自体は特に問題ないか」

 

問題はその後だけどな。

 

「ハーツ。魔装を完全展開。タイミングを見て一気に勝負を決める」

『了解だ。キャプテン』

 

 

 

――――――

 

 

 

「本当に容赦ないよな」

 

煙幕に包まれたエドワードの鎧を眺めながら、俺は試合の様子を見守っていく。

 

「てかルクシオン。エドワードは本当に大丈夫なのか?」

『不本意ですが大丈夫でしょう。あの装甲なら飛行船のものを使わない限り安全でしょうから』

「今不本意って言ったよな?お前には相手を心配する人の心がないのか!?」

『私は人工知能です。マスターの言う人の心というのは持ち合わせておりません。そもそもマスターもそういった心とやらには無縁でしょう』

「お前は本当に俺に喧嘩売ってくるよな!」

『事実を申しただけです』

 

俺がルクシオンと言い争っている間に、上空にいたジルクは煙に向かってライフルを構えて引き金を引く。

銃声と硬い音が闘技場に響き渡るも……

 

「おいルクシオン。表面の装甲が割れたんだけど?」

『あの装甲はアダマンティアスと靭性の強い金属を交互に重ね合わせたものです。傷つくのは表面だけですので全く問題ありません。対鎧用の魔弾をいくら撃っても貫通することはありません』

 

マジですか。確かサンドイッチ装甲だったけ?詳しくは知らんけど。

実際、ジルクが撃っている弾は表面が割れるだけで貫通する気配が全然ないから実用的なんだろうけど。

 

「けど何でそんな作りにしてんの?そのファンタジー金属だけで十分な気がするんだが」

『アダマンティアスはそこそこ希少な金属です。エドワードの実家の領土で多めに採掘できたとはいえ、無駄遣いは出来ませんからね。もっとも、現物を調査すれば簡単に再現できますが』

 

やっぱりルクシオンはチートだわ。ファンタジー金属まで作り出せるとか。

機会があればエドワードから売ってもらおう。

 

「にしてもジルクのヤツ……執拗にコクピットを狙ってるよな」

『セットされた爆薬も一般的な鎧なら操縦者が死ぬほどの量ですからね。ライフルの方は生半可なものでは通用しないと思ったととでも言えば誤魔化せますが』

 

本当にあの緑は腹黒だな。エドワードの方がもっと黒いけど。

 

 

 

―――――

 

 

 

まさか通常なら装甲を容易に貫く対鎧用魔弾が表面を割る程度しか効果を発揮しないとは……

……仕方がない。この手は出来れば使いたくなかったが、王子の為ならば……!

この手を使う以上、バルトファルトの方は煙幕を張ってすぐに使わなければ……!

 

その瞬間、エドワードの鎧が背後から爆発した。

やった!これなら確実に……!

しかしその予想も、爆煙から晴れたグレー一色の鎧が現れたことですぐに崩れさるのであった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「本当に形振り構わずだったな」

 

魔装を完全に纏って黒の全身鎧姿となっているオレは呆れたようにジルクの機体を見上げている。

ちなみに今のゼクトールは装甲を全部パージしてデフォルトの状態となっている。

この追加装甲はドローンモドキの技術を応用したことで実現した換装式の装甲。この防御寄りの装甲は遠距離武器を運用する前提で造られたものだが、その専用の遠距離武器は理論上、飛行船にダメージを与える程の高威力。そんな武器は決闘では完全アウトなので今回は倉庫の中だけど。

 

閑話休題。

そんな新しい試みの鎧だから、セットされた爆弾は追加装甲の背中だったので爆発する前に装甲を全部外して逃れたという訳だ。

ちなみに背中の装甲は焦げているが装甲自体は壊れてはいない。接続部は爆発の衝撃で壊れたけど。ここは要改良だな。

 

「じゃ、ちゃちゃっと終わらせるぞ」

『当然だ』

 

オレは手足のように操れる鎧を操作し、地面を踏みしめるように跳躍してからそのまま飛行。ジルクが駆る鎧へと突撃していく。

 

『くっ……!』

 

ジルクは悔しげな声を洩らしながらもライフルを連射。オレを撃ち落とそうとするも……

 

「悪いが見え見えだ」

 

なんせハーツの能力を解放してるんだ。操縦に慣れた上に色々と強化されてるから銃弾も簡単に避けられる。

なので簡単に距離が詰められ、ジルクとは目と鼻の先だ。

 

『まさかあの爆発を―――』

 

ジルクが背中の斧を取り出すよりも早く、オレは両手を組んで振り上げてそのままおもいっきり鎧の頭部へと組んだ拳をハンマーのように叩き込んだ。

 

『が―――』

 

ジルクはそれだけ声を洩らすと、乗ってた鎧は制御を失ったように地面へと落下。そのまま大きな音を立てて地面に激突した。

 

「……さすがに死んでないよな?」

『あの程度の高さからの自然落下なら命の危険はないだろう。怪我はしているだろうがな』

 

だよねー。このくらいで死んだら後味悪いし。

 

『……勝者、ファーレンガルドォ!!』

 

ジルクの様子を確認した審判も試合続行不可と判断したか。

そんじゃ魔装を解除……っと。

 

「相変わらずの疲労感……今回は動いてないのに」

『動かずとも肉体には負荷がかかる。この程度で根を上げるとは情けないキャプテンだ』

「こんなに欠陥だらけだから取り返されずに放置されたんじゃないのか?」

『黙れモヤシキャプテン!!』

 

図星で逆ギレかー?ま、今は流してやるか。

なんせ、ここから楽しい楽しい仕返しタイムだからな。

 

「審判、少しいいですか?」

『……ファーレンガルド?何か不服があるのですか?』

 

審判は不思議そうにしているが、オレは構わずにジルクの鎧から件のライフルと弾丸を押収する。

この弾丸……やっぱり対鎧用だったか。決闘に使う装備じゃないだろ。

 

「ジルクが今回使ったライフルと弾丸……明らかに決闘で使うものとしては不適切です。加えてこのライフルは照準機能が優秀です。煙幕の中でも狙撃出来るほどに」

 

オレが何を言いたいのかを察した審判は黙り。ジルクの敗北で騒いでいた観客達も嘘のように静かになっている。

 

「そして、ジルクの攻撃はコクピットを執拗に狙うものでした。状況を鑑みれば、明らかな殺意を持っていたと思われます」

『…………』

「加えてあの爆発……決闘前に鎧になりかしらの細工を行っていたことは明白です。念のため、リオンの鎧に何かないか確認してもらってもよろしいでしょうか?」

『……分かりました』

 

リオンの鎧の調査が認められ、審判が調査すると案の定爆薬が出てきたよ。それもゼクトール同様に機体の背中から。

 

「これは明らかに決闘のルール違反ですよね?決闘前にこのような卑劣な工作をしただけでなく、相手を殺そうとしたんですから」

 

オレのその言葉に審判は無言で頷く。観客達はこのまま殿下達の反則負けという形で決闘が終わる事を恐れてか、顔を青くしてざわめいている。

 

「まあ、あくまで状況証拠だけなので決闘そのものは続けますが、これらの証拠品は此方で預からせて頂いてよろしいでしょうか?不可能であれば厳重に管理してもらえるならそちらで押収して構いません」

『……ファーレンガルドの要望を受け入れます』

 

お、ラッキー。手元に証拠が置けれて。下手に目が届かないところになるとすり替えられる危険性もあったからな。

これでマーモリアの方は何とかなりそうかも。

オレは押収した証拠品を抱え、パージした装甲をドローンのように飛ばしながら壁際まで下がっていく。

 

『なあ、エドワード……』

「実行役の方はお前に全部任せる。訴えるとしたらアイツだけだからな」

『……そうか』

 

リオンは姉にも被害が出るんじゃないかと危惧してたが、オレが全部放り投げたのでリオンは安心したように声を洩らしている。

さ、後は一番(権力的な意味で)面倒な相手をリオンがどうするかだな。最後も勝って終われよー、リオン。

 

 

 

――――――

 

 

 

何よ……何なのよアイツら……!

モブのくせにどうしてあんなに強いのよ!?

 

「ご主人様、これって本当に大丈夫なんですか?四人とも殆ど何もできずに負けちゃいましたよ」

 

大丈夫なわけないでしょカイル!向こうはまだ二人も残ってるのよ!?

しかもあのメガネのモブはユリウス達の取り巻き達への復讐に参加したと言ってたし!本当に何で余計なことをしてくれたのよ!

 

「大丈夫」

 

そんな私の心情を知ってか知らずか、ユリウスは優しい声色と共に私の両手を包み込むように握りしめた。

 

「あの二人があれほどとは思っていなかった。だが、俺の鎧は王国最高の技術で作られている。だからマリエ、心配するな」

 

そう言って皆やられたじゃないユリウス!ジルクに至っては余計なことして首が絞まってるのに!

あー!そういえばこいつらゲームでも弱くてすぐに負けてたから、兄貴に押し付けてクリアさせたんだったわ!

そもそも乙女ゲーにあんな激ムズの戦闘パートなんていらないでしょ!課金前提のゲームなんてクソよクソ!

 

大体兄貴も兄貴よ!旅行に行ったのを母さんに告げ口してそのまま死んで……そのせいで私の人生が最悪になったんだから……

家族から実質縁を切られ……結婚式も上げられず……相手にも逃げられたのに助けてくれなくて……

そうよ……!全部兄貴のせいよ!

 

「それではマリエ、行ってくる」

 

はっ!えーと確か、この時のセリフは……

 

「はい。ユリウスの勝利を願ってます」

『ああ!頼んだぞ』

 

それは此方のセリフよ!ここで負けたら私の今世の人生が終わるんだから!

それはそれとして……ぶりっ子で頭お花畑の主人公(オリヴィア)を真似るとか、マジでキツいし疲れる。

 

でも……挫けたら今までの努力が無駄になっちゃう。というかここで負けたらどうなっちゃうの……?たしかゲームではゲームオーバーだったっけ。

そうよ……こんな所で終われない。私の幸せな人生の為に、あんなモブ男どもに負けられないのよ!

 

 

 




「……本当にエドワードは黒いよな。絶対分かってて進言しただろ。見ている分にはスカッとしたけど」
『マスターの姉君の処遇はマスターに一任したので、一応の配慮はありますね。マスターにも爆薬をセットしたので脅されたと言えば何とかなるでしょう』
「こうなるとジルクの奴が憐れに見えるな。クズだから同情しないけど」
『その意見には不本意ながらも同感ですね。あのクズは先の三人よりもクズですから』
「だよねー。あの三人はまだ笑えるけど、あのクズは全然笑えないよね」
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