オーロラに転生ですか?   作:オーロラ・ル・フェイ

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星の生まれる刻

ある魔法使いは言った。

 

あらゆる並行世界を見てきたが、アルビオンが世界を滅ぼしたことはない。

 

今回のように左腕や頭が自立したり、死骸を喰らうことで次代のアルビオンが再誕した例はいくつかあったが、そのどれもが大人しく世界を静観し、または星を離れて帰ってくることはなかった。

 

ゼウスやインドラでも滅ぼしたことはある。

竜でいえばテュフォンが上手くやって、ゼウス達を退けたあと、そのまま滅ぼされた世界もあった。

 

だがアルビオンは何もしなかった。守りはしたがそれも腕のなかにいる小さな命たちだけだ。彼らがどれほど嘆願しても、世界を救うために牙を見せたことはない。アルビオンはただひたすらに傍観者に徹していた。

 

きっと興味がないのだろう。

アルビオンの尺度で見れば、この世界は小さな箱庭で、替えはいくらでもあるのかもしれない。

 

だから『見飽きた』らお気に入りの人形だけ回収して、別の箱庭に連れていく。

 

 

 

今回アルビオンは上を向いて死んでいたそうだが、もしかしたら、見つけたのかもしれない。

まるで、オーロラのように輝くお気に入りの人形を。

 

 

あれが、欲しい

 

 

星に手を伸ばした人間のように、世界という枠を越え、たった一人の人間の魂を観測し、欲しいと願った。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

独房。三禁が適応し、令呪が刻まれた時に伴う何ともいえない虚脱感が普及した今、犯罪者を収容する頻度もぐっと減ってしまったが、ノクナレアはその中でも、ムリアンの妖精領域を適応させた特殊な牢に閉じ籠られていた。

 

「……貴方、マヴよね?」

「さぁ何のことだか」

「ねぇ、真面目に答えてよ。どうして今までだまっていたの?生きていたなら、その……」

「私はただの亡霊よ。くだらない嘘に騙されて、テロ集団を裏から手引きしていた大悪党。王の氏族は何の関係もないわ。面倒なことにならないうちにさっさと殺しなさい」

 

彼女はノクナレアではなかった。本物の彼女は鏡の氏族の街で大人しくしているという。

そしてカルデアに調べて貰ったが、彼女の霊基はメイヴと同一だという。

 

「何が起きているの?ロビンもだし、どうして今になって過去の人たちが」

「私たちは始まりに過ぎない。ブリテンで英雄が生まれた以上、次からは借り物じゃなくて本体で来るでしょうね。みんな貴方に縁深い人たちよ。一番あり得そうなので言うと、リンカね。あの娘、人間にしては強かったから」

「それは私を殺すため?誰がそう仕向けたの?」

「……一方的に結ばれた契約だから、相手が誰なのかは分からない。でも、こんなことが出来るんだから、貴方と同じぐらい無茶苦茶な存在でしょうね。で、何で殺すため?とか聞いてくるの?私が貴方を好きなのは知ってるでしょ?」

「だって、貴方を殺したのは私だし」

「は?殺されたぐらいで嫌いにならないわよ。貴方がアイツとの子供を作ったって聞いた時は脳が壊れかけたけど、それでも貴方への愛は変わらない」

 

今回、彼女がやったのは戦争の回避であった。

過去の過ちから学んだということだろう。オーロラにあんな顔をさせるのはもうゴメンだと言っていた。

 

「えっと……人妻なんだけど」

「わかってるわよ!!返事なんて期待してなかったから!……でも、送られてくる奴らが全員私のような考えを持ってると期待するのは止めておいた方がいいわ。貴方と縁深い人たちなんて、だいたい人の良い奴らだろうけど、今の貴方の境遇を哀れんで勝手に暴走しかねない」

「誤解してるなら、それを説いて仲直りすればいいじゃない!そしたらまた一緒に暮らせるわ」

 

そうだ。マヴもこっそり匿えばいいじゃないか。

旧友との再会を思って、綻ぶオーロラに彼女は釘を刺す。

 

「そう期待するのは早計よ。まるで感情の読めない、ハリボテみたいな感じだったけど、わざわざ貴方にとって大切なヒト達を蘇らせて、ろくな説明もないのにほっぽりだすなんてイカレてる。私は違うけど、それに貴方を害する気持ちがあるなら、嘘をついたり、理性を奪ったりして、差し向けてくるかもしれない。また一緒に暮らせるかもしれないなんて、ふわふわした気持ちでいれば、火傷じゃすまないわ。……この体も何を仕込まれてるか分からない。だから正気なうちに殺してほしいの」

 

目に見えてオーロラの顔が暗くなる。

あの時は一瞬だったし、メリュジーヌのことで頭がいっぱいだったが、マヴだって大切な友人だった。

 

「……貴方じゃなくてもいいわ。でも王の氏族の人たちに迷惑をかけたくないの。秘密裏に殺して欲しい」

「それしかないの?」

「私を生かすためなら手段はいっぱいあるでしょう。でも、私という存在はこの國にとって悪い象徴になりすぎた。もし、貴方が友人だから生きて欲しいなんて単純な理由で否定するなら、おすすめはしないわ。それは女王として最悪の選択になるから」

 

このブリテンには三人の王がいた。

 

春のように豊かな國の王がオーロラで、

 

冬のように何もかもが凍りついたように停滞した國の王がモルガン

 

そして今でこそ秋の王としてバーゲストが名乗りを上げたが、夏のように苛烈な熱さで惹き付けて皆を引っ張っていたのがマヴだった。

 

彼女は國を持たないが、誰よりも王たらんと努めた。

 

 

ここでオーロラが断ったところで、舌を噛み切ったり、霊核を自分で破壊するかもしれない。いや、彼女のことだ。きっとそうする。

 

「……………………分かった。痛みなんか感じさせないぐらい一瞬で貴方を終わらせる」

 

数分、体感ではそれ以上熟考したのだろう。

 

オーロラは牢の扉を開け、そして爪を伸ばした。

 

「……思い残すことはない?」

「お幸せに。貴方の幸せを私は愛するわ」

 

 

最後にとびっきりの笑顔を浮かべた。

 

 

オーロラはそれに答えようと、泣きながら笑う。

 

 

彼女の言う通りこれは過去との決別であり、始まりに過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

「それでも~!今が~!楽しければええじゃないか!」

「ふふ、ご機嫌ね」

「だって、今日は僕たちの結婚式だよ!!!」

 

1発だけ。という条件でモルガンがロンゴミニアドを込めた礼装を渡しカルデアが南米異聞帯に旅立ってから数日。

オーロラとメリュジーヌは結婚式を挙げていた。

 

「えぇ……本日はお日柄もよく、まるで二人の晴れ舞台を飾るようで」

 

バーゲストがガチガチになりながらスピーチするのを特等席で見守る。

こういうのは全部終わってからするつもりだったが、大きな山は乗り越えたのだ。あとはカルデアに託せばいいとマーリンにも勧められて今日に至る。

 

「ビュッフェ……ステーキがある」

『ヌンヌ(待て。今は行ってはダメだ)』

 

完全に呪いから解き放たれたことで自立して動くようになったヌンノスが、ステーキに釘付けのアルトリアを諌めている。

 

「綺麗ですね。お母様」

「ええっ。あの子も立派になって」

 

案の定、招待状にお断りをいれたモルガンはトリ子に無理やり引っ張り出されて、まるで自分が産んだ娘が送り出されたように泣いている。

 

「ぐっ……我慢だ。そうだ、オーロラが幸せならそれでいい」

「奥手なのが悪いんですよ。私が貴方の立場だったら強引にベッドに押し倒してました」

 

メリュジーヌを射殺さんばかりに睨むウッドワス。

そしてノホホンと見守るムリアン。

 

「いいですね。私たちも挙げましょうか?」

「ウン、ソダネ」

 

ブランカの問い掛けに、オベロンは死んだ目をして頷いていた。

 

その他大勢。参加人数は二万は超えるだろう。

 

「ほう。あれが竜の女王か……何故、人間と見た目が変わらんのだ?そして人間である筈の余は何故、ゾウに?」

 

「女王様、女王様。あの方、とっても綺麗ですね!」

「えぇ。そしてとても幸せそうです。やはり夫は側にいてこそ妻は輝くのですね」

 

「何故、朕が喚ばれたのか分からんが、まぁいいだろう!あの女王と同盟を結び、空想樹のシステムを解体して、我が世界を永劫の物とする!」

 

「竜……竜か。神ではないなら、関係ない」

「何でお前、カルデアについて行かなかったんだ?」

「ベリルはいつの間にか死んでたし、あっちにはカドックがいるもの。なら私にしか出来ないこともあるじゃない?例えば造ってもらった聖剣をカルデアに渡しにいくとか」

「びっくり!綺麗だね!お父さん!」

「あぁ、そうだが。おいっそっちに行くな。アーシャ、弟達を止めるのを手伝え!」

 

「テュフォン以外にも、あのような怪物が存在していたとは……」

「無粋ですよ。結婚式は女の花。それを怪物だなんて」

「……ウソでしょ。あの子、あの美貌でほぼノーメークだわ!!!?」

 

何か居てはいけない存在もチラホラ存在している気もするが、その日の結婚式は大盛況だった。

 

「汝、健やかな時も病める時も、懐が豊かな時も、貧しい時も、不変の愛を誓いますか?」

「誓います」

「どれだけ、絶望的な未来が待っていたとしても、ハッピーエンドを目指して歩みを止めないことを誓いますか?」

「誓います」

 

 

「では、誓いのキスを」

 

牧師はマーリンである。

 

「オーロラ。これから何があっても絶対に幸せにするね」

「私も貴方がもっともっと幸せにしたいって思うぐらい頑張るから」

 

 

 

誓いはここに。

 

 

 

 

異聞作成方針 童話/幻想によるメリー・バットエンドその芸術的な滅亡路線に従って 異聞帯を 速やかに滅亡させてください

 

 

運命は否定され、ハッピーエンドが確約された。

 

 

 

これからも彼女達の旅は続くが、結末の決まった物語を長々と語っても、退屈だろう。

 

だからこの物語はここでおしまい。

 

 

王様とお姫様が末長く幸せになりました、とさ。

 

 

 

 

【オーロラに転生ですか?】完。

 

 

 

 

 


 

と言うわけでここまでありがとうございました。

……すいません。この後の続きも書けはしました。

バーゲストがオーロラの子供を食った偽者だったり、アルトリアが実の娘でないからと國のみんなに手のひら返しされたり、オーロラが英霊化したかつての友人達に責められて、心をぶっ壊したり、ラスボスとして本物のヴォーティガーンが出てきたりと、構想は色々とありましたが、壊すだけ壊して、修復出来る自信がなかったので、本を閉じさせていただきました。

 

あと水鏡でマシュを過去に送ったのは偽典ソロモンです。

「あ、この異聞帯、あっさり終わるな」って悟って、マシュだけでも人間的に成長させるためにオリチャーを発動させました。

 

汎人類史のマーリンがちょっかいかけたのも、この旅で得る筈だったものの補填ぐらいに思っていただければ。

 

あと、描写出来ませんでしたが、村正はカルデアに付いていきました。

キャスニキはそもそも召喚されてません。オーディンもその必要なしと判断されたので。ツングースカの難易度が爆上がりしてますが、きっとキャスターなら冠位のあの人が本当にキャスターで冠位で来て何とかするのでしょう。

 

 

長くなりましたが、途中一年ぐらい失踪してた中、無事この物語の終わりまで見届けることが出来てホッとしております。

見た目も性格も、最後の散り際も、最後の最後まで純粋な妖精として殉じた彼女。オーロラ様最推しの私としては終章で彼女の話題が上がったことに感無量で、もう実装されてもいいんじゃないかと思うほどでしたが、そのモチベのお陰でここまで来ることが出来ました。

これまでお付き合いいただきありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……謝るか」

 

結婚式の終盤、モルガンは席を立つ。

そうだ。分からなくてもいい。過ちを認められなくても、それが嘘だとしても、もう二度としないと人は行動を改めることが出来る。

 

モルガンは長い時間をかけたが、やっとその答えにたどり着くことが出来た。

 

冬の氷はまもなく溶けるだろう。その下で眠っていた花の種が目覚めるだろう。

 

 

「お、オーロラ。話したいことがある」

 

 

ここは楽園。妖精と人間の國。数えきれない犠牲と悪逆を重ねながら、果てしなき先にあるハッピーエンドを目指し、虫のような歩みで正解を目指す。

 

王様が竜だけど、いや竜だからこそまとまったのかもしれない。そんなおかしな国。来るもの拒まず、去るものには抱えきれないほどのお土産を。

 

きっと帰る頃には名残惜しくなる素敵な国です。

 

ブリテンにようこそお客様。どうかこの風景がいつまでも貴方の記憶に残りますように。

 

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